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News: 2007年3月アーカイブ

March 22, 2007

レッツゴー!クラヲくん2007 レコード店編

●連続不条理ドラマ「レッツゴー!クラヲくん」第10回

クラヲ at 夕ウーレコード中野店


「お、お客様、お止めください、ほかのお客様が怖がりますので!」


 

March 11, 2007

ブリテン「アルバート・ヘリング」@新国立劇場

まあこの絵は関係ないんだけど●「ブリテンの音楽は本当は得意じゃないんだけど、これを逃すとこの作品を見る機会もないだろうから」くらいの気分で出かけたのだが許せ。作品、演出、演奏、あらゆる面で期待をはるかに超えた公演で、ラスト・シーンにはウルウルと来るものあり。ブリテン「アルバート・ヘリング」@新国立劇場オペラ研修所研修公演。9日(金)、タイトルロールが中川正崇のほうのキャスト(8日、10日だと助っ人?のイアン・ペイトン)。
●「アルバート・ヘリング」がどういう話か、一言でいえば上流階級版教養小説みたいなものであって、ドラクエや桃太郎や指輪物語と同じように、主人公の少年が町を出て旅することで大人になるという話。舞台はイギリスの田舎の小村ロックフォード。ここでは毎年5月に村を代表する娘を「5月の女王」として選出する。その選出基準は? 美しさでもなければ賢さでもない。それは貞節と純潔。ビロウズ令夫人に言わせれば村の娘たちは誰一人として女王の資格がない。「あの娘は男友達と森に出かけたから、邪淫の虜になっている」といったモラルを振りかざす夫人にとって、もはやロックフォードは淫欲と飲酒と賭事で堕落した人々の村なのだ。
●もうまともな娘はいないから、今年は男を選んで「5月の王」にしようという話になる。街のフツーの若者たちは、男も女もフツーに若者らしく人生を謳歌しているんだけど、一人、純潔な存在がいる。それが八百屋の息子アルバート・ヘリング。アルバート・ヘリングは働き者で好ましい。少々トロいんだけど、女友達も一人もいないし、酒も賭け事もやらない。彼は厳格な母親にきちんと管理されており、恋人も賭けも酒もダンスも全部禁じられているのだ。このあたりからして相当これは可笑しい話なんである。ビロウズ夫人のように極端な道徳水準を要求すると、自然とそれを満たせるのは、無垢というよりは、ヒキコモリ的未熟さにとどまる社会性のない若者ということになってしまう。アルバート・ヘリングは「5月の王」として、その純潔を称えられ、賞金25ポンドを手にする。これはそこそこの金額なのだ。
(以下、筋を割ります。古典だからいいと思うんだけど、万一ネタバレがヤだという人はここでおしまい)
●もしこれがハリウッド映画だったら、異常なまでに厳格な母親に育てられた若者は、大きくなったら猟奇的連続殺人犯になったりするわけなんだけど(笑)、ブリテンのオペラではそうはならない。そしてすばらしく冴えた物語になる。
