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News: 2010年10月アーカイブ

October 28, 2010

YouTube シンフォニー オーケストラ 2011

マイケル・ティルソン・トーマス●おお、今年も「YouTubeシンフォニーオーケストラ」が結成されるのか! 動画投稿によるオーディションでメンバーを全世界から選考するという「YouTubeシンフォニーオーケストラ」(以下YTSO)、第1回となった昨年は4月にニューヨークのカーネギーホールで公演が開催された。で、今回の開催場所はシドニーである。あの(建築物としては)超有名なシドニー オペラ・ハウスで2011年3月に本番が行なわれる。指揮は今回もマイケル・ティルソン・トーマス(写真)。スゴいっすよね。
●もちろん、シドニーに行けるのはオーディション通過者のみ。10月12日(火)~11月28日(木)までが募集期間(もう始まってます)。プロアマ問わず。選考は著名オーケストラの団員が行なうという。最終的には96名ほどのオケが結成され、シドニーへの旅費・滞在費はYouTubeが負担してくれる。
●前回、日本人の参加者は3名。オーボエの長田浩一さん、マリンバの高藤摩紀さん、ピアノ&トイピアノの須藤英子さん。長田さんはメーカーに勤務するソフトウェア技術者。あとのお二方は音楽家。須藤さんは現代音楽を中心にピアニストおよびトイ・ピアニストとして活躍中。須藤さんのコメントを紹介しておこう。
「昨年のYTSOには、タン・ドゥンの曲を初演したくて参加しましたが、地球規模で集められたコンサートは初めてで、夢のような体験でした。これまで数々のオーディションを受けてきましたが、YTSOは自宅で撮影したのでリラックスしてオーディションに臨むことができました。YTSOに参加したことで、友人も広がり、目指す音楽が大きく変わりました。日本の皆さんも、ぜひ参加して地球の音楽を奏でて欲しいと思っています」

シドニーオペラ
THE SYDNEY OPERA HOUSE photo © JACK ATLEY

October 26, 2010

ニコラウス・アーノンクール記者会見

アーノンクール
●ホテルオークラでニコラウス・アーノンクール&ウィーン・コンツェントゥス・ムジクスの記者会見。今回が最後の来日公演であり、最後の海外ツアーと明言するアーノンクール。単独取材には応じていないということもあってか、記者会見には大勢が来場。写真左よりアーノンクール、通訳の井上さん、エルヴィン・オルトナー(アーノルト・シェーンベルク合唱団芸術監督)。写真には写ってないけど、ほかにアリス・アーノンクール、ミラン・トゥルコヴィッチが同席。
●今回の来日プログラムはバッハのミサ曲ロ短調、ハイドンの「天地創造」、モーツァルトの「ハフナー」交響曲+「ポストホルン・セレナード」。前二者は器楽と合唱のために書かれた西洋音楽におけるもっとも偉大な作品を演奏したいということで選択。ロ短調ミサのような作品は、アーノンクールとウィーン・コンツェントゥス・ムジクスにとってもめったに演奏する作品ではなく、新鮮な気持ちで臨みたい、と。「ポストホルン・セレナード」については、モーツァルトが友人との別れに際して書いた曲なので、日本へさよならを告げるための曲として選んだという。
●アーノンクールは終始穏やかな様子で、時折表情豊かに大きな身振りで話す。古楽について。「50年前は自分たちのようなアンサンブルは存在せず、これはわれわれが始めたムーヴメントである。当時は古い音楽はつまらなく演奏されていた。しかしミケランジェロやベルニーニとともに演奏されていた音楽がどうしてつまらないのでしょう。ベルニーニの彫刻のもとでコレッリの音楽がつまらなく演奏されていたはずがない。私たちは古楽を正しく演奏しようという探究心から出発したのではありません。古楽への情熱、その豊かなテンペラメントを表現したいという思いから生まれたのです」
●「スペシャリズムというのは危険です。私たちは古楽を演奏するときはスペシャリストかもしれませんが、ブラームスを演奏するときはそうではない。ある特定の時代だけに焦点を当てることは音楽全体に対する客観性を欠くことになります。古楽器の演奏家とモダン楽器の演奏家の接点も増えてきた。あと一世代が経てば、同じオーケストラが古楽器も演奏したり、あるいは現代音楽を演奏したりというように、形が変わってゆくでしょう」(以上大意)
●配布された公演プログラムに載っているインタビュー記事もおもしろい。音楽家個人としての充実振りがうかがえると同時に、世界に対する悲観主義的な見方が色濃く出ている。「今日のわれわれに音楽はなにを与えてくれるか?」という問いに、「個人に対しては人を成長させる力を持つが、人類全体に対しては無力だろう」といったように。

アーノンクール指揮ウィーン・コンツェントゥス・ムジクス公演icon(チケットぴあ)

October 19, 2010

オーストリア放送協会 ORF がアーカイブを設置!

