●遡って30日夕方は、ベルリン・フィル・レコーディングスのオンライン記者会見。出席者はベルリン・フィルのソロ・チェロ奏者兼メディア代表のオラフ・マニンガー(右)とベルリン・フィル・レコーディングスのレーベル・マネージャーであるフェリックス・フォイステルの両氏。日本側からはキング・インターナショナルが司会進行し、音楽評論家の山田治生さんが代表質問するという形。少し変則的で、ベルリン・フィル・レコーディングスのおふたりと通訳の城所さん、日本側スタジオをそれぞれリモートでつないだ映像を、われわれはYouTubeの配信で見るという形。リモートのリモートというか、メタリモート会見みたいな感じでおもしろかった。視聴者は30数名ほど。
●テーマはこのたび新たにリリースされた、「キリル・ペトレンコ&ベルリン・フィル ファースト・エディション」。ベートーヴェンの交響曲第7番および第9番「合唱」、チャイコフスキーの交響曲第5番および第6番「悲愴」、フランツ・シュミットの交響曲第4番、ルーディ・シュテファンの一楽章の管弦楽のための音楽が収録されている。例によって、豪華パッケージによる重量感のあるBOXセットで、音楽CD、音声トラック&コンサート映像を収めたブルーレイ・ディスク、24bit/192kHzのハイレゾ音源をダウンロードするためのURLとパスワード、DCHの7日間無料チケットがセットになっている。
●マニンガー「ペトレンコはこれまでほとんどCDを録音してこなかった。だから今回の録音は貴重なもの。ペトレンコとの最初の録音でなにを世に問うべきかを熟考した結果、彼がベルリン・フィルでなにをしたいかを伝えるものにしようという答えが出た。われわれにとっても中核的なレパートリーであるベートーヴェン、ペトレンコのルーツを反映したチャイコフスキー、そして音楽をよく知っている日本の聴衆にとっても新鮮であろうシュミットとシュテファンという選曲になった。ペトレンコはわたしたちを自分の世界へと連れて行ってくれる音楽家。オープンでなにも隠さず、作品がどのような精神的な背景から生まれ、どのような物語を持っているかを示してくれる。それが頭でっかちではなくエモーションと結びついている点が、私たちをインスパイアする。ペトレンコとベルリン・フィルの間の化学反応が、これらの録音にはっきりと現れている」
●ベルリン・フィル・レコーディングスのタイトルはいつも美麗な装幀に目を奪われるが、今回のアートワークはローズマリー・トロッケルによるもの。マニンガー「日本のみなさんにはわかってもらえると思うが、私たちはこうした商品を作るときに、物として美しいもの、価値があるものを作りたいと思っている」
●今後のタイトルとしては年末にマーラーの交響曲全集が予定されている。といっても、以前のブルックナーの交響曲全集と同じように、曲ごとに指揮者が異なる形での全集。またペトレンコとの次のエディションについては、彼がとりあげるレパートリーから本当に良かったと思えるものをピックアップするということで、交響曲全集のような形ではなく、演奏会での録音を集めたモザイクのようなものになるという。さらには現在のウイルス禍について、「この数か月で学んだことはフレクシブルに考えるということ。これまでは数年間をかけてプランを立てていたが、今の状況ではそうはいかない。ペトレンコとすばらしい演奏が生まれたら、たとえば一枚だけであってもリリースする可能性もある。明日どうなるかわからないのだから、レーベルとしてもフレクシブルでなければならない」
Disc: 2020年11月アーカイブ
November 6, 2020