worldcup2014: 2014年7月アーカイブ

July 16, 2014

ワールドカップ2014ブラジル大会ベストイレブン発表!

●ブラジル大会は終わった。しかしなぜ午前5時ごろになると目が覚めてしまうのであろうか。そう、それはまだ総括ができていないから。
●それでは恒例のベストイレブンを発表しよう。当サイトでのベストイレブンは「こんな選手が日本代表にいてくれたらなあ~」という願いを込めた、ニセ日本代表メンバーとして発表される。今大会で旋風を巻き起こした5バックシステムを反映して、ディフェンスを5人選んでみた。

【ニセ日本代表2014】
GK:
萩木(Haghighi イラン)
DF:
迫(Sakho フランス)
江原(Evra フランス)
原 (Jara チリ)
海人(Kuijt オランダ)
丸助(Márquez メキシコ)
MF:
秋野(Aquino メキシコ)
逗子(Zusi アメリカ)
釈迦(Xhaka スイス)
FW:
城(Jô ブラジル)
三浦(Müller ドイツ)

●見よっ! この城と三浦の2トップを。キックオフ前に二人でボールに魂を込めてそうな2トップが実現した。これはなにかの啓示であろうか。
●なお、前回に続いて二大会連続のベストイレブンに選ばれた唯一の選手がメキシコの丸助だ。ぷぷ(←お気に入りのギャグを繰り返して自分だけで笑うヤツ)。
●試合結果以外の今大会の三大キーワード。その1。スアレスの噛みつき事件。スアレスが試合中にキエッリーニに噛みついた。スアレスには前科があり重い処分が下されることになったが、予定通りバルセロナには移籍する模様。スアレスに噛みつかれたキエッリーニがだれかに噛みついていないかが気になる。
●その2。ゴールラインテクノロジー。機械を使わなきゃ絶対にわからないことがある。使わない手はない。しかしもっと低予算な方法で実現できないのかと思わなくもない。
●その3。バニシングスプレー、っていうの? フツーに「消えるスプレー」って言えばいいと思うんだけど。フリーキックでキッカーと壁の位置を制御するにあたって、これ以上いい方法があるとは思えない。どんどん使うべき。ハーフタイムには審判団による消えるスプレーお絵描きショーを楽しめるかもしれない。「ほらほら、ミッキーだよ~」みたいな。ワールドカップとかじゃなくて、3部リーグくらいのローカルクラブで。

