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◎連載第2回[山尾、ワンダージュークのなんたるかを知る]
生来の怠け者なので前回から時間があいてしまった。2回目にして、この体たらくなのである。先が思いやられる。あ、自分のことか。
山尾はインターネットを利用し始めた10年ほど前よりのSo-netユーザーである。とはいえメール・アドレスを取得し、初代ポストペットで遊んだ程度のものなのだが、そういうわけでSo-netから連絡をいただいたときには「あれえ、不正アクセスとか不備があったかしらん」くらいにしか思わず、よもや仕事が舞い込んできたなどとは露ほども思わなかったのだ。
さて、このWonder Juke構想。担当者のN氏よりひと通りのお話をうかがって、おもしろいなあと思ったのは、まずストリーミング型のサービスであることだった。2003年12月頃といえばCDのコピーライト・コントロール、つまりCCCD化によるコピーガードが問題になっていた時期と重なる。同じ頃、ダウンロード・サービスによる音楽配信サービスも本格化してきたので(1回ダウンロードしていくらという、現在ではマイクロソフトやアップル、さらに携帯電話の着メロ&着うたサービスなどで、あっという間に市民権を得てしまった新しい音楽の入手方法)、音楽を巡る著作権の問題は実にきな臭いことになっていたのだ(……と思っていたのは、自分を含む一部のユーザーだけだったかもしれないが)。だからストリーミング配信、つまりネット・ラジオと同じでユーザーのパソコンには音楽データが残らない方式をとっているというのは、それだけで好印象だった。すでにBBCインターネットなどで音楽を聴いていた身としては「まあ、似たようなものだろう」という感触を得ることができたのである。
驚いたのは山尾が構想を聞いたその時点で、東京フィルハーモニー交響楽団が参画していたことだ。話をうかがうとSo-netの社長さんは大変なクラシック音楽ファンで、東京フィルの定期演奏会に通われているとのこと。スタート時にどういった音源を配信できるかは、大きなポイントである。この東京フィルの話については後日に。
さらに驚かされたのは、あのナクソス・レーベルが全面的に音源を提供してくれるというのである。「ほとんど全部オーケーだそうです」というNさんの言葉に、「この人、それがどういうことかわかってるんかいな」と思いつつ(笑)、いきなり目の前に提示された“お宝”に、未来のヴィジョンが見えてきた一瞬だった。
しかし、言うまでもないことだが、ビジネスというのはそんなに甘くないのだ。楽天的な気分になっていた山尾は、N氏とお会いしてのミーティングで現実の厳しさも知ることになる。
[次回につづく]
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