オーストリア放送●ネットラジオ・ファンに超朗報! ORF(オーストリア放送協会)がついにアーカイブを置いてくれるようになった。現時点で確認したところでは一週間分、遡って聴くことができるようだ。ORF Ö1 Programm 一覧からアクセスして、番組名右脇にある再生ボタンアイコンをクリックすればOK。なお、右上の Themen の欄で Musik をクリックすれば音楽番組だけに表示を絞ることができる。
●さて、さっそく日曜日にあったウィーン・フィルの演奏会を聴かせてもらおう。例のサロネンがキャンセルした演奏会だ(17.10.2010のMatinee live)。ウィーンでの代役はコロンビアの若手アンドレス・オロスコ=エストラーダ。1977年生まれ、ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団の首席指揮者である、と。一曲目から序曲「静かな海と楽しい航海」で思い切りロマンティックなメンデルスゾーンを聴かせてくれる。ドヴォルザークの第7番は熱演。次々と元気な若者指揮者が飛び出してくるのだなあ。この名前、覚えておかねば、オロスコ=エストラーダ。
クラシックのネットラジオと音楽配信リンクにも反映させておいた。

October 18, 2010

ショパン・コンクール2010、いよいよファイナルへ

●現在ワルシャワで開催中のショパン・コンクール2010、現地18日から20日にかけてのファイナルには10名が残っている。今回は1stステージからライヴでのヴィデオ中継&現地FMによるインターネットラジオ中継があったので、関心があればずっと追いかけてウォッチすることも可能だった。ワタシはほんの一瞬しか見てないんだけど、ライヴ映像はリアルタイムだと回線が重くてカクカクになったりもするが、ラジオ(Polskie Radio Dwójka)のほうは問題なく聴くことができた。ファイナルはもっとアクセスが集中するだろうから、どうなるかはわからないが。
ヴィデオ・アーカイブもあるので、これまでの分も遡って観ることができる模様。
ファイナルに残った10名を見ると、意外にもアジアからの参加者はゼロ(前回は入賞者6人中、優勝者以外の5人全員がアジア勢だったかと)。ロシア勢が目立つ。
●なお、今回の優勝者は12月のN響定期Aプロでショパンの協奏曲をデュトワと共演することになっている。
●それにしてもショパン・コンクールに対する関心の強さっていうのは特別っすよね。ほかのどんなコンクールよりも桁違いに注目されている。ショパンしか弾かないのに。あの85年、ブーニン優勝の社会現象化とか、今にして思うと何が起きたんすかね……。
●おさらい。過去30年の優勝者は、ダン・タイソン(80)、ブーニン(85)、なし(90)、なし(95)、ユンディ・リ(00)、ブレハッチ(05)。

