●ニッポンが負けてもワールドカップは続くんである、容赦レスに。で、試合が始まってすぐに羨望。なんて巧いんだ。スペインはもちろん、ポルトガルも。ニッポン戦と同じ日にこんな試合が続くとは。ますます悔しい。でもな、大会全体としてはニッポンはすばらしい戦いを見せてくれたんだから、ヨソ様のサッカーのことなど羨むことはないのだ。あ、なにイニエスタ、そのパスは、うわ、ジャビすげえ、セルヒオ・ラモスまでそんなことを。前言光速で撤回、猛烈に羨ましいぞ、そのサッカー!
●スペインはグループリーグ第一節は貧血でも起こしてるのかと思うような出来だったが、徐々に調子が上がってきているみたいで、見違えるほど強まっている。やっぱり優勝を狙うようなチームはこうなのか。パスが美しく回る。正確。バルセロナ風味。どうしてここにメッシがいないのかと錯覚しそう。終盤にペドロまで入ってくるし。
●しかし前のニッポン戦で呆然としてしまったのと寝不足とで、この試合を落ち着いて見てられない。なんていうかな、フランス大会、日韓大会、ドイツ大会までは「ニッポンが負けてからが、本当のワールドカップ」みたいな気持ちの切り替えができたんだけど、それってやっぱりゲスト参加みたいな気分があったというか、今回は「これで一人前の参加国として認めてもらえた」的な妙な感慨がある分、もとのワールドカップに戻ってこれないというか。
●そういう意味ではちょうどここでベスト8がそろって二日間お休みがあるっていうのはありがたいっすね。選手も疲れてるが、観客も疲れてる。ていうかワタシが(笑)。
●ゴールは後半18分。シャビ・アロンソが縦パスをピシッとイニエスタに入れて、イニエスタは(たぶん)ジョレンテをポストに使おうとパスを出したところ、相手にあたってふたたびイニエスタへ。これをキープしながら横に動いてアウトでスルーパス(!)、これをシャビがダイレクトでヒールで流して(!!)、走りこんだビジャがシュート。キーパーがこぼしたところをもう一度ビジャが蹴ってゴール。なんですか、その異次元のパスワークは。まるでウイイレ名人の神プレイ。1ゴールだけだけど、完勝。
worldcup2010: 2010年6月アーカイブ
スペインvsポルトガル。羨望。
パラグアイvsニッポン。消耗戦。
●毎回、ワールドカップは楽しみだ。そう思って世界中でたくさんの人々がテレビを見る。自国の試合じゃなくても見たい、特に決勝トーナメントに入れば。そもそも世界中の多くのファンにとって、自国の代表は大会に出場していない。
●そんなフツーのサッカー・ファンの視点で見たら、これ以上退屈な凡戦はなかったと思う。ニッポンはグループリーグと同様に守備的に戦った。たまに攻撃の機会があってもパスがつながらず、つまらないミスを連発し、アイディアにも乏しく、第三者にとっては120分も見ていられない酷い試合だったにちがいない。ニッポンだけじゃなくパラグアイも消極的だったから、こんな試合になった。ともに「初のベスト8」がかかっていたから、こうなったのか。どちらの選手も体が重そうで、キレがない。
●お互いがそういう戦いを選択した結果こうなったんだから文句は言えない。たとえファンとして少し恥ずかしい気分になったとしても。「どうせ敗退するのなら、フレッシュな選手を使って、パスをつないで攻撃した上で、カウンターを食らって負けるほうが潔い」なんて思ったとしても(実際思ってるが)、それはただの結果論。もしPK戦で勝っていれば、これぞ現実的な戦略だと岡田監督を賞賛し、スキップしながら渋谷に出かけていくに決まっている。現在のニッポンの実力でワールドカップ・レベルで結果を残そうと思ったら、この戦い方しかないのもしれない。事実結果が残ったし、自信も付いた。チリみたいなサッカーをして決勝トーナメントに進もうとしても、個々の技術も戦術も不足しているのかもしれない。しかし、この千載一遇のチャンスにもう少しリスクを取って攻めてもよかったんじゃないかという未練だってやっぱりあるわけで、ここまできた満足感と失望が一緒になって、茫然とする。悔しい。
●選手は力を尽くして戦い抜いた。パラグアイのほうがやや決定機は多かったが、引分けという結果は妥当か。PK戦は運の要素が大きいので、抽選だと思うしかない。パラグアイは全員がきっちりと決めた。駒野が失敗。バッジョでもはずすときははずす。
●試合終了後の長谷部のコメントが偉かった。「選手の大半はJリーグでプレイしているので、試合を見に来てほしい」的なことを言ってくれたんすよ(かつてのナカタの「Jリーグもよろしく!」を思い出させる)、長谷部はドイツでプレイしてるのに。さすがリーダー。代表監督の戦略や戦術、チーム一丸となった結束力とか、いろいろなものが勝敗に影響するのは確かなんだけど、ベースになるのは普段の所属クラブでのプレイ。今後海外組が増えるとしても、Jの水準がすべての第一歩なのは変わらない。Jリーグがさらなる厚みを持って盛り上がり、レベルが上がりますように。画面を見つめるサッカーも楽しいんだけど、天気のよい日にスタジアムで観戦する生のサッカーは最高! まだどこのサポでもない人には、ウチからいちばん近いスタジアムのクラブを応援することを強くオススメ。J1でもJ2でも。いや、その下のJFLでもスゴくおもしろいっすよ。忙しくてなかなか足を運べないにしても、シーズンに1試合でも2試合だけでもスタジアムで観戦すれば、その後のテレビ中継もぜんぜん違って見えるはず。
●俊輔のコメントから落胆ぶりが伝わってきて痛々しい。しかしピッチ上ではなにもできなかったとしても、彼はなにかを今大会から得たはずと信じる。
●次は4年後……か、どうか、ぜんぜんわからないんだよなあ。ニッポン以外のアジアのレベルもどんどん高くなっている。予選を戦わねば。でも、これからは「アジアの戦い」用の攻撃型チームと、「世界の戦い」用の守備型チームを両方用意することになるのか? いや、そりゃ次の監督が決めるのか。
ブラジルvsチリ。男前。
●男前である、チリ代表が、ずば抜けて。今回、ブラジルですらドゥンガ監督のもと守備的な(ヨソに比べりゃ十分攻撃的だが)布陣を組んできた。攻撃的フットボールのもう一つの親玉オランダだって、スペクタクルとは言いがたい。それなのに、ビエルサ監督率いるチリは全参加国のなかで唯一ぶっちぎりの楽しい攻撃サッカーを貫いている。損だとわかっていても攻める。ミスしたらカウンターになるとわかっていても短いパスをつなぐ。意地でも相手ディフェンスを崩す。その分、守るときはカード覚悟で激しく当たる。
●彼らは背が低い。背が低いんだけど、精一杯背筋を伸ばして着飾り、堂々と男らしく振舞う。「オレたちカッコいいだろ」のモテたいサッカーなんである。しかしモテたいサッカーには弱点がある。隣にナチュラルイケメンが立たれると辛い。カカーとか。クリスチャーノ・ロナウドとか。ベッカム様とか(出てないけど)。オレたち、こんなにがんばってるのに、ヤツらは自然体でモテてるぜ!
●すなわち超攻撃型チリが、より攻撃力に勝るブラジルに真正面からぶつかったとき、お互いの歯車はピタリとかみ合って、祭りになる。ブラジルの祭りなんだけど。気持ちよくブラジルが攻める。カウンターも繰り出し放題。フアンが、ルイス・ファビアーノが、ロビーニョがやすやすとゴールを決めて3-0。楽園。特にカカーのワンタッチ・パスからルイス・ファビアーノが抜け出た場面はきれいだった。後半途中交代してベンチに戻ったときのカカーの笑顔、見たですか。なんという爽やかな笑顔。「ふー、僕、いい汗かいちゃった、すっきり!」的な充足感。チリは必死の覚悟でカッコよく装っていたのに、その努力をすべてムダにするかのようなカカーの笑顔。
●偉いよ、チリは。引き立て役になる可能性が高いとわかってても、ブラジル相手に守ろうとか微塵も考えなかったと思う。南米予選で2位だったけど、ブラジルには2戦2敗だったというのも納得。事実、チリ側にもスペクタクルな瞬間はあった。サッカー、楽しい!
