●一昨日のフリードリヒ・グルダのテレビ放映の件、再び。あのアンコールのシーン、ワタシのなかでテレビによる記憶なんだか、伝聞から生まれた偽記憶なのかが判然としないと書いた。で、音楽評論家の山田治生さんも、コンサートを見ていないのに(←生でもテレビでも)、あのシーンでグルダが「何が聴きたいんだい?」と客席に質問するのがわかっていたそうである。
●山田さんの場合は、「音楽の友」の特集「コンサート・ベストテン」で、朝日新聞記者の前田さんがそのシーンについて書いていたから、記憶が生成されていたんじゃないかという。「へー、そんな記事があったっけ」と思ってギクリ。グルダの来日っていつだ? 93年だ。ってことは、その「音楽の友」の記事は94年2月号に掲載されていることになる……。あ、ひょっとして、その記事の編集担当はワタシなんじゃないか、もしかして(笑)。うーん、でも10年近くも昔だからよく分からん、でも記事に覚えがあるような、ないような。そして前田氏の記事も読んでいるような、いないような。
●ってことは、ワタシの記憶も前田氏の記事から生み出された偽記憶かもしれんってこったな。やれやれ。ほとんど「ブレードランナー」の世界ではないか、こりゃ。(07/03)
News: 2003年7月アーカイブ
July 3, 2003
フリードリヒ・グルダon TV [2]
July 1, 2003
フリードリヒ・グルダon TV [1]
●観たですか>日曜日の夜、NHKで放映していたフリードリヒ・グルダの演奏会。いやあ、すごかったなあ、なんてスゴい才能だったんだろう……と言いたくてしょうがないんだが、実はワタシは見逃した(涙)。でもすごかったでしょ>見た人。これ、過去の映像だから再放送なんだろうけど、グルダ熱が再燃するんじゃないか。NHK(地上波)の影響力ってのは凄まじいから。
●ワタシは完全に見逃したわけじゃなくて、テレビをつけたらアンコールの場面だったのだ。グルダが舞台に出てきて客席に向かって「何を聴きたい?」って尋ねる。ちょっと客席に逡巡があった後、だれかが「アリア!」って叫ぶ。グルダがにっこりとして「僕の書いたアリアでいいんだよね?」って言いながら、お気に入りの自作「アリア」を弾く。くー、カッコよすぎだ、この爺さん。
●で、ワタシはこのコンサートをナマでは見ていないが、一連のグルダと客席のやりとりにははっきりと覚えがある。以前にテレビ放映されたのを観たのかとも思ったのだが、しかし他の場面の記憶がまったくない。ひょっとしたら聴きに行った人から話で聞いただけなのかもしれない。しかし伝聞だけで記憶って生成されるものか? このオチは「前回放映時も見逃しててアンコールしか観ていない」だったりして(笑)。
●それにしても「アリア!」って客が叫ぶのはできすぎだよなあ。一般のお客さんだったのか、サクラだったのか。ワタシは仮にこれがサクラだったとしても、まったく感動の質に変わりはないと思うし、むしろ正しい演出として敬意を抱くほうである。あそこでつまらないリクエストをする空気の読めないお客がいたらイヤだもん。(07/01)