July 15, 2010
ワールドカップ2010南アフリカ大会ベストイレブン発表!
●もう午前3時30分に目が覚めても試合の中継はない。祭は終わったんである。ワールドカップ2010南アフリカ大会を総括したい。まずは恒例、ベストイレブンの発表だ。当サイトでのベストイレブンは「こんな選手が日本代表にいてくれたら」という願いを込めつつ、ニセ日本代表メンバーとして発表されるのだ。少々タレントが攻撃的選手に偏っていてポジション的には一部リアリズムを欠くが、ま、ベストイレブンとはそんなものだ。
【ニセ日本代表2010】
GK:
亀仁(Kameni カメルーン)
DF:
与吉(Jokić スロヴェニア)
照井(Terry イングランド)
丸助(Márquez メキシコ)
MF:
柴矢(Sibaya 南アフリカ)
小松(Komac スロヴェニア)
子門(Simão ポルトガル)
丸田(Malouda フランス)
FW:
江藤(Eto'o カメルーン)
倉内(Crouch イングランド)
伊亜金太(Iaquinta イタリア)
番外:
羽生(Özil ドイツ)
●ステキな選手たちが揃いましたね~♪
●今大会をワタシは存分に楽しんだ。ワールドカップとしては98年フランス大会以来のおもしろさ。2002年は極端に楽しいことと忘れてしまいたい悲しい事件が両方あって複雑な気分になるし、2006年は少し順当すぎて驚きに欠けていたためか印象が薄く、それに比べれば2010年は前半までの南米勢の躍進や後半の欧州の巻き返しなど、ワクワクするような要素がほどよくあった。
●スター選手の活躍とかスペクタクルな内容の試合があったかといえば、はっきりと乏しかったので98年に匹敵とまではいかない。
●シーズン中に毎週試合がある強豪クラブチームのほうが、ワールドカップよりずっとレベルの高いサッカーをやっている。優勝したスペイン代表の完成形はバルセロナだろう。でもクラブのサッカーにはないおもしろさがワールドカップにはある。有力選手がみんな欧州でプレイするようになっているとは言っても、まだ南米、北中米、アジアにはそれぞれのローカルなスタイルが生きていて、大会に多様性をもたらしてくれる(むしろアフリカのほうがすっかり欧州化している)。4年に1度という絶妙なタイミングが、選手やチームにさまざまな明暗をもたらすのも大きい。
●審判問題はもう飽きた。
●そんなに好ゲームは多くはなかったのにどうして2010にワタシはこんなにポジティブなんであろうかとよーく考えてみると、それはやっぱりニッポン代表が活躍したからなんだろう。2勝1敗でグループリーグを突破するなんて。決勝トーナメントはPKには負けたけど、PK戦は引き分けとカウントするものなので、トータル2勝1敗1分。いちばんよかったのはデンマーク戦なんだが、ワタシが震えたのは断然カメルーン戦の試合終了の瞬間だ。本当に勝つなんて。夢みたいだと思った。直前にチームの形をがらりと変えた岡田監督の功績であることはまちがいない。昔、岡田監督が言ってた「ランクで決まるなら試合は要らない」は正しかった。
●ニッポン戦が終わるたびに渋谷とかで若者が集合する光景は2002年っぽかった。でも写真見ると全裸の男性とか歩いてて、到底近寄れません(参照)。
July 12, 2010
ワールドカップ2010南アフリカ大会決勝:オランダvsスペイン
●一ヶ月にわたったワールドカップを締めくくる決勝戦はオランダvsスペイン。2年前のEUROに続いて、今回も最後までスペイン国歌を聞くことになった。超FAQだが、スペイン国歌には歌詞がない。だから選手はだれも歌っていない(歌えない)。
●ヨハン・クライフは喜んでいるだろうか。スペイン代表はバルセロナの選手だらけでバルセロナのサッカーをしている一方、オランダ側にまでバルセロナ色が感じられる(キャプテンはバルセロナで長く活躍したファン・ブロンクホルスト、ファン・ボメルも元バルサ、ベンチにいるのはフランク・デ・ブール?)。
●で、派手な試合を期待していたら、蓋を開けてみればやっぱり「決勝らしい試合」、つまり息の詰まるようなロースコアの試合になってしまった。お互い勝てばW杯初優勝。どうしても勝ちたいという気持ちがぶつかり合うとこうなるのか。それにしてもオランダの守備の激しさはどうなんすかね。ラフプレイを連発。イングランドのハワード・ウェブ主審がこれに応えて気前よくカードを出す。延長まで行ったとはいえ、オランダに9枚、フェアプレイ優等生のスペインに5枚。延長後半のハイティンハまで退場者が出なかったのが不思議なくらいだ。というか、本来ならとっくに出ているはずだったのを、主審が「コントロールした」ともいえる。
●相手がオランダだろうと圧倒的にボールを保持できるスペインの技術は本当にスゴい。フットボール史上最高の巧さかも。前半はほとんどスペインがゲームを支配。ただし決定機は少なかった。
●後半はよりチャンスが増えた。ロッベンはいったい何度高速ドリブルを披露してくれただろう。一度、スナイデルだったかのスルーパスに抜け出て、完全にフリーになってシュートを打ったが、カシージャスが逆を取られながらも残っていた足で弾き出すというスーパーセーブを見せてくれた。オランダのステケレンブルフにも好セーブがあって、試合が締まっていた。
