●ルチアーノ・パヴァロッティ追悼~浄土宗大本山増上寺チャリティ野外公演というコンサートがあるそうだ。11月3日に崔岩光、中丸三千繪他が出演。で、このコンサートそのものには行かないんだけど、三部構成の公演の第1部に「パヴァロッティ秘蔵映像・幻の映画『イエス・ジョルジョ』」を上映するってあるんすよ! おお、これは見たいぞ。この映画、日本では未公開だと思うんだけど、マネージャーのハーバート・ブレスリンが書いた伝記「王様と私」でも大失敗作としてネタにされてて、かなり気になってた。
●パヴァロッティが売れまくって大スターになったから、ハリウッドで映画を撮ろうっていうことになる。パヴァロッティが俳優として主演する(歌もうたう)。しかもジャンルはラブコメっぽい。映画でのパヴァロッティの役柄は「オペラ歌手」だ(それ以外になにを演じろと?)。有名なオペラ歌手であるジョルジョはアメリカ・ツアーの最中に声を失う。で、喉の専門医である女医さんのところで診てもらって、二人は恋に落ちる。オペラ劇場の舞台でなら、パヴァロッティがロマンスやラブコメの主役を演じても誰も疑問に思わないだろうが、スクリーン上となるとどうなのか。
●Yes, Giorgioは1982年のラジー賞(ゴールデン・ラズベリー賞)のワースト主演男優賞(パヴァロッティ)、ワースト新人賞(パヴァロッティ)、ワースト脚本賞(ノーマン・スタインバーグ)の豪華三部門にノミネートされたが、惜しくも(?)受賞はならなかった。早稲田松竹か新文芸坐あたりで上映してくれないだろうか。
News: 2007年10月アーカイブ
幻のパヴァッロッティ主演映画「イエス・ジョルジョ」
着うたでイントロ当てクイズ
●長年超夜型生活を送ってきてるんだけど、日々の生活を朝型に移行できないものかと試行錯誤中。ていうか毎年一回くらいはそんなふうに思い立ってみるものの、猛速で挫折しているのであって、甘味爆食ダイエットみたいな狼少年かつ三日坊主な最弱チャレンジャー。えっ、来週から駅前のスーパーが24時間営業に? 悪魔の誘惑なのか。朝日を見たい、寝る前じゃなくて、起きてから。
●着メロサイト「音友クラシックコンサート」にて、着うたを利用したクラシック・イントロ当てクイズ実施中(月末まで)。初級・中級・上級と3ランクあり。初級はここ見てる人には呆れるほど簡単なので、中級・上級に挑むが吉。選択式なので比較的簡単なんだけど、上級あたりだとポツポツ落としちゃう人も少なくないかも。よろしければお試しを。ケータイサイトなので会員登録すると100円/月かかるけど、いつでも即退会できるのでお気軽にどぞ(その日のうちに退会しても最低100円はかかります)。
シェーンベルク「モーゼとアロン」@ベルリン国立歌劇場来日公演
●上野でバレンボイム/ベルリン国立歌劇場のシェーンベルク「モーゼとアロン」。今回3公演あるんすよ、「モーゼとアロン」だけで。ほとんど席は埋まっている。こんな来日オペラの公演が成立するってスゴいっすよね。どれだけ東京の聴衆がシェーンベルクを大好きかがわかる……。のか。
●人間ワザとは思えない合唱をはじめ、オーケストラもすばらしくて音楽的な充足度は大変高かった。もうライヴでこれ以上の水準の「モーゼとアロン」を聴く機会はないだろう。が、やっぱり舞台になると演出にどうしても目が行くわけで、しかもこれがかなり特異なんである。ペーター・ムスバッハ演出。もともと旧約聖書の「モーゼとアロン」があって、その上の層に微妙に異なるシェーンベルクの「モーゼとアロン」があって、さらにその上に全然違うムスバッハの「モーゼとアロン」があるっていう三層構造はなかなか手ごわい。ワタシはうまく咀嚼できなかった。以下ネタバレあり。