●これで負けなけりゃ文句なしなんだが、3-0だからなあ。サッカー、難しい。
●ブラジルは後半にルイス・ファビアーノ、カカー、ロビーニョと順にベンチに下げた。もう次のオランダ戦に向けて選手のコンディションを整えているかのように。カカーは1試合出場停止で休んでるんだけど、イエローもらってたし。次戦は万全。ダニエル・アウベスを中盤で先発使用。コートジボワール戦でエラーノが負傷したのは誤算だったけど、うまく控えの選手も使いながら、チームの調子を上げているような印象。
●準々決勝のブラジルvsオランダとアルゼンチンvsドイツは最高のカードっすね。特に前者はワールドカップ・ダービーというか。もっとも華やかなカード(であると願う)。
オランダvsスロヴァキア。ロッベン復活。
●「美しく勝つ」。ていう「クライフの呪い」から、今回のオランダは逃れているようで、楽しさという点ではもう一つなんだけど、その代わりに強い。前半18分、ついに先発に復帰したロッベンが右サイドからドリブルで切れ込んで地を這うようなミドルシュートを鮮やかに決めた。圧倒的な個人能力の高さ。しかしその後の展開はやや盛り上がりに欠けた。
●スロヴァキアは相当に大型チームで、オランダ代表がやや小柄に見えた(!)。190cm代が何人もいるんでは。十分オランダに対抗できたはずなんだけど、攻撃の場面で肝心なところでミスが目立ったのが惜しい。ドフリーのシュートもあったのに。終盤、2-0でリードされていた場面で大型選手を入れてきたので、てっきりパワープレイを仕掛けるのかと思ったら、フツーにボールをつないでいてじれったい。オランダがパワープレイで押されるという珍しいシーンを見れる(ら抜き)かと少しワクワクしたのに。
●ロスタイムに意味のないPKがスロヴァキアに与えられた。PKが入ったところで笛が鳴り、キックオフに至らず。スゴい蛇足感。2-1で終了。
●オランダ代表はライカールト時代あたりは先発の大半がアフリカ系だったような記憶があるんだけど、いつの間にか圧倒的に白人化が進んだ。謎。
●スロヴァキアではモヒカンがはやっているのか?
決勝トーナメント:アルゼンチンvsメキシコ。幻のオフサイド。
●前の試合で主審が明らかなゴールを取り消したと思ったら、今度は文句なしのオフサイドが見逃されてしまった。しかも今回はイタリア人主審なのに。これで審判失格の烙印を押していたら、サッカー界から審判は絶滅する。絶滅危惧種になってレッドリストに載る。WWFのマークが白黒パンダからサッカーのレフェリーウエアに変わる。
●じゃ、準決勝からはセルフジャッジで。
●なわけない。人数足りない草サッカーじゃないんだから。
●アルゼンチンはグループリーグ3戦目にメッシ以外の主力を休ませて万全の体制。前はメッシ、イグアイン、テベス。走らないベロンはベンチ。コンディションも上がってきて、グループリーグのときよりさらに強まっている。攻撃も守備もいい。ただ、メキシコもすばらしいんすよ。むしろ序盤はメキシコが押していたし、その後不利な状況になってもクォリティはとても高かった。この段階での敗退は相手が悪かった。しかも運も悪かった。
●問題のゴールは前半26分。キーパーが弾いたボールをメッシがダイレクトで前に浮かせて、これをテベスがヘディングでシュート。テベスは完全にオフサイドだった。メキシコの選手たちが副審に詰め寄り、主審と副審が協議したけど、ゴールが認められてしまった。集中力を欠いたのか、その後、メキシコのセンターバック、オソリオが信じられないミスでイグアインにボールをプレゼントして、これを決められて2-0に。
●後半7分のテベスのミドルは強烈。あんなに腰が回るなんて。気圧の低さも弾道に影響しているのかもしれないが、凄まじいパワー。メキシコも積極的に遠目から打っていたが実らず。メキシコは後半26分のエルナンデスの個人技がすばらしかった。ゴール前でディフェンスを背負いながら、ぎりぎりまでボールをひきつけて、シュートを打ちやすい方向にはたきながら鋭くターン、きれいに相手を交わしてニアサイドの上に強いシュート。22歳、新シーズンからマンチェスター・ユナイテッドでプレーするんだとか。
●アルゼンチンが3-1で勝利。一点差でなかったのが救いと言えば救いか。これくらいの誤審は日常茶飯事だが。
決勝トーナメント:ドイツvsイングランド。幻のゴール。
●激しい当たりをものともせずに、大男たちがグラウンドを広く使ってビシバシと高速パスをつなぎながら、前へ前へと突進する。ボールを持てばどんどん後ろから選手が押し上げてくれるし、ボールを失えば即座に戻って守備。規律があってハードワークを厭わない。何人かは足元の技術もスペシャルな豪華仕様。広く見れば似た物同士の対戦で、レベルの高さをまざまざと見せ付けてくれた。おお、これはいい試合になるのでは、と思った、前半の半ばくらいまでは。
●前半20分、ドイツのゴールキックがディフェンスラインの裏に抜け、そのままクローゼが競り合いながら抜け出してシュート、これが決まって先制。なんという強さというか、味気なさ。ワールドカップでクローゼがゴールを決めるのは、見飽きるほど見たという気がする(通算12ゴールだとか)。
●前半32分、ポドルスキが浅い角度からの豪快なシュートを決めてドイツ2-0。前半37分、イングランドはコーナーキックかアップソンがヘディングで1点返す。で、問題はその直後。ランパードがキーパーの頭上を越すシュートを狙い、これがバーに当たってゴールラインを割る。地面にバウンドした時点で明らかにゴールに入っていたのだが、審判はこれをノーゴールと判定してしまった。認められれば、2-2で試合が熱くなっていたのだが……。
●後半、ドイツは前がかりになったイングランドを容赦なく攻めて、終わってみれば4-1の圧勝。ドイツの中盤のエジルは、容貌といいプレイスタイルといい、羽生にそっくり。あれ、エジルじゃなくて羽生なんじゃないの?とTwitterでつぶやいたら、「オシムもドイツにハニューがいるって言ってた」と教えていただいた。オシムと見解が一致して嬉しいぞ(笑)。
●大差になったとはいえ、イングランドの幻のゴールが試合の流れに大きく影響したのはまちがいない。66年W杯決勝の疑惑のゴールに続く因縁? いやそんな昔の試合、見てないから。ウルグアイ人審判への批判は避けられない。「じゃあテクノロジー使って正しく判定しようよ」派と「主審のミスも含めてサッカー。だって人間だもの」派の議論が再燃すること確実。そう思っていたら、次の試合でも……やれやれ!
決勝トーナメント:アメリカvsガーナ。安堵。
●ふー。早起きして録画再生。決勝トーナメントは延長戦ありなわけで、午前3時半の試合は録画時間延長必須。PKまで入ると何分くらい余計に見ておけばいいのか、とりあえず午前6時半までなら十分?
