●3日午前はザ・キャピトルホテル東急で「ベルリン・フィル・レコーディングス」の記者会見へ。すでに当ブログではお伝えしているが(該当記事)、ベルリン・フィルもついに自主レーベルをスタートさせることになった。第1弾はラトル指揮による「シューマン/交響曲全集」。音楽CDに加えて、ブルーレイディスクによる映像とハイレゾ音源、さらに高スペック(192kHz/24bit)のハイレゾ音源ダウンロード用コードなどがぜんぶセットになった豪華仕様である。しかも布張りハードカバー。日本国内ではキングインターナショナルが発売することになった。国内仕様のパッケージには9000円(税抜)の価格が添えられている。
●会見に出席したのは、ベルリン・フィルのソロ・チェロ奏者でありメディア代表のオラフ・マニンガー(写真中央)とベルリン・フィル・メディア取締役のローベルト・ツィンマーマン(右)、そしてキングインターナショナルの竹中善郎代表取締役社長の各氏。ベルリン以外でこのような会見を行うのは日本だけ、しかも彼らはこの会見のためだけに来日している。というのも「日本とドイツだけがCDやDVDをお店で買うという伝統的な買い物スタイルが健在だから」(ツィンマーマン氏)。「日本人もドイツ人と同じように、製品を物として楽しみたい、所有する喜びを大切にしている。だから、持つことが楽しくなる商品を作った。単なるCDではなく、ブルーレイディスクの映像とハイレゾ音源を用意し、さらにデザインにも非常にこだわった。カバーデザインはオリジナルの創作磁器花瓶でシューマンをモチーフとしている。決して今回が最初のリリースだからこのような特別な作りになっているわけではない」(マニンガー氏)。なお、8月にはLPバージョンもリリースするとか。
●気になる今後のリリース予定だが、8月にセラーズ演出、ラトル指揮のバッハ「ヨハネ受難曲」と「マタイ受難曲」(新デザイン)のブルーレイビデオ/DVD、10月にアーノンクール指揮のシューベルト交響曲全集のCD+ブルーレイ・オーディオ+ダウンロードが発売される。
●サイモン・ラトルはビデオメッセージで登場。「レコード業界は変わりました。今後、どのように発展するのか、見通しがつきません。メジャーレーベルの社員の顔は毎週のように変わります。レコーディング・ビジネスの今後はとても不透明です。ニューヨークに行けば、タワーレコードがなくなったことに気づくでしょう。根本的な変化が起きています。そんな状況でなにをすべきか。わたしたちは自分自身で舵を取らなければいけません。つまり、自ら録音をリリースする。われわれは自分たちで責任を担うことに決めたのです」「今後音楽はデジタル・コンサートホールに見られるように、どんどんネット経由になるでしょう。映画をオンデマンドで見るのが普通になったように」
●かつてのレコード会社の会見などでは、あたかもインターネットがこの世に存在しないかのようにふるまわれることもなくはなかったが、ラトルのビデオメッセージからも伝わるように、ベルリン・フィルはきわめて現実的かつ未来志向だなということを強く感じさせる会見だった。CD、ブルーレイからハイレゾ・ダウンロード、果てはLPまで全部提供する。もちろん、それ以前に彼らの「デジタル・コンサート・ホール」があるわけで、単に聴きたい/見たい人は、もう何年も前から格安でデジタル・コンサート・ホールを楽しんでいるわけだ。パッケージ商品は単に聴きたい/見たい人以外のためのものになりつつある。たとえば超高品質であるとか、コレクターズアイテムとか、他人へのプレゼントとか、コンサートの記念品だとかといったように。
Disc: 2014年6月アーカイブ
June 4, 2014