●「ピアノの芸術」というタイトルで、NHK-BS2で「アート・オブ・ピアノ」が放映されていた。これを観るのは2回目だけど、いやあ、抜群におもしろいっすね。パデレフスキ、ラフマニノフ、ホフマン、ホロヴィッツ、リヒテル、ギレリス、バックハウス……。次々と偉大なピアニストたちの貴重な映像が流れ、これに現代の音楽家や音楽関係者が適切なコメントを添えるという、ドキュメンタリーの王道を行く構成。
●ギレリスの映像なんて可笑しいんだよなあ。前線の兵士たちの慰問演奏にやってきたらしく、野外にドーンとピアノを置いてそこでラフマニノフの前奏曲を弾いている。戦闘機のコックピットから聴いている兵士たちまでいるという恐ろしくシュールな光景で、曲が終わると兵隊たちが一斉に拍手をする。意地の悪い映画監督が撮影したブラックジョークのように見えるが、これは本物のできごとだ。
●素朴に笑えるのは、キーシンのミケランジェリに対するコメント。「ミケランジェリはミスタッチ一つしない……(訴えかけるように、真剣な表情で)あのホロヴィッツだって晩年にはミスタッチをしてたのに!」。キーシンが他人の技術的完璧さに溜息をついているような姿って、実にユーモラスじゃないですか。
●幸い「アート・オブ・ピアノ」はDVDで発売されている。この作品に限らず、「アート・オブ」シリーズは傑作ぞろいである。価格が高すぎるのが難点だったのだが、昨日から期間限定で従来の半額程度で買えるキャンペーンが始まった。期間限定になんてしなくてもいいんじゃないかとも思うが、いろいろ事情があるんでしょうね。(11/02)
「アート・オブ・ピアノ 20世紀の偉大なピアニストたち」
「アート・オブ・ヴァイオリン」
「アート・オブ・コンダクティング 今世紀の偉大な名指揮者たち」
「アート・オブ・コンダクティング2 黄金時代の伝説的な指揮者たち」
「アート・オブ・シンギング 偉大なる名歌手たち」
Disc: 2003年11月アーカイブ
November 2, 2003