●どうすか、この精悍な顔つきは。男前だ。しかもなんだか頼りになりそう。有能なセールスマンみたいにも見える。どんな高価な鍋でも売りまくってやるぜー、的な。これがあのルチアーノ・パヴァロッティだなんて!
●デッカ・レーベルの「パヴァロッティ・エディション第1集 ~ 最初の10年間」。27枚組だが、LPサイズの大型ボックスに収められ、ボーナスEPまで付いている(EPってなに? それは遠い昔、はるか銀河の彼方で……)。音楽配信時代を迎えても、この重量感がもたらす所有の喜びは色褪せないのだろう、豪勢な写真を眺めるだけでパヴァロッティの甘く輝かしい声が聞こえてきそう。
●パヴァロッティといえば、思い出すのはマネージャーのハーバート・ブレスリンが書いた伝記「王様と私」。なにしろ副題が「友人、時には敵そしてマネージャーだった私が栄光の王座に就いたパヴァロッティの私生活を修正なしで公開する」という物騒なものなのだが、純粋に読み物としてきわめておもしろい。この本で印象的だったのがキャリア最初期のパヴァロッティの話で、彼はギャラの多寡よりも会場の集客のほうにこだわったというエピソード。とにかく客を集めろ、と。まず最初はなにより大勢の客に聴いてもらうことを優先したというのは、後のガッポリ儲けますみたいな話となんの矛盾のない、筋の通った戦略だと思う。なんでもそうだよなー。大勢に聴いてもらう/見てもらう/使ってもらう/読んでもらう、まずはそこから、と。
Disc: 2014年2月アーカイブ
パヴァロッティ・エディション第1集 ~ 最初の10年間
ワーナー・クラシックス・コンベンション開催。レーベル統合などについて
●20日、キャピトルホテル東急でワーナー・クラシックス・コンベンション。旧EMIがワーナーミュージックに吸収されて以来、着々とEMIレーベルの音源がワーナー・クラシックスに移りつつあるが、ワーナー・クラシックスの現状と今後について様々な発表が行われた。
●配布資料の表紙にプリントされていたレーベル・ロゴは「W」の文字でおなじみのWarner Classicsと、こちらはもっとおなじみの緑字に白抜きのEratoのロゴ2種類。今後、旧EMI系レーベルも含めて、この2レーベルに全部集約される。レーベル統合について、どういう図式になるかというと、
旧EMIクラシックス+テルデック+ワーナー・クラシックス → ワーナー・クラシックス
旧Virginクラシックス+旧EMIフランスのカタログ商品+Erato → Erato
と、こうなるんすよ! いやー、すでに承知のこととはいえ、赤いEMIロゴがどこにも残らないことに改めて感じ入る。そして、WarnerとEratoの2種が生き残るのって少し意外じゃないすか? かつてワーナーミュージックでTeldecとEratoが2本柱のレーベルとなっていた活発な時代があったわけだけど、EMIとVirginを吸収して、WarnerとEratoに集約されることになろうとは。Eratoという名前がEMIより長く生き残るとは、90年代にだれが予想できただろうか。
●それともうひとつインターナショナルの組織について。従来EMIとワーナーがロンドン、Virginがパリに拠点を置いていたのが、今後は一本化されてワーナー・クラシックスとしてパリを本拠とする。ワーナーがフランスにあるというのもなんだか不思議な感じがする。
●カラヤンやマリア・カラスがWarner Classicsのロゴで次々リリースされるというのも、なんといったらいいのか、時代は変わるのだなあ。すでにラトル&ベルリン・フィルの旧譜だってWarner Classicsに移行しつつあって、いまさら驚くことでもないんだろうけど。
●上記写真は音楽評論の満津岡信育さんをゲストに招き、カラヤン指揮フィルハーモニア管弦楽団のベートーヴェン「第九」の新たに発掘されたステレオ録音を試聴しているところ。カラヤンのリリース予定多数。
●個別の新譜のリリース情報はまた機会があれば。あ、資料のなかでいちばん直近のアルバムとして載っていたのが、LFJでも活躍するピアニスト、ベルトラン・シャマユのErato専属契約第1弾の「シューベルト/さすらい人」(輸入盤)。今後のリリースにはやはりLFJに出演した若いチェリスト、エドガー・モローのEratoデビュー盤があった。LFJ系の若いアーティストたちに一気にメジャー感が。
●しかしここまで読んで、「は? なにがなんだかよくわからん」という方も少なくないと思う。「レコード会社」と「レーベル」は本来別の概念なんだけど、今はあまりそれを意識しない音楽ファンも多いだろうし、実際その必要もなくなりつつあるような気もするから、レーベルの統廃合はもはや関心を呼ぶ話題ではないのかも。