July 14, 2014

決勝、ドイツvsアルゼンチン、順当すぎるほど順当な総合力の勝利

ドイツ●長かったワールドカップもついに決勝戦。サッカーは運の要素の強いスポーツなので、一発勝負のトーナメントではいろんな番狂わせが起きるはずだし、実際起きてはいるんだけど、決勝戦となると結局毎度おなじみの「決勝進出経験のある強豪」が出てくる。大会が一カ月にもわたる長丁場となると、運と勢いだけでは最後まで勝ち抜けないということか。
●コンディション面できわめて有利なドイツはほぼ前の試合と同様の布陣で、トップにクローゼ(今大会はたまにしか顔を出さないサブかと思っていたら、ぜんぜんそうではなかった)、ラームは中盤ではなく右サイドバックに。ケディラがケガなのか、若いクラマーが先発。アルゼンチンは心配した通り、ディマリアが復帰できず、アグエロもベンチスタート。試合は序盤から意外とオープンな攻め合いになって、ドイツがボールを保持して、アルゼンチンがカウンターで反撃するという展開に。前半21分、クロースの不用意なヘディングでのバックパスをイグアインが奪って、キーパーと一対一になったが、枠を外してしまう。ドイツのキーパー、ノイアーのプレッシャーの強さゆえか。さらに30分には右サイドからのラベッシのクロスにイグアインが合わせてネットを揺らすもオフサイド。前半終了間際にはドイツにも惜しいチャンスが続いた。お互いの狙いが噛みあったけど、たまたまゴールが決まらず0対0が続いたというゲームに。
●後半からアルゼンチンはラベッシをアグエロに。前半のラベッシの活躍を考えるとかなり意外な交代。後半の序盤はアルゼンチンがボールを持って攻める展開で、後半2分はメッシがキーパーとの一対一を迎えるが、これも枠を外してしまう。メッシはいつものようにだれにもできないスーパープレイをなんども見せてくれるんだけど、ゴールが生まれない。これで非難されてしまうんだから気の毒。後半途中からコンディションの差か、アルゼンチンに疲れが見え出して、徐々にドイツが盛り返す。90分では決着がつかず、延長へ。さすがにドイツは勝負強く、延長後半8分にシュールレが左サイドをドリブルで突破して中央にクロス、これに対してうまくディフェンスの間に走りこんだゲッツェが胸トラップから左足のボレーで完璧なゴール。交代選手が機能した。アルゼンチンは力を出し尽くしてしまい、ほとんど反撃できず。1対0のドイツの勝利は妥当な結果で、むしろアルゼンチンがここまで戦えたということに敬意を表すべき。アルゼンチンはなんといってもディマリアの不在が痛かった。決定的なプレイをするのはメッシだけど、チームにダイナミズムを与えるのはディマリア。
●ついに南米開催で初めて欧州のチームが優勝したわけだが、ドイツが勝ってしまったので試合終了後の感動的なセレモニーももうひとつ見ていて気が乗らない。リネカーの名言通り、「フットボールとは22人がボールを奪い合い、最後はドイツが勝つゲームだ」という結果になってしまった。個々のタレントではもっと華やかな顔ぶれが並ぶチームがいくつもあったわけだけど、チームとしての強さを感じさせたのはなんといってもドイツ。パワーも技術も走力も組織力も団結力もぜんぶある。
●MVP相当のゴールデンボール賞はメッシに。負けたチームの選手が獲得してしまい、なんだかばつが悪い。まるでゲッツェのゴールの前に投票の締め切り時間が来てしまったかのよう。勝者と敗者のコントラストを見ていると、ワールドカップはまだまだ重要な大会なんだなと実感する。チャンピオンズリーグの成功以来、もっとも高度なサッカーはクラブ単位で繰り広げられるようになり、ワールドカップの意義が相対的に小さくなっているのを感じるけど、勝者が得るものの大きさという一点だけに関して言えばワールドカップは格別。なにしろ4年間もチャンピオンでいられるわけだし。だからこそ敗者の落胆も大きいというか。それにしても、ドイツの選手たちと抱擁を交わすメルケル首相の姿を見ていると、悔しさがいっそう募る。メルケルのガッツポーズは夢に出てきそう。メッシのような歴代ぶっちぎりのナンバーワン選手が、結局ワールドカップを手にできずに終わってしまうのかと思うと……。4年後までは情熱が続かない気がする。

ドイツ 1-0 アルゼンチン
娯楽度 ★★★
伝説度 ★★

July 10, 2014

準決勝、オランダvsアルゼンチン、ディフェンスマニアは狂喜せよ!