●で、アメリカ。無尽蔵の体力と不屈の精神力。よく走り、諦めない。おまけに客席にビル・クリントン元大統領が来てたり、スタジアムにも本物のアメリカ人サポーターたちが来ていたりと、ついにかつてのサッカー不毛の地が真の強国への道を歩みつつある。今、FIFAランキング14位? ていうかもっと上まで来てたこともある。フットボール的な意味における「シャレの通じない」相手ナンバーワンだ。放っておくときっと優勝する。世界中のサッカーファンが怖れる光景、それはアメリカがW杯で優勝を果たし、全米が無関心のままという事態だ。せめて全米が泣いてくれ。でも興味ないでしょ、メッシとかカカーとか>全米。ああ、想像しただけでも耐え難い屈辱。
●だから倒さねばならぬ、アメリカを一刻も早く。その大役を務めるにあたって、不振のアフリカ勢の中で唯一勝ち残ったガーナほどふさわしいチームはない。前半5分、ガーナ代表だけどホントはドイツに生まれ育ったケヴィン・プリンス・ボアテングが正義の先制ゴール。しかしアメリカは決して下を向かない。前半5分、ガーナはPKを与えてしまい、これを敵の大将とも言うべきドノヴァンが決めて地獄の同点ゴール。アメリカは的確な選手交代もあり、サッカーの質では上回っていた。90分で決着がつかず延長へ。旗色の悪いガーナであったが、延長前半3分、苦し紛れのクリアボールがディフェンスラインの裏に抜け、これをギャンが相手ディフェンダー二人を振り切りながら、体制を崩しつつシュート、超人的なボディバランスによって祝福の勝越しゴールを達成! まさに奇跡のような個人能力。アメリカは最後まで厳しく攻撃を続けたが、ガーナはかろうじて守りきった。ベスト8。全アフリカが泣いた。
●えっと、本当のこと言うと、アメリカはワタシらのお手本になる新興国だと思うんすよ。今度、弟子入りさせてください。
決勝トーナメント:ウルグアイvs韓国。消耗。
●うーん、体が重い。こんなペースで試合が続けばそりゃ疲れもたまるよなあ……はっ。今のはワタシ自身についての感想であろうか、それとも韓国代表の動きからキレが失われていることについて呟いてしまったのであろうか。両者中三日、移動あり。なぜか韓国に躍動感と集中力が欠けているようで、前半8分にあっさりとウルグアイ先制。これはいただけない。ウルグアイの右サイドからのクロスが流れて、左サイドでフォルランがいったんキープ、そして相手GKとディフェンスラインの間に低いクロスを送ったら、それがそのまま逆サイドまで流れてスアレスがフリーでシュート。キーパーは前に出たのに触れないし、ディフェンスはまったくスアレスをケアできていなかったし。
●なんか不用意な失点するし、動きは悪いし、でもパク・チソンだけはスーパーなプレイをしてて、むしろこれは少し前のニッポン・テイスト。
●しかし徐々に韓国は調子を取り戻し、後半は守りに入ったウルグアイを韓国が攻め続ける展開に。後半23分、イ・チョンヨンが頭で決めて同点。攻め合いになって、後半35分にコーナーキックからこぼれたボールをスアレスがシュートして2-1。ウルグアイが勝利。
●ウルグアイは基本的に前線の3人、フォルラン、スアレス、カバーニで攻める。余計なパス回しはしない堅守速攻スタイル。フォルランは決定力も高いし、パスも出せるし、スピードもパワーもあるし、フリーキックもできるし、経験も豊富で完成されたストライカー。自分のチームに欲しいタイプ。忘れがちだがウルグアイはW杯優勝経験のある数少ない国の一つなので、「W杯はかつて優勝した国が優勝する。その例外は開催国が優勝する場合」という大雑把な経験則を適用すると、彼らにはチャンスがある。
ポルトガルvsブラジル。安全に消化。
●出た! ワールドカップ名物、グループ1位と2位の退屈なスコアレスドロー。お互いに納得できる0-0の引分けで、G組は1位ブラジル、2位ポルトガルが通過決定。
●とはいえ、前半は激しくやりあった。開始時点ではこのゲームは消化試合ではなかったはず。ブラジルはどうしても勝つか引分けるかして1位通過したかったから。なぜなら、G組1位なら決勝トーナメントは左の山に入り、2位なら右の山に入る。これは優勝を狙うチームには大変重要だ。なぜなら左の山は決勝戦を中4日で戦うのに対して、右の山は中3日で戦わなければいけない。優勝を狙うチームにとっては、明らかに左の山が有利なんである。
●そういう意味ではグループ1位になったときに左の山に入れる組、すなわちA組(開催国が入る)、C組、E組、G組のほうが日程上は優勝を狙いやすい。もっといえば早くから試合をできる(結果的に全体の試合間隔が緩い)A組がベスト。B組やD組等は1位より2位のほうが決勝の日程に恵まれるが、「わざと2位になる」というチャンスはめったにない。1位になって左の山に入れる組は、それ以外の組に対して比較優位がある。
●そんなわけでC組1位を狙えるイングランドはそれゆえに優勝候補に挙げられてよかったと思うんだが、彼らはあえなく2位に終わり右の山へ。1位はアメリカだ(げげ)。日程的には開催国の入るA組の1位、つまりウルグアイが一番おいしいポジションを取った。実力を加味すれば、E組1位のオランダ、G組1位になったブラジルも悪くない。
●話を戻すと、ポルトガルにとっても、ブラジル同様、1位を欲しかったとは思う。しかし彼らは負けてしまうと決勝トーナメントに進めなくなる可能性があった。コートジボワールが北朝鮮に勝つと(たぶん勝つと予想できる)、勝点がポルトガルと並ぶ。ただ、ポルトガルとコートジボワールの得失点差は試合開始時点で9もあった。ポルトガルが北朝鮮に7-0の大差で勝ったからだ。だからまあ、負けてもポルトガルは進める可能性が高いことは高いんだが、9という得失点差は「絶対」ではない。民放の解説者はこの9点差を「非現実的」と言ってたが、それは変だろう。だって、ポルトガルが北朝鮮に7点差で勝ったのはすでに起きた現実そのものじゃないか。だったらコートジボワールが同様に7点差をつけて勝ってもなんの不思議もない。その場合、ポルトガルがブラジルに2点差で負けたら(フツーにありえる)、9点の得失点差はゼロになる。事実、前半20分までにコートジボワールは2ゴールを奪った。その後失速して3ゴールにとどまったが、もし前半終了時にポルトガルがリードされていたら彼らの士気もまた違ったはずだろう。
●前半、イエローカードは7枚出た。なにをそんなに熱くなっているのだ。そして後半、イエローカードはゼロになった。それだけでもどんな試合になったか想像がつきそうなもの。後半は無理をしない戦いで、どちらかが大きなミスをしない限り点の入りにくい状況に。ポルトガルは引分けて自力2位を確保し、寛大にブラジルの1位突破を許した。安心!安全!
●スカパーでしか中継のなかったH組は、苦しんでいたスペインがチリに勝って結局1位に(なあんだ)。チリに前半から退場者が出てしまい1-2。幸いスイスとホンジュラスが引分けてくれたおかげで、無事チリも2位通過ができた。南米は参加国すべてが決勝トーナメントに進んだ。
●決勝トーナメントに残った欧州勢は6つ。しかしそのすべてが1回戦でつぶしあう。オランダvsスロヴァキア、イングランドvsドイツ、ポルトガルvsスペイン。ベスト8のうち、必ず3つが欧州勢になる。というか、たった3つしか残らない!!
デンマークvsニッポン。もう渋谷行くしか!(ウソ)
●ス、スゴすぎる! まさかこんなにふうに完勝してしまうなんて。ニッポン、2勝1敗の勝点6、グループ2位で堂々の決勝トーナメント進出。
●この第3戦。ニッポンは勝つか引き分けでOK。デンマークのほうも勝てば進出。裏カードの結果は関係しないという、わかりやすい勝点状況でキックオフ。序盤はデンマークがニッポンを圧倒した。パススピードが非常に速くて、ピッチをワイドに使ったダイナミックなサッカー。まさにこれがデンマークというスタイル。ディフェンダーの間にたびたびトマソンが走りこんできて、次々とチャンスを作られてしまう。テレビだと全体が見渡せないのでよくわからなかったが、どうやら今日は2ボランチで守っていたのがうまく機能しなかったとか。で、現場の判断で阿部がトマソンに付いてから落ち着いた模様。この大会は阿部のアンカーと本田のワントップの功績が猛烈に大。
●本田、前半17分のフリーキック。距離があるので直接入るとは期待していなかったが、まさにクリスチャーノ・ロナウドばりのブレる無回転シュートでネットを揺らした(35mもあったって?)。続く前半30分、ふたたびゴール前のフリーキック。今度も本田が蹴るかと思いきや、ボールの側に立っていた遠藤が右足でこするように蹴って、これが壁を巻いてきれいにゴール右上隅に入った。GKソーレンセン気の毒。その後、動揺があったのか、遠藤の山なりのフリーキックに慌てる場面も。キーパーの立ち位置が微妙に前すぎるのを見て、あそこに蹴れてしまう遠藤のイジワルさが吉。
●それにしても、ここからが困った。あっさりと2点リード。3点失わない限り、決勝トーナメントに進めるという圧倒的な優位。浮かれていいはずなんだけど、ドーハ以来の失点恐怖症が体の奥深くに刻み込まれているためか、どう気持ちを持っていけばいいのか、わからない。「絶体絶命」っていうのはなんどもあるけど、「どう考えてもド楽勝」などという珍しい状況が、まさかワールドカップのこの場面で到来するとは!?
●今日の主審は最初から不安定だった。後半36分になって、待ち構えていたかのように長谷部のプレイにPKを宣告。あれのどこがPK? その一方でPKが取られてしかたのないような場面でも笛を吹かなかったりとか、謎。トマソンのPKはコースが甘く、川島が弾いたものの正面だったため、ふたたびトマソンにシュートされて1-2。
●デンマークはパワープレイに来るんだけど、むしろ序盤のようにつながれたほうが怖かった。中澤とトゥーリオは強力。
●後半42分、ゴール前で本田が見せた鋭い切り返しにも驚き。こんなことまでできちゃうの? で、自分でシュートせずに中にパスして岡崎に押し込ませた。本田ってエゴイストみたいな口ぶりでモノを言うけど、少なくとも今大会でやってることは正反対で、ひたすらチームのために献身的にプレイしている。何よりトップの位置で体を張ってボールを収めることに尽力しているわけで。ナカタとぜんぜんタイプ違うから。
●メンバー書いておかねば。GK:川島-DF:駒野、トゥーリオ、中澤、長友-MF:阿部、長谷部、遠藤(→稲本)、松井(→ 岡崎)、大久保(→今野)-FW:本田。ほんの少し前まで、阿部とか駒野、大久保、松井がこんなにワールドカップの試合に出場することになるなんて想像もしなかった(逆に中村俊輔や内田に出番がないことも)。ホント、わからないものっすよね。
●決勝トーナメントではパラグアイと対戦することに。強敵。午後11時の試合なのは助かる。午前3時半だと仮眠してから起きて観戦して、また少し寝るというのがキツくて。それにしても瞬間最高視聴率、午前4時58分で41.3%って何事?
