「もしもし、もしもし」
「はい、ハッピーレコード社です」
「あのぅ、ウチの息子に頼まれたんですけどね」
「はい」
「○と3mっていう曲のCDがそちらから出てるって聞いたんですけど」
「えっ? なんていう曲ですか」
「○と3m」
「丸と3メートルですか?」
「ええ、おたく様から発売されてるので買いたいんです」
「いやあ、そんな曲あったかなあ。ウチはクラシックなんですよ」
「クラシックです。ゲンダイオンガクって言ってましたけど」
「みんなの歌かなんかじゃないですか、そんな曲ありませんねえ」
「いや、息子は有名な曲だって言ってましたよ」
「作曲家はだれかわかりますか」
「だれだったかなあ。ピエールとか言ってたような気がしますが」
「ピエールの○と3mですか」
「そうそう」
「それ、ウチと違うと思いますよ。NHKにでも聞いてみてください」
「そうですかぁ、じゃあまた調べてみます、すんませんどうも」
「はいはい、どうも~」
ガチャ。
「おーい、山田ぁー、ピエールの○と3mって曲、知ってるか?」
「はぁ? それピエール・ブーレーズのル・マルトー・サン・メートルですよ、部長」
「ブーレーズか。......知らんなあ、誰それ?」