オランダ●ディマリアの負傷が痛いアルゼンチン。代役はペレス。イグアイン、メッシ、ラベッシの攻撃陣、控えにはアグエロが負傷から戻ってきた。オランダは5-3-2というか、守備ブロックをがっちりと敷く5バックシステム。おまけにメッシにはデヨングをマンマーク気味につけた模様。攻撃はロッベンとファンペルシーの超人的プレイに頼る低リスク戦略。
●序盤はアルゼンチンがボールを持ち、オランダが跳ね返すという展開だったが、徐々にオランダのキープ時間が長くなってゆく。しかしアルゼンチンも同様に強固な守備で対抗し、守備vs守備の時間帯が延々と続く。後半途中から雨が激しくなる。アグエロは途中出場。しかし選手交代のカードが切られても、展開は変わらない。数少ない偶発的チャンスやセットプレイ以外はほとんど攻め手がない。後半の終盤にイグアイン、ロッベンが決定機らしきものを迎えたが、決めきれず。きわめてチャンスの少ないなかで90分を終えて延長戦へ。
●延長前半早々にオランダはファンペルシーをフンテラールに交代して、3枚目のカードを切った。お、今日はあの××作戦はやらないんだ、PK戦専用キーパーを出すあれは。そりゃそうだよなあ、走れない選手を交代するのが普通だ。しかし、例の作戦が失敗するところを見たかったという気持ちが残って、妙に悔しい。延長に入ってもなかなか得点の気配の感じられない慎重な戦いが続き、最後の最後はお互いにPK待ちみたいな雰囲気が流れていたと思う。ディフェンスマニアが泣いて喜ぶ守備合戦の末に、PK戦へ。メッシはなんどか決定機を演出しかけたものの、歩きながら多くの待ち時間を過ごしていた。
●アルゼンチンのキーパー、ロメロについては今大会ずっとプレイの質がもうひとつだなと感じていた。所属チームのモナコでも控えに甘んじているようだし、いくらでもほかにいいキーパーがいるだろう、と。が、PK戦でロメロは真価を発揮した。オランダの一人目はなぜかフラール(どうやら何人かの選手が一人目のキッカーを断った末に決まったらしい)。ロメロはフラールのキックを見事にセーブ。さらにすごかったのはオランダの3人目、スナイデルを止めた場面。完全にコースを読んで、ドンピシャで止めた。
●一方、コスタリカ戦でPK戦を交代させられたオランダのシレッセン。シレッセンが足元の技術に相当な自信があることはこの試合でも何度かうかがえた。しかしPKは苦手のようで、アルゼンチンの二人目、ガライが度胸だけで真ん中上に蹴ったボールに反応できず、3人目アグエロのキックは的確にコースを読みながら触れず、さらに4人目マキシ・ロドリゲスのかなり甘いコースのキックも反応はしているのに後ろに弾いてしまって、試合終了。なるほど、コスタリカ戦のファンハール監督のPK戦専用キーパー投入の奇策は、そういうことだったのかと、妙な形で納得させられてしまった。シレッセンは11人目のフィールドプレーヤーになれるほどキックも上手いが、PKだけは苦手なわけだ。でもさ、だったら本当に策士なのはロメロを起用し続けたアルゼンチンのサベーラ監督のほうなんじゃないの、と思わんでもない。
●決勝はドイツ対アルゼンチンに。南米が生き残ってくれてほっとした。これって86年メキシコ大会と90年イタリア大会の2大会連続同じ顔合わせになったときの再現じゃないすか。まさにマラドーナが歩んだ道をメッシは歩んでいるのだなあ。しかし、休みが一日多いうえに消耗の少ない試合を戦ったドイツと、120分戦ったアルゼンチンでは、ずいぶんコンディションに差ができそう。せめてアルゼンチンがディマリアとアグエロを先発に復帰させることができれば……と切に願う。