スロヴァキアvsイタリア。王者敗退。
●ね、眠い……。続く早朝のニッポン戦で快挙が成し遂げられたわけだが、その前にF組のスロヴァキアvsイタリア戦だ。これもとんでもない試合だった。
●イタリアはここまで2引分けという冴えない展開。ただもともとスロースターターなので、ここできちんと勝ってしまえば問題ない。スロヴァキアは1敗1分とさらに厳しく、勝利が最低条件。
●イタリアは中盤にガットゥーゾを起用。2トップはディ・ナターレをイアキンタと組ませた。しかし予想に反して、試合は最初からスロヴァキア・ペース。前半25分、イタリアの不用意なパスをカットしたところから生まれたヴィテクの先制点なんて、どっちがイタリアなんだかわからないしたたかさ。
●このままではどうにもならない。リッピ監督の決断はすばやかった。後半開始からガットゥーゾを下げてクアリアレッラを投入、クリシートをマッジョと交代。さらに後半11分にモントリーヴォを下げて、ついに負傷していたエース、ピルロをピッチに送る。で、なにがスゴいかといえば、この決断力に富んだ交代策がぜんぜん効かなかったこと。「老馬にムチを入れても、速くは走れません」(イヴィチャ・オシム)←ウソ。後半28分にふたたびヴィテクがゴールを決めて、イタリアはますます悪い事態へ。
●しかし後半36分、クアリアレッラのシュートをキーパーが弾いたところにディ・ナターレが詰めて1点返して反撃。2-1。ここからようやくイタリア怒涛の攻撃へ……というところで、後半44分にスロヴァキア、スローインからコプネクがシュートを決めて3-1。もうダメか。パラグアイvsニュージーランドの途中経過は0-0。もしそのままなら、イタリアはあと2点を取って引分ければ、3引き分けでニュージーランドと並び(当然得失点差は0)、総得点で上回って2位で勝ち抜ける。しかし時間がなさすぎる。
●ロスタイム表示は4分。後半47分、クアリアレッラがループ気味にゴール右上に決める技巧的なシュートを決めて3-2。スロヴァキアもあらゆる手段で時間を消費する。笛が鳴ったのは50分か51分くらいだろうか。イタリア、あと一歩及ばず。パラグアイとニュージーランドはそのままスコアレス・ドローだったので、1位パラグアイ、2位スロヴァキアが通過。無勝にして無敗のニュージーランドが3位、イタリアはまさかの最下位。だれ一人予想できなかった順位では。
●今大会でうっすらと感じられる現象は、欧州強豪国の情熱の欠如。クラブ単位でのチャンピオンズリーグが隆盛を極める今、成功した選手たち(特にベテラン)は代表でのワールドカップに対する熱意や新鮮な気持ちを失いつつあるのかも。しかもイタリアは前回優勝で、その優勝メンバーが多く残っていた。すべてを手に入れた上で、さらにまだ力を尽くすというのは難しい。
スロヴェニアvsイングランド。踊れず。
●C組第3節。うーん、なんという困った対戦。スロヴェニアの謎のゴール・パフォーマンス「腰の入っていない阿波踊り」はもっと見たい。しかしイングランドが早々に敗退するのも惜しい。この時点で1位はスロヴェニアで、引分け以上で決勝トーナメント進出決定。一方イングランドは勝てば進出。ただ、イングランドは引き分けでも、この日、裏カードのアメリカvsアルジェリアが引き分けて、なおかつ本日イングランドがアメリカより2点多く取れば抽選(3点以上多く取れば勝ち抜け)という「薄い可能性」も残していた(ワタシの星取表の読み方が間違っていなければ。なんというややこしさ)。
●一方、スロヴェニアが負けた場合でも、アメリカvsアルジェリアが引分けであれば、勝ち抜け決定。つまり、スロヴェニアとイングランドがともに仲良く勝ち抜ける可能性は何パターンかあった。
●試合はやはり個人能力の高いイングランドが押す展開に。イングランドはトップにヘスキーに代えてデフォーを、中盤にレノンに代えてミルナーを起用してきた。これが大正解。前半23分にミルナーのクロスにデフォーが飛び込んでゴール。
●後半、ルーニーはドフリーの決定機に決められず。スローで見るとスロヴェニアのキーパー、ハンダノヴィッチがかすかに触ってコースを変えている。神業。ルーニーの出来は悪くないと思うんだが、日頃の活躍ぶりからするとこれくらいじゃ許してもらえないのか?
●後半、スロヴェニアにもチャンスはあったんだけど、イングランドは気迫の守りでこれを防いだ。忘れられないシーンがこの写真。相手のシュートに対してテリーが身を投げ出すどころか、地面スレスレに頭を投げ出している、ハンドにならないように腕を胴に付けながら。なんか違うスポーツみたいだ(笑)。
●このまま0-1で試合終了して、イングランドは歓喜。一方、アメリカvsアルジェリアのほうは0-0の途中経過が伝えられていて、スロヴェニアも進出かと思われていたのだが……なんと、ロスタイムにアメリカが劇的決勝ゴールを奪ってしまった! ベンチに帰るスロヴェニアの選手たちの表情が「いや~な予感」に曇っていたように見えた。
●アメリカはこの1ゴール、この1勝によって一気にグループ首位へ。イングランドは2位通過。スロヴェニアは3位に転落してしまった。がっかり。
●未明のD組は1位ドイツ、2位ガーナが進出。ドイツは危なかったが終わってみれば1位。ガーナは地元アフリカ勢初の進出。オーストラリアはセルビアに勝利したものの、対戦相手とともに圏外に沈んでしまった。序盤に勝っていれば「アジア勢が欧州に勝利!」と報じられたかもしれないが、結果を左右しない3節目の勝利だと話題になりようがないのが惜しい。
●決勝トーナメント表の左側の4カ国が恐ろしいことになっている。ウルグアイ、韓国、アメリカ、ガーナ。確実にこの中の一つが最低ベスト4には進出する(!)。そのベスト4に進出した国は、もう1回勝てば決勝に進み、そこで勝てばW杯を制するわけだ。あー、これは戦慄するわ。
●逆に反対側の山はメキシコ、アルゼンチン、イングランド、ドイツと強豪つぶしあい。こちらは満員電車みたいな混雑感。
フランスvs南アフリカ。大量得点伝説の予感、一瞬。
●ワールドカップはグループリーグ3戦目がいちばんおもしろい。
●で、A組、フランスvs南アフリカ。どちらも苦境に立つ。同時開催の裏カード(いや表カードだ)はメキシコvsウルグアイ。こっちが引き分けるとめでたくウルグアイ1位、メキシコ2位となるわけで、予定調和的に引き分けられてしまうとフランスも南アもどうしようもない。が、もしメキシコかウルグアイのどちらかが勝ちどちらかが負ければ、フランスおよび南アは得失点差の争いに持っていける。自分たちが大量点で勝つか、あるいはメキシコvsウルグアイで大量点差がつくか。
●そんなわけでオープンなゲームになってくれたのだが、勢いは圧倒的に南ア。ブブゼラ(ヴヴゼラ、それともヴヴセラ?)の音がいつも以上に賑やか。前半20分、37分と立て続けに南アがゴールを奪ったときは、大量得点で伝説が始まるかと期待した。しかも両者引き分けでもよかったはずのもう一方の試合で、ウルグアイが1点を先制してしまったから、南アにも可能性が出てきた(メキシコは0-0で2位に甘んじるのを拒んだのか?)。
●星取表でメキシコと南アの得失点差をにらみながらゲームの行方を追うという第3戦ならではの展開。しかし、ワタシはメヒコ好きなのであり、南アに伝説を作られても困るんだが……。いやそれどころか、ここから崖っぷちのフランスが急に友情と団結と根性に目覚めて大反撃を開始して8-2くらいで南アを破って超絶ウルトラ大逆転で決勝トーナメントに進むみたいな少年ジャンプ的な展開があったらどうしようか? ドキドキ。
●後半25分、フランスはマルダが1点を返した。このあたりから両者とも残り時間に現実を見てしまったのか、クレイジーに攻める元気もなくなり、そのまま1-2で終了。両者、敗退。メキシコは1失点で耐えた。終わってみれば1位ウルグアイ、2位メキシコで、この試合前となにも状況は変わっていなかったわけだ。あんなに伝説の香りが漂ってたのが冗談みたいに。
●ちなみに、スカパーでしか放映されないB組のほうは、アルゼンチンが順当にギリシャを下し、韓国はナイジェリア相手に2-2の奮闘を見せて、1位アルゼンチン、2位韓国に。祝、アジア勢初決勝トーナメント進出。出場枠を守るためにも、アジア勢が活躍しなければ。決勝トーナメントでは韓国はウルグアイと対戦。これに勝てばベスト8。
●これで決勝トーナメントに4つのチームが進んだわけだが、南米2、中米1、アジア1で欧州ゼロ! まさか。
ワールドカップ2010、グループリーグ最終節へ。
●チリ 1-0 スイス。主審がうまく試合をコントロールできていなかった。ベーラミ一発退場とか、完全にチリのワナにかかったようで、やや残念な試合。しかしチリが勝ってくれたのは吉。楽しみなチーム。
●で、これでグループリーグの第2節が終わり、本日夜からいよいよ最終節へ。最終節はグループごとに2試合同時開催となる。地上波はどういう放送スタイルになるんすかね。適宜「より(勝点的に)おもしろいほう」を見せてくれたらいいなと思うが、試合はじっくり楽しみたい方もいるだろうしなあ。それと、スカパーがないと深夜3時30分の時間帯の試合は中継そのものがない(日本戦除く)。つまり全グループの5/8しか見ることができない。これが非スカパー派にとっては最大の弱点なんであるが、まあ事前にわかっていたことなのでしょうがない。しかし、こんなにグループリーグが混戦だらけになるとは……。
●欧州強豪国がいくつか脱落しそうでワクワク。そして、南米+メキシコ不敗伝説は続いている!
