■さよなら、20世紀。恒例の年末年始企画堂々発表。

  My Disc of the Year 2000
 
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ドホナーニ:セレナード、ブラームス:弦楽六重奏曲第2番(弦楽合奏版)

シトコヴェツキ編曲&指揮/NES室内管 [NONESUCH]


A La Maniera Italiana〜バッハ:半音階的幻想曲とフーガ、フランス組曲第1番他

リナルド・アレッサンドリーニ(cemb) [Opus111]


バッハ:平均律クラヴィーア曲集第2番

アンジェラ・ヒューイット(p) [hyperion]


バッハ:ヴァイオリン・ソナタ

ポッジャー(vn)、ピノック(cemb)[channel]


クープラン:ルソン・ド・テネブル

ルセ/タラン・リリク、ジャンス(S)他 [DECCA]


ストラヴィンスキー:ペトルーシュカ、ナイチンゲールの歌、花火

ロリン・マゼール/ウィーン・フィル [RCA]


パガニーニ/ヴァイオリン協奏曲第1〜6番他

アッカルド(vn) デュトワ/ロンドン・フィル [DG]




 この一年間のクラシックCDシーン(笑)において印象的だったのは、輸入盤再発売のCD、特にセットものの廉価化。もちろんこれまでも廉価盤というのはあったんだが、そんなもんじゃあない、この頃は。ベートーヴェン交響曲全集5枚組が2千円台で買えたりする時代到来、しかも安いだけじゃ価値レスなんだが、比較的新しい録音も含めて定評あるものがお求めやすく。もともと、ヘンだと思ってたんだよね、CD3枚組が1枚ものの3倍の価格になるってことが。大衆化するクラシック音楽。ああ、いい時代になったもんだよ、これから聴く人たちは幸せだねえ、ワタシらが1万円で買ったものを2千円台で購入できて……。と、ホントは喜んでばかりはいられない。裏返せば、新譜ってのは客の目線で見たときにそれらに対抗する存在になるわけで、「今のアーティストを聴く人たち」ってのがますます稀少化していくんじゃないかって危惧もあるよなあ。

 で、新録音はどうかってことになると、それでも自分的スケール感からすれば十分な量が出てる。まず、ウチで一番頻繁にかかっていた一枚を挙げると、シトコヴェツキ編曲指揮によるドホナーニ/セレナード&ブラームス/弦楽六重奏曲第2番の弦楽合奏版。ドホナーニの原曲を「トリオのためには音楽が大きすぎると常々感じていた」と語るシトコヴェツキが自在に編曲。巷で誉め称えられるような立派なものじゃないかもしれんが、豊潤なロマンティシズムがもたらす快楽度は大。

 アニバーサリーだからってわけでもないが、バッハも大いに堪能。「半音階的幻想曲とフーガ」のカッコよさに圧倒されたアレッサンドリーニ(チェンバロ)のA La Maniera Italiana。ピアノによるバッハではカナダの女流アンジェラ・ヒューイット。挙げておいたのは平均律の第2巻。初めて聴いたんだけど、「えっ、こんな人がいたのか」と頭の数分でびっくり。ポッジャーとピノックによるヴァイオリン・ソナタ集もいい。軽やかさが吉、ただし物足りないって方もいるかも。
 大いなる安らぎと慰めを与えてくれたルセのクープラン/ルソン・ド・テネブルにも感謝。ああ、清められるよ、体中から毒電波が抜けていくぅー。

 時にはスカッと鳴り響くオーケストラの分厚い音響も楽しみたい。ベルリン・フィルとのワーグナーも含めて、近年録音の目立ってるマゼールから一つ。ウィーン・フィルとのストラヴィンスキー「ペトルーシュカ」ほかを。年をとってもケレンたっぷりの不良老人でいられるなんて立派だ。若い頃ほどの暴れん坊ぶりは望めないにしても。

 冒頭に述べたBOXセット猛安化現象のおかげで、普段あまり熱心に聴かない分野にも気軽に手を出せるようになった。いくつも楽しんだが、一つ選ぶとアッカルドのパガニーニ6枚組。ディスクナンバー1から順に、次から次へと鳴らしまくり、風の音のごとく聞き流し純粋消費することで、偉大なるヴィルトゥオジティを凌辱するのだ。ひひっ!

 あとはDISC WOW!でも取り上げたファジル・サイのピアノによるストラヴィンスキー「春の祭典」反則技。それから、新しい佳曲を発見させてもらったフィンランディア・レーベルのシンディング/交響曲第3番&第4番(ラシライネン指揮ノルウェー放送管)。聴きたい音楽は無数にあり、聴ける音楽などそのほんの一部。と、改めて感じ入り、2001年を迎える。
(01/01/01)





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