オランダ 0-0 アルゼンチン (2 PK 4)
娯楽度 ★★
伝説度 ★★

July 9, 2014

準決勝、ブラジルvsドイツ、カナリア・イエローの黄昏

ブラジル●こんなに残酷な試合をかつて見た記憶がない。王国、ブラジルで開催したワールドカップで、ブラジル代表が信じられない大敗を喫してしまうとは。ブラジル 1-7 ドイツ。結果だけ知ったら、なにかのまちがいかと思ってしまうが、テレビで見ていてもなにかのまちがいではないかと目を疑った。早起きして、夢でも見てるんじゃないの?
●ブラジルは負傷したネイマールの代役にベルナール(ベルナルジ)、チアゴシウバに代えてダンテ。右サイドバックには前の試合と同様、ベテランのマイコンを入れてきた。ドイツはまたしてもクローゼが先発、ラームは本職の右サイドバックへ。ブラジルとドイツがワールドカップで対戦するのはこれがわずか2回目(1回目は横浜で開催された2002年決勝)。好ゲームが期待された。例によってブラジル国歌は、短縮バージョンの伴奏を無視して、選手たちと観客たちが伴奏が途切れても大声で歌いまくるスタイル。試合開始早々から、ブラジルはハイテンションで飛ばしてきて、ドイツを攻める。ブラジルが押していたのは最初の10分だけだった。
●前半11分、ドイツはコーナーキックからファーサイドでマークをかわしたミュラーが右足で先制ゴール。あっさりマークを逃したブラジルの守りに淡泊さを感じるが、この後の展開はそんなものじゃ済まない。前半23分、ミュラーのコンビからクローゼがシュート、キーパーが弾いたところでふたたびクローゼが蹴りこんで2対0。まさかの展開だが、「まさか!」と驚く暇もなく、たてつづけに前半24分に右サイドのラームのクロスにクロースが合わせて3点目、前半26分にフェルナンジーニョが自陣で不用意にボールを奪われ、奪ったクロースがケディラとのパス交換からシュート、4点目。前半29分、ゴール前でケディラからエジルへ、エジルからケディラへと落ち着き払ってボールを回して、5点目。なんですか、これは。信じられないやわらかディフェンス。そして何点獲っても容赦なくゴールを狙うドイツ。
●ブラジルは失点するごとに集中を欠き、投げやりにも見えるプレイが目立ち、悪循環に陥っていた。戻らなきゃいけないところで戻らない、カバーに入らない、走らない、競らない……。カナリア軍団がサンドバッグのように殴られている。ブラジルのベンチからタオルが投げられてもおかしくなかった。主審は両手を大きく振りながら、試合終了を宣言するべきだった。テクニカルノックアウトでドイツのKO勝ち。ドクターを呼んでくれ!
●ブラジルは後半からフェルナンジーニョをパウリーニョに、フッキをラミレスに交代したが、だからといってどうしようもない。ドイツは後半13分、クローゼに代えてシュールレ。なあ、スポーツはいつだって全力を尽くすもんだろう。そんなドイツ人たちが聞こえてくるかのように、後半24分、そのシュールレがラームのクロスに合わせて6点目。きわめつけは後半34分で、シュールレがペナルティエリア左からニアの上をぶち抜くスーパーゴールを決めて7点目。わが国の無慈悲な攻撃が鉄槌を食らわしてくれよう! フハハハハハ(←だれ?)
●後半45分になって、ようやくオスカルが一瞬不自然なほど甘くなったディフェンスをくぐり抜けて、1点を返した。7対1でドイツが勝利。途中からブラジルの観客はドイツのパス回しに「オーレ!」を叫び出した。特にブーイングを浴びていたのはフレッジ。試合が終わって、ブラジル人選手たちを慰めるドイツの選手たち。まるで葬儀のような、いたたまれない雰囲気で準決勝の第1試合が終わった。
●もともと日程上有利なドイツが、ほとんど消耗することなく準決勝を戦ったことで、決勝ではかなりのアドバンテージを持つことになった。ブラジルは3位決定戦を戦わなければいけない。何度も書いてる気がするけど、やはり3位決定戦は不要なのでは。すでに敗退しているチームが、なぜまだ戦わなければいけないのかと思う。

ブラジル 1-7 ドイツ
娯楽度 ★
伝説度 ★★★★★

July 7, 2014

準々決勝、アルゼンチンvsベルギー、リアクション芸の達人。オランダvsコスタリカのPK戦。

アルゼンチン●準々決勝、アルゼンチン対ベルギー。この試合でアルゼンチンが負けてしまうと南米勢がブラジルのみになってしまう。というか、メッシをもう見られなくなってしまう。それでは困るわけで、若いスターを並べるベルギーをリスペクトしつつも、アルゼンチンを応援。アルゼンチンはビリア、デミチェリス、バサンタと3人が初先発。攻撃陣はアグエロが離脱したままなので、イグアイン、ラベッシ、メッシ、ディマリア。ベルギーもメンバーをいじってきてトップに19歳のオリギ。アザールだって23歳で若いんだけど、さらに若い。
●前半からアルゼンチンはボールがよく回る。前半8分、あっという間の先制点はラッキーもあって、ゴール前でのディマリアからのパスが相手にあたってイグアインへのナイスパスになり、これをボレーでゴール。この開始早々の先制点がそのまま決勝点となる、既視感のある展開のゲームに。前半28分、メッシから明後日の方向にするするとスルーパスが出て、は?これ、何なの?と思ったら、ボールが抜けた先にディマリアがドンピシャで走りこんでいて、もう神としか思えない。ドリブルもシュートもスルーパスもぜんぶ神技。しかし前半でディマリアがペレスに負傷交代。キレまくっているディマリアがいなくなると痛い。次戦、どうなるのか? ベルギーは両サイドから入れる速いクロスが有効だったが、ゴールには至らず。
●終盤は高さで勝るベルギーが、センターバックのバンブイテンを前線に上げてパワープレイに出た。後半40分からのパワープレイは少し早すぎかとも思ったが、アルゼンチンが必死で守る姿を見ると、たしかに可能性は感じさせる。しかし、つまらない。こんなつまらないプレイが実りませんようにと祈ったところ、サッカーの神様も共感してくれたのか、アルゼンチンは逃げ切った。おっと、終了直前カウンターからメッシがキーパーとの一対一を外すという場面もあったが。メッシだってミスをする。そりゃそうか。
●ベルギーの4バックはみんなでかい。186cm、190cm、189cm、196cm。しかもみんなセンターバック・タイプを並べているのだとか。欧州は昔からセンターバックとサイドバックを兼任するタイプのプレーヤーが珍しくないけど、日本ではかなり少ないっすよね。サイドバック観の違いというか。
●試合中、アルゼンチンのサベーラ監督が、イグアインのシュートがバーに弾かれた場面で、「あ~れ~」という感じで真後ろに卒倒しかける見事なリアクションを見せて、目を見張った。このリアクション芸はスゴい。全世界に中継される価値がある。この大会では、ドイツ代表のミュラーがフリーキックでズッコケ芸(わざと)を披露してくれたが、ヌルいズッコケ芸に関して手厳しい日本のお茶の間では失笑を買っていた。しかしサベーラ監督のリアクションにはだれもが一目置かざるを得ないのではないか。

