●スパム(迷惑メール)撃退に向けて工夫を始めて以来、段々とこの問題について詳しくなってきた(やれやれ)。でもスパムの語源なんか書かないっすよ。モンティパイソンの話もしないし、SPAMの缶詰の話もしない。
●前に挙げた「スパムへの対策 ---A Plan for Spam」、これに基づいたソフトウェアが欲しいなあって書いたと思うんだけど、やっぱりみんな考えることは一緒。すぐにこの手法に基づくツールが作られたようである……が、ワタシの知る限り、それは英語圏のUNIX環境のものばかり。あ、英語圏つうか、非日本語ってことね。
●Windows用の海外産スパム撃退ツールはたくさんあることはあるんだけど、日本のものよりもちょっと良さげで数が多そうという程度で、本質的にはそんなに変わらないっぽい。どれもNGパターンをあらかじめ用意しておいて、引っかかった言葉を含むメールを削除するといったシンプルなスタイルで、統計的フィルタリングなんかしてくれない(と思う)。まあ、これはしょうがないってのは分かる。
●ちなみにワタシが導入したWindows用フリーソフトSpam Mail Killer、まだ使いはじめたばかりだが、それなりに手放せないものになってくれている。「それなりに手放せない」ってのがビミョーなところで、確かに毎日十通以上のスパムメールを自動削除してくれて大変ありがたいんだが、一方で少々工夫したところで毎日十通以上のスパムはこいつをくぐりぬけて来そうだってことも感じている(苦笑)。これは正規表現を使えるところが優れモノ、っていうか正規表現も使わずしてヘッダ情報からスパムを選別することなんて不可能って気もするが、しかし正規表現なんてあまりに一般性を欠くよなあ。
●……このスパムの話題、もう止めようか(笑)。99%の人には通じてない気がしてきた。それに、スパム撃退のために手をかけるのって、すごい暗い情熱を燃やしているようで、ちょっと自己嫌悪あるんだよな。たとえば、「スパムを撲滅するために知恵と勇気で戦う社会正義の人」と「スパム? そんなもん100通来ようが200通来ようがゴミ箱に捨てりゃいいんだよ」って言える人と、どちらになりたいかっていえば後者じゃないか。(01/30)
2003年1月アーカイブ
統計的フィルタリング
さらば、ドーハ組
●豪州戦、日韓戦ときて、次は東スタと国立競技場で日本代表vsイングランド戦が2戦もある! と新聞を見てびっくりしたのだが、よく見たらサッカーではなくてラグビーの話だったよ。だよなあ。
●東京ヴェルディの北澤豪が引退。いつのまにか34歳になっていたのだ。井原の次は北澤か。ドーハ組というか、W杯アメリカ大会組のメンバーが次々とピッチを去ってゆく。フランス大会のときはカズといっしょに直前にメンバーから落ちたってことも思い出した。
●井原といえばまっさきに思い出すのが自陣ゴールに叩き込む豪快なオウン・ゴールであったように、北澤といえば強烈な右足から放たれてそのままゴールの遥か彼方、スタンドまで飛んでいくような力強い「宇宙開発シュート」(笑)。でもスゴく好きな選手だったのだ。いきなり大昔に遡るけど、Jリーグが誕生する前、日本リーグで本田技研にいたときに得点王獲ってたよね? その北澤が読売クラブに移籍して、「武田もいるのに北澤もかよ!」と思った記憶があるんだが、Jリーグが誕生した頃には北澤にゴール・ゲッターのイメージはまったくなかった。
●オフト・ジャパンの頃の日本代表の中盤って、ダイヤモンド型に並んでて、ラモスと福田と北澤がいて底で森保が守るって布陣だったっけ。今考えると夢のように攻撃的な中盤攻勢なんだけど、これって北澤の運動量が異様に多いってことが前提で成り立っていたんだろうな。あの頃の日本代表のビデオを今見たらどんな感想を抱くんだろか。やっぱりヌルく見えちゃうのか? (01/29)
First Floor
●おお、ありがたい。昨日の「英国人は上から2番目のリーグを1部リーグと呼ぶ」ネタについて、多数のメールが。いいっすねえ。「どうせ同じこと書く人がいるだろうから書かない」なんて遠慮する必要はありません。ワタシに何でも教えてやってください。