●登場人物は全員が黒スーツに黒サングラス、オールバックという「エージェント・スミス」スタイル。「マトリックス」の記憶は急速に古びているけど、この演出は2004年のプレミエだから、まだエージェント・スミスのインパクトはあったと思う。でも民衆だけじゃなくて、モーゼもアロンも若い娘も病人も裸の男も(裸じゃないじゃんそれ)全員エージェント・スミス。モーゼには言葉がない。だからアロンを代弁者にして民衆に語らせる。これをシェーンベルクはモーゼにはシュプレッヒシュティンメで発声させ、アロンには朗々と歌をうたわせるという形で表現している。モーゼのシュプレッヒシュティンメは民衆には通じないけど、アロンの歌なら通じるわけだ。でもアロンは求める民衆に抗しきれずに、モーゼの不在の間に戒律を破って偶像(金の子牛)を作ってしまう。これにより民衆は熱狂し、(モーゼから見れば)愚かしい放縦と狂乱へと駆られ、モーゼの逆鱗に触れる。と、いう筋に対して、この演出は「そうはいってもモーゼもアロンも民衆も全員エージェントスミスにすぎないよ」と頭から見せている。そうか、じゃあエージェントスミスってなんだっけ。彼らには実体がなく、個人としてのスミスはいない。そしてエージェントにすぎない。誰の? さあ、モーゼは神のエージェントかもしれんが、民衆はなあ……。
●と思っていたら、第2幕でスミスたちが「スターウォーズ」に出てくるライトセーバー状のものを持ち出してきた。これ、事前に写真で見てたから、きっと第2幕の騒ぎで民衆はこれでジェダイばりの殺し合いをするのだろうと思うじゃないっすか。ま、一瞬局所的にセイバーとして使われるものの、でも違ってた。全員、このライトセーバーを盲人の杖のように使う。床をトントン叩いて右往左往しながら歩く。ええっと驚く。きわどい。
●で、金の子牛は出てこなくて、代わりに頭部がもぎ取られた金の人型の像が出てきちゃう。これとフセイン政権崩壊の光景は、2007年のワタシには結びつかない。あと民衆がみんな小型のモニター状の光源を持ってきて、モーゼ一人がそのモニター状物体に囲まれて語るシーンがあったけど、あれってテレビ? テレビって言いたいなら、画面になんか映さないと伝わらない気がする。
●ていうか、全般にとても抽象化されているんである。第1幕のアロンが奇跡を起こす場面、杖が蛇になったり、病人が癒えたりとか、身振り手振りだけだし、第2幕の民衆の狂乱も、スミスたちが転がってうねったりするのみで、具体的な表現はほとんどない。
●カーテンコールで、みんなエージェントスミスで順々に出てくるってのは、「モンティパイソン」のネタとしてありうると思った(笑)。さすがにモーゼ(ジークフリート・フォーゲル)とアロン(トーマス・モーザー)は識別されたけど。最後にバレンボイムがスミスになっているというオチを一瞬期待してスマソ。
●ニッポンvsエジプト戦の翌日に「出エジプト」。いや、意味レス。
募集。秋のカルチャー・セミナー「クラシック音楽入門」
●えー、募集をひとつ。あれから一年……。昨年に引き続き、再び趣味のカルチャー・セミナーというものの講師(?)をします。11月29日(木)、18:30から、場所は六本木であります。話の内容はほぼ未定、しかし前回とは重複しないので、昨年ご参加いただいた方々も新規の方も、ぜひご参加ください。本質的にきわめてシャイな人間であるワタシとしては、人前でしゃべるというのはどうかと思うわけでありますが、ありがたくも「2度目の声がかかる」となれば期待に添えられるよう力を尽くさねばいかんなと、ダラダラと冷や汗をかきながらここで営業。お申し込みは以下から。前回はおかげさまで盛況でした。
よろしければ、ぜひ。
マラ9@バレンボイム指揮ベルリン・シュターツカペレ
