●「シンバルの出番が一回だけ」名曲といえば、なんといってもドヴォルザークの「新世界より」が有名だが、場合によっては、チャイコフスキーの交響曲第5番もそのひとつに挙げられるかもしれない。ジョージ・セルやメンゲルベルクの録音を聴くと、第4楽章のコーダで一発シンバルがジャーン!と鳴っている。「新世界より」でのシンバルが意味ありげに(おそらくは鉄道的な文脈で)、やや控えめに鳴らされるのに対して、こちらは堂々たるクライマックスの一撃。で、これは昔の巨匠が演奏効果を狙って勝手に作り出した演奏習慣かと思いきや、そう単純な話でもないようだ。このシンバルはチャイコフスキー本人の意図を反映したものという見解があって、Breitkopf & HärtelのChristoph Flamm校訂のスコアにはad libitum(随意に)ながらシンバルが入っているという。えっ、そうなの?と思ってサイト上の見本を見てみたら、たしかに楽器編成にシンバルが含まれている(続く序文に説明あり)。
●出版譜として出たとなると、現代の指揮者にもシンバルを採用する人が出てきそうなものだが、最近の録音に例はあるんだろうか。録音で聴いた限りは「蛇足」とも感じるが、いったん慣れると「ないと物足りない」になるのかも。Spotifyで聴ける人は、以下のトラックで効果を確かめるのが吉(10分半くらいからどうぞ)。
Disc: 2021年1月アーカイブ
January 29, 2021