●で、皆さん異口同音におっしゃるのが建物の階数の数え方。イギリス人は2階のことをFirst Floorと呼ぶ。1階はground floor。なるほど。確かにフットボール・リーグを逆階段で見れば、2部リーグを1部リーグと呼ぶのもそれと同じかもしれない。1階上がったフロアだからFirst Floor、1段階降格したリーグだから(なんかヤだな、これ)1部リーグであると。
●フットボール史的な背景もある。ちょっと昔はイングランドも他国同様、一番上のリーグが1部リーグだったんである。しかし、1992年から上位20クラブで優勝を競うプレミアリーグが誕生して、以来実質2部リーグが1部リーグと呼ばれることになった。1部よりも上のリーグを作るにあたって「プレミアシップ」ができた。
●この1部よりも上のリーグを作ったっていうのは、(規模は小さいけど)日本のJリーグ発足と同じ経緯っすよね。ただ、上にリーグを作ったのは同じだけど、残された旧1部リーグを日本は(紆余曲折あったけど)「2部」と呼び改め、イングランドは「1部」と呼び続けているわけだ。やっぱりこれはFirst Floorなんて言い方がある国らしいやり方なんだろな。(01/28)
プレミア・リーグ
●わかんないもんだよな。清水エスパルスの戸田和幸がイングランドのサンダーランドに練習参加、これはほぼ移籍確実だなと思ってたら、急転直下、なぜか同じくイングランドのトッテナム・ホットスパーズに移籍が決定(ただし1年間のレンタル)。これは驚いたなあ。だって、サンダーランドで新しいチームメイトといっしょに練習までしてたんすよ。それでヨソに行くんすよ。なんて気の毒なんだ>サンダーランド。
●でも、しょうがないのか。英国フットボールに疎いワタシだって、トッテナムのほうがお金もあるし、順位も上なのは知っている。サンダーランドに行ったら、半年で下部リーグに落ちる可能性が高かったもんなあ。
●ややこしいんだけど、英国では日本および諸外国でいうところの一部リーグが「プレミア・リーグ」、二部リーグが「一部リーグ」。だから、戸田和幸や稲本潤一は「プレミア・リーグ」、川口能活がいまだに控えキーパーをやらされているポーツマスは「一部リーグ」。上から数えて2番目のリーグを「一部リーグ」と呼ぶのって、英国人は疑問に感じないわけ? ワタシゃ絶対になじめないっす。(01/27)
高原ブンデスデビュー
●高原直泰がドイツ・ブンデスリーガにデビュー。いやあ、テレビで見ましたよ。ハンブルガーSVが敵地ハノーファーで戦った北部ダービー。最近海外移籍した日本人選手のなかで、もっとも心配のない選手が高原だと思ってたんだが……うーん、微妙。
●ドイツは採点方式がまた他と違うようだけど、ワタシ的基準(6.0が平均点=及第点。満点は8点)で言うと、5.0点っすね。前半はボールに触れず、しかもミスが目立った。後半マハダビキアとパスを壁になってワンツー、そこからマイヤーのゴールが生まれたが、あれを「ゴールの起点となった」と表現する日本の媒体はおかしい。
●シュートらしいシュートもなかった。ドリブルでチャンスを作るシーンもまったくなかった。やっぱり初戦で緊張していたのか、コンディションがもう一つだったのか。次節ホームでのデビューが試金石かと。次もこの調子ならベンチ行きと見た。(01/26)
「山本昌邦備忘録」
●以前にDVD「六月の勝利の歌を忘れない 日本代表、真実の30日間ドキュメント」をご紹介した。で、インパクトの強さという点で、この映像ドキュメントと遜色ないのが、新刊書籍「山本昌邦備忘録」(山本昌邦著/講談社)。山本昌邦さんってのはトルシエ・ジャパンのコーチだった人っすね。就任中はトルシエの許可なく取材を受けることが許されてなかったので、媒体への露出も少なかったが、禁を解かれて語る語る、トルシエがいかにムチャクチャな人物だったか。