●二日連続でバレンボイムを聴く。サントリーホールでダニエル・バレンボイム指揮ベルリン・シュターツカペレ、演目はマーラーの交響曲第9番。昨日の「トリスタンとイゾルデ」は休憩入れると5時間だか6時間だか、もう感覚的には半日聴いてたくらいのボリュームだったんすよ。それに比べるとマーラー9番は一瞬。もう、「あっ」と思ったらコンサート終わってる。休憩なし、1時間半。と、軽く光陰矢の如し感に浸ってみたが、実際にバレンボイムのテンポも速めだった。もともと自分がこの曲をカラヤンやバーンスタインで刷り込まれているからなんだろうけど、第4楽章なんか特に。でも第4楽章の例の鳥肌ポイントではちゃんと鳥肌立つ。このオケ、ホントにすばらしくて、弦楽器の深々とした響きを耳にして感じるのは、こんなオケがウチから半径100km圏内を本拠にしてくれたらなあ!という意味レスな羨望。猛速で定期会員になる。近頃ホームタウンベースで物事を見るのが脳内流行なので、「アウェイのクラブがホームスタジアムに来てくれるのだけを喜びとして生きていくのは寂しい」という命題を思い起こす。物欲しげな目線で舞台を眺める、ヨダレ垂らしながら。
●それにしても、二日続けて「死」っすよ。「トリスタンとイゾルデ」で愛と死、マーラーの9番でまた「死に絶えるように」だ。来週のシェーンベルクの「モーゼとアロン」はどんなオペラなんだっけ?まあクラシック音楽は「愛」と「死」なくして成立しないからしょうがないか。逆説的にこれだけ短期間にオペラとコンサートを次々こなすバレンボイムは鉄人。
●余韻を味わう曲だから大変すばらしいことであるが、サントリーホールのお客さんは最後の一音が鳴り終わってもだれ一人拍手をしなかった。昨日の「トリスタン」では終わって間髪いれずに失敗ブラボが入ってしまって惜しかったが、この日は完璧、そう思った。だれも拍手しない。バレンボイムが手を下ろした。まだだれも拍手をしない(笑)。5秒、10秒……。慌て気味の(?)バレンボイムが譜面台の楽譜を閉じて、ようやく拍手。お客さんはもっと余韻を楽しみたかったかもしれない。「指揮者が棒をおろしてから拍手しよう」ってのはよく言うけど、そのうち「指揮者はお客が拍手をはじめてから棒をおろすように」って言い出す人が出てくるに16777216マッカ。
「トリスタンとイゾルデ」ベルリン国立歌劇場
●NHKホールでバレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場来日公演、ワーグナー「トリスタンとイゾルデ」を。クリスティアン・フランツ(トリスタン)、ワルトラウト・マイヤー(イゾルデ)、ルネ・パペ(マルケ王)。ハリー・クプファー演出。豪華。
●少し前に20世紀フォックスの映画「トリスタンとイゾルデ」ってあったじゃないっすか。マークって呼ばれてるシブいオッサンがいて、誰かなあと思ったらマルケ王のことだったってヤツ(笑)。もちろんワーグナーの楽劇とは筋が少々違うんだけど、でもあれはあれでためになったかも。っていうのは、クラヲタ的には「トリスタンとイゾルデ」伝説ってワーグナーばっかりで知っちゃうわけだけど、このオペラにはプロットらしいプロットがない。幕が開いた時点で、実は話の大半はもう終わっている。どういう由来でトリスタンはイゾルデと出会ったのかといった前史はもっぱらセリフで説明されるだけで、オペラは大きな物語のクライマックスだけを拡大鏡で見せて丹念に描く。トリスタンがマルケ王に寄せていた主君への忠義がどのようなものであったかを、ワタシらは舞台上で目にすることはできない。だからそのあたりを視覚的に見せてくれるあの映画はそれなりによかったのかもな、と思ったんすよ。あ、映画そのものとしてはオススメしたいタイプじゃないんだけど。
●で、このハリー・クプファー演出は、トリスタンとマルケ王の関係を強調しているんだけど、そのあたりも「トリスタンとイゾルデ」という二人の短い関係よりも、「トリスタンとマルケ王」の二人の長い関係について、舞台に描かれていない物語を想起しながら見るとよく伝わってくる。トリスタンとマルケ王の愛、嫉妬、裏切り、赦し。フツーに「トリスタンとイゾルデ」を見ると、第3幕のマルケ王が唐突じゃないっすか。「媚薬ゆえのことと知ったので、お前を許す、トリスタンとイゾルデは結婚してオッケー」って言ってくれるんだけど、そんなので許されるなら第2幕まではなんだったのさ、どうしてブランゲーネはきちんとマルケ王に事情を説明してあげなかったんだよー的な疑問がわいて。今日、ワタシのなかでは、それはブランゲーネはトリスタンとマルケ王の愛を許せなかったからだと勝手に了解することにした。毒ではなく媚薬を飲ませたのも、そのため。事件の主犯はブランゲーネ。あと、クルヴェナルも怪しい男だとにらんでいるのだが、それはまた別の機会に。
