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News: 2008年3月アーカイブ

March 31, 2008

レーベル横断的な定額音楽配信サービスという現実的近々未来

●何日か経ってしまったが、最近のニュースで一瞬わが目を疑い、何度も読み返してしまったのがこれ。

iPodで聴き放題サービス 米アップル、有料で検討

●「音楽大手と交渉を進めている」というニュースであって、詳細はなにもわからない。でも定額を支払えば(仮に)現在iTunes Storeに載っている音楽を聴き放題になるとしたら、確実にワタシの(そしてワタシだけじゃなく)世界は大きく変わる。仮に新譜は発売から一定期間制限が付くとしてもインパクトはそう違わない。
●これまで音楽ファンは、最初は「自分のライブラリがない」というゼロ地点からスタートして、気に入った曲とかアーティストを買い揃えながら(そしてときどき発作的なジャケ買いしながら)、「自分の好きな音楽」という神秘の領域を徐々に形成してきた。でも定額サービスがあれば最初から古今のメジャーから中堅レーベルまで、ごっそり全部(とは言わないが大量に)手に入るんすよ。財力とかヒストリーとか無関係の開かれた地平。「1回だけ聴きてみたいな」という軽い好奇心も好きなだけ満たせる。極楽だなこりゃ。その一方で、そこまで恵まれた環境で、特定のアルバムやレーベル、アーティストへの理不尽な愛着みたいなものがこれまでと同じように生まれてくるかどうかも気になる。
●続いて、こういうニュースもある。

定額音楽サービスへ名乗り:ソニーBMGのCEO、独紙に語る

●一度動き出したらこういう流れは止まらなくなる、という予感。

March 26, 2008

桜が咲いたらカラヤン生誕100周年

●生誕100周年になんらかの記念行事がある指揮者や演奏家ってスゴいと思う。どうがんばったって、記念演奏会に本人は出て来れないわけだし(いやまだ健在で現役なら別だけど)。作曲家は作品が何百年でも残り得るけど、演奏家は記録物しか残せない。
●そう考えるとやっぱりカラヤンというのは例外的な存在だと思う。記録物でも(しかも既存のものでも)、まるで本人が生きてるみたいに雄弁に何かを語っている気がする。映像でイベントが成立する指揮者ってほかに存在するんだろうか。

カラヤン生誕100年記念
サントリーホール カラヤン・フィルム・フェスティバル

オズボーンのカラヤン●映画監督アンリ=ジョルジュ・クルーゾーとカラヤンの共同作業については、リチャード・オズボーンの『ヘルベルト・フォン・カラヤン』(白水社)にもあれこれ書かれていておもしろい(下巻のほう)。カラヤンのほうはクルーゾーに役者として使われる、つまり「カラヤンがカラヤンを演じる」ことになるのを危惧していたが、クルーゾーのほうはプロの俳優を嫌い、どんな素人からも名演技を引き出せると豪語していたという。この組み合わせはひとまず成功するわけだけど、ワタシらから見ると、ある意味「カラヤンはいつでもカラヤンを演じていた」ようにも見える。実際、メニューインとモーツァルトを共演したときは、先に録音しておいた音にあわせてカラヤン(とオーケストラ)は演奏しているふりをしなきゃいけなくなる。それって宇宙一本格派の「エア・コンダクター」じゃないか。しかもそれがカラヤンほど似合う人はいないだろうし、カラヤンほど嫌がった人もいないんじゃないかという気もする。
●もう一つ、こちらは音のほうの記念企画。衛星デジタルラジオのミュージックバードの「カラヤン伝説2008」。4月5日からスタート、目玉はオーストリア放送協会提供のライブ音源。高音質が売りの局なので、チューナー&アンテナが必要だけど、聴ける方はどうぞ。