●といっても趣味の悪い暴露本じゃない。ちゃんとトルシエの手腕を評価した上で、淡々と事実を語る。でもなあ! とにかく、腰を抜かすような話がいくつもあって、もう唖然愕然呆然。たとえばトルシエの最初の功績は日本ユース代表を世界大会で決勝まで進めたことなんだけど、その決勝戦当日の話。
●選手全員で30分の散歩にでかけた。ところが散歩の途中でテニスコートがあった。そこでトルシエは「小野がいないからフォーメーションはこうだ」とか「スペインはこんな攻め方をしてくる」とか言い出して、もう興奮し出したら止まらない、発作的に猛練習を始めて、炎天下で2時間。あのキツい日程で、決勝戦の当日っすよ。信じられますか。しかもトルシエの独断のために、試合前に選手は十分な食事を与えられず、中田コは「腹減って、なんか眠いっす」とかぼやいていたっていうんだもんな。そりゃ大敗するよ。
●こんな話は序の口で、トルシエ・ジャパンは監督とチーム・スタッフとで衝突を繰り返しながら、何度も空中分解寸前まで行っていたんである。一番トルシエにいじめられていたのが腹心の部下サミア・コーチ(来季からJ2湘南の監督に就任)だっていうから、別にトルシエは日本人だけにやりたい放題やっていたわけではない。これがアフリカで実績を積み、身につけたトルシエのスタイルなんだろう。あまりの理不尽さや不合理さに呆れるが、一方で不条理に打ち勝つ逞しさを要求してきた結果、日本代表が育ったという面もあるので難しい。
●DVD「六月の勝利の歌を忘れない」の最後の場面で、山本昌邦コーチが一言選手に言ってたじゃないっすか。「みんな、よく耐えたよ……」。そうか、そうだったのか。代表ファン必読なり。(01/23)
映画「マイノリティ・リポート」
●フィリップ・K・ディックの小説がこんなにも映画化される日が来ようとは。最初に長篇「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」が映画化されるという話を耳にしたときは(ずいぶん昔の話だ)、「そんな特殊な読者対象しかいない作品を映画するなんて無謀すぎる」と思ったものだが、その映画「ブレードランナー」はカルトという意味では原作を超える人気を持つに至った。その後、なにが映画になったっけ。中篇「追憶売ります」が「トータル・リコール」に、短篇「変種第2号」が「スクリーマーズ」、短篇「偽者」が「クローン」に。次々映画化されるわりには、「ブレードランナー」以降ろくなものがないって気もするが、幸か不幸かディックはとっくに死んでいて、商業的成功の恩恵にもあずかっていない。売れない作家時代にはペットフードまで食べてたのに。
●で、映画「マイノリティ・リポート」はディック原作のなかでは、おそらく「もっともフツーによくできている」作品。ディックの小説なんてどれもこれも破綻寸前の狂った話ばかりなんだけど(褒め言葉)、スピルバーグの手にかかるときちんとしたエンタテインメントになるからスゴい。カッコいい近未来の描写、アクション、ユーモア、サスペンス、意外なオチとサービス満点。「嘔吐棒」とか、「スパイダー」とか、ディテールで笑わせてくれるのがいいんだよなあ。で、物語的にはアイロニーの代わりにオプティミズムが前面に出てくる。以下ネタバレ全開なので要注意。
●タイトルは「少数報告」という意味。3人のプレコグ(=予知能力者、ディック作品にはしばしば登場する)が見た未来が一致せず、2人と1人に予知が別れた場合、少数意見は切り捨てられるというのが、このストーリーのキモになっているわけだ。で、原作では主人公がプレコグ2人の予知を見て、自分が殺人を犯すことを知ってしまう。そのため未来が変わるが、実は残りの1人のプレコグはその予知を知った主人公の行動までを予知していた。しかしこれが少数報告とみなされて破棄されてしまったというオチで、アイロニカルというか「なんじゃそりゃ」というべきか、ディックらしい話だった(と思う。記憶で書いてます)。