October 15, 2010

オーストラリア・バレエ団「白鳥の湖」

swan.jpg●そういえばオーストラリア・バレエ団の「白鳥の湖」を観てきたのだった(9日/東京文化会館)。バレエは門外漢なんだが、これはおもしろかった! 以下クラヲタ視点、ピント外れスマソ。
●えーと、バレエ界用語でなんと呼べばいいのかがわからないんだけど、これってオペラで言うところの「読み替え演出」だったんすよ。はっきりそう書いてあるわけじゃないんだけど、オデットが故ダイアナ妃で、王子がチャールズ皇太子っぽい。で、王子には愛人がいて、3人で踊って三角関係が描かれたりする(笑)。湖なんか出てこないし、オデットは白鳥ですらない。白鳥の姿をした人が登場するのは、2幕のサナトリウム(に、オデットが入院してる設定)で回想的な表現として描かれるところだけ(たぶん)。演出は(いや振付か)グレアム・マーフィー版と呼ばれていた。
●なるほど、オペラで演出家があれだけ作品を大胆に解釈しているのだから、同じことがバレエに起きていても不思議はないよな……と納得したのだが、あれれ、よく待て。オペラはセリフがあるから、一定の枠内での解釈となるが、バレエでは物語はもともと言語化されていない。だったら、同じ曲さえ使っていればどんな読み替えでも可能なんじゃないの? たとえば「白鳥の湖」の音楽を使って、そこにクリスマスにくるみ割り人形をプレゼントされた少女がお菓子の国に旅立つ物語をダンスで表現するということだって、やろうと思えば可能な気がするぞ(←バカすぎる)。
●中身がクラヲタなので、舞台に目を奪われつつも、意識の半分くらいはピットのほうに向いていた。うむむ。
●で、舞台上に登場するダンサーたちは驚異的に美しかった、前にも書いたけど、これが同じ人類なのだろうかと思うくらい。重力を感じさせない。これも何て呼ぶのかわからないんだけど、女子が(笑)男子に向かってスタスタスタと助走つけてダッシュして、相手の胸に飛び込んで受け止められるっていう様式化された動きがあるみたいで、あのダッシュがスゴいんすよ。すげえ加速で飛び込んでるはずなのに、受け止めるほうは羽根でも飛んできたかのように軽やかにキャッチ。あんなの、重い荷物で鍛えられた宅急便のお兄ちゃんだって受けられないと思うぜー。ワタシならよろけた挙句に転んでピットに落ちる。
●で、やっぱりダンサーの人たちは歌わない(そりゃそうだ)。あのダンサーの肉体を持ち、イゾルデとかヴィオレッタとかミミを歌える人は地球上に存在しないのだろうか。
●オーストラリア・バレエ団は今日から「くるみ割り人形」の公演があるみたい。こっちは観にいかないんだけど、やっぱり演出が凝っている。そもそもクリスマスが真夏だし(南半球だから事実そうなんだけど)、クララはもう婆さんになってて、若き日のバレリーナ時代を追憶する、みたいな枠組み。おもしろいこと考えるよなあ。

October 13, 2010

ウィーン・フィル来日公演、サロネンがキャンセル、ウェルザー=メストとプレートルが指揮

●ウィーン・フィル来日公演2010、噂通りサロネンがキャンセルとなってしまった。今回の日本ツアーは、サロネンに代わってウェルザー=メストとプレートル、それからもともと来日が決まっていたアンドリス・ネルソンスの3人の指揮者で行なわれることになった。もともとは小澤征爾指揮が予定されていたので、代役の代役ということになるわけだ。
●整理しておこう。東京公演についてはサントリーホールの発表にあるように、ブルックナー6番の日がウェルザー=メストによるブルックナー9番へ。マーラーの9番の日が、プレートルによるシューベルト第2番&ベートーヴェン「英雄」というまったく別の演目へ。払い戻しあり。ミューザ川崎公演はネルソンスの「新世界より」他のプロに変更。払い戻しあり。兵庫県立芸術文化センター公演はプレートルのプロに(購入者個別連絡)。宮崎公演はプレートル、払い戻しあり。もともとネルソンスの川口公演は影響を受けず。ウィーン・フィル公式サイトにあるツアー予定には昨日から情報が掲載されていた。
●うーむ、サロネン指揮ウィーン・フィルを聴けなくて残念だ……。そんな嘆き声もたくさん聞こえる一方、プレートルを聴くチャンスが巡ってきたことを喜ぶ声も。ブル6がブル9に、マラ9が「英雄」または「新世界」に変わったと考えると、より名曲プロになったともいえる。
●サロネンの「自身のコントロールの及ばない事情のため」っていうのは、よくある「健康上の理由」とは異なる表現だけど、なんなんでしょうね。来日前のウィーンでの公演もキャンセルとなっている。