アルゼンチン 0-1 ベルギー
娯楽度 ★★★
伝説度 ★★★ (サベーラ監督の卒倒芸に)


●もう一試合、オランダvsコスタリカは都合で全部は見れなかったんだけど(ら抜き)、延長戦からPK戦までをざっと。なんですか、オランダのPK戦用にキーパーを交代する作戦は。これだからファンハール監督って好きになれない。もうみんな走れないんだから、交代枠ひとつ余ってるならそれ使ってフィールドプレーヤー入れたほうがよっぽど勝ち目は高いじゃないの、なのに1枚PK戦のために余らすって、なんというバカ作戦。これは絶対に失敗してほしい、コスタリカがんばれっ!と思っていたら、まんまと作戦が的中して、バカなのはワタシであった……。なるほど、先発のシレッセンはPKが苦手なのだろうし、交代で入ったクルルはセーブ力が高いようだ。ベンチにいる間に、コスタリカ選手のスカウティング・レポートをがっつり頭に叩き込むことができたんだろう。でもな。やっぱりこの作戦は失敗してほしかった。奇策は嫌いじゃないというか、むしろ大好きなんだけど、PK戦となるとどうかなあ。たとえそれが神話だとしても、「PK戦は運だめし」と信じていたかった。

July 5, 2014

準々決勝、フランスvsドイツ、ブラジルvsコロンビア、得点はすべてセットプレイから

フランス●準々決勝、最初の試合は地味に勝ち進んだフランスと、今回も着実に勝ちあがっているドイツ。ドイツのサプライズはベテラン、クローゼの先発。今大会、先発はないかと思っていたが……。ラームは中盤の底ではなく、本職の右サイドバックへ。セントラルMFにはケディラが先発、シュバインシュタイガー、クロースと中盤を構成する。試合はお互いにコンパクトな中盤を形成してスタート、膠着した展開が続くかと思いきや、あっさり前半13分にドイツが先制。フリーキックからクロースがクロスを入れると、ゴール前でフンメルスがバラーヌに競り勝ってゴール。このゴールが決勝点になってしまった。
●フランスにもチャンスはたくさんあった。前半はドイツの高いディフェンスラインに対して、フランスはその裏のスペースを狙うパスを繰り出して決定機をいくつも作り出していたが、異能のゴールキーパー、ノイアーの好セーブもあって決めきれず。後半途中からドイツのラインが下がると、今度はディフェンスラインの前のスペースでフランスの攻撃陣が前を向いてボールを持てるようになり、さらに攻勢を強める。ただ、チャンスが多かった割には、フランスがゲームを支配していたという印象はまったくなく、ドイツの注文通りの試合展開になったといった様相。終盤、ドイツのカウンターアタックから交代出場のシュールレに決定機が訪れたが、これを外してしまう。これが決まっていれば完璧だったか。
●後半アディショナルタイム、フランスはベンゼマがワンツーから抜け出して強烈なシュートを放つも、ノイアーの片手一本に止められてしまった。戦術的な見どころは大いにあったとしても、発散的な喜びに乏しい詰将棋のようなサッカーを見た気分は残る。ドイツは堅牢なチームで優勝候補筆頭格だとは思うが、ノイアーのスーパープレイ(異常な守備範囲の広さとか)が前提になっているところに脆さを感じなくはない。