●アルバート・ヘリングは「5月の王」の式典で、悪いお友達からレモネードにお酒を入れるっていう悪戯をされちゃう。アルバートは酔っ払って考える。「ボクの人生、このままでいいのかなあ。財布に25ポンドがある。村を出て自分の人生を歩もうか、それとも母親のもとでこれまで通り暮らそうか」。夜、アルバートはコインを投げて決める。
●翌日、村からアルバートが消えたことで大騒ぎになる。行方不明だ、死んだのか。帽子が落ちている。皆が追悼の挽歌を捧げる(笑。若い男が一晩帰ってこないってだけで!)。そこにアルバートがひょっこりと帰ってくる。なにをしていたかと問い詰められて答える。お金がたくさんあったから、あんなことやこんなことに使いましたよ、楽しかった、でも自分の村はやっぱりいいよね。母親もビロウズ夫人も怒り心頭。アルバートは村を出て、大人になって帰ってきたのだ……。
●と紹介すると、アルバートはオトナの遊びを覚えて帰ってきたから成長したのか、と勘違いされるかもしれない。そうではない。音楽的にも物語的にもクライマックスはそのアルバートの帰還に続く、小さな最後の場面にある。母親やビロウズ夫人たちが去った後、アルバートを子供たちや若者が囲む。アルバートは店の商品である桃の入った木箱を担いできて、こう言う。「さあ、みんなで桃を食べようぜ。これはオレのおごりだ」(!)。これって鋭くない? 桃の原資は「5月の王」の賞金の残りだろう。つまり、この物語はこう言っている。「大人になること、それは贈与の応酬である」と。ドラクエなら大ボスを打倒してクライマックスとなるところが、「アルバート・ヘリング」はビロウズ夫人からもらった賞金をみんなに桃として分配するという場面がクライマックス(笑)。ちゃんと伏線も張ってあった。村を出て、街でいろんな体験をして、経験値をためてレベルアップした結果、アルバート・ヘリングは半ヒキから共同体の一員になったともいえる。
●この作品はグラインドボーン音楽祭のために書き下ろされた。丘陵地帯にある裕福な地主ジョン・クリスティが、自分の奥さんのためにカントリー・ハウスの庭に小劇場を建てたことではじまった音楽祭である。ブリテンのこの風刺が効いたオペラに対して観客は熱狂したが、ジョン・クリスティは眉をひそめたという。いいっすな。
●演出はデイヴィッド・エドワーズ。細部まで凝っていて、アイディア豊富、手際鮮やか、予算よりも知恵上等という印象。あと歌手陣が研修公演だからリアル若者が多いんだけど、それが物語と合致していてとてもよかった。というか気がついたんだけど、若者ってすべてにおいて動きがシャープだ(笑)。自分もそうなったからわかるけど、ほんのちょっとした動作でも40歳以上の人間は動きが「もっさり」している。もっさり小走り、もっさり座り、もっさり立ち上がる。だからオペラの舞台は標準的に「もっさり」してて、それにすっかり慣れきってた。でもこの舞台だと歌手も役者もみんな体にキレがある(マジで驚くよ)。それって舞台(ともしかしたら音楽も)の印象を決定的に変えてしまうくらいの大事なんだなと。
●あと、シーズンオフにやってくるロナウジーニョがいるバルセロナの花試合よりも、J2の小クラブの昇格争いのほうが全然おもしろいっていう、サッカー経験則を思い出した。
●本日にもう一公演残ってます。