October 8, 2010

オーケストラ・アンサンブル金沢定期へ

●一泊出張して金沢でオーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)定期公演へ(10/6)。指揮は1980年生まれのケン・シェ。日本でも学んだアジア系カナダ人。もう最近どんどん若い指揮者が出てきているから30歳でも特別驚くことはなくなっちゃったんだけど、でもやっぱり勢いのあるフレッシュな人はいいっすね、雰囲気が明るくなる。しかもカッコいい。シューマンの「序曲、スケルツォとフィナーレ」、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲(独奏:吉田恭子)、ビゼーの交響曲。爽快、でも端整な秀演。
●OEKの演奏は東京定期やラ・フォル・ジュルネ金沢で耳にする機会は比較的多いんだけど、普段の定期に足を運んだのはものすごく久しぶり。お客さんはよく入っている。年齢層は結構高め。定期公演には3つのシリーズがあって、それぞれ「フィルハーモニー」「マイスター」「ファンタジー」と名づけられている。これは「フィルハーモニー」がオーソドックスなシリーズ、「マイスター」はやや意欲的な演目が並び、「ファンタジー」はジャズありシャンソンありバレエありのクラシックの枠にとどまらないバラエティ枠といったことの模様。相当に幅が広い。また、OEK定期でありながら、ときにはOEK以外の団体が演奏することもある。南西ドイツ・フィルとか兵庫PACオケとか。
●これはよくわかるんすよねー。東京のように一都市に8つもオーケストラがあってそれぞれ定期演奏会を開いてて、しかも来日演奏団体もあるなんていう状況がどう考えても例外的なわけで、中規模の都市ならオケはひとつで十分。でもお客さんは何年も通っていると、だんだん選択肢とか多様性が欲しくなってくる。それを一団体で賄わなきゃいけないからということで生まれた現状の最適解がこの形なんだろう。こういったシリーズ構成に限らず、いろいろなディテールで実情に応じた工夫が感じられて興味深い。
●来年の「ラ・フォル・ジュルネ金沢」のプランもいろいろなアイディアが上がっている模様。テーマは「ウィーンのシューベルト」と発表済み。

October 6, 2010

「アラベッラ」@新国立劇場

●新国立劇場でR・シュトラウスの「アラベッラ」。平日昼間の公演だけど十分お客さんは入っている。東京人、どんだけオペラ好きなの。6公演あるんすよ、これ。
●で、「アラベッラ」(アラベラ)だ。演出フィリップ・アルロー、衣裳は森英恵。指揮はウルフ・シルマー。美しい音楽である。最近ワタシはオペラ的約束事を無視して、その物語を「真に受ける」という楽しみ方を覚えてしまったので、この「アラベッラ」世界の住人になったつもりで鑑賞した(なんだそりゃ)。
●まずこの世界でもっとも(いや唯一)カッコいい男はアラベッラの父、ヴァルトナー伯爵だ。ホテル住まいの没落貴族。頭の中にあることはギャンブル(カード)だけ。部屋に次々と請求書が来ているのに、それを無視して遊ぶ。アラベッラへの求婚者マンドリカが金を持ってくれば、娘のことなど忘れて嬉々として賭けに行く。いざ娘が求婚される舞踏会になっても、延々とテーブルでカードに興じている。で、「オレがこんなで妻も娘もかわいそう」と身内を憐れんだりする。なんと筋の通った道楽者なのか。もちろん賭けは負けっぱなしであろう。富の再分配を自ら実践する貴族。正しい。そしてホテル住まいでカード狂いという彼は「都会者」という役柄だ。「宵越しの金は持たねえんだ」ってな江戸っ子、じゃなくてウィーンっ子だ。