フランス 0-1 ドイツ
娯楽度 ★★
伝説度 ★

ブラジル●続いて準々決勝のもう一試合はブラジル対コロンビア。ブラジルはルイスグスタボが出場停止のため、フェルナンジーニョとパウリーニョがダブル・ボランチを組む。右サイドバックはダニエウアウベスではなく、なぜか大ベテラン、マイコン。かつての絶対的なレギュラーだが、まさか先発で出てくるとは。ダニエウアウベスに不調があったのか、彼のコンディショニングを優先してなのか、謎。
●コロンビアは若きエース、ハメスロドリゲスが絶賛売出し中。チームの完成度としてはコロンビアのほうが高いようにも思えるが、ブラジル開催のワールドカップでブラジルが負けるところを見たくない。選手たちがなんだかもうとてつもないプレッシャーにさらされていて、気の毒になるほど。前のPK戦で選手たちが号泣したり瞑想したりするのも、美しい光景というよりは、かわいそうな光景なんじゃないかと。で、この試合、苦しい試合になるだろうと覚悟しつつブラジルを応援したわけだが、前半7分、コーナーキックからチアゴシウバが押し込んでブラジルが先制。ほっ。
●フランスvsドイツ戦とはうってかわって、序盤から選手間の距離が広く、広大なスペースがあるという攻め合いに。前半30分、ブラジルのセンターバック、ダビドルイスが相手ボールのインターセプトから、すごい勢いのドリブルで攻め上がったシーンがハイライト。途中で一人ワンツーとか入れて相手を抜きにかかるセンターバックのドリブル(笑)。ブラジルでしかありえない。
●両者チャンスは多いが得点には結びつかない五分の展開のなかで、後半24分、ブラジルフリーキックで、ダビドルイスがゴール右上に豪快に蹴りこんで2対0。これで安心かと思いきや、後半33分、コロンビアは交代出場したバッカがペナルティエリア内でキーパー、ジュリオセーザルに倒されPKに。得点王候補ハメス・ロドリゲスがこれを落ち着いて決めて一点差に。そこからはブラジルがコロンビアの猛攻に耐える展開。かろうじてブラジルが逃げ切った。ブラジルの守りは不安定だが、全般に主審の笛に助けられていた感はぬぐえず。
●終盤、ネイマールが背中に膝蹴りを食らって負傷退場。相当に痛そうで担架で運ばれたが、試合後に脊椎骨折であることが判明、ここまで重圧に耐えて活躍してきた若いエースが残りの試合に出られそうもないという事態になってしまった。やーめーてー。このチームからネイマールを奪ったら、なにが残るの。決勝トーナメントのこの山はブラジル、コロンビア、チリ、ウルグアイとすべて南米勢が偏ってしまうという、残念すぎる「南米潰しあい」があったわけだが、ここをやっと勝ちあがったブラジルが、ネイマールを失ってドイツと戦うことになるとは、なんという無念。そりゃないでしょうよ。