●スペインはペドロに代えて、ヘスス・ナバスを投入。これは効いていた。オランダもカイトをエリアに代え同様にサイドを攻めようとするが、こちらはもう一つ。延長に入ってからはPK戦の予感が高まっていたが、延長後半11分にようやくゴールが生まれた。相手ディフェンスがクロスを跳ね返したボールをセスク・ファブレガスが拾って、右に開いていたフリーのイニエスタにパス、これをワントラップして右足で力強くゴールマウスに蹴りこんだ。
●オランダの選手がここで主審に詰め寄っていたのはなぜなんだろう。オフサイドでもなんでもない。あるいは、このプレイに至る前の、本来コーナーキックになるボールをゴールキックと判定されたことを執拗に抗議していたのだろうか。試合後のオランダ選手のコメントに「主審がスペイン寄りだった」というものがいくつかあったが、到底そうは思えない。主審はたしかにいくつもミスを犯したかもしれないが、正しく笛を吹いていれば前半早々からオランダに退場者が出て、最後は8人くらいでプレイしたのでは? 一発レッド相当がイエローで済んだ場面もあった。オランダは「勝ちたい」という意欲が空回りして制御不能になっていたように見えた。
●スペインは初優勝。欧州勢が欧州大陸以外の大会で優勝したのも初めて。アフリカはサッカー的には欧州であると考えれば、自然なところに落ち着いたともいえる(同様に東アジアと北米は南米に属している、94年と02年の大会から察するに)。EURO2008に続いて優勝したんだから、今はスペイン(あるいはバルセロナ)の美しいパスサッカーの全盛期だ。世の中みんな「ハードワーク」とか「ショートカウンター」とか念仏のように唱えている時代に、ポゼッション重視のこんなチームが勝ち切るなんて。スペインは決勝トーナメント以降すべての試合を1-0で勝ったわけで、スコアを見ればやや華やかさに欠けた戦いぶりではあったけど、中身を見れば彼らだけがまるで別のスポーツをやっているかのような印象もあった。
●これでスペインは一区切り付くんじゃないかな。
●もう大会が終わったかと思うと寂しい。スペイン人とオランダ人以外はみんな決勝が始まる前から寂しくなっていたにちがいなく、全世界的にファンが寂しさを共有するのがワールドカップ。
July 11, 2010
3位決定戦:ウルグアイvsドイツ……ていうか、パウル
●3位決定戦なんてワールドカップには必要ないだろう……と思っていたんだが、いざ中継がスカパーでしかないとなると悔しい。ハイライトしか見れなかったんだけど(ら抜き)、どうやら3決ならではのオープンな試合になったようだし。やっぱり3位決定戦って必要なのかも。二つの敗者のうち、どちらか一つは最後に勝者に返り咲けるわけだから。
●で、この試合で怖れていたのは「またまたまたまたクローゼが点を取って、ロナウドの記録に追いつき追い越す」という展開だった。しかし、クローゼに不調があってこの日はベンチ。断然ロナウド派のワタシは安堵。ロナウド、ってのはもちろんブラジルの元9番で、2002年には大五郎カットで登場し、若き日にはロナウジーニョと呼ばれていたあのレジェンドであり、クリロナではない。
●試合は2-3。ドイツが3位になった。ドイツは前回も3位だった。前々回は準優勝だった。前々々回はベスト8、前々々々回もベスト8、前々々々々回は優勝で、前々々々々々回は準優勝、前々々々々々々回も準優勝だった(含む西ドイツ時代)。いいときも悪いときも勝つのがドイツ。近年移民系の優れた才能が代表に新たな血を加え、さらに今回は若い選手もどんどん出てきた。このチームの未来は明るい。2014年ブラジル大会で開催国を破る可能性は十分。
●が、今回ドイツで最大のスターとなっているのは、パウルだ、どう見ても。パウル、すなわち予言タコ。この3位決定戦の結果も的中し、ドイツの7試合すべての予言に成功した。決勝はスペインの勝利を予言している。日頃サッカーにもワールドカップにも関心のない人でも、予言タコのことは知っているというくらいの事態になっているわけで、日本ではエジルやミュラーよりもパウルのほうが知名度が高いんじゃないか。なんでみんなそんなにタコ好きなの? 南アフリカ2010はメッシの大会でもルーニーの大会でもなく、パウルの大会として記憶されることだろう。
●しかしタコの平均寿命は1年とかそんなものらしい。水族館育ちのパウルでも2~3年ということなので、残念ながら2014年ブラジル大会でのパウルの活躍は期待できない。FIFAはより長命と思われる巨大イカの調教を始めておいたほうがいいんじゃないか。
July 8, 2010
準決勝:ドイツvsスペイン。職人芸。
●また朝3時半に起きて見た。
●2年前のユーロ決勝の再現となったこの試合。普段なら無条件にスペインを応援するところであるが一抹の不安があった。ドイツは絶好調。スペインはなかなか調子が上がらない。これでスペインが勝ってしまうと、決勝戦が盛り上がりに欠けるんでは?