March 7, 2008

不条理ドラマ「マノン・レスコー」

●もう20年以上も大昔なんだけど、ディーン・R・クーンツ「ベストセラー小説の書き方」を読んで(←そんなの読むなよっ)、いまだに覚えている「ベストセラーの条件」ってのがいくつかあって、そのひとつが「主人公は愚かであってはならない」。主要登場人物がバカすぎると読者は共感してくれない、と。いま一つピンと来なかったんだけど、クーンツは実際にベストセラー作家だから、そんなものかと記憶に残った。
プッチーニ●で、「METライブビューイング」で見てて思い出したんだけど、プッチーニの「マノン・レスコー」ってクーンツに叱られそうな脚本っすよね。マノンは愛よりもお金、というか、愛があれば富がほしくなるし、でもセレブ(ていうか愛妾か)になって愛を失うと愛のほうが大事に思えて、結局すべてを失う。まるで水面に映った骨をくわえた己の姿を見てワンと吠えた犬みたいな女子で、これは普遍のテーマだからいいとしても、デ・グリューまでいっしょになって愚かなのがやるせない。
●デ・グリューがどうして第4幕までマノンに誠実でいられるのかがわからない。いや、それ以上に途中でマノンのお兄さん(この人のやることは一から十まで動機不明で銀河最大の謎)が、大臣の屋敷でマノンに向かって言うじゃないですか。「実はデ・グリューはお前を助け出すために、いま一生懸命賭博に打ち込んでおる。この私が指南してやったからきっと大丈夫だよ、ワハハハハ」。って、それダメすぎじゃん!!  デ・グリューは努力の方向をまちがいすぎ。「麻雀放浪記」じゃないんだから。あなたドサ健気取りですか。そんな愚かすぎるデ・グリューが、愛に生きてムダ死にするから、ホント、第3幕以降は見てらんない。おい、どうしてお前さんまでアメリカに島流しになるんだよ! 落ち着け、デ・グリュー。
●でもなー。音楽的には最高なんですよ、「マノン・レスコー」は。アリアはみんなすばらしいし、ステキな間奏曲もあるし、第2幕の終わりのジェロンテが憲兵を呼んで来るあたりのスリリングな場面なんかも本当にドキドキする。
●第3幕の港のシーンは、マノンが娼婦としてフランスの植民地であるルイジアナに売り飛ばされるっていうことなんだけど、「罪を犯してアメリカに島流し」っていうのが今はなかなかわかりにくいよなー。きょうびアメリカから追放される人はいっぱいいるけど、アメリカに追放される人はなかなかいない。で、4幕で砂漠をトボトボと二人で歩いてて、いきなりもう衰弱して死ぬしかない状況に追い込まれていて、3幕と4幕の間に何が起きたのか全然わからん(また逃げたの?)。砂漠で水も食料もなく、地平線までなにもない。ある意味、もっとも見たくない陰惨な死の光景。で、なぜかここで同じくプッチーニの「西部の娘」のラストが勝手に脳内混信してきて、いつの間にかワタシの頭の中では「西部の娘」の二人、ミニーとジョンソンが砂漠の中の絶望的な逃避行をしていることになっている。
●今の商業映画だったら、第4幕はハッピーエンドに書き直せってプロデューサーから命じられるかもしれない。賛成しなくもない。ただ砂漠の真ん中で二人が救われるには、どんなプロットを用意すればいいのやら。クーンツ先生ならきっと超自然の力でなんとかしてくれるのかもしれないが。

March 6, 2008

METライブビューイング、その後

●そういえば、前にちらっとご紹介した「METライブビューイング」、先日「マノン・レスコー」を見てきた。やっぱりこういうのって、実際に体験してみないとダメっすね。最初は「えー、わざわざ録画を見るために劇場に足を運ぶのってなんだかな~」みたいな感じがしてたんだけど、行ってみるとこれが意外と楽しかったんである。幕間の映像とかよくできてるし、映像のクォリティはギョッとするほど鮮明。公式サイトを見てもわかるように、現在上映しているのはほとんどがシネコン。ワタシはMOVIX昭島に行ったんだけど、どこでも見かけるタイプのシネコンのチケット売り場があって、空席案内のところに「超劇場版ケロロ軍曹3」とか「ガチ☆ボーイ」とかと並んで「マノン・レスコー」がある。あ、そうか、これって映画なんだと思ったら腑に落ちた。
●映画館でオペラを見るってのは、体験として「新しい」のか「古い」のかさっぱりわからない。でも「自宅に立派なホームシアター作ってオペラを楽しもう」と全然思えない派の自分みたいな人間には、シネコンに行くってのが手っ取り早くて、娯楽としてもなじみ深い。
●幕間の映像がどんな感じだったかとか詳細は、改めて金曜更新の日経PCオンライン連載コラム「ネットエイジのクラシックジャンキー」にて。ちなみに現在掲載されている回は仮面ライダーキバの話題。週刊更新だから猛烈な勢いでネタが消費されてゆく。

March 1, 2008

カツラを脱いだバッハ

バッハ
●バッハの顔というとこんな漠然としたイメージが脳内に定着してるんだけど、なんと、遺骨をもとに法医学技術とCGを駆使して復元したバッハの顔というのが公開された→これがバッハの「本当の顔」? ドイツで公開。これ! カツラかぶってないよ!(そりゃそうだ)。そういえば、カツラかぶってないバッハって、見たことなかったよなあ。っていうか、このオジサン、どこかで見たことないですか。似てる、だれかにスゴく似てる。八百屋のオヤジだったか豆腐屋の兄ちゃんだったか、その辺で見た気がする。
●CGの復元段階図がこちら。だんだん進化してます、みたいな。左から順に名前をつけてみました。ガイコツ、サイボーグガイコツ、デビルバッハ、偽バッハ、大バッハ。中央のデビルバッハは人類征服企んでる悪の組織の中ボスくらいにいそうな感じ。
●若武者バッハってのも見てみたいっすね。勝手な想像だけど、細身の美青年で、長髪をなびかせるバッハとか。

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