●でもこれはスピルバーグ的世界観では受け入れられない運命論的な話で、映画では「人は自らの意思で未来を決めることができるのだ(=だから正しく生きようよ)」といったテーマに置き換えられている。そういうこともあって、二段オチが必要になったんだろう。結果としてタイトルが観客をミスリードしてくれている。最後のオチはずいぶん卑近なネタで決着してくれたなとも思うが、大作映画としてはこれでいいんじゃないか。誰も第二の「ブレードランナー」なんてもう期待してないでしょ? (01/20)
スパムへの対策
●ここのところ書いているスパムメール対策について、とても有益な情報をいただいたので挙げておくのだ。ポール・グレアム氏の「スパムへの対策 ---A Plan for Spam」日本語訳。ちょっと読み辛いかもしれないが、じっくり読めば非常におもしろい。ヘッダも本文も含めて、メール中に含まれる単語について統計的手法を使えば、スパムだけを選別することはできるっていう話。これはいける。スパムと非スパムについてある程度まとまったサンプルが必要になるが、この手法を正しく用いればスパム問題はほとんど解決しちゃうんじゃないだろか。
●なので、だれかこのやり方でフリーウェアかシェアウェアを作ってくれないかなあ。きっと大ヒットすると思うんだけど。日本語を単語分割するときは、漢字だけ拾うってことで実用上問題ないところまでできない? まあ、仮にできなくても英語対応だけでも十分。(01/24)
スイカって
●首都圏ローカルなんだけど、JRにスイカ(Suica)ってのがあるんすよ。プリペイド型のICカードで、自動改札機をパネルに軽く触るだけで通れるっていう便利アイテム。磁気カードと違って、金額が減ってきたら追加して入れておけるのがいい。使いきり型だとあと100円残ったときとか困るけど、スイカなら大丈夫。
●けど、このネーミングって引っかからないっすか。スイスイっと改札を通れるカードだから「スイカ」、ホントはSuper Urban Intelligent Cardの略称、ロゴマークはスイカ(西瓜)模様。ここまで言葉をかけてるんだったら、やっぱり「誰何する」からスイカって思うよねえ。いや、スイカには名前のような個人情報なんて入ってない。入っていないんだけど、自動改札機をくぐり抜けるときに「誰何」ってのは相当ブラックなセンスだと思うんである。「なに? お前か、ならばここは通さぬ! ガチャ!」みたいな。この名前を考えた広告代理店の人は鋭いと思うけど、これを採用しちゃったJRはどうかと思う。(01/17)
バス待ちオヤジの怪
●たぶん終バス時刻終了と確信しつつもバス停を見ると、バス待ちオヤジ一名発見。あるのかよ、と疑いつつも、近づき時刻表を確認しようとすると、なれなれしくオヤジが言う。
「あるよねー、まだバス」
「あ、えっと、ありますよね(つうかあるからアンタが立ってるんだろが)」
「ほんとかー、まだあるかー、バス」
「はあ?(よく見たら30分も前に終わってるじゃん)あー、やっぱりないっすよ、バス」
「ええ~、ないのー、ホントにないのぉ、ウソだろおー」
「いや、確かにないっす(ウソって言われても先に待ってたのはあんただって)」
「ちっ、しょうがねえなあ、ふざけやがって」
「……(ふざけてんのはあんただよ)」
●なんか酒臭い気がしたのでさっさと立ち去ろうと歩き始めた直後、ふと気になって振り返ってみるとオヤジの姿が忽然と消えている。たちの悪い妖怪だったか。(01/16)
ウェルカム、久保
●なんと、わがマリノスに広島から久保が移籍してくることになったではないか。ウワサじゃバティストゥータだとか(笑)、デルガドだのカフーだのといろいろ言われていたが、レギュラー・クラスの新戦力は久保、あとは微妙なところだがFC東京からの佐藤(由)。とりあえず久保の天然っぷりはこの「久保ネタ」でチェック。スゴいよね、昔のインタヴュー。記者「2002年W杯の代表になりたいとかは?」→久保「1999年に世界の終わりが来るのでそんな先のことは……」。ウチのチーム・カラーに合うとは思えなくて心配っす。
●メンバーを見ると4バックか?