●が、杞憂であった。キックオフの笛が鳴るとスペインは本来のサッカー(というかバルセロナのサッカー?)をすっかり取り戻し、職人芸的パス回しを連発。えっ、ドイツ相手にそんな勇敢なパス通すの!? ていうか全部通ってるし。狭いところをビュンビュン通し、しかもトラップが猛烈に巧い。あのドイツが追いかけてもボールを奪えないなんて。
●スペインは少々不調のフェルナンド・トーレスに代えて若いペドロを先発させた。フレッシュで体がキレている。前線はペドロと新シーズンからバルセロナに移籍するビジャ、中盤にイニエスタ、シャビ、セルヒオ・ブスケツ……ってこれそのまま来季のバルセロナ(メッシ抜き)攻撃陣では。
●ただ、スペインは攻撃しているときはパラダイスなんだけど、守勢に回ると脆さを感じるんすよ。ドイツのコーナーキック一つに耐えるのもいっぱいいっぱい感があって。しかもスペインの攻撃陣はアーティストはそろっているんだけど、ムチャするヤツがなかなかいない。美しいパス回しに酔う老マイスターはもうゴールのことなんて忘れているんじゃないだろうか。だれか縦に突進しなければ。お互いさまで前半は五分五分の勢い。
●後半はスペインに活気が出てきた。後半13分の攻撃は見事。ペドロのシュートが跳ね返り、ヒールキックのパスをもらったイニエスタが縦に抜け出て、左から低いクロスを入れてビジャが飛び込んだが届かなかった場面。しかし得点になったのは意外な形。後半28分、コーナーキックから、クロスに飛び込んだプジョルが頭でズドン。今までのパス回しはなんだったのだ。むしろドイツ風の得点でスペインが先制。
●後半37分のペドロのプレイが気に入らない。ドイツが前がかりになったおかげで、ペドロにドフリーの超絶カウンターのチャンスがあった。右サイドから駆け上がり、中で待つフェルナンド・トーレス(ビジャと交代出場)にボールを渡せば簡単にゴールできたのに、自分で相手ディフェンスを交わそうとして、失敗した。ペドロは確実に調子がいいんだが、こんな場面を見ると心配になる。きっと次は先発しないんじゃないか。ドイツのような強敵相手にこんなことをすると、たいていの場合は痛い目に遭う……。
●と思っていたのに、ドイツの攻撃に火がつかない。羽生は少し疲れていたか。あ、羽生じゃなくてエジルか。恐ろしいポドルスキも静かだった。クローゼはボールが来なければどうしようもない。終盤マリオ・ゴメスを投入したが、スペインのプレッシャーが巧みでパワープレイすら満足にさせてもらえない。そのまま0-1で試合終了はやや意外な気が。
●さらば、ジャイアン。ドイツっていうか、ポドルスキのキャラがなんとなくジャイアン。いじめっ子は去った。
●これで決勝はオランダ対スペイン。どちらも攻撃重視の強豪として毎回ワールドカップでは優勝候補とされながら、一度も優勝したことがない。98年フランス大会以来の「初優勝国」が誕生することが決まった。大会としては「ブラジルの自滅」が悔やまれるが、鮮度の高い決勝になったのは吉。せっかくこの組み合わせになったんだから、3-2くらいの派手な試合になってほしいっすよね。
July 7, 2010
準決勝:ウルグアイvsオランダ。抵抗。
●朝、起きてから録画再生するつもりだったんだけど、なぜか午前3時前に目が覚めた。サッカーの神様が起こしてくれたにちがいなく、3時半からの生放送を観戦。
●唯一の非欧州、ウルグアイを応援しつつ観戦。ウルグアイは前の試合で試合終了時にスアレスが故意のハンドを犯したため出場停止。エースのフォルランが前線で奮闘するが、序盤からミスが目立った。ベテランなので連戦でコンディションが落ちているのか。むしろもう一人のフォワード、カバーニのほうがコンディションもよくスピードがあって期待できそうと思ったのだが……。オランダがボールを持ち、ウルグアイがカウンター主体で速攻するという予想通りの展開。