ブラジルvsコートジボワール。聖なる手。
●途中まで楽しい試合だったんだけど(ブラジル寄り)、後味はひどく悪いなー。
●ブラジルの監督はドゥンガ。今回のブラジルがどんなに守備的と批判されようが、そうは言っても今大会のグループリーグの中では際立って攻撃的なわけで、見ごたえのあるシーンは多々あり。ルイス・ファビアーノが2ゴール、エラーノが1ゴール。ルイス・ファビアーノの2点目は明らかにハンドで、これが見逃されてしまうのもワールドカップ。試合後のインタビューで彼はぜんぜん悪びれてなくて、ニコニコと幸せそうに「あれは聖なる手」とか言っちゃう。まあ、妙な言いわけされるよりはいいか。
●コートジボワールのドログバのゴールは完璧。しかしそれでようやく3-1。後半、試合が荒れたのが残念。コートジボワールは危険なプレイを次々と仕掛けてくるし、エラーノは脛に足の裏でタックルされて負傷退場しちゃうし、ワナを警戒してか、近づいてきた選手を軽く押し留めただけのカカーに2枚目のイエローが出て退場になってしまうし。最後はお互いにやられてもいないところを手で押さえながらの仮想暴力行為アピール合戦みたいになってた。ゴールは美しかったけど、試合は醜かった。
●ドゥンガ・ブラジルの布陣。ルイス・ファビアーノがトップにいて、ロビーニョ、カカーで攻める。中盤はエラーノ、フェリペ・メロ、ジウベルト・シウバ。守れる。右サイドバックはマイコン(インテル)。したがってダニエウ・アウベス(バルセロナ)が控えという超贅沢ポジション。左サイドバックは攻撃的なミシェウ・バストス(リヨン)。中盤のほうが地味めに見える。カカーはコンディションがもうひとつ。ロナウジーニョは代表に呼ばれていない。ロビーニョはレアル・マドリッドでプレイしていた頃より成熟しているように見える。ドゥンガは口でなんといおうと本心ではスペクタクルなんて求めてないだろうから、このブラジル代表は強そう。優勝候補(いつだってブラジルはそうだが)。
スロヴァキアvsパラグアイ、イタリアvsニュージーランド。F組混迷。
●まずはスロヴァキアvsパラグアイ。今大会のダークホースはパラグアイかもと予感していたのだが、試合を見てこれは好チームと実感。もともと堅守なのに加えて、この試合は攻撃陣も良かった。しかしサンタ・クルスもオッサン化してるなあ、昔は若くて颯爽としていたのに。1点目のエンリケ・ベラが右足のアウトサイドで倒れ込みながら打ったシュートは美しかった。2ゴールを奪って完勝、ほとんどスロヴァキアになにもさせなかった。
●この組、これでパラグアイが1位に。しかしまだ決勝トーナメント通過は決まっていない。続く試合が大変なことに。
●そしてイタリアvsニュージーランド。前回優勝国対今大会最弱国。だからイタリアのゴールラッシュが見れるかも、と期待しながらテレビの前に座ったら、なんと、ニュージーランド、イタリア相手に自信を持って堂々と戦ってる! 前半7分、セットプレイからカンナヴァーロの体に当たってこぼれてきたボールをスメルツが蹴りこんで、まさかの先制。いや、今大会は強豪国が苦労しているというが、いくらなんでもこれは……。
●この場面に限らず、カンナヴァーロが少々厳しかった。今年37歳か。全盛期が超人的だっただけに、この日の不調ぶりはなあ。ちなみにイタリアのキーパーはブッフォンが腰痛のため、カリアリ所属のマルケッティに。日頃セリエAを見てないせいか、イタリア代表に知らない選手が何人もいる。ベテラン以外の選手のビッググラブ所属率がずいぶん低い気がするのだが……。ブッフォンがいないとカリアリ所属のキーパーが出てきちゃうの? フォワードはジラルディーノとイアキンタ。
●で、イタリアは前半28分にデ・ロッシが倒されてPKをもらって、1-1の同点に追いつくんだけど、これはどう見てもデ・ロッシがもらいにいったようにしか見えなかった。さすがというべきか。あまりにニュージーランドが気の毒なので、ここからイタリアを裏切ってニュージーランド応援モードに。
●イタリアもニュージーランドもお互いにここまで勝点1しかないのに、終盤はイタリアが攻めて、ニュージーランドがあえて守る展開に。イタリアのリッピ監督は積極的に選手交代をしたが、まるで機能せず。イタリアの攻撃はアイディアも情熱も欠いていて、あまりに単調だった。1-1。2試合を終えてイタリアが勝点2とは。ニュージーランドが無敗とは。サッカー、わからない。
●ここまで「強豪が苦戦」って言っちゃうけど、実は苦戦してるのは欧州勢だけなんすよね。イタリア、スペイン、イングランド、フランス。南米勢は(メキシコも含めてもいい)ここまで驚きの無敗。こんなに南米が強いワールドカップは久々では。
オランダvsニッポン。半歩前進。
●さてニッポンの第2戦、相手は優勝候補のオランダ。選手個人の能力ではレベルが違いすぎる相手。ニッポンはどういう布陣で臨むべきかというのが悩みどころで、第3戦のデンマーク戦をベスト・コンディションで戦うために、主だった選手をすっぱり入れ替えたほうがいいんじゃないかっていう案があった(トルシエなど)。ワタシもその考え方には共感できるほう。ただ、第3戦のデンマーク戦を有利に戦うためには、引き分けても得失点差でデンマークを上回れるように、オランダ戦での失点を(仮に負けるにしても)極力抑えたいという考え方もあるわけだ。
●で、岡田監督は全員同じメンバーを先発させた。オランダからも勝点を取るという戦い方で、これは試合終了直前のパワープレイまで一貫していた。ニッポンは前半ひたすら走って守って耐えて0-0で乗り切り、後半も同様の戦い方を挑んだが、一瞬フリーにしてしまったスナイデルに豪快なシュートを叩き込まれてしまった。川島にセーブチャンスはあったけど、あのパワーはスゴい。オランダのほうも前半は慎重にプレイしながら日本を走らせておいて、後半スペースができたところで得点するというゲームプランだったんだろう。
●しかし失点の後のほうがハラハラしたかな。日本には得点のチャンスもあったし、失点のピンチもあって、どう転んでもおかしくなかった。後半19分から松井に代えて中村俊輔投入。これは完全に失敗。みんなでハードワークするサッカーをやっているところに、途中から入ってきた俊輔が悠然と王様プレイをしようしても。ファンとしては残念な限りだけど、あのプレイスタイルでは今大会もう彼に出番はないのでは。
●大久保の体が異様にキレている。強引に突破してシュートを打とうとするプレイが目立つ。伝説の予感の予感くらいの段階。可能性も危険性も感じる。終盤、トゥーリオはガンガンと前に上がった。これも効果的でもあり不安でもあり。最後には岡田監督がパワープレイを指示した。
●で、0-1で負けた。悔しいけど、実は悪くないのでは。決勝トーナメント進出に向けて、半歩前進したと感じたくらい。この後のカメルーンvsデンマーク戦の結果がとても気になるのだが、第3戦は日本はデンマークに引分けてもOKという状態になっていたい。つまり、カメルーンvsデンマーク戦は「デンマークが2点差以上で勝つ」というのが最悪の結果だろう(得失点差で追い抜かれる)。ニッポンにとっては最初に勝点3を得られたというのがとても大きい。
●カメルーン戦もオランダ戦も主審が「ファウルを取ってくれる」タイプだったのは幸運だった。耐え切れずに笛をもらいに行ったときに、かなりの割合で吹いてくれる。
●オシムが「日本は強豪国に敬意を払いすぎる。今日のオランダをはじめ、この大会で特別にリスペクトする必要のある国はただのひとつもない。日本は自分自身をもっとリスペクトすべき」と言っていたらしい。たしかにここまで強豪国もかなり苦労している。
●もしかしたらこの大会からワールドカップの風景が変わるかもしれない。ベスト4あたりが相当新鮮な顔ぶれになっているかも。
ドイツvsセルビア。黄紙10枚。
●ワールドカップ、グループリーグは2戦目へ。おおむね、大男たちが並ぶドイツ、しかしセルビアは2メートルのジギッチをはじめたぶんそれ以上に大男そろい。巨漢たちが激しくぶつかり合って、主審(スペイン・リーグの人だっけ?)が出したイエローカードは計10枚。ドイツのクローゼが前半37分に2枚目のイエローで早々に退場処分。たしかにイエローは妥当なファウルだとは思うが、しかしなあ……。
●セルビアの右サイド、クラシッチがよかった。クローゼの退場直後、サイドを駆け上がってクロス、これをファーでジギッチが頭で折り返し、中のヨヴァノヴィッチが押し込んでゴール。きれいに決まった。なんというか、むしろドイツっぽいゴールというか、あるいはバーチャストライカーのハメプレイ風味なゴール・パターンを思わせるというか、練習通りというか。