March 8, 2007

「さまよえるオランダ人」@新国立劇場

このエントリー、とりとめもなく長くてスマソ●すっごくおっそろしげな人、偉くて怖い感じの人っているじゃないですか。パワフルで、圧倒的な存在感があって、その人の前に出ると自分が卑小な存在であると感じてしまうような。ところがそういう人の若い頃の写真とか見ると、まだまだカワイイっぽい、あどけなさが残ってたりして、なーんだ、案外フレンドリー?みたいになったりとか、あるでしょ。それが「さまよえるオランダ人」。この人、将来には聖杯がどうとか神々がどうとか愛の死がどうとか言い出して大変なことになるんだけど、まだこの時点では規格内、みたいな。
●神罰を受けて幽霊船で彷徨する船長は不老不死、7年ごとに陸に上がって永遠の愛を誓ってくれる女性を探す、船は沈まないどころか空も飛べちゃう、船倉には金銀財宝ザックザクといったわけで、「さまよえるオランダ人」生活も案外悪くないんじゃないかって気も一瞬するのだが、やっぱり帰るべき故郷もなく未来永劫孤独な旅を続けるというのは呪いだ。求む、魂の救済。
●さまよえるオランダ人、すなわちFlying Dutchmanと英語で書かれると、サッカー・ファンは空飛ぶオランダ人、ヨハン・クライフを想起する。でもその空飛ぶようなジャンピング・ボレーをワタシは見ていないんだな。選手としてはリアルタイムで知らないから。クライフってもう監督だったし。ちなみにヨハン・クライフのイニシャルがJ.C.でイエス・キリストと同じってのはよく言われることだけど、息子でサッカー選手だったジョルディ・クライフも同じくJ.C.っすね。ワーグナーのオペラに登場するオランダ人にはフルネームはあるのだろうか。
●で、昨日の公演。すばらしく堪能。歌手陣が見事で(歌手のことはワタシの守備範囲外だけど)、ゼンタ(アニヤ・カンペ)が超強力。オランダ人(ユハ・ウーシタロ)、ダーラント(松位浩)、エリック(エンドリック・ヴォトリッヒ)も満足。序曲では軽く心配になったが、ミヒャエル・ボーダー指揮東響も良かった。最近の新国では一番楽しかったかも。で、音楽的には素直に喜ぶとして、ある意味強烈だったのがマティアス・フォン・シュテークマンの演出!
●すっごいツボに来たところがあって、まあもうネタバレしてもいいかなと思うので書いちゃうんだけど、1幕の終わりのところだったかな、水夫たちが正面を向いて不自然なくらいに整然と並ぶんすよ。で、なにかなと思ったら、各々のシャツに描いてある絵がつながって、船の舳先の一枚絵になってる!(笑) お、おもしろすぎる。シャツっていうよりトレーナーみたいな感じか。ひょっとしてシャツの柄で「パラパラマンガ」とかやりだすんじゃないかと本気で期待したくなる。一般にオペラの演出って、どこまでがウケ狙いでどこまでがシリアスなのかよくわからなくて心配になるんだけど、これはきっと悪ノリ気味のサービス……たぶん。なんか水夫の踊りのベタさかげんとかもスゴかった。
●あと最後の場面、これはシリアスなんだろうけど、ゼンタが一人で幽霊船に乗っちゃう。オランダ人は陸にいる。あれ、ゼンタは身投げしないの? 船と一緒に沈んだってこと? どうもよくわからなかったんだけど、もしかしてこれから「さまよえるゼンタ」の物語がはじまって、オランダ人は陸で7年間ゼンタの帰りを待つのでしょうか(なわけない)。
●作品としての「さまよえるオランダ人」について。落ち着かないのはエリックっていう存在っすね。物語上、噛ませ犬みたいな役割を一方的に負っていて、共感のしようがない。ゼンタとの前史とか、オランダ人の正夢だとかが、常にセリフで後追い的に歌われるだけなのがまた辛い。音楽面で一番楽しいのは後半の水夫たちの宴の場面で、幽霊船からの応答があるあたり。あと、今回は第1幕と第2幕&3幕の間に一回休憩が入る形で安堵。これ、全部通して一幕形式だったらワタシはパス。長すぎて生理現象面で耐えられないとか、それゆえに公演前に飲み食いしちゃダメとか、いろんな余計なことを気にしなきゃいけないから。映画も3時間とかあったりすると足が遠のく。そう考えると「2001年宇宙の旅」は長い映画でもないのに途中に「休憩」が入るから偉い(笑)。ラブ休憩。

March 6, 2007

その耳はモスキート級

●しばらく前から話題になっていた「モスキート着信音」、すなわち大人には聞こえない高周波音を使うガキども専用シークレットな着信音であるが、やはりというか早くもというべきか、日本でもケータイ着信音として配信が開始されたんである。さあ、存分に楽しんでくれ、若者たちよ。
●といいつつも、果たしてモスキート音がどれくらい自分の耳に聞こえるか気になるって方はここで確認可→ What is the mosquitone? ゴロウ日記さんでも紹介されていた。ただ、これ、ホントに合ってる? ワタシはヘッドフォンで聴くと「赤ちゃんと犬にしか聞こえない」はずの super mosquitoneまで聞こえる(液晶モニタ付属スピーカーではムリ。2番目までしか聞こえない)。ありえない。だって以前テレビで同様の企画をやっていたときは、モスキート音はまったく聞こえずわが身に起きている老化現象にショックを受けたんだから。周波数だけで決まるってわけじゃないのかも。
●モスキート音だけを使って、若者にしか聞こえない交響曲を作曲してみるというのはどうか。交響曲第一番「蚊」。
●さらに強まったモスキート音を使って、犬にしか聞こえない交響曲を作曲してみるというのはどうか。交響曲第二番「蚊と犬」。

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