CLASSICA [home]  
  Wonder Jukeな日々
ある日、そのオファーはやってきた。「クラシック音楽ネット配信サービスのディレクターをしてみませんか?」。Wonder Jukeクラシックで未開の地を切り開く(笑)、山尾敦史の奮戦記。ほぼ隔週更新連載中。


文=山尾敦史
 


連載第2回山尾、ワンダージュークのなんたるかを知る

 生来の怠け者なので前回から時間があいてしまった。2回目にして、この体たらくなのである。先が思いやられる。あ、自分のことか。
 山尾はインターネットを利用し始めた10年ほど前よりのSo-netユーザーである。とはいえメール・アドレスを取得し、初代ポストペットで遊んだ程度のものなのだが、そういうわけでSo-netから連絡をいただいたときには「あれえ、不正アクセスとか不備があったかしらん」くらいにしか思わず、よもや仕事が舞い込んできたなどとは露ほども思わなかったのだ。

 さて、このWonder Juke構想。担当者のN氏よりひと通りのお話をうかがって、おもしろいなあと思ったのは、まずストリーミング型のサービスであることだった。2003年12月頃といえばCDのコピーライト・コントロール、つまりCCCD化によるコピーガードが問題になっていた時期と重なる。同じ頃、ダウンロード・サービスによる音楽配信サービスも本格化してきたので(1回ダウンロードしていくらという、現在ではマイクロソフトやアップル、さらに携帯電話の着メロ&着うたサービスなどで、あっという間に市民権を得てしまった新しい音楽の入手方法)、音楽を巡る著作権の問題は実にきな臭いことになっていたのだ(……と思っていたのは、自分を含む一部のユーザーだけだったかもしれないが)。だからストリーミング配信、つまりネット・ラジオと同じでユーザーのパソコンには音楽データが残らない方式をとっているというのは、それだけで好印象だった。すでにBBCインターネットなどで音楽を聴いていた身としては「まあ、似たようなものだろう」という感触を得ることができたのである。

 驚いたのは山尾が構想を聞いたその時点で、東京フィルハーモニー交響楽団が参画していたことだ。話をうかがうとSo-netの社長さんは大変なクラシック音楽ファンで、東京フィルの定期演奏会に通われているとのこと。スタート時にどういった音源を配信できるかは、大きなポイントである。この東京フィルの話については後日に。
 さらに驚かされたのは、あのナクソス・レーベルが全面的に音源を提供してくれるというのである。「ほとんど全部オーケーだそうです」というNさんの言葉に、「この人、それがどういうことかわかってるんかいな」と思いつつ(笑)、いきなり目の前に提示された“お宝”に、未来のヴィジョンが見えてきた一瞬だった。
 しかし、言うまでもないことだが、ビジネスというのはそんなに甘くないのだ。楽天的な気分になっていた山尾は、N氏とお会いしてのミーティングで現実の厳しさも知ることになる。

[次回につづく]


[Wonder Juke クラシックとは?]
So-netが提供するクラシック音楽の本格的ネット配信サービス。クラシックではかつてない本気度の高さだが、これでビジネスになるのかと業界関係者が固唾を飲んで注目中というウワサ。本格なので有料。体験版もあるので試すが吉→Wonder Juke クラシック

◎バックナンバー
第1回山尾、ワンダージュークに出会う
  >>HOME