●しかしドイツはやっぱり強いと思った、このゴールで負けたとはいえ。一人多いセルビアが後半は守って、ドイツがどんどん積極的な選手交代をして攻めるという展開になってしまって。セルビアはもっとボールをつなげれば、あんなに攻撃を受けずに済むし、追加点を奪って楽に勝てたんじゃないかと思うんだけど(というか決定機をつぶしすぎ)、そこを守らせてしまうのがドイツのスゴさなのか。
●セルビアのディフェンダーは2戦連続でペナルティエリア内でハンドの反則。しかもどっちも思いっきり手を伸ばしてボールに触るという意味不明に故意のハンド。わけわからん。PKキッカーはポドルスキ。しかしやや弱気のシュートで、キーパーのストイコヴィッチがセーブ。ポドルスキらしくないというか。この日はとことんついてなかったけど、相手には脅威な選手。
●ドイツがグループリーグで負けたのは24年ぶりだって言うんすよ。強豪国でそこまでグループリーグからがんばる国はいないということなのか。なんだか、らしい。
●この試合の後、スロヴェニアvsアメリカの試合が続いたのだが、大変おもしろい試合だったはずなのに、途中から寝てしまった! そういえば、スロヴェニアの前の試合もワタシは途中から寝てしまったんすよ。で、思い出したんだけど、どちらもスロヴェニアの選手たちがゴールを決めた後にみんなでする「腰の入っていない阿波踊り」パフォーマンスは記憶があるわけで、どうやらあれを見るとワタシは寝てしまうらしい。なんかそういう「不思議な踊り」みたいなのってドラクエとかになかったっけ? 謎のラリホー効果。
●スロヴェニアが2回踊って、どうやら意外な国が決勝トーナメント一番乗りを果たしたなと思っていたら、目が覚めたらアメリカが追いついていた。
「ワールドカップは誰のものか―FIFAの戦略と政略」 (後藤健生著)
●ワールドカップの合間に「ワールドカップは誰のものか―FIFAの戦略と政略」 (後藤健生著/文春新書)。これはまさに今読んでおくべき良書。ワールドカップがなぜ南アフリカで開かれることになったのか、またこれまでの大会開催を巡るFIFAの権力闘争や政治権力の介入について、すっきりと見通しよく解説してくれる。特に南アフリカのスポーツ史、黒人サッカー史の部分はまるで知らないことばかりで、今大会を見る目が変わる。知ってたこと、曖昧にしか知らなかったこと、ぜんぜん知らなかったこと、どれを読んでもおもしろい、後藤健生氏の書くものはみんなそうなんだけど。読みやすい文章も吉。一息で読める。
●かつて南アのサッカー界では白人の観客のための白人選手によるリーグと、アフリカ人のリーグが別々に運営されてたんだけど、そこにビジネスの論理が入ってきて、大企業はより投資効果の見込めるアフリカ人のリーグに投資するようになったとか、80年代にはアフリカ人が白人のクラブを買収したなんていうんだから、アパルトヘイトなんていうのは興行的にもうまくいきようがなかったというのがよくわかる。
●あと、ワタシはよくわかってなかったんだけど、「アフリカーンス語」はアフリカにやってきたオランダ人たちの言語がアフリカ化したものということだったんすね。南アにおけるオランダ系とイギリス系の違いであるとか、そこからどうフットボールが発展してきたのかなど、非常に興味深い。そしてそんな歴史を経て、今そこでワールドカップが開かれているという現実。南ア代表にも(少しだけ)共感度が増す。もう史上初の開催国グループリーグ敗退が濃厚になってしまってはいるが。
ホンジュラスvsチリ。楽園。
●チリ偉大なり。期待通りのすばらしさで、ここまでの好感度ナンバーワン・チーム。順序は逆になるけど、スペインの試合の後でこっちを録画で見た。
●どこのチームも「初戦で相手に勝点3を与えてしまうと、その後が著しく不利になる」とかなんとか理屈をこねて退屈な試合をしようとするのに、チリはもう全然違う。足元でボールをこねくり回し、細かなパスをつなぎながら、精一杯のスペクタクルを展開しようとする潔さ。しかもスペインみたいに悠々とボールを回すんじゃなくて、自分たちにできるギリギリいっぱいのところで勇敢にボールを回す。結果的に1点しか取ってないけど、中身は盛りだくさん。ホンジュラスもよく付き合ってくれたというべきか。
●そういえば前回チリが出場したときもこんな印象だったっけ。えーと98年大会。イタリア戦で、おかしなPKの判定に泣いて勝利を逃した。あのときのストライカー、サモラノは当時のワタシのアイドル。小柄なテクニシャンそろいのチリの中で、サモラノはたくましい典型的な9番。ラテン的マチズモを漂わせ、チームメイトを激しく鼓舞し、敗れたときには慈父のごとく接する。以来、ワタシのバーチャストライカーでの持ちキャラはチリ代表になり、都内各所のゲーセンにてチリに無数のワールドカップをもたらしたのであるが、それが災いしてか、現実世界では12年かかってようやく本大会出場を勝ち得たのであった……。
●チリは「オレたちこんなに巧いんだぜ!」「しかも強くて男らしいぜ!」っていうカッコよさをアピールするために無理してリスク冒しながらプレイする希少なチーム。つまり、選手たちの気持ちを勝手に代弁して表現すれば「モテたい」(えっ?)。これに智将ビエルサが加わって鬼に金棒。なにかのまちがいで決勝まで勝ち進んで新たな伝説を打ち立ててほしい。
スペインvsスイス。絶句。
●げげげ。なにこの試合?
●欧州王者であり優勝候補のスペイン。もう開始直後から異次元の巧さ。日頃リーガでバルセロナ他強豪クラブが見せてくれるのと同じく、笑ってしまうほどピシピシとパスが通る華麗なサッカーを展開、スイスはほとんどボールを奪えない。たまに奪えてもすぐに奪い返されてしまう一方的なゲーム。手も足もでないとはこのこと。
●多くのチームが初戦は負けたくないがゆえに、異様に消極的なゲーム運びをするのに対し、スペインはさすが、両サイドバックもガンガン上がって攻めまくる。
●スペインはシュートを20本以上打ったんじゃないかな。でも、とにかく攻めて攻めて攻めて美に耽っているうちにディフェンスという概念を忘れてしまったのか、それとも運に見放されたのか、一回しかないスイスのチャンスにゴールを奪われてしまった! まさか。そこからもスペインの芸術的な攻撃は続いたが、むしろスイスに決定機が訪れたりとか冗談みたいな試合になって、笛。0-1。
●これ、「やっぱり攻めないのが得で、攻めると損」っていう結論が出てしまったみたいで、とても後味が悪い(といいつつ盛り上がって見てたけど)。ワールドカップが両者互いにカウンターだけ狙う退屈な試合ばかりになったらどうしよか(もうなりつつある?)。
コートジボワールvsポルトガル、オランダvsデンマーク
●ニッポンが勝ったら勝ったで、それはそれでまたもとのワールドカップ・モードに戻るのが難しかったり。落ち着け、自分。
●まずはコートジボワールvsポルトガル。この組はヨソとは違う。初戦がいきなり「2位決定戦」みたいになる。他はブラジルと北朝鮮なので、コートジボワールもポルトガルも互いに残り2戦を1勝1敗で終えるとすると、この初戦で勝ったほうが決勝トーナメントに勝ち抜ける可能性がスゴく高い。
●と思ってたんだけど、0-0のドロー。しかし中身は濃かった。前半は慎重に「負けない」モード、後半からはいったんガツガツ攻め合って、でも終了直前になったらまた勝ちたいより負けたくない気持ちが前面に出て終了。まあ、どうしてもグループリーグの一戦目はこういう試合が多くなるか。クリスチアーノ・ロナウドは序盤に才能の片鱗を見せたが、その後は静か。トゥーリオに骨折させられたドログバは驚愕の途中出場。なぜそんなことが可能なのか。
●もう一つ、ニッポン戦の前に行なわれたオランダvsデンマーク。これは予想以上にオランダが強かった。全体にパススピードが速い。選手も巧すぎる。前半はこれも0-0だったが、後半デンマークにオウン・ゴールがあり試合が動き出し、後半40分にカイトがダメ押し。優勝を狙うチームはこんなふうに戦うのかー。ロッベン復帰してなくてもこの強さ。優勝するかも。
●とはいえ35歳のファン・ブロンクホルストがいまだに左サイドバック不動のレギュラーとは。大会終了後に引退するみたいなんすけど、キャプテンとして必要なんすかね。
ニッポンvsカメルーン。ホーム以外で初勝利ゲット!
