●いつもと同じ美容院で、いつもと同じ美容師さんに髪を切ってもらった。「はー、いいっすよ、前回くらいで~」「じゃあ(ヘアカタログの写真を指差しながら)こんな感じにしましょうか」「はーい、よろしくー」。
●そこから30分も経たないうちに、髪の毛はざっくざっくと切られ、あたり一面黒髪の海。ン十年にわたってロン毛状態を続けてきたワタシの髪は、中学生以来の短さになってしまったのだ。うわ、全然予期してなかったロン毛との別れ、あまりに突然に。ていうか、もう別人だよこれ!
●美容師さんはなぜか嬉しそうである。ワタシは……まあ、別にいいんだ、どんなのでも。ヘアカタログに掲載されてるのはどれも若くてイケメンの男のコたちに決まってるから、美容師さんが「こんな感じ」って指差した写真もワタシはまるでちゃんと見ていなかった。彼は言う。「毎日、必ずハードなワックスを使ってください。こんなふうにしてやると髪が立ちますから。髪が寝てきたら、また手櫛で立ててやってください」。ワタシの髪はまるで鳥の巣みたいな無造作ヘア。特に後頭部のほう。これさー、蚊とか小蝿がうっかり入り込んだら迷路みたいになってて出られなくなるんじゃないの、この鳥の巣。と思ったが、声には出さない。さっきまで安心してロン毛ライフを送っていたのに、期せずしてツンツン無造作ヘアで鳥の巣! これは革命が起きた。ドキドキしながら美容院を出た。
●そして、改めて世間の男たちの髪型を観察して驚いたのだ。どいつもこいつも、若いのもオジサンも、デカいのも小さいのも、みんなことごとく無造作ヘアで鳥の巣のような頭をしているではないか。そう、ワタシはいつもの髪型から尖がった髪型に変わったような気がしていたのだが、そうではない。ワタシは昨日までずっと変わり者の髪型をしていて、今日から平凡な男になったのだ。
Useless: 2007年9月アーカイブ
September 3, 2007