●しばらく前に来日公演があったビシュコフ&チェコ・フィルのプログラムノートに、ビシュコフのインタビューが載っていた。この種のインタビューには珍しく、作品解釈についてあれこれ語っていて、チャイコフスキー「悲愴」の話がおもしろかった。
●ビシュコフは「悲愴」最大の秘密はフィナーレの意味だとして、初演を指揮して9日後に亡くなったチャイコフスキーの死因について、よく言われるコレラ説ではなく「自殺説がもっとも信憑性が高い」としている。自殺説はかつてニューグローヴ世界音楽大事典でも採用されていた時期があったが、最近はあまり耳にしない。まあ、どれも決定的な証拠を欠くだろうから、なんだってありうるのかもしれないが、その説を作品解釈の形で実践できるのが指揮者ならでは。ビシュコフはフィナーレを「死への抵抗」と解釈して、「死を受容したという一般的な解釈とは違った観点で臨む」と語っている。そんなの表現できるものなの?とも思うが、確かめたかったら彼らの録音を聴けばいいわけだ。
Disc: 2019年12月アーカイブ
December 5, 2019