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Disc: 2021年9月アーカイブ

September 15, 2021

ヴィキングル・オラフソンの「モーツァルト&コンテンポラリーズ」

●ヴィキングル・オラフソンの最新アルバム「モーツァルト&コンテンポラリーズ」を聴いた。タイトルだけ見ると、モーツァルトと現代音楽を組み合わせたのかな?と誤解しそうになるが、そうではなく、「モーツァルトとその同時代の作品」という意味。モーツァルトのピアノ・ソナタ第14番ハ短調やロンド、アダージョなどの小品に、ガルッピ、チマローザ、C.P.E.バッハ、ハイドンの作品が加わっている。オラフソンのコンセプトは個々の作品をただ並列するのではなく、アルバム全体としてひとつの作品にするというもの。「編集」的な視点による再創造というか。オラフソン自身は「私の他のアルバムと同様、コラージュ作品」と言っている。
●で、特に目をひいたのはモーツァルトの幻想曲ニ短調 K.397。この曲は厳密には未完成の作品で、ニ長調のコーダの最後の10小節が他人による補筆だと知られている。でも、そのあたりは気にせずに、モーツァルトの作品として演奏されるのが一般的。この補筆がイマイチだと思う人は多いようで(内田光子の録音でも一工夫してあった)、オラフソンは失敗作と切り捨てている。で、短調のセクションで演奏を終わらせ、代わりにニ長調のロンド K.485をつなげて弾いている。他人の手が入ったニ長調のコーダをつなげるくらいなら、モーツァルト真作のニ長調をつなげたほうがいいだろうという発想で、おもしろい(先例があるのかどうかは知らない)。しかもこの幻想曲ニ短調に先立って置かれているのが、チマローザ~オラフソン編のソナタ第42番ニ短調。これはかなりオラフソンが原曲に手を入れているらしいのだが、モーツァルトの幻想曲ニ短調の序奏に同じ雰囲気でつながる趣向になっていて、トータルで3部作みたいな連なりができている。
●「モーツァルト&コンテンポラリーズ」と銘打っておいて、ガルッピの曲からスタートするのも味わい深い。




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