●その正反対のポジションに立つのが、求婚者マンドリカである。彼は田舎の大金持ち。山も森も畑も持っている。アラベッラの写真を見てポーッとなって、美しい森を少しばかりユダヤ人に売って金を持ってやってきた。アラベッラのことを崇拝してはいるが、気前がよくなったり侮辱されたと感じたりすると、イチイチ札束をパアッと撒き散らすような、成金趣味の持ち主だ。「田舎者」である。しかし、彼は強くて逞しく気高い男でもある(クマと戦って生き残ってるんだぜー)。すべてがヴァルトナー伯爵と違ったタイプだ。
●アラベッラの父親もウィーンの求婚者たちもみんな都会の男ばかり。そこにワイルドなマンドリカがあらわれたのだから、アラベッラが彼の新鮮な魅力に惹かれるのもよくわかる。彼女はずっと都会で自分探しをやってきた。でも本当の自分は見つからず、どの求婚者にもピンと来なかった。田舎から出てきたマンドリカと出会って思う。「この人こそ運命の人。もう都会は十分、これからは森、山、そして畑よ! ビバ自然、エコライフ!」。つまりアラベッラは先駆的な森ガールであり山ガールだったのだ!(←それ言いたかったのかよっ!)
●このオペラの謎はズデンカ……というか、むしろマッテオである。ズデンカは女でありながら男として育てられている。もちろん、こうした性別の入れ替わりはオペラでは自然に受け入れられる約束事なわけだが、それをあえて無視して観ると(おいおい)、マッテオが本当に好きなのはズデンカ(女)なのかズデンコ(男)なのかという謎がある。マッテオは表向き、アラベッラへの恋が成就しなければ死ぬとまで思いつめている。一方、第3幕で暗闇の中の仮想アラベッラ(=実ズデンカ)と結ばれたとわかったときには「なんとなくホントはキミだってわかってたような気がする」みたいなことを口にする。もともとマッテオはズデンコと親友で仲がよかった。やはりマッテオは本質的にズデンコ(男)を欲していたのだが、自身のホモセクシャリティをどうしても肯定することができず、その代償行為としてアラベッラに恋をしていたのだろうか。
●いやいや、いくら女装をして人を騙すのにも限度がある、マッテオは最初からズデンコがズデンカであると知っていたはずだ。マッテオは男が好きだったのではなく、男の格好をする女の子に萌えていたんじゃないか。うん、それは、少しわかるような気がするぞ、マッテオ! 彼のアラベッラへの想いは見せ掛けで、すべてズデンコ→ズデンカへの変身を促すための計算づくの言動を取っていたのかもしれない。
●つまり、真犯人はマッテオ! あなただっ!
●↑いや、そういう話と違うから。
●一幕の二重唱と三幕の頭の音楽をもう一度聴きたい……。三幕のアラベッラとマンドリカのやりとりは少し冗長に感じなくもないんだけど、一方でアラベッラがいったん水を持って部屋に引っ込み、マンドリカのほうは立ち去ろうとしても立ち去れない感じという宙ぶらりん感が味わい深いとも言える。