ブラジル 2-1 コロンビア
娯楽度 ★★★
伝説度 ★

July 3, 2014

決勝トーナメント1回戦、アルゼンチンvsスイス、テレビの前でいっしょに両手でハートマーク

アルゼンチン●いまFIFAランキングって5位がアルゼンチンで、6位がスイスだっていうんすよ。スイスは黄金世代が育ってきて相当強いチームになったのだなと、今大会ようやく試合を見て納得。前線にタレントがそろっている。で、激しく多民族化が進んでいて、名前を聞いてもどこの国の人かわからない選手が多い。10番のジャカと小柄ながらボールが足に吸い付くようなドリブルで相手を翻弄するシャキリは、ともにコソボ出身のアルバニア人。アドミル・メーメディとブレリム・ジェマイリはマケドニア出身のアルバニア人。フォワードのドルミッチはクロアチア人、セフェロビッチはボスニア・ヘルツェゴビナ人……と、バルカン色濃厚なメンバーが並ぶ。名将ヒッツフェルトが率い、プチ・ドイツ化した規律のある組織的守備とダイナミックで奔放な攻撃陣が噛みあって、スピーディで小気味よいサッカーを展開していた。
●一方のアルゼンチンは、アグエロが負傷で離脱したものの、代役にラベッシが出てくる超豪華アタッカー陣。メッシ、イグアイン、ディマリア、ラベッシ。世界トップレベルのストライカーたちに、さらにその上を行く異星人メッシが加わっている。個々のスキルの高さにはため息が出るほど。しかし組織力は低く、脆さも感じる。メッシはなんでもできるけど(やれば守備もできる)、走らない。ひょっとしてアルゼンチンはメッシ抜きで残ったメンバーで激しくファイトしたほうが強いんじゃないの……という疑念がどうしても払拭できないんだが、メッシの異次元のプレイを否定することなんてだれにもできない。3人くらいマークがついていても、するすると抜いていく、あたかも彼だけ違う時間の流れのなかにいるように。
●このゲーム、前半までは今大会見たなかでは一二を争う好ゲーム。ボールを保持していたのはアルゼンチンだが、スイスにとってこれはプラン通り、2度ほど決定機を迎えていた。キックオフ直後からアルゼンチンへのブーイングがひどくて驚く。後半にはスイスを応援する「オーレ!」も。どんだけアルゼンチンが嫌いなの、ブラジルの人たちは。
●スイスはキビキビとした見ていて楽しいサッカーを展開していたが、後半途中からぐっとパフォーマンスが落ちてしまった。アルゼンチンの左サイドバック、ロホが高い位置をとると、前半脅威を与えていたシャキリが守りに追われるようになり、やがてスイスは防戦一方に。しかし、アルゼンチンも決定機に決めきれず、延長へ。ともに運動量は激減し、最後は気力の戦いでしかないと思いきや、延長後半13分という土壇場になって、メッシがするするとドリブルでゴール前まで持ち込み、ディマリアへパス、ここでシュートがようやく決まって1対0。結局はメッシの個人技がすべてだったという結果に。その直後、スイスのコーナーキックからジェマイリのヘディングがポストを叩くというあわやの瞬間もあった。ここでアルゼンチンが脱落しては大会が盛り上がらないので、ほっとするとともに、もっとスイスを見たかったという気持ちも残る。
●ゴールを決めたディマリアは嬉しそうな表情で、両手でハートマーク ♥ を作るゴール・パフォーマンスを見せてくれた。くぅ、カッコいい。あのポーズ、ワタシもやってみたいぜ。しかし日常生活のなかでハートを作るシーンを考えてみたが、まったく思い浮かばない。

アルゼンチン 1-0 スイス
娯楽度 ★★★★
伝説度 ★★

July 1, 2014

決勝トーナメント1回戦、フランスvsナイジェリア、一見地味だけどよく見たらやっぱり地味

フランス●ようやく今大会のフランスを初観戦。大会前に最大のスター、リベリを負傷で欠いたこともあってあまり注目していなかったが、始まってみるとフランスの評判がずいぶんいい。スター軍団ではなく、組織力で戦える団結したチームである、と。前回、チームが空中分解した反省を生かしてということなのか。
●フランスは右サイドバックがドビュッシーなんすよ。光と風と波のようなサイド攻撃を期待したい。ウソ。作曲家と綴りは違ってた。
●お互い4バックの対決。前半、ナイジェリアは右サイドが機能してスピードのあるアタッカー陣が突破を繰り返すも、ゴールを割るには至らず。フランスも右サイドからの攻めが有効だったが、エニアマの好セーブもあってゴールは遠い。膠着した展開が続いたが、フランスは後半17分、ジルーを下げてグリーズマンを入れたあたりから攻撃がスムーズに。後半25分、ベンゼマがそのグリーズマンとの鮮やかなワンツーから抜け出し決定機を迎えたが、ボールはエニアマを手をはじき、さらにこれをモーゼスがぎりぎりのところでクリア。チャンスの少ない試合だったが、後半30分あたりからナイジェリアの守備がルーズになる。後半34分、コーナーキックからキーパーが弾いたこぼれ球をポグバが頭で押し込んでフランスが先制。
●ここからナイジェリアの猛反撃が来るかと思えば、淡泊なプレイが続き、早々に試合は時間を消費するモードに。後半47分、フランスのコーナーキック、もちろんフランスの選手は人をかけずにショートコーナーを選択、しかしここから入れた低いクロスボールが中央でグリーズマンと競ったヨボのオウンゴールを誘発して、気まずい雰囲気で?フランスが2対0に。フランスの試合巧者ぶりを感じたというか、ナイジェリアの勝負への執着心の薄さを感じたというか。
●この試合、主審が笛もカードも控えすぎたんじゃないかという気がする。ラフなプレイが目立って負傷者も出たし、一発レッドに近いプレイもいくつかあったのでは。激しいプレイもいいかもしれないが、もっと吹いたほうがむしろ試合はエキサイティングなものになったかもしれない。
●ところで今大会はナイジェリアとアルジェリアのアフリカの2カ国が決勝トーナメントに残ったが、アフリカから2カ国残ったのは今大会が初めてなんだとか。えっ、ウソ?と思って1986年まで遡って調べてみたが、たしかにそのようだ。体感的にアフリカ勢はもっと強いというイメージがあったが、実際にはずいぶん苦戦してきたわけだ。で、今回、もう1試合のアフリカ勢、アルジェリアは延長戦の末、ドイツに敗れてしまった。ともにアフリカ勢はベスト16で姿を消したが、もし両者が勝っていれば、次戦でアルジェリアvsナイジェリアが実現したことになる。「ある」んだか「ない」んだか、実存をかけて戦うアルジェリアvsナイジェリア、有vs無のポストモダン対決が見られなかったのは実に惜しい、惜しすぎるっ!

