2017年2月14日

今年のグラミー賞

●ニュースを見てたら、内田光子グラミー賞受賞という見出しが目に入った。あ、そういえば以前、小澤征爾受賞のときもニュースになったっけ。いつの間にグラミー賞のクラシック部門がニュースになるようになったんだろう。自分の記憶では、以前は業界内でも話題にならず、「グラミー賞にクラシック部門ってあるの? ていうか、グラミー賞ってなんの賞?」くらいの感じだったと思うんだけど。でも、おめでたいことではあるし、クラシックのアルバムが一般向けのニュースに載るんだから、ありがたいことと喜ぶべきか。受賞アルバムはDECCAのドロテア・レシュマンが歌うシューマン&ベルクの歌曲集。ジャケット写真の歌手とピアニストの位置関係が絶妙。
●で、そもそもグラミー賞ってどんな賞なのか、さっぱりわからないので公式サイトに行って、WINNERSと書かれたページを見て驚いた。す、すごい、これは。1. Record Of The Year に始まって、その後、5. Best Pop Solo Performance とか 6.Best Pop Duo/Group Performance とか延々と各部門の発表が続くんだけど、部門数が細分化されていてとてつもなく数が多い。ページをうんと下にスクロールしてもクラシック部門が出てこない。13.Best Metal Performance、14. Best Rock Song、15.Best Rock Album、16.Best Alternative Music Album……(まあ、この辺よりクラシックが下なのはしょうがない)……35.Best Latin Jazz Album、36.Best Gospel Performance/Song、37.Best Contemporary Christian Music Performance/Song……(おいおい、まだ出てこないぞ。それにしても音楽ジャンルが細分化されているのだなあ)……55.Best Children's Album、56.Best Spoken Word Album (Includes Poetry, Audio Books & Storytelling)、57.Best Comedy Album(おいおい、そんなのよりクラシックは下なのかよっ!)……67.Best Album Notes(なんだその賞は)……68. Best Historical Album(クラシックかと思ったら違うよっ!)……73.Best Engineered Album, Classical。やったー、来たよ、クラシックが。でもなんでBest Engineeredが最初に来るのよ。75.Best Orchestral Performance。はい、出ました。アンドリス・ネルソンス指揮ボストン交響楽団によるショスタコーヴィチの交響曲第5番、第8番、第9番(ドイツグラモフォン)。件のドロテア・レシュマン&内田光子のシューマン&ベルクは 80.Best Classical Solo Vocal Albumに挙がっていた。
●やっと75番目の部門賞でようやくクラシックのアルバムを発見したわけだが、なんだかこれって悔しいぞ。Best Children's AlbumとかBest Comedy Albumとかより注目度は低いの? ぜんっぜんこの賞の仕組みがわかってないんだけど、1.Record Of The Yearにクラシックのアルバムが選ばれる可能性はゼロなの? シューマン&ベルクの歌曲集がアデルっていう人を差し置いて全世界を席巻することはないわけ? あ、そこの方、笑わないで。本当は知ってる、ないって。ワタシは縦スクロールすることに疲れただけ。

2017年2月 1日

爺写真密度について

●CD棚の整理をしていて、あれこれとジャケットを眺めていると、改めてウチの棚には爺の写真が多いと思う。どんなマニアなのかと思うくらい大勢の爺がそこに。もし単位体積あたりの爺写真密度を算出するとすれば(単位は爺/㎥)、クラシック音楽愛好家のCD棚はおおむね一般家庭における最高水準の密度になるんじゃないだろうか。
●とはいえ、すべての棚で高い爺密度を記録しているわけではない。やはりオーケストラ曲の数値が断然高く、次にピアノ曲が高そう。逆にオペラの棚はかなり数値が低い。作曲家別配置で見れば、ブルックナーのエリアの爺密度が驚異的に高くなっている。次点はベートーヴェンだろうか。バッハは微妙なところで、例の有名な肖像画も爺写真にカウントするとすればそこそこ行くかもしれない。あのバッハは何歳なのだろうか?
●一方、バッハを別として、バロック音楽以前は急激に爺密度が下がるような感触がある。これを簡単に可視化する方法がないかなーと思ったんだが、Google画像検索は代替手段として使えるかもしれない。

