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News: 2006年5月アーカイブ

May 21, 2006

「ワリー」のアリア、「ディーバ」の主人公

●休日に遅い朝メシ食いながら無線LANのノートPCで、 New York Philharmonic This Week のゲオルギュー&マゼールの公演をぼんやり聴く。あー、テクノロジーと音楽ってこんな感じでつながるとプチ幸せ感を醸し出してくれるのだなあ、と詠嘆。
ディーバ●で、このコンサートでカタラーニの「ワリー」のアリア「さようなら、ふるさとの家よ」が歌われていた。この曲を聴くといつも感極まって鳥ハダが立ちそうになるのはワタシだけなんだろか。出会いはかなり遡るが、よく覚えている。映画監督ジャン=ジャック・ベネックスの第1作「ディーバ」ではじめて聴いた。多感な時期だったので、音楽にも映像にも強い印象が残っている。
●この映画の主人公は世界最高のオペラ歌手を熱烈に崇拝する郵便配達の少年(いや青年くらいか)。音楽好きの若い男のコだったら必ず共感してしまう。歌姫(ディーバ)はコンサートでは歌うけど、決して録音は残さないというポリシーを持っている。しかし青年はどうしても彼女の歌声を自分の傍らに置きたく、リサイタルにこっそりテープレコーダー(昔のでっかいヤツ)を持ち込んで隠し録りをする……。パリを舞台に、とてもスタイリッシュな映像とスリリングなストーリーが展開され、「ワリー」のアリアが実に効果的に使われていた。ああ、美しい。
●「録音は残さない主義」っていうとリアル・クラシック音楽界ではチェリビダッケを思い出す、やっぱり。若きクラヲタがチェリを崇拝するあまり、来日コンサートでこっそりテレコを持ち込んで録音する……。ん、なんだか同じことしてるのに美しくならないぞ、この場合。なにが違うんだろ?
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●音楽配信サイト MaXMuse - クラシックにて、サッカー・クラシック楽曲特集掲載中!

May 7, 2006

祭りの後で~「熱狂の日」音楽祭

東京国際フォーラム。でけえ。●「熱狂の日」音楽祭~ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン、終了。公式レポート・ブログのほうは、最終日公演終了後もいくつか記事が追加されているので、よろしければ余韻をお楽しみください。
●結局、4日間、ワタシは上記公式レポート・ブログを作るために、朝から終電間際までずっと国際フォーラムとその周辺にいたことになる。演奏会のほうは最終日は一公演も聴かなかった。爆睡確実だったので、ムリ。カリユステ、評判よかったので聴きたかったけど、夜遅くてもう体力が……。
●場内にモーツァルトの扮装をしたお兄さんがいたじゃないですか。4日間ずっと見てたから思うんだけど、ホントに偉い、彼は。疲れを見せず、テンションを落とさず、ずーっと会う人会う人に愛想を振りまく。カーニバルのピエロと同じ。お客さんのほうはピエロがおもしろいことを言うたびに大ウケするんだが、実際にはピエロの仕事とは決まったギャグをルーティーンで反復することであって、それをさもその場で思いついたかのようにやっている。こういう「人を喜ばしてやろう」っていう情熱は、プロフェッショナリズムの一語で片付けられない気がする。
●もし自分が客の立場で、モーツァルトのギャグを見て「それなら昨日も見た、もうおもしろくない」と感じたとき、たぶんワタシは1ポイントを失っている。そのギャグは既知だから笑わないという人間を日々満足させられるピエロはいない。
前のエントリーで書いてたエンリコ・オノフリ指揮ディヴィノ・ソスピロだって、ワタシは初めて聴いたから衝撃を受けたけど、何度も聴けばきっと手の内が知れてくる。事実この音楽祭でも彼らの側は3公演も40番をやっているし、過激な解釈であっても音楽家のほうは様式化してルーティーンに収めているから日々同じように繰り返し演奏できる。彼らのような音楽を聴いて「最初はびっくりしたけど、もう先が読める」とか「アーノンクールを知ったときの驚きはない」と感じたとしたら、そのときワタシは1ポイントを失う。多くを「なんだ、それなら知っている」に収めてしまう方法論は、効率よく失点を積み上げる行為にほかならないな、というのがこの音楽祭が終わっての感想。って全然ラ・フォル・ジュルネと関係ないか。でも「熱狂」って、せっせとポイントを失うことに励んでいると、なかなか訪れてくれないじゃないっすか。