●オランダの前線は中にファン・ペルシー、サイドにロッベンとカイト。この形は崩さないんすよね。ファン・ペルシー、あまり調子がよくないのでフンテラールを使えばいいんではと思うが、先発はなるべく固定させたいということなのか。
●オランダっていつも優勝候補なのに内紛で空中分解するという印象があるんだけど、今回はそういう気配が皆無。圧倒的に白人化している今のオランダ代表にあって、キャプテンは母親がインドネシア系のファン・ブロンクホルスト。35歳で左サイドバックの不動のレギュラー。きっと彼のキャプテンシーがこのチームを救っているのにちがいない。いやー、このチームの左サイドの裏を弱点みたいに言う人がいるけど失礼だよなあ。と思っていたら、前半18分、そのファン・ブロンクホルストが左サイドから強烈なロングシュートを決めた。ファーサイドの「ここしかない」という右上隅に矢のように飛んでいった。大会後、このまま現役引退するっていうんだけど、カッコよすぎじゃないですか、ファン・ブロンクホルスト。
●重要な試合でこういうゴールが序盤に決まると、これを大事に守って1-0で終了、なんていう凡戦警報が発令されるんだが、幸いそうはならず。前半41分にフォルランが豪快なミドルシュートを叩き込んで1-1。お互い似たようなゴール(そうめったに入らないシュート)を決めた。フォルランのほうはキーパーにもチャンスはあったと思う。
●後半頭から、オランダはデ・ゼーウを下げてより攻撃的なファン・デル・ファールトを投入。試合そのものは五分の戦いでも、選手層の厚みに大差を感じる。ただそれで攻撃的になったという感じではなく、むしろときどきオランダがしっかりと守備ブロックを敷き、ウルグアイが攻め手に困るという場面もあった。これやられるとウルグアイは辛い。
●後半25分、オランダはきれいなパス回しからゴール前のスナイデルへ。これをエリア左角あたりからシュート、打った瞬間は決まらないと思ったが、ゴール右隅に転がってしまった。今のはオフサイドか? スナイデルの前にオランダの選手がいて、ボールに触ったような……いやいや、スロー再生するとボールに触っているのはウルグアイのディフェンスだった。しかし、前のオランダの選手がプレイに関与したと見ればこれはオフサイド? うーん、よくわからないが、ワタシはこれはオフサイドではないと願う。なぜなら、最後に触ったのはウルグアイの選手で、現象としてはオウンゴールだから。
●この失点の影響があったのかなかったのか、直後の後半28分、左サイドのカイトからのクロスをロッベンがヘディングで決めてオランダがウルグアイを突き放す。ロッベンは得意の高速ドリブルをなんども披露してくれていたが、ゴールは頭。それにしてもロッベン26歳、若者っすよ。見えない……。
●これで2点差なので、試合はもう終わったようなものだ。ただウルグアイの闘志はすばらしく、後半ロスタイムに入ってから、M・ペレイラのゴールで1点を返した。ここから3分間ほどは本当にスリリングな展開になったが、あまりにも時間がない。追いついていれば伝説だった。ロスタイム表示を掲げた第4審判は西村さん。今大会最後まで残っている日本人。
●これで決勝は二大会連続して欧州対決に確定。オランダvsドイツか、オランダvsスペインか。ドイツはいつだって強い上に、今回はまた半端なく強い。スペインの調子は今ひとつ。順当に行けば前者だが、華やかなのは後者か。
July 6, 2010
「オシムの戦術」(千田善著)
●試合のない日は本を読めっ! で、「オシムの戦術」(千田善著/中央公論新社)だ。ああ、あのときオシムが病に倒れなかったら、いったいどのようなニッポン代表が誕生していたのであろうか、きっとワールドカップでも活躍してくれたにちがいない、ニッポンを舐め切った世界中のフットボール関係者を驚かせてくれたはずだ、それなのに、それなのに、ううっ(涙)……あれ? ニッポン、岡田監督で活躍してくれちゃったじゃないっすか! すげえ! オシムいないのにベスト16! オシム要らずなニッポン!