GK:榎本
DF:波戸-松田-中澤-ドゥトラ
MF:上野-遠藤
佐藤(由)-奥
FW:久保-清水(or坂田)
●波戸をセンターバックに使えば同じメンバーで3-5-2になる(左にドゥトラ、右に佐藤、トップ下に奥)。控えの層が昨年よりかなり薄くなっているので、このままでは到底優勝はムリ。やはりあと2枚、外国人選手枠を使わなければ。引き続きFC東京に石川、ヴェルディに田中をレンタルすることになったが、あの二人が帰ってこないとは残念である。レンタルってのは貸出先で活躍したら戻ってきてくれてこそ意味があるんだけど、なかなかJではうまく機能しなくて難しいっすね。(01/15)
ユヴェントスvsレッジーナ
●映画「アマデウス ディレクターズ・カット」、DVDが2月7日発売だそうっす。映画館で見れなかった(ラ抜き言葉)方はぜひ。
●地上波でユヴェントスvsレッジーナを中継してくれたので、久々にサッカーをテレビ観戦。相手が強豪ユヴェントス、しかもアウェイとあっては中村俊輔のチームに勝ち目はないだろうと思って見たんだが……。いやあ、まさかあそこまで酷いことになっていようとは>レッジーナ。個々の選手の能力がユヴェントスより低いのはチーム規模からして当然のことだからしょうがないんだけど、組織でもダメダメでディフェンス大崩壊。これで来季降格しなかったら奇跡。
●俊輔は確かにチームのなかじゃ抜群にテクニックがある。でも下がってボールを受けて、サイドにボールを散らすようなプレイ・スタイルじゃ相手に脅威は与えられないよなあ。せめてエリア近辺でボールを持ったときはシュートを狙って欲しいんだけど、ゴールの気配ゼロ。これはかつてマリノスで見た光景ではないか。(01/13)
「飛蝗の農場」
●「飛蝗(バッタ)の農場」(ジェレミー・ドロンフィールド / 創元推理文庫)を読む。一応ジャンル的にはサイコ・スリラーってことになるらしいんだが、感触はちょっと違ってて「ヘンな話」。農場で一人暮らししてる女性のところに、記憶喪失の男が転がり込んでくるというストーリーで、これ以上はなにを書いてもネタバレになる恐れあり。各章が時系列的に分断されているあたり、映画「メメント」を思い起こすんだけど、内容は全然似ていない。仕掛けのおもしろさ以上に、個々のエピソード、人物像が印象的。ヒロイン(?)をはじめとするダメな人の描き方が巧いんだよなあ。「このミス 2003」海外部門1位。すごーくおもしろかったんだけど、あのラストがピンと来ないのはワタシがミステリ慣れしてないからなの? (01/10)
ウィーン・フィルの夢を見た
●夢を見た。大きな集会所でウィーン・フィルのメンバーを大勢のジャーナリストが囲んでいる。ワタシもそのジャーナリストの一人らしい。ウィーン・フィルにはボスがいる。これが業界で知らぬものはいないというくらいの恐ろしい人物で、いったいこれまでに何人葬ってきたか分からない殺人鬼でもある(あ、これ夢の話っすよ。事実じゃありません。 ワタシゃ、ウィーン・フィル、大好きですよ!)。
●恐怖の帝王は、ときどきジャーナリストを気まぐれに指名する。指名された者は 黒ずくめの男に両脇から抱えられ、その場で舌を抜かれる。拷問である。建物のそばにはお堀があって、ここには多数の死体が埋められている。しかし警察も黙っちゃいない。捜査官たちが土を掘り起こしている。危うし、恐怖の帝王。
●ウィーン・フィルのボスは捜査官に反論した。白々しくも、だれも殺していないという。ボスの指示によって、急遽ジャーナリストたちの障害物競走が開催されることになった。ワタシも参加しなければいけないようだ。「ヨーイ、ドン!」でいっせいにスタート。ワタシは必死になって走り、柵を越え、塀を登る。すると、横から銃撃が始まった。到底、避けきれない。右の脇腹を撃たれた。しかし痛みはない。これは本物の銃弾ではないな。
●競走が終わると、ボスは警察に向かってこう言った。「こうして銃を乱射したが、見ろ、一人あたりせいぜい一発しか当たらないではないか。これでは致命傷に至らないから、まず人は死なない。だから私はだれも殺していない」。見事なまでのマフィアの論理である。(01/09)
京都の天皇杯
