●2011年2月にすみだトリフォニーホールで開催されたフランス・ブリュッヘンと新日本フィルの「ベートーヴェン・プロジェクト」のライブ録音が「ベートーヴェン交響曲全集」としてCD化された。当時のプログラムノートに寄せた小さな拙稿が解説書に転載されている。このシリーズは記憶に残るコンサートだった。当時の新日フィルはブリュッヘンやハーディングやメッツマッハーらを呼んで、かなり尖がった活動をしていたっけ……。今とはずいぶん楽団のカラーが異なる。ブリュッヘンとの活動がこうして録音で残ることになったのはありがたいこと。
●ひとまず、気になるところだけをいくつかピックアップして聴いてみたが、なんとも生々しく、懐かしい。「英雄」冒頭、お客さんの拍手がまだ続いているなかで、いきなりブリュッヘンは意表を突いて振り始めたんだけど、その様子もそのまま収録されている。あれは、ゆっくりゆっくり指揮台に向かって歩いてきて、椅子に腰かけるのかなと思わせておいて、座らずにシュッ!って腕を振ったから、拍手と重なったんすよね。絶対に拍手に被せるっていう決意を感じた。そして、始まった「英雄」の巨大なこと。
●荒れ地のような寂しげな「田園」も思い出深い。律義なノンヴィブラート。ブリュッヘンの手のひらの大きさ。2011年2月、大地震の前月のことだった。
Disc: 2022年6月アーカイブ
June 16, 2022
ブリュッヘン指揮新日本フィルのベートーヴェン交響曲全集 CD
June 6, 2022
エンリコ・オノフリ&イマジナリウム・アンサンブルの「自然の中へ ヴィヴァルディ『四季』と母なる大地の様々な音色たち」 CD
●エンリコ・オノフリとイマジナリウム・アンサンブルの新譜「INTO NATURE 自然の中へ ヴィヴァルディ『四季』と母なる大地の様々な音色たち」を聴く。配信ではなくCDで。これはすばらしい。今までさんざんいろいろなスタイルの「四季」を聴いてきたつもりだったけど、まだこの曲をこんなにも新鮮な気持ちで聴けるとは。そして恐るべき完成度。ワクワクした。
●選曲がおもしろくて、ヴィヴァルディの「四季」に至るまでのストーリー性があって、ジャヌカン「鳥の歌」(編曲)、ウッチェリーニ「異種混淆 雄鶏とカッコウによる麗しき奏楽」、パジーノ「様々な野の動物の鳴き声を模倣して」など、鳥や動物たちの描写的な音楽から始まる。たっぷりと豊かな「四季」前史を味わった末に、ヴィヴァルディがやってくる。ここでふんわりと柔らかく「四季」が開始される瞬間が鳥肌もの。なんという暖かさ。オノフリ自身の解説によれば、楽器編成はル・セーヌ版に従っているということで、通奏低音にオルガン(「秋」のみチェンバロ)が用いられている。このオルガンが非常に効果的で、ときに幻想的で、ときに重厚。全体に柔らかさと鋭さがバランスした成熟した「四季」だと感じる。
●あと「春」第2楽章のヴィオラ犬がかつてないほど犬。