May 5, 2006

「熱狂の日」音楽祭その1、その2、その3

「熱狂の日」音楽祭●「熱狂の日」音楽祭~ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンへ。朝から晩まで国際フォーラムとその周辺に常駐、公式レポート・ブログを更新していたのであった。5人のチームで昼の間はほとんど30分と空けずに記事が投稿されるという賑やかさ。しかしこのペースであと3日間続くんだろか。
●いやあ、それにしてもウワサにたがわぬ盛況ぶり。みんな頭のてっぺんから足のつま先までモーツァルト漬け。まさにクラシック音楽のお祭り。今年は去年に比べて前売りでチケットゲットした方が多かったからだと思うけど、当日券売り場はスムーズだったんじゃないだろか。本日の模様はぜひ、公式レポート・ブログへ。
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●横着して二日目以降も同じエントリーで済ませてしまおう。
●オフィシャルな話題は公式ブログのほうに書いちゃってるから、後は個人的なネタ。一日つめてる割にはコンサートはほんのわずかしか聴けてないのだが、大当たりがひとつ。エンリコ・オノフリ指揮のディヴィノ・ソスピロっていうポルトガルのバロック・アンサンブル。あまりの斬新さに唖然。エンリコ・オノフリはイル・ジャルディーノ・アルモニコの中の人なので、イル・ジャルディーノ・アルモニコのノリそのものによるモーツァルトって言って差し支えないと思う(これってネタバレ?)。40番のシンフォニーやったんだけど、始まる前の棒の構え方からして「あれっ。ひょっとして違う曲やるの?」って心配になるくらい、なんか違ってる。今後すっごく人気出るんだろなあ。
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●そして3日目。5月5日こどもの日。NHKの生中継が入っていて、タレントさんとかいたですよ。パックンマックンとか大人気。君はパックン派、それともマックン派?
●屋台のドネル・ケバブやってるトルコ人(?)のオジサンたちって、みんなすごく腕っ節強そうじゃないですか。で、あそこのドネル・ケバブって肉がチキンなんすけど、チキンってどうなのか。ビーフ、食いたいんすけど。って、あの強そうなオジサンにいえないワタシはチキン。

May 2, 2006

黄金週間は早寝早起が目標

●いよいよラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン「熱狂の日」音楽祭 2006開幕。ワタシは3日~6日まで、国際フォーラムに詰めてます。山尾敦史さんに誘われ、公式サイトで「ほぼリアルタイムレポート」期間限定ブログを制作するのだ。5月3日午前9時から公開予定、開いたら公式サイトのほか、ここからもご案内します。早起きしなきゃ……。→ 「熱狂の日音楽祭」公式レポート/ へ。
●シカゴ交響楽団の首席指揮者に06/07シーズンよりベルナルト・ハイティンクが就任(CSO Press Releases)。おお、バレンボイムの後任はハイティンクなのか!と思ったが、よく見るとハイティンクは首席指揮者 principal conductor というポジションで、音楽監督 music director 探しは今後も続くということのようである。

May 1, 2006

マイケル・ナイマン・バンドと「エレンディラ」

●この6月、英国よりマイケル・ナイマン・バンドが来日、東京と大阪で公演を行う(詳細:マイケル・ナイマン・バンド コンサート2006@ホリプロ)。映画「ピアノ・レッスン」や、一連のピーター・グリーナウェイ監督作品(「プロスペローの本」とか「英国式庭園殺人事件」とか)で知られるマイケル・ナイマン、日本との縁も深く、かつてはトヨタ・クラウンのCMだとか、セガサターンのゲーム「エネミーゼロ」の音楽でも話題になったっけ。
●で、今回、旧作に加えて意外な曲を世界初演してくれる。タイトルは「エレンディラ」。以前、当欄でもご紹介した、あのガルシア・マルケスの「エレンディラ」が題材である。蜷川幸雄演出の舞台「エレンディラ」の音楽をマイケル・ナイマンが担当、公演に先駆けて音楽を来日コンサートで演奏するという。
エレンディラ●クールなナイマンの音楽と幻想的なガルシア・マルケス文学とはずいぶん異質な組み合わせ。短篇「エレンディラ」の題は本当はこんな長い題だ。「無垢なエレンディラと無情な祖母の信じがたい悲惨の物語」。孫娘エレンディラに、ある晩、不運な風が吹く。風はエレンディラの置いた燭台をカーテンへ蹴倒す。屋敷は燃えてしまう。祖母はその日からエレンディラに償いをさせる。来る日も来る日もエレンディラは春を売り、砂漠中の男たちが毎日長い行列をエレンディラのベッドに作る。祖母は金箱を破るほど稼ぐ。ある日、若い男がエレンディラに恋をするが……という物語。怪物的な老婆の禍々しさが凄まじく、ガルシア・マルケス作品では「族長の秋」を連想させる。
●ちなみにクラヲタ的に「族長の秋」にはツボに来るモチーフがある。政敵たちをブルックナーの音楽が鳴り響く建物に閉じ込め死の拷問を味わわせるのだ。

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