●いやいや、そういう話ではないんである。オシムがJリーグ時代も含めてどれだけニッポンのサッカー界に功績を残してくれたことか。どんな風に選手と接し、どんなトレーニングを行ない、なにを言い、なにを考えていたのか。この「オシムの戦術」を読んでると、単にニッポン代表が勝つか負けるかなんていうことはひとまずどうでもよくなって(よくないけど)、もっとサッカーそのものの奥深さや豊かさ、そして厳しさまでもが伝わってくるんである。著者はオシムの通訳だった千田善氏。選手よりも協会スタッフよりもだれよりもオシムを間近に見ることができた特別な立場、というのに加えて、千田氏はもともとフットボーラーなんすよね。サッカー歴40年以上で「サッカーマガジン」を創刊号から愛読しているというほどなんだから、並大抵じゃない。オシム本人が語る言葉とはまた別のおもしろさがある。
●オシムが倒れた後、リハビリに向かう姿勢もさすがというべきで心に残る。なんという強さ。あと、入院中にもお見舞いも兼ねて選手たちが移籍なんかの相談に来てたという話も印象的。オシムは親身になって応えてくれたというんだけど、本当に慕われてるんだなと思う。恩師なんすよね、いろんな選手の。そして日本のサッカー界の。
July 4, 2010
パラグアイvsスペイン。90分内でプチPK合戦。
●これはどちらを応援しようか激しく迷うカード。「ワールドカップは南米派」としてはパラグアイを応援したい(ニッポンと引分けて抽選の末にここに来たチームとも言えることだし)。しかし一方で、勝ったほうが準決勝でドイツを倒さなければならないという(←スマソ、ドイツ・ファン)という重い使命を担う。決勝で「ウルグアイvsパラグアイ」が実現したら楽しいなと思いつつ、現実的にドイツに対抗できるのはスペインのほうじゃないかとか、グジグジ……。
●でもスペイン、調子悪いっすよね。コンディションも全般によくないし、一部選手たちがパッションに欠けているというか。名指しで申しわけないんだけど(ここ読んでたら失礼>本人)、シャビとかイニエスタとか、普段バルセロナでプレイしているときに比べて、ずいぶんヌルくないっすか。あのひたむきさはどこへ。
●スペインは巧い。パスワークなんて信じられないほど。参加国の中でスペインだけが別の競技をしているかのように。将棋とか。いや、将棋はないか。チェスとか。パズルみたいにパスを回している。
●前半はパラグアイのほうが決定機が多かった。セットプレイでスペインの選手がパラグアイの選手のマークを無防備に外してしまう場面が3回くらいあったと思う。パラグアイは日本戦から6人ほどメンバーを入れ替えてきて、開始早々からすっ飛ばしてきた。バルデスなんて前半で倒れそうなくらい走ってる。前半41分、クロスをバルデスがフリーで受けたシュート、あれオフサイドで取り消されたけど、少なくともバルデスはオンサイドだったんでは。
●後半12分から、妙なことが立て続けに起きた。以下、すべて主審の判定は正しかったと思うのだが、まずパラグアイのカルドーソがエリア内でピケに足を引っ掛けられてPKを得た。カルドーソがこれを蹴り、カシージャスが見事にキャッチ! ややコースは甘めとはいえ、あれを弾き出すのではなくキャッチしてしまうカシージャスは人外。で、カシージャスがこれを味方に投げて、スペインの攻撃がはじまり、そのままビジャが相手ペナルティーエリア内に突進したところでファウルを受けて、今度はスペインにPKが与えられた。ビジャは笛を期待した倒れ方だったが、まあファウルにはちがいない。
●スペインのキッカーはシャビ・アロンソ。落ち着いて決めた……と思ったら、主審の笛が鳴ってやり直し。蹴る前にスペインの選手が何人もエリア内に侵入していたから。で、シャビ・アロンソが二度目のPKを蹴ると、これをキーパーのビジャールがファインセーブ。ボールをいったん弾いたが、味方が体を張って守ってくれた。2度続けて両チームにPKが与えられ、しかもその両方がキーパーにストップされるなんていうシーンは見たことがない。ある意味伝説。
●ようやくゴールが生まれたのは後半38分。イニエスタからペドロにパス、ペドロのシュートはポストに跳ね返されてビジャの目の前に。ビジャはコースを狙ってシュートを打つが、これが右ポストに跳ね返り、さらにそのボールが左のポストに当たって、それからゴールラインを割ってくれた。パチンコ? やっぱりスペインは別の競技をプレイしてないか?