●今後、どこかの製薬会社が媚薬を開発して市販することになったら、商品名はイゾルデ、ないしはブランゲーネだな。あ、毒薬と媚薬は違う色に着色しておいたほうが、安全管理上なにかとよいと思うぞ→イゾルデ母。
●舞台は簡潔で、3幕を通して中央にドーンと天使の像があって、それがぐるぐる回るスタイル。ただし天使は打ちひしがれ、地に伏している。大体こんな感じで。
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天使もいろいろと大変である、と(違うだろ)。地上に堕ちた天使ということなのか。
●終演後、もっとも盛大な拍手を受けていたのはルネ・パペ。オーケストラの響きもすばらしくて堪能。しばらく頭のなかで「愛の死」がグルグルとローテーション確実。でも一番好きなのは第3幕のド頭かな。ラブ夜の国、グッバイ昼の世界なほんの一瞬。
アジア オーケストラ ウィーク2007開催中
●アジア オーケストラ ウィーク 2007開催中。オペラシティでKBS交響楽団を聴いてきた。韓国を代表するオーケストラ。チャン・ユンスン指揮でショスタコーヴィチの交響曲第11番「1905年」、ピアノのキム・ソヌク独奏でショパンのピアノ協奏曲第1番、あとはお国ものアリラン由来のオーケストラ曲を。ショスタコの「1905年」はある程度覚悟していたけど、大変強烈な演奏で、終演後もしばらく鼓膜にショスタコ印がこびりついて取れなかった。ドンドン、ドドドン、テーハミングッ! あ、スマソ、これ、ショスタコじゃなかった。音楽だけじゃなくて韓国文化全般に感じることなんだけど、ある意味自分たち自身の鏡像を見ているかのような同質性を見て取り、一方で根源的なテンペラメントの違いを感じる。
●ワタシはこの一日だけなんだけど、この後、本日3日に中国の昆明交響楽団、4日にインド=スリランカ交響楽団の公演が続く。なかなかアジアのオーケストラを聴く機会はないので、ワールドカップよりアジアカップな方はどぞ。
●ショスタコを満喫、でもあまりに強靭な音楽を聴いてしまったので、帰宅すると正反対のものを聴いて、中和したくなる。ダウランドとかバードとか、作者不詳の17世紀の音楽だとか。これはカラムーチョ一袋を爆食したら、今度はガリガリ君ソーダ味を食べたくなるとか、そういうことなのであろうかいやなんか違う。
ウサワのテルミンmini、そして「村上春樹にご用心」
●学研の「大人の科学マガジンVol.17」、なんと付録があの「テルミン」なのである。予約して即ゲット。本日ようやく試してみたが、これはなかなか楽しい。もともと学研の「科学と学習」といえば、ワタシは「科学」派だ(なんの話かわからないあなたはきっと若者)。よくカブトエビ飼育セットとかラジオとか作ったよなあ……手先が不器用でことごとく失敗した気もするけど。
●それが大人になって再会してみたら最古の電子楽器「テルミン」である。ちゃんと音が出た。ヒュイ~ンと唸る。まずは練習。ドーレーミ~。次回更新のクラジャン@日経パソコンPC Onlineのネタにしてしまおう。オススメ。
●そうだ、先日ご紹介した新しい出版社アルテスパブリッシングの設立第1弾「村上春樹にご用心」(内田樹著)がついに発売されたのだった。スゴいっすよ。今見たら、Amazon.co.jp ランキング「本で74位」。あらゆる本のなかでのトップ100入り。bk1じゃ単行本総合4位に入ったっていうから、想像を絶する。発売前に重版決まったとか言ってたし。売れたら売れたでいろんなことが大変なんだろなーとは思うんだけど(出版流通の仕組みは難しい)、でもやっぱり売れるのが吉にはちがいないので、この後ビュンビュンと追い風に乗って全宇宙的大ベストセラーになることを祈る!