●「ディスク」って言葉、あるじゃないすか。ほとんどの場合、CDのことなんだけど、時としてLPとかDVDとかいろんなものを含める便利な言葉。でも、ダウンロード音源とかストリーム配信はもうディスクじゃないし、なんて言えばいいんすかね。英語ならMusicなんだろうけど、日本語じゃそうもいかないし。今のとこ世間的には「音源」? でもうっすらと日本語の正用から外れてる感もあり。ともあれ、媒体にこだわるのは意味レスか。
●名前の覚えられない鍵盤奏者ナンバーワン、ベザイデンホウト(ベズイデンホウト)の新録音は、フライブルク・バロック・オーケストラとの共演によるモーツァルトのピアノ協奏曲第17番&第22番。ソナタ集の録音がすばらしかったので、これは待望の録音。ディスクよりデータのほうがリリース日が早かったので、発売当日にゲット(amazonは発売日の0時になったらダウンロード可能になるんすね)。管弦楽パートが壮麗な第22番のみならず、第17番でもフライブルク・バロック・オーケストラが雄弁で圧倒される。曲のスケールがとても大きく感じるが、ソロは繊細でニュアンスに富む。ソナタも協奏曲も全集になってほしいと祈る。
●ピエール・アンタイとスキップ・センペのチェンバロによる「ラモー:2台のクラヴサンによるシンフォニー」。ラモーの「優雅なインドの国々」をベースとして、そこに「ダルダニュス」や「ゾロアストル」などラモーの他の作品から何曲も挿入され、2台チェンバロによる「ベスト・オブ・ラモー」の趣。冒頭の「優雅なインドの国々」序曲からしてクラクラするほどのカッコよさ、筆舌に尽くせない楽しさ。ぐっとテンポを落とした「ポーランド人のエール」の荘重さ、絢爛華麗な「タンブーラン」、そして原曲でも聴けば必ずといっていいほど感動する、旅の終着点にたどり着いたかのような寂しさと歓びが渾然一体となった「シャコンヌ」。鳥肌ポイント満載なり。
●アラン・ギルバート指揮ニューヨーク・フィルによるニールセン:交響曲第2番「四つの気質」&第3番「広がりの交響曲」。アメリカのオーケストラは自主制作以外ではなかなか録音が出にくくなっているが、これはDacapoレーベルから。しかもニールセンで2番と3番って。どういう(経済的な)仕組みでこういう企画が成り立ってるんでしょか。両曲ともワタシは好きなんだけど(第2番の終楽章で泣けてしまうワタシはダメ者であろうか)、オケのサウンドが明るくて、晴れ晴れとした気分になるニールセン。鮮烈。
●コジマ録音からリリースされた、若手ピアニスト石井佑輔さんによる「ジョリヴェ/ヴァレーズ ピアノ作品集」。ヴァレーズのピアノ作品といっても、「オクタンドル」のピアノ独奏編曲版で、それ以外はジョリヴェづくし。石井さんはオルレアン国際21世紀ピアノ・コンクールでアンドレ・ジョリヴェ賞を受賞しているということで、ジョリヴェとその師ヴァレーズという構成で一枚。知らない曲ばかりなんだけど、とてもおもしろい。ヴァレーズの激越さと過剰さはジョリヴェに受け継がれていたのだなあ。スクリャービン的妄執を連想させる「コスモゴニー」、呪術的な6つのオブジェに触発された小品集「マナ」、バルトークへのオマージュであるピアノ・ソナタ第1番、他。苛烈さのなかにポエジーが漂う。
Disc: 2012年11月アーカイブ
November 7, 2012