●終盤、パラグアイは選手交代を使って運動量の低下を抑えようとしていたが、それでも足は止まってスペインに広大なスペースを与えてしまった。盛大なブブゼラ(おっとヴヴゼラか)の音の向こう側に、リーガでおなじみのスタイルの「オーレ!オーレ!」が聞こえてきた。スペインのパス回しにあわせて、選手がボールを保持している間「オーーー」と発声し、ボールをパスした瞬間に「レ!」と言う、あの独特のスタイル。この掛け声にはあきらかに選手にボールタッチを少なくさせる強制力が働く。後半44分にパラグアイに決定的チャンスがあったのだが、なぜかシュートを蹴る前からゴールになる気がしなかった。
●スペインは不調のままここまで勝ち進んだ。次はドイツと対戦。正直厳しいところだが、決勝がオランダvsドイツでは味気ない。今大会、グループリーグでは南米勢の躍進と欧州の不調という意外な展開があったが、結局ベスト4に残ったのは欧州3と南米1。ウルグアイ、オランダ、ドイツ、スペイン。南米は2強が敗れるととたんに寂しくなる。
●優勝はウルグアイ。という願望。
アルゼンチンvsドイツ。殺戮のゴール・マシーン。
●出た、ドイツのサッカー。キックオフまでは「これも今大会屈指の好カードで楽しみ~」くらいに思っていたが、いざ笛が鳴ったら、そこは完璧なドイツによるアルゼンチン虐殺ショー。アルゼンチンはメッシもイグアインもテベスもちゃんといたんすよ。退場者が出たわけでもなく、コンディションも悪くなった。なのに、0-4。ドイツのゴールラッシュ。
●前半3分、フリーキックからミュラーが頭で決めてあっという間にドイツ先制。その後はアルゼンチンにも十分にチャンスはあったが、後半23分にゴール前でクローゼがおいしいゴールを決めると後は一方的な展開に。相手が意気消沈したところで、かさにかかって攻めるドイツはさすが。ワールドカップで大差をつけて勝利するのはいつもドイツ(……という印象がある)。
●それにしても、ドイツ代表でのクローゼのゴールをワタシらはいったい何度見ているんだろうか。ワールドカップ通算14ゴール目? 前の試合で「もうクローゼのゴールは飽きた」って書いたら、また見せられた(苦笑)。あと1点でブラジルのロナウドの記録に並んでしまう。承服しがたい(笑)。誰かクローゼを止めてくれ。ユーロも含めると何ゴールだ。
●そしてアルゼンチンがワールドカップで4点差付けられるってどんな現実なのか。メッシはノーゴールで敗退することになったが、メッシのプレイはぜんぜん悪くない。だれもマネできないような、スーパーなドリブルを毎試合のように連発していたはず。ただ、一人でプレイしててはどうにもならない。テベスもイグアインも個人ではスゴいんすよ。チームで攻めることができなかっただけで。
●このドイツは今大会の最強チームだと思う。イングランドからもアルゼンチンからも4点取ってる。そしてドイツは試合を重ねても選手のコンディションが良いまま保たれている。常に選手たちは勝利のために全力を尽くすし、勝手な個人プレイに走る選手もいない。組織があって、気持ちも強い。もともとパワフルな大型選手がそろっているところに、若い羽生みたいなドイツ人離れした柔らかいボールタッチを持つ選手も出てきた。あ、羽生じゃなくてエジルだった。そもそもワールドカップでのドイツ(含む西ドイツ時代)の戦績は尋常じゃないくらい優れている。決勝に行くのがフツーくらいの感じで、もしW杯に通算成績というのがあればぶっちぎりの1位のはず(ブラジルは強いときは無敵だが、あっさり負けることも多い)。ドイツはあらゆる代表にとっての目標になるべき立派な存在だ。なのに、なぜみんなからあんなに嫌われているんでしょうねえ。
●ああ、決勝戦にスペインが出てきますように! オランダvsスペイン、あるいはウルグアイvsスペインになりますように! ラテンが生き残りますように。
ウルグアイvsガーナ。おはよう日本。
●えっと、これ、書かなくてもいいかなと思ったんだけど、やっぱり悔しすぎるから書いとく。
●午前3時30分キックオフの試合は録画で見てるんすよ。延長PKまで考えて1時間ほど余裕を持って予約。
●この試合、序盤はウルグアイが優勢だった。ただ、たまにガーナの攻撃を受けると、これがかなりウルグアイには厳しい。頼みのフォルランも疲労が蓄積してきているのか、今ひとつ動きにキレがない。持ちこたえられるかなと心配していたら(ウルグアイ寄りで見てます)、前半ロスタイムという最悪の時間帯にムンタリに地を這うようなロングシュートを決められてしまった。キーパーは一瞬逆を取られたのか、球筋の変化が激しかったのか。