●祝! つい昨日まで「どうせニッポンは3戦全敗ですよー」とか言ってて、岡田監督スマソ。ああ、これはもう信じがたいレベルの勝利。なんだろう、これ。もう踊るしかない! ウソ。いやでもホントかも。待て、落ち着け、自分。
●「ワールドカップ、日本戦なくてもぜんぜんおもしろい、やっぱりサッカーすげえ!」なんて少し思ってたがウソでした、いざニッポン代表の試合が始まると、とてつもなく重苦しい気分になり、これを味わえるのは自国代表が参加しているからだと気づく。ニッポンは守備的な布陣で慎重に試合に臨んだ。少し意外だったけど、カメルーンも同じくらい慎重だった。ほかの多くの試合と同様、相手のミスがあるかセットプレイが成功するか以外にはゴールが生まれにくいような膠着状態でスタート。いつもと違い、両サイドバックはほとんど上がらない。第三者からみれば凡戦そのものだが、当事者にとっては超スリリング。でもこんなふうにある意味世界標準の戦いができているという時点で、ワールドカップでの経験の蓄積が感じられて吉。前半は0-0で大満足だと思っていたら、39分、右サイドから松井が右足でフェイントを入れてから左でクロスボールを入れ、これがファーの本田にこぼれて、ワントラップから落ち着いてシュート。これが決まって1-0。
●後半はかなり早い段階からスペースができてしまい、防戦一方に。途中からカメルーンが徹底したパワープレイを仕掛けてきて、ニッポンはひたすらクリアするだけのサッカーだかなんだかわからない試合に。決定的なピンチをキーパーの川島やバーが救ってくれた。ロスタイムの4分間が長かった。1-0。ニッポンがホーム以外のW杯で勝利したのはこれが初めて。本当の意味での初勝利を味わった気分。
●岡田監督は大会の直前になってから、阿部を中盤の底に一枚入れる守備的な布陣を試し出した(そして中村俊輔をベンチに置いた)。まさかこんな段階で布陣を変えるとは……と思っていたら、今日さらに変更を加え、ぶっつけ本番で本田のワントップ(あるいはストライカーゼロのノートップ)で戦った。これが恐ろしく機能した。なにしろ本田のところにボールが収まる。本職の岡崎や矢野にはできないけど、本田にはできる。しかも慣れていないはずなのに、ヘディングで競り合ってもかなりファイトできる。これは本当に驚き。
●歴史的一勝なのでメンバーを。GK:川島永嗣、DF:駒野友一、中澤佑二、トゥーリオ、長友佑都-MF:阿部勇樹-遠藤保仁、長谷部誠(→稲本潤一)-松井大輔(→岡崎慎司)、大久保嘉人(→矢野貴章)-FW:本田圭佑。本田をはじめ、全員よかった。
●岡田監督って、これまでプロセスはともかく、結果を残すことにかけては日本人監督でも抜群の実績がある。今回もまたその異能を発揮してくれた。恐るべし。勝利の瞬間の岡田監督の表情が「救われた人」みたいな感じだった。
●残りの試合のことはいったん忘れて、勝利を祝いたい。
セルビアvsガーナ。ジャンプして片手でブロック。
●ともにセルビア人監督が率いる両チーム。完全に西欧化されているガーナ、セルビアどちらも組織は鍛えられていて、個々の能力も高い。ミスをして失点するか、セットプレイを決めて得点するか、それがなければ70分くらいまで0-0で来て、疲れ出してからが勝負か……という展開。後半29分にセルビアのセンターバック、ルコヴィッチが2枚目のイエローで退場。圧倒的に不利になったはずだが、なぜかそこからセルビアが攻勢を強めて、このメンタリティの強さには唖然。彼らは一人減ったから守って0-0で済ませようなどとは思っちゃいないんである。
●しかし後半38分、セルビアのクズマノヴィッチがペナルティエリア内でどう見ても意図的なハンドをしてしまいPK。なぜそんなことを? ギャンが決めてガーナが勝利。アフリカ大陸初のW杯で、アフリカ勢初の勝利。
●セルビアって202cmのジギッチがいるだけじゃなくて、全般に高いんすね。ガーナより高い。で、この組ってほかにドイツとオーストラリアがいるわけで、巨人族みたいなことになっている。
●ここがもっとも大変なグループかも。
イングランドvsアメリカ。GKのミスで痛恨の失点。
●アメリカのFIFAランキングって14位なんすよね。くらくら。一昔前はニッポンと同じくサッカー後進国の経済大国っていう位置付けだったのに、いつの間にこんなに差が。ミルチノヴィッチ監督くらいのあたりまでは、ややニッポンのほうが強いかなくらいに思っていたけど、今や隠れた強豪国の仲間入りというか、少なくともイングランドと戦っても五分五分の勝負ができる。次にアメリカでW杯が開催されたら、優勝しちゃうかも。ニッポンがブラジル人をお手本に華麗なリフティング技を練習してる間に、アメリカは堅守速攻の乾いたリアクション・サッカーで鍛えまくっていた、みたいな「ウサギと亀」的結末。アメリカ代表ってファンタジーを追いかけなくてもいいところが強みな気がする(スペインやオランダにとって「美しく勝つ」思想が足枷になることの正反対で)。
●しかし勝つためのサッカーという点ではイングランドもカペッロが監督なんだからひけを取らない。開始早々からイングランドは異様なテンションの高さで飛ばしてきた。4分にジェラードが先制。ただ、試合が落ち着いてからは、むしろアメリカがゲームを支配。40分にデンプシーがグラウンダーのミドルシュート、これをイングランドのキーパー、グリーンがボールを後ろにこぼして失点するという痛恨のミス。1-1。これはどんな名手でも、確率を低くすることはできてもゼロにはできないミス。
●で、スゴかったのはこの直後、キックオフからの場面。それまで押され気味だったイングランドが、突如スイッチが入って(グリーンのミスを帳消しにしようとするかのように)相手ゴールに襲いかかり、サイドバックのグレン・ジョンソンが技巧的なドリブルで中に切れ込んでシュート。これが決まっていたらプチ伝説だった。
●最大のスター、ルーニーにしてもそうだけど、イングランドはみんな放っておいてもチームプレーのできる選手ばかり。アルゼンチンvsナイジェリアのカオス対決の後で見ると、イングランドvsアメリカはモダン・フットボール対決。規律があってハードワークを厭わない。後半の途中からは高地の影響もあってか、両者とも足が止まって「走ったもの勝ち」の根性対決になっていたとはいえ。どちらも決定的チャンスを生かせず、そのまま1-1で終了。ここまで見た中ではもっともレベルの高いゲームで満喫。
●前半31分でイングランドのカペッロ監督は相手の6番にやられていたミルナーを下げてショーン・ライト=フィリップスを入れた。なんという容赦レスな決断力。しかも、この交代が完璧に成功してた。鬼神か、カペッロは。
●アメリカのディフェンダーに「ボカネグラ」って選手がいるんすね。名はシモンじゃなくてカルロス。
アルゼンチンvsナイジェリア。依存症。
●マラドーナが監督というのは冗談みたいな話だなと思っていたが、そのまま本大会まで来てしまった。アルゼンチンの攻撃陣はすさまじい層の厚さ。先発がメッシ、イグアイン、テベスなんすよ。くらくらするようなメンバーなのに、控えにまだチャンピオンズリーグで優勝したインテルのディエゴ・ミリートがいて、アグエロまでいる。中盤も選手は豊富にいるはずだ……と思ったら、35歳のベロンが出場してるし(国内組)。なんで。ベロン、8年前いたよねえ。あっ、8年前って日本で同じくアルゼンチンとナイジェリアが対戦したじゃないっすか、カシマスタジアム。ワタシ、見に行ったんですよ、マジカルな手法でチケット入手して。あのときバティストゥータがゴール決めて1-0で勝ったんだなあ、アルゼンチン。
●その再現であるかのように、またアルゼンチンは1-0でナイジェリアに勝った。前半6分でエインセの頭でゴール。アルゼンチンもナイジェリアも守備が混沌としてて何点入るのかわからないと思ったら、キーパーの堅守もあってこのゴールだけで終わった。アルゼンチンはみんなメッシ頼み、これだけタレントがいるのに。フツーにパスをつないで攻めればいいような場面でも、メッシに渡してドリブル突破させようとする。で、それがまた成功してシュートまで来る。ただゴールは入らなかった。メッシはスーパープレイを連発したはずなのに、見ている人は不満をためてしまうという、恐ろしい不条理。