●今ごろ言うのもナンだが、今年の天皇杯決勝はよかったよなあ>京都vs鹿島。試合内容も充実していたし、積極的な京都のサッカーがタイトルを獲ったのもすばらしい。京都が関西において初タイトルを獲るクラブになろうとは。本当におめでとうございます>京都のファンの方々。
●非Jリーグ系の方にはピンと来ないだろうが、京都ってのはすごく応援しがいのあるチームなんである。J1に昇格した頃は「金はあるけど弱い」というダメさかげんにおいて突出した存在であり、元ブラジル代表キャプテンにして黄金時代の日産を率いたオスカーを監督に招きながら連戦連敗。栄光に満ちたフットボール人生を送ってきたオスカーが記者会見の度に悲しい名言を残していた。曰く、「私は目の前で起きていることが信じられない」「勝つ方法があるのなら、お金を払ってでも教えて欲しい」「ウチのディフェンダーがボールを持つと、私は心配のあまり心臓発作を起こしそうだ」。フツー、監督はそんなこといわない(笑)。
●それがいまや天皇杯優勝なのだ。元代表クラスの名選手路線を止め、かわりに松井、黒部、パク・チソン(来季はオランダ)、角田といった若い優れた選手をそろえ、3トップで自らゲームを作ろうという志の高いサッカーを見せてくれる。監督はだれもが好きになってしまうエンゲルス。かつて日本で高校のサッカー部の監督をしていたような人っすよ。優勝インタヴューで感極まっていたのを見て、同じエンゲルス監督のもとでフリューゲルスが伝説の天皇杯優勝を果たしたシーンを思い出した。
●京都に比べると、ソラリ監督以後のマリノスは物語性に欠けるよなあ。(01/07)
ベルリン・フィルの「ジルベスター・コンサート」生中継
●いやー、スゴかった。ベルリン・フィルの「ジルベスター・コンサート」生中継、観ましたか。ラトルが出てきてなにを振るのかと思ったら、バーンスタイン、ワイル、ガーシュウィン。で、メイン・プロはバーンスタインのミュージカル「ワンダフル・タウン」っすよ。まさかだよなあ、これは。で、これが大変な盛り上がりよう。ここはホントにベルリンのフィルハーモニーザールなのかっ!
●アンコールで「ワンダフル・タウン」のなかの「コンガ!」をリピートしたんだけど、これが歌手から楽団員から客席まで、立つわ座るわ踊るわの大騒ぎ。腰の重そうな年配の方々もみんな立って「コンガ!」と叫び、手を叩き、ひょっとしたら腰まで振っちゃう。若者を踊らせるのは簡単そうだが、老人を立たせるのは難しい。老紳士も絶対叫んでたね、「コンガはサイコー!」って(スマン)。
●ちなみにラトルはバーミンガムで「ワンダフル・タウン」を録音しているんすね。もっとも、ワタシはまるっきりクラシック音楽な人なので、ライヴでラトル指揮ベルリン・フィルを聴ける機会があったら、正直バーンスタインよりマーラーやベートーヴェンを聴きたいとは思う。でもこれはテレビだから。テレビじゃシリアスな音楽聴けないから、バーンスタインのミュージカルのほうがずっといいじゃないっすか。
●一方、意外性に満ちたベルリンとは正反対に、元旦のウィーンは究極の予定調和で満ちている。いくらアーノンクールが新趣向を凝らしたところでその本質は変わらないし、変わらないからいいって気もする。なにしろ、アンコールで「美しく青きドナウ」の冒頭のトレモロが聞こえたら一度は拍手して曲をストップさせるっていう、どこにも書かれていない筋書きをお客が承知しているんだからスゴいことである(もし客が拍手して止めてくれなかったらどうなるんだろう)。「舞踏への勧誘」で聴衆のみなさんが思いっきりワナに引っかかっていたけど(終わったと思って拍手しちゃうあそこです)、あれも日本の名曲コンサートだと「チッ、チッ、チッ」だが、ウィーンだと「これはこういう趣向の曲だからこれでいいんじゃないか」とか思ったりして(笑)。あ、でもCDではあのハプニングは起きないんだろうな。どうでしたか>もうCD聴いた人(おいおい)。(01/02)
あけおめ
●あけましておめでとうございます。本年もCLASSICAを使って/見て/読んでやってください。ってわけで、とりあえず元旦になって2002年のマイ・ベスト。お、遅い……。
●あ、紅白はどっちが勝ったのかなあ。見てないっす。「2002年といえば北朝鮮、強かったですねー、北朝鮮だけにアカ勝った、紅組の勝ち~」みたな幕間の寸劇ってまだやってるの? (2003/01/01)