●後半10分、ウルグアイはフリーキックのチャンス。左45度、やや距離があったがフォルランが見事に右足で決めた。これも一瞬キーパーが逆に動いてしまっていたようだ。フォルランはキーパーとの駆け引きに勝利した。
●ガーナに限らず今回アフリカ勢に感じるんだけど、基本彼らは完全に欧州化しているというか、白人抜きの欧州チームと呼びたくなる(その裏側ではかなり前から欧州もアフリカ化している)。組織的なディフェンスなんてやって当然みたいな。ていうか、そもそも欧州に生まれ育った選手も少なくないんでは。
●後半は次第に消耗戦となり、延長戦へ。ゴールの気配がない。延長後半がそろそろ終わって、PK戦かと思われたとき、唐突に画面から南アのスタジアムが消え、代わりに東京のNHKのスタジオでアナウンサーと思われる人が登場して、挨拶をした。「おはよう日本!」。えっ、なになに? 一瞬なにが起きたかわからなかったが、どうやら中継時間がなくなって、そのまま朝のニュースに突入したようだ。唖然としながら録画を早送りしたが、番組の中でウルグアイvsガーナを中継してくれている気配はない。「おはよう日本」が終了したところで、録画が切れた。
●NHKでもこんなことがあるんだ……。
●で、どうやらこの「おはよう日本」の間に大変なドラマが生まれていたようだ、ワタシは見てないんだけど。延長戦終了直前、ウルグアイのスアレスがゴールライン上で思い切り意図的なハンドで相手のシュートを止めた。当然PK、スアレスは退場。そしてガーナのギャンがこのPKを……外した! そこで笛が吹かれてPK戦へ。PK戦は(やっぱり)ウルグアイが勝った、と。なんという伝説。そんなの見たことがない。いや、実際ワタシは見ていないのであり、今でも見たことがないわけだ。
July 3, 2010
準々決勝 オランダvsブラジル。自滅。
●今大会屈指の好カード。ともに普段に比べればスペクタクルに欠けるチームなんて言われてるけど、それでもこの両者が戦うとなれば華やかな展開を期待する。前半10分、ブラジルのフェリペ・メロの長いグラウンダーの縦パス一本にロビーニョが走りこんで、落ち着いて先制ゴール。ゴールってこんなに簡単に奪えるの? しかもオランダから。そしてあんなパスコースが見つかるなんて。
●前半31分のブラジルの攻撃も楽しかった。ロビーニョが左サイドからドリブルでディフェンスを二人交わして低いクロス、これをルイス・ファビアーノがヒールで流して、カカーがファーサイドの上を狙って巻くボールを蹴ってシュート。セーブされたが惜しい!
●でも後半はまったく別の試合になった。後半8分、スナイデルのクロスに対して、飛び出したブラジルのキーパーとフェリペ・メロが味方同士で競り合ってしまい、オウンゴールで同点。続く後半25分、オランダはコーナーキックからスナイデルが頭で合わせて逆転ゴール。
●ここからブラジルは自滅モードへ。激しい試合で(主審は西村さん)、全般に選手たちに苛立ちが感じられていたのだが、後半28分フェリペ・メロが倒れたロッベンを意図的に踏みつけてしまいレッドカード。フェリペ・メロがこの試合の主役なのか。終盤、一人少ないブラジルが前がかりになるが、カウンターを喰らい放題、なんども決定機があったオランダにダメ押しゴールが入らなかったのが不思議なくらい。やや締まりのない終わり方になった。オランダがベスト4へ。
●今回のブラジル、どうったんすかね。ゆったりとしたボール回しから、突然ぐぐっと全体でギアチェンジして猛然とゴールに迫るというブラジルならではのワクワクする瞬間が、このチームには乏しかった。それと引き換えに守備力とフィジカルに強いチームを組んだゆえに「最強」との呼び声も高かったのだが、結果的には逆転負けを喫しているんだからサッカーは難しい。あと、このスタイルだと、ブラジルがブラジルであるというだけで無条件に手にすることのできる目に見えないプレミアムが減ってしまう気がする。ブラジル国民の気分で一言でいえば「損した」気分。ドゥンガじゃな。次は自国開催だからプレッシャーが大変。
June 30, 2010
スペインvsポルトガル。羨望。
●ニッポンが負けてもワールドカップは続くんである、容赦レスに。で、試合が始まってすぐに羨望。なんて巧いんだ。スペインはもちろん、ポルトガルも。ニッポン戦と同じ日にこんな試合が続くとは。ますます悔しい。でもな、大会全体としてはニッポンはすばらしい戦いを見せてくれたんだから、ヨソ様のサッカーのことなど羨むことはないのだ。あ、なにイニエスタ、そのパスは、うわ、ジャビすげえ、セルヒオ・ラモスまでそんなことを。前言光速で撤回、猛烈に羨ましいぞ、そのサッカー!