ブルックナー Bruckner CD
バッハ Bach CD
ラモー Rameau CD

2017年1月26日

ドゥダメル指揮ウィーン・フィル・ニューイヤ・コンサート2017

●ドゥダメルの指揮で話題を呼んだ今年のウィーン・フィル・ニューイヤ・コンサート2017。選曲的にもニューイヤー・コンサート初登場の曲が8曲も入っていて新鮮な感じがあったんじゃないだろうか。
●なかでも印象に残ったのは、ワルトトイフェルの「スケーターズ・ワルツ」かな。この曲、ちゃんと最初から最後まで聴いたのは初めてかも。町のスケート場とかでBGMでかかっている曲というか、ホームミュージック的な印象しかなかったんだけど、こんな曲だったとは。この曲って序奏が付いているんすよね。で、国内盤CDの解説でも言及されているけど、冒頭ホルンがまるでブルックナーの交響曲第3番の冒頭トランペット主題みたい。ドキッとする。あと、曲全体としては思った以上にウィンナワルツ風なのだな、と。
●ニコライのオペラ「ウィンザーの陽気な女房」から「月の出の合唱」も初登場曲。この合唱は夜12時になったことを知らせる場面の曲なんだとか。鐘が鳴るのがそうなのか。プロコフィエフのバレエ「シンデレラ」のなかの「真夜中」と並ぶ、「深夜零時名曲」として記憶しておきたい。
-----------------------
●ニューイヤ・コンサート仮想批評。

2017 一昨年をわずかに凌駕する出来ばえ
2016 3年連続で偉大な年となった
2015 100年に一度と評された2011年を上回る出来
2014 過去最高と言われた2011年に匹敵する出来ばえ
2013 屈指の出来と呼ばれた2009年を思い起こさせる
2012 100年に一度といわれた昨年に迫る
2011 過去100年で最高の出来
2010 まれに見る出来だった昨年に迫る
2009 ここ50年でもっとも素晴らしい出来ばえ
2008 21世紀最高の出来

●さて、最高なのはどれでしょう。

2017年1月12日

価格と価値

●昔、ある音楽雑誌のベテラン編集者がこんなことを言っていた。「CDはぜんぶ同じ値段で売ってるだろう? あれはおかしいと思うんだよね。だって1回しか聴かないCDと、何百回も繰り返し聴くCDが同じ値段なんて、ヘンじゃないの」
CD棚●いやー、まあ、たしかに購入者にとっての価値と価格が比例すべきであればその通りだろうし、ワクワクしながら買った一枚が期待外れだったときにそういうことを考えたこともなくはない。でもムリじゃん。そうなったら、買ったけど封も開けずに積まれてるCDはタダなわけ? 一見もっともらしいけど、なんだかその考え方って腑に落ちないなー、てなことを、たぶんワタシは思った。
●でも、そのベテラン編集者の言ってたことは、半ば現実になった。ただし、裏返しになって。対価を払う側ではなく受け取る側が、ストリーム配信で再生された回数に応じた報酬を手にするようになったわけだ。そして、聴く側はSpotifyのような形で「買ったけど封も開けずに積まれてるCD」と同等のものを大量にほぼ無料で手にしている。ここまでの事態を予見した人には会ったことがない。

