「えっ、どうして僕が女モノの傘を持ち歩いているのかって? では、説明しよう。先日、あるレストランで食事をしたのだ。そこは街の中の小さなフレンチのお店で、当日は雨だったから、お気に入りのベージュの傘を持って出かけた。閉店間際までゆっくりしてたから、僕らが最後のお客さんだった。帰り際に傘立てを見ると、僕の傘がない。あれれ、困ったな、どうしたのかなとオロオロしたんだけど、傘立てに一本だけ余ってたんだよね。僕のベージュの傘に良く似た色の女モノの傘が残っている。ああ、そうか、誰かがまちがえて、僕の傘を持ち去ってしまったのだ。しょうがないなあ。まちがえた誰かさんは後からお店に連絡をしてくるかもしれない。お店の人に説明した、これ、僕の傘に似てるけど僕のじゃないんです、でもこの一本だけが傘立てに残ってるんです、と。お店の人は陽気にこう言った。『あら、そう、ホホホホホ、まあしょうがないわねえ、もうそれしかないんだから、その傘を持っていっちゃっていいですよ』と、僕の連絡先も尋ねずにその傘を差し出すのだ。ええっと、いいのかね、お店対応がそんな大らかで。でもまあいいか、まちがえたお客さんが誰かもわかんないんだし。そして推定年配女性の持ち物だったと思われるベージュの傘を、以後、持ち歩くことになったのだ。今やもうこれが僕の傘だ。以前の傘に似ている。あれ、良かったんだけどな。以前の傘もそっくりのベージュの色で、たぶん女モノだったと思うんだけど。えっ、どうして僕が女モノの傘を持ち歩いていたのかって? では、説明しよう。先日、あるレストランで食事をしたのだ。そこは街の中の小さなフレンチのお店で……」
Useless: 2008年11月アーカイブ
僕の傘
青いタヌキ
●「あたし、海が見たいの!」と唐突に自分探しがしたくなった先週末(ウソ)、近くに海などない、あるわけない、でも湖なら、というか貯水池ならあるのを発見、またしても西へと向かったその先にあるのは多摩湖。狭山公園から多摩湖南側を大散歩して半周、湖の向こう側に小さくかすかに見える円形建造物は西武遊園地の観覧車なのだ、まだ紅葉には早かったのだが、広々と前方に開いた水面と青空に向かって、さわやかな気分で叫ぶ、ヤッホー、いや叫びません、叫ぶのは心の中で。
●それにしても、このあたりの狭山丘陵地帯であるとか、奥武蔵奥多摩方面のハイキング・コースとか、緑豊かなわけであるが、人間以外の大型哺乳類をぜんぜん見かけないなあ、それが少し惜しいと思ったのである。いや、クマとかは見たくないっすよ、そうじゃなくてタヌキとかキツネとかイノシシとか野うさぎとかアライグマとか、なんていうかな、日本昔話的なヤツとかロッキーチャックだかラスカルだか忘れたが、ホノボノとするエコでロハスで地球に優しそうな心温まる動物たちとの安全な出会いがあったらいいのに。そんな都合のいいケダモノ好き気分を軽く引きずりながら、アスファルトの道を歩き、電車に乗り、都市へと帰った。
●で、帰ってみたら、これはまあ絶対にウソだと思われるのを承知で書くんだけど、ウチのマンションの駐車場で何かケダモノがいるんすよ、ネコにしてはなんか大きめで微妙にボッサリした体型だなあと思って、そっと近づいてみると、それはタヌキだったのだ、どうやら。たぶんワタシはこれまでタヌキなんて見たことないと思うんだけど、バッタリ出会ったリアルタヌキ、しかも都内の住宅地ど真ん中で。
●暗闇で撮ってるのを明るく加工したから見づらいが、この未確認歩行生命体はきっとタヌキ。ゆっくり近寄ると、トコトコと歩いて去っていった。山や森、湖に出かけてもいなかったタヌキ、でも帰宅するとウチにいたタヌキ、それって幸福の青いタヌキ? 青くないけど。
●後で調べてわかったが、都心も含めて東京23区内でも、野生のタヌキというのは案外たくさん生息しているらしい(→参考:東京タヌキ探検隊!)。フツーに彼らは彼らの狸生を送っているのであり、駆除する必要も保護する必要もない、と。また会えるかなあ、タヌキ。ご近所で見知らぬ顔を見かけたら、臀部に尻尾がないか要確認。