●筒井康隆の「腹立半分日記」のなかにこんな記述がある。「大月楽器店でルビンシュタインのショパンを買う。千九百円」。いつの話かっていうと、なんと1958年だ。同じ年の記述に「ぼくの当時の給料は七千円」なんて書いてあるわけで(作者サラリーマン時代の日記なんである)、LPがいかに高価なものであったかが想像できる。っていうか、1900円っての、今だってそんなもんだ。物価と上昇と無関係なんだよな、音盤一枚の価格は。いや、むしろ今ならもっと下がってるか。すごいことである。
●この価値体系が崩れるのは、きっと音楽の非パッケージ化が本格化するときなんじゃないだろか。1枚っていう概念がなくなって、代わりに「1回聴くのに××円」って形に変わると。そのとき初めて1回しか聴かない演奏と、10回聴く演奏とに価格差が生まれることになるのかも。これはこれで妥当な気がする。(05/17)
Disc: 2003年5月アーカイブ
May 17, 2003