フランス 2-0 ナイジェリア
娯楽度 ★★
伝説度 ★

July 1, 2014

決勝トーナメント1回戦、オランダvsメキシコ、執念の逆転劇

オランダ●今大会目立つのは3バック(=ウィングバックを含めれば5バック)勢の躍進。その3バック対決がオランダ対メキシコ戦で実現。登録上のディフェンダーの枚数でいえばメキシコはなんと7人ものディフェンスの選手が並ぶ。といっても、実態は守備的戦術ともいいがたく、3バックを採用することで、両ウィングバックを高めに配置して、ハイプレスからショートカウンターを狙うという戦術で、得点力を高めているともいえる。両者同じ狙いなのでコンパクトな中盤でボールを奪い合う拮抗した展開に。しかし気温は32度にまで達する暑さで、90分同様のサッカーを続けるのは困難。前後半の30分時点で各3分の給水休憩が設定された。
●前半はお互いカウンターのチャンスが何度かあったものの、相手に大きなミスかあるか、よほど難度の高い攻撃を成功させない限り、ゴールは生まれそうにないという息詰まる展開。ややメキシコが押していたと思う。後半3分、メキシコはクリアボールを拾ったドスサントスがスーパー・ミドルを決めて先制。これで試合が動き出す。
●オランダはフェルハーフを下げてスピードのあるデパイを投入、4-3-3の3トップにして攻勢を強める。これを受けてメキシコもドスサントスを下げてアキノを入れて運動量を確保。後半30分にメキシコはペラルタを下げてエルナンデスを投入、オランダもファン・ペルシーに代えて高さのあるフンテラールをピッチに送った。どんどん選手間の距離が開いてスペースができるにしたがって、ロッベンの突破が増えてくる。メキシコは今大会のスター候補キーパーのオチョアのスーパー・セーブもあり、なんとかそのまま試合を終わらせる一歩手前まで耐えた。しかし、後半43分、オランダのコーナーキックで、フンテラールが頭で落としたところを、それまで攻撃では目立っていなかったスナイデルが豪快なボレーで蹴りこんで同点。さらに後半49分(アディショナルタイムは6分あったが、その内の3分は給水タイムなので実質は3分)、ロッベンがドリブルでエリア内深くまで突進したのに対して、マルケスが足を引っかけてしまいPK。なぜかフンテラールがこれを蹴って、オランダは土壇場での逆転に成功した。
●テレビなのでピッチ全体はなかなか見渡せないんだけど、オランダは状況に応じて細かくフォーメーションを変化させ、特にカイトは左ウィングバックとして先発しながら、右サイドバック、フォワード、右サイドバックと次々とポジションを変えていた模様。監督がプレイを止めることができないサッカーで、これだけ細かく陣形を変化させるファン・ハール監督、恐るべし。中南米勢の躍進を願ってメキシコを応援していた側としては、この容赦のなさがなんとも憎らしい。メキシコの立て続けの失点は、ニッポンのコートジボワール戦を思い出させた。まあ、状況は違うんだけど。
●この日のもう一試合、コスタリカvsギリシャは延長PKまで突入して、コスタリカが勝った。中米勢が生き残ってくれたのは幸い。ギリシャは一人少ない相手に対して攻め続け、同点には追いつけたが、延長で得点にまで至らなかったということで、これもなんだかニッポンvsギリシャを連想させる。

メキシコ 1-2 オランダ
娯楽度 ★★★
伝説度 ★★

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