●スペインはグループリーグ第一節は貧血でも起こしてるのかと思うような出来だったが、徐々に調子が上がってきているみたいで、見違えるほど強まっている。やっぱり優勝を狙うようなチームはこうなのか。パスが美しく回る。正確。バルセロナ風味。どうしてここにメッシがいないのかと錯覚しそう。終盤にペドロまで入ってくるし。
●しかし前のニッポン戦で呆然としてしまったのと寝不足とで、この試合を落ち着いて見てられない。なんていうかな、フランス大会、日韓大会、ドイツ大会までは「ニッポンが負けてからが、本当のワールドカップ」みたいな気持ちの切り替えができたんだけど、それってやっぱりゲスト参加みたいな気分があったというか、今回は「これで一人前の参加国として認めてもらえた」的な妙な感慨がある分、もとのワールドカップに戻ってこれないというか。
●そういう意味ではちょうどここでベスト8がそろって二日間お休みがあるっていうのはありがたいっすね。選手も疲れてるが、観客も疲れてる。ていうかワタシが(笑)。
●ゴールは後半18分。シャビ・アロンソが縦パスをピシッとイニエスタに入れて、イニエスタは(たぶん)ジョレンテをポストに使おうとパスを出したところ、相手にあたってふたたびイニエスタへ。これをキープしながら横に動いてアウトでスルーパス(!)、これをシャビがダイレクトでヒールで流して(!!)、走りこんだビジャがシュート。キーパーがこぼしたところをもう一度ビジャが蹴ってゴール。なんですか、その異次元のパスワークは。まるでウイイレ名人の神プレイ。1ゴールだけだけど、完勝。
パラグアイvsニッポン。消耗戦。
●毎回、ワールドカップは楽しみだ。そう思って世界中でたくさんの人々がテレビを見る。自国の試合じゃなくても見たい、特に決勝トーナメントに入れば。そもそも世界中の多くのファンにとって、自国の代表は大会に出場していない。
●そんなフツーのサッカー・ファンの視点で見たら、これ以上退屈な凡戦はなかったと思う。ニッポンはグループリーグと同様に守備的に戦った。たまに攻撃の機会があってもパスがつながらず、つまらないミスを連発し、アイディアにも乏しく、第三者にとっては120分も見ていられない酷い試合だったにちがいない。ニッポンだけじゃなくパラグアイも消極的だったから、こんな試合になった。ともに「初のベスト8」がかかっていたから、こうなったのか。どちらの選手も体が重そうで、キレがない。
●お互いがそういう戦いを選択した結果こうなったんだから文句は言えない。たとえファンとして少し恥ずかしい気分になったとしても。「どうせ敗退するのなら、フレッシュな選手を使って、パスをつないで攻撃した上で、カウンターを食らって負けるほうが潔い」なんて思ったとしても(実際思ってるが)、それはただの結果論。もしPK戦で勝っていれば、これぞ現実的な戦略だと岡田監督を賞賛し、スキップしながら渋谷に出かけていくに決まっている。現在のニッポンの実力でワールドカップ・レベルで結果を残そうと思ったら、この戦い方しかないのもしれない。事実結果が残ったし、自信も付いた。チリみたいなサッカーをして決勝トーナメントに進もうとしても、個々の技術も戦術も不足しているのかもしれない。しかし、この千載一遇のチャンスにもう少しリスクを取って攻めてもよかったんじゃないかという未練だってやっぱりあるわけで、ここまできた満足感と失望が一緒になって、茫然とする。悔しい。
●選手は力を尽くして戦い抜いた。パラグアイのほうがやや決定機は多かったが、引分けという結果は妥当か。PK戦は運の要素が大きいので、抽選だと思うしかない。パラグアイは全員がきっちりと決めた。駒野が失敗。バッジョでもはずすときははずす。
●試合終了後の長谷部のコメントが偉かった。「選手の大半はJリーグでプレイしているので、試合を見に来てほしい」的なことを言ってくれたんすよ(かつてのナカタの「Jリーグもよろしく!」を思い出させる)、長谷部はドイツでプレイしてるのに。さすがリーダー。代表監督の戦略や戦術、チーム一丸となった結束力とか、いろいろなものが勝敗に影響するのは確かなんだけど、ベースになるのは普段の所属クラブでのプレイ。今後海外組が増えるとしても、Jの水準がすべての第一歩なのは変わらない。Jリーグがさらなる厚みを持って盛り上がり、レベルが上がりますように。画面を見つめるサッカーも楽しいんだけど、天気のよい日にスタジアムで観戦する生のサッカーは最高! まだどこのサポでもない人には、ウチからいちばん近いスタジアムのクラブを応援することを強くオススメ。J1でもJ2でも。いや、その下のJFLでもスゴくおもしろいっすよ。忙しくてなかなか足を運べないにしても、シーズンに1試合でも2試合だけでもスタジアムで観戦すれば、その後のテレビ中継もぜんぜん違って見えるはず。
●俊輔のコメントから落胆ぶりが伝わってきて痛々しい。しかしピッチ上ではなにもできなかったとしても、彼はなにかを今大会から得たはずと信じる。
●次は4年後……か、どうか、ぜんぜんわからないんだよなあ。ニッポン以外のアジアのレベルもどんどん高くなっている。予選を戦わねば。でも、これからは「アジアの戦い」用の攻撃型チームと、「世界の戦い」用の守備型チームを両方用意することになるのか? いや、そりゃ次の監督が決めるのか。