●欧州トップレベルで活躍している選手がずらりと並んでいるのに、アルゼンチンは異次元から来たチームのように謎だった。ウルグアイのほうがよっぽど欧州化している。このアルゼンチン、到底上のほうまで勝ち進めるようには思えないんだが、でもワールドカップはわからないんだよなあ、初戦では。
●この試合の前、韓国はギリシャに2-0で完勝した模様。隣国は予想通りの強さ。アジア全体のためには吉報、どう考えても。
ウルグアイvsフランス。誤算。
●開幕日の裏番組。午前3時半キックオフの試合は録画して翌日の朝、結果バレしないうちに見る作戦遂行中。で、ウルグアイとフランス。どちらもいい選手が多くて、これだけ見てると南アとメキシコよりもずっと水準が高いという印象。ウルグアイの2トップは超強力。フォルランはスペインリーグで2度得点王になっている完璧なストライカー、ベテラン。スアレスはアヤックスでオランダ・リーグ得点王の新星。中盤から後ろは堅守。最強国に比べると層が薄いのは事実なんだけど、ベストの布陣で戦えばどこが相手でも対抗可能。
●とはいえフランスはさらにスゴいわけだ。リベリーのドリブルは超人。アネルカ、ゴヴ、ジダンの後継者みたいに言われてるグルキュフ、トゥララン。しかしこのチームは好きになれない。個々は強烈だけど、チームのために働く選手が少ないというか、自己犠牲の精神が欠如しているというか。数少ない成熟した選手であるアンリはベンチスタートの交代要員(しょうがない。とっくにかつてのスピードはない)。この組はウルグアイとメキシコが勝ち抜けて、フランスには敗退していただきたい……いや、それは言いすぎか。単にワタシがジダンが好きであって、ジダンのいなくなったフランスに共感できないだけかも。
●本当のビッグチャンスは開始早々、左サイドを破ったリベリーが入れた低いクロスに、中でゴヴが合わせ損ねた場面くらいか。そういう意味ではレベルの高い凡戦だったのか? 0-0で試合が進み、ラインの間延びした70分過ぎからの勝負になるか、しかしウルグアイのほうの運動量が落ちてきて、中盤の守備が厳しくなってきた……と思ったら、後半36分に途中出場したウルグアイの若手ロデイロが2枚目のイエローで退場という誤算! しかもカード出しているのは、Jリーグでおなじみ、西村主審だ。まあ、あれはたしかにイエローでおかしくないが、なぜこんなにワタシらはドキドキしなければいけないのだろうか。
●こうなったらウルグアイは守るだけ。0-0。勝てる試合を落とした気分すらあり、ウルグアイ的には。
●フランスは前回に引き続きまだドメネク監督がやってるんだから、気の長い人たちだなあ。前にトルシエとかも呼んで面接やったっけ。今からでも遅くないから、フランスサッカー協会はFC琉球からトルシエを引き抜くことをオススメ、と言いたいところだが、次期監督はすでにローラン・ブランに決まっている。ブランは文句なしの選択。
※ワールドカップ2010関係の記事はこちらに特設ページを設置(中身はブログと同じ。後日のアクセスのために)。
ワールドカップ2010テレビ観戦記
南アフリカvsメキシコ。アフリカ大陸初のワールドカップ開幕!
●始まってしまった、ワールドカップ2010。4年前より今回のほうがずっとワクワクしている。アフリカ大陸初ということで前例がないから、なにか起きるんじゃないかとか、久しぶりに初優勝を果たす国が出てくるんじゃないか、とか。待ちきれない気分でテレビの前へ。
●開幕戦は南アフリカvsメキシコ。ワタシは圧倒的にメキシコ贔屓なのでありメヒコを応援する。ひそかに初の開催国グループリーグ敗退を予感。同じ組に不調フランスと古豪ウルグアイで、どこが勝ちぬけてもおかしくないグループ。
●開始から圧倒的にボールを支配したのはメキシコ。攻撃の中心にドス・サントス(兄)。バルセロナ在籍時はまだ10代だったっけ? あの頃はうまいけどやや自分勝手で信頼しがたいと思ってたが、今はずいぶん頼もしい感じ。トルコのガラタサライに所属してたのか。南アフリカはやっぱりピーナールがうまい。しかし前半0-0だったのはむしろ南アの注文通りという印象でヤな予感。
●すると後半10分にカウンターから南アが長いスルーパスを通して、これを受けたチャバララが逆サイドの隅ギリギリに豪快に蹴りこんでゴール。見事すぎるシュート。南アの不思議な踊りが出て、これでマジックポイントを吸い取られたかのようにメキシコは守勢に回る。南アは突如自信を回復して攻める。これで2点目が決まってればよかったんだろうが、後半34分、クロスボールからボールが目の前にボールがこぼれてきたマルケスが決然とシュートを打ち、これが決まって1-1。マルケスは最近バルセロナだと引退前のベテラン選手みたいな雰囲気だけど、メキシコ代表で見ると大黒柱オーラ全開。
●こういう状況で終盤に入ると、このままお互い勝点1で済ませましょうよ的な空気が流れることがあるんだけど、メキシコは攻めた。同点ゴールの前から、37歳になったブランコを入れている。あの両足でボールを挟んでピョンと跳ねて相手ディフェンスを抜くという(いやほとんど抜けないんだけど)ブランコ・ジャンプが一世を風靡したのはいつの大会だったか。まさかこの状況でやるんじゃねえだろうなあ、ブランコ・ジャンプ……と心配したが、さすがにやらなかった。ピンチとチャンスを繰り返して、そのまま1-1。こういう攻めたらいいのか守ったらいいのか、お互い悩む時間帯のサッカーってのは、本当におもしろいっすね。ワールドカップ、やっぱり楽しい!
テレビ観戦に備える
●リアル書店でウロウロした、それも最近めったに足を運ばなくなった小さな駅前書店で。いよいよ今週末から始まるアレだ、ワールドカップ2010南ア大会、これが待ちきれない。開幕戦の南アvsメキシコからして楽しみだ、だってメキシコ代表っすよ。憧れる。次のウルグアイvsフランスも。メキシコ代表とかウルグアイ代表がどんなサッカーするのか。なんというワクワク感。チャンピオンズリーグやユーロにない辺境性がまだワールドカップにはいくらか残されている。
●そしてこういったタイプのワクワク感を味わう機会が決して多くない今、これを自己フィードバックさせて増幅させたいのであり、そのためのアイテムがたとえばこれ、「ワールドカップTV観戦LIFE」。こういうテレビガイド情報誌を、ポンとさりげなく棚から一冊適当に選ぶということが、ワタシはできない。どうするかというと、書店にあるすべてのテレビ情報誌とサッカー雑誌を比較してしまうんである。テレビ番組表がどれだけ見やすいか(ワタシはスカパーに入ってないので、地上波とBSだけわかればOK)、各国代表選手の登録選手はどの段階のどこまで新しい情報が反映されているのか、ページを開いたまま置いておけるような製本になっているかどうか、グループリーグの対戦表にスコアを書き込めるようになっているかどうか……。そうやって熱心に吟味しないと気が済まない、テレビ情報誌コーナーとスポーツ誌コーナーを何度も往復する、そして当然の結論が導き出される、すなわちすべての要素をパーフェクトに満たす雑誌はない。それでももっとも好ましいものを一冊ということで選んでみたら、こんな悲しい表紙の雑誌になってしまった、岡田監督が頭に日の丸のハチマキ巻いて、「ベスト4」って書いたのぼりを手にしている(溜息)という、このサッカーに対するどうでもよさげな態度がにじみ出た絵柄。だが中身はとてもよい。番組表も各国代表紹介記事も。君はこれから一ヶ月、茶の間テーブルに固定ポジションをゲットしたのだ。
●そして唐突にここで業務連絡だ。今日、ワタシは髪をバッサリ切ってきた。ヤヴァいクラヲタ感全開の長髪だったのが、いまやフツーの人だ。もう怪しくない。安心、安全。会ったときに「誰?」って言わないで欲しい。