October 4, 2010

ベルリン・フィルDCH昨シーズンのメモ~その2

フィルハーモニー●(承前)引き続き、ベルリン・フィルのデジタル・コンサート・ホール(DCH)メモその2。昨シーズンを2010年2月から遡って。
●2月。ラトル指揮、内田光子独奏のシリーズ。リゲティ「サンフランシスコ・ポリフォニー」、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番、シベリウスの交響曲第2番。ラトル&内田コンビは鉄板。このベートーヴェン協奏曲シリーズは、リゲティorクルタークとベートーヴェンとシベリウスがセットになって演奏される。甘いもの食べたら辛いもの食べたくなって、辛いもの食べたら甘いもの食べたくなる理論(なんだそりゃ)。
●2月。ラトル&内田光子シリーズ。クルタークの「シュテファンの墓」、シベリウスの4番、ベートーヴェンの「皇帝」。強力。クルタークもこのシーズンよく取り上げられた作曲家。
●2月。同しシリーズでリゲティ「アトモスフェール」、ベートーヴェンのピアノ協奏曲第1番、リゲティ「ミステリーズ・オブ・ザ・マカブル」、シベリウスの交響曲第1番。こうして通すと、ごった煮みたいなわけわからんプログラムではあるが、楽しいからいいか。
●1月。トン・コープマン指揮。いろんな人が指揮台に立つ、ベルリン・フィルは(その前のシーズンはトレヴァー・ピノックも来てた)。バッハとハイドン。コープマンは大好きなのだが、もどかしさも。
●1月。ハイティンク指揮。クルターク「石碑」、F.P.ツィンマーマンとブラームスのヴァイオリン協奏曲、バルトークの「管弦楽のための協奏曲」。あれれ、バルトークの「オケコン」は前のシーズンにもやってなかったっけ? えーと、ジンマンが振っていた。その辺は気にしないのか。
●1月。注目株トゥガン・ソキエフがベルリン・フィル・デビュー。77年生まれ、若いけどオーラが出まくってる。カリスマ指揮者(とかいうと急に安っぽくなっていかんか)。グリモーとラヴェルのピアノ協奏曲、ラフマニノフの交響曲第2番他。グリモー、もう40歳だっけ? 相変わらず若くて美しい。今度、お肌のお手入れをどうしてるか教えてくださいっ!(ウソ)
●2009年12月。ドナルド・ラニクルズ指揮でSebastian Currierの新作世界初演とブラームスの「ドイツ・レクイエム」。ラニクルズって初めて映像を見たけど、こんな暑苦しそうなタイプだったとは。そして意外と巨匠系。立派。この曲大好き。
●12月。ティーレマン指揮でブラームスの合唱曲とシェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」。ティーレマンってベルリン・フィル・アカデミーでヴィオラ奏者やってたんすね。
●12月。メータ指揮でシューベルトの3番、バルトークの「中国の不思議な役人」の後、メインにカヴァコス独奏でベートーヴェンのヴァイオリン協奏曲。うーむ、どこかで記憶が混乱してしまったみたいで、カヴァコスはてっきりシベリウスだったと思ったらベートーヴェンだったか……。「カヴァコスの集中度の高さ、テクニックの見事さ、この端整かつ詩的なシベリウスは史上最強!」と記憶してたのに、違うじゃないの(笑)。あーあ、全部捏造された記憶でこれ書いてるのかも。でもとにかくワタシのなかでカヴァコスへの敬意は圧倒的に深まった。
●10月。イヴァン・フィッシャー指揮。コダーイのガランタ舞曲、リストのハンガリー狂詩曲第1番、ハイドンの88番他。CDでは聴いたことがかろうじてあったけど、映像で見て「こんな人だったのか」と軽い驚き。今時あまり見かけないような、長い指揮棒を振り回すコワモテ系のようでいて、その姿には気品が感じられ、ショウマンシップもうっすらとにじむ。
●10月。ダニエル・ハーディング指揮。ジャニーヌ・ヤンセンが独奏でブリテンのヴァイオリン協奏曲。圧巻。ハーディングとヤンセンのコンビはこのシーズンにいったい何度この曲を弾いたんだろうか。ネットラジオでもいろんなオケで何度も見かけた気がする。メインはR・シュトラウスの「死と変容」。
●9月。ドゥダメル指揮でグバイドゥーリナの「グロリアス・パーカッション」とショスタコーヴィチの交響曲第12番「1917年」。動くグバイドゥーリナを久々に見た。ドゥダメルはこのシーズンが「1917年」で、前のシーズンがたしかプロコフィエフの5番。ドゥダメルはいつでも「マンボ!」みたいな陽気な曲を振っているわけではない(笑)。
●9月。ラトル指揮。ベルクの「ルル」組曲~アダージョ、パウル・デッサウ「声」、ショスタコーヴィチの交響曲第4番。ショスタコは巨大な曲、編成も長さも。強烈すぎる。DCHでDSCH。
●9月。ラトル指揮のハイドン「四季」。これは聴きたいけど聴き逃してしまったのでメモ。2時間半もあるのにトラックで分かれていないから、まとめて聴かなきゃいけない、でもそれは大変だなあ……と困っていたのだが、今シーズンからトラックの切れ目ができたっぽい。
●8月。ラトル指揮でシーズン・オープニング。ブリテンの「青少年のための管弦楽入門」。昔、はじめてラトルを生で聴いたときもこの曲だった。懐かしい。サーリアホの「ラテルナ・マギカ」初演。メインのベルリオーズ「幻想交響曲」はたしか未見。CDも出たし、そうそう何度も同じ曲を聴きたくない、もったいないから。
●コンサートマスターは基本的にブラウンシュタイン、樫本大進、スタブラヴァの「第一コンサートマスター」3人体制。まれに「コンサートマスター」のゾンネ。樫本大進は試用期間中ということだが、出番は非常に多く、公式サイトのメンバー表でもブラウンシュタインの次に名前が載っている。あと、この表はオーボエのマイヤーとケリーにPrincipalの表示がなくて「あれ?」と思うのだが、ないのは英語版だけでドイツ語版で確認するとちゃんとSoloと書いてある。ホルンはバボラークが退団して、Principalはドール一人になってしまった。ときどきいろんな人が招かれているようだが、映像で顔を見てもワタシにはどこの誰とはわからず。首席クラリネットもずっとフックス一人で、どうなるのかなあと思っていたら、アンドレアス・オッテンザマー(エルンストの息子、ダニエルの弟)が入団するというニュースが(11年2月より。「フォルカーの部屋」参照)。フックスもオーストリア人、ウィーンで学んだ人なので、局所的にウィーン濃度が高まることに。
●現在の空きポジション

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