2017年1月10日

ストリーミング・サービスとバヴゼのモーツァルト

●たびたび話題にしている定額制ストリーミング・サービスについてだが、クラシックを聴くことに関して言えば、唯一日本語対応ができているNaxos Music Libraryを別格とすると、今のところApple Music、Spotify、Google Play Musicの順で使用頻度が高い。「クラシックの新譜をチェックしよう」と思ったときに、まずまず頼りになるのがApple Music、(タイトル数が)頼りないけど一応できなくはないのがSpotify、そもそもそういうコーナーが見当たらないのがGoogle Play Music。サービス開始時から契約しているものの、このままなら契約を解除するつもり……。
●と、思っているのだが、困ったことにたまにGoogle Play Musicじゃなきゃ聴けない音源もあるんすよ。最近だと、CHANDOSに録音されたジャン=エフラム・バヴゼが弾くモーツァルトのピアノ協奏曲集。昨年だったか、バヴゼがアシュケナージ指揮OEKと共演したときに、ピアノ協奏曲第17番で自作と思われる攻めたカデンツァを弾いていて「むむ!」と思ったのだが、おそらくそれと同じものがCHANDOSの録音で聴ける(指揮者とオケは別)。ただ、この録音、AppleやSpotifyだと一部トラックしか聴けなくて、なぜかGoogleだとアルバム全体を聴ける。こういうサービスごとの対応の違いはなにが原因なんすかね? アーティストやレーベルが「ウチは配信なんか認めない。モノを売りたいんだ」というポリシーがあって配信では丸ごと聴かせないというのなら(是非はともかく)まだ理解できるんだけど、GoogleではOKなのにAppleやSpotifyでは聴かせないとする理由がわからない。あるいは深い理由なんかなくて、実務上の段取りの問題にすぎないのかも?
●それで、このバヴゼの録音なのだが、ピアノ協奏曲第17番の第1楽章と第2楽章のカデンツァ以降の部分は独立したトラックとして区切られている。ここでバヴゼは自作カデンツァを弾いているが、この曲には幸いモーツァルト自身のカデンツァも残っている。そこで、ボーナストラックで第1楽章と第2楽章のモーツァルト自身のカデンツァ以降が用意されている。つまり普通にCDをかけるとバヴゼのカデンツァが演奏されるが、「やっぱりモーツァルト自身のバージョンで聴きたいよ!」という人はCDのプログラム再生機能を使って、バヴゼのカデンツァを迂回してモーツァルト自身のカデンツァにジャンプすることができるわけだ。
●こういう趣向はそれほど珍しいものではなかったと思うけど、CD時代が終わりストリーム配信が主流になると、せっかくの趣向がイマイチ生きてこない(Google Play Musicのプレイリスト機能を駆使してCD同様にトラック順をコントロールすることはできなくはないのだろうが、かなりめんどくさい感じ)。じゃあどうすればいいのかというと、たぶん、正解は「2種類の演奏をまるごと用意する」なんじゃないだろうか。一枚のアルバムに両方を入れてもいいし(CDと違って長さに制約はないんだし)、あるいはアルバムごと2種類用意しても大きな不都合はなさそう。
●「バヴゼ」って名前の濁点率の高さにたじろぐ。

2016年8月25日

Gramophone Classical Music Awards 2016

●英Gramophone誌の Classical Music Awards 2016 の各部門賞が発表されている。さらに9月15日にロンドンのセレモニーで Recording of the Year、Artist of the Year、Young Artist of the Year等が発表されるという流れ。各部門賞の見出しが Disc Awards 2016 となっているが、イギリスではまだCDショップは健在なのだろうか。ともあれ、ストリーム配信に移行しても、こういった賞が(主に売る側に)必要とされ続けることに変わりないはず。
●部門賞の一覧は本家のサイトよりも、そこからリンクされているPresto Classicalの一覧を見るほうが手っ取り早い。このサイトはCDもデータも販売しているのだが、価格が円建てで購入できるのが吉。ワタシがダウンロード購入するときの第一選択肢としているのが、実はこのサイト(いろんな理由で、ストリームで聴ける音源であってもわざわざダウンロードで購入するというケースがある)。ただし、この受賞音源一覧だと、「日本からダウンロードでは購入できません」というタイトルがいくつかあって、少しがっかり。メジャー系の新譜だといまだにそういう国境の壁が存在する。その一方で、そもそもダウンロード販売もストリーム配信もしてくれないレーベルもまだある。そういうレーベルはどうしても相対的に視野に入る機会が少なくなってしまうのだが……。
●英Gramophone誌はがんばってるなあと思う。授賞セレモニーやったり協賛とったりとか、やるとなったらなかなか大変なこと。デジタル化もとっくに進めてて、上記Gramophone誌のページの下のほうにあるように、紙の定期購読のほかにデジタル・エディションだのデジタル・アーカイブだのレビュー・データベースだのといろんな種類のサービスがあって、価格体系が細かく設定されている。紙からデジタルからぜんぶ一式だと年間103ポンド。今ポンド安で133円くらいなので(マジで)、年間13700円ほど、月あたりだと1140円くらい。さすがにかなり安く感じる。でもこれが1ポンド240円とかの頃だったら、まるで違った感想になるわけで、恐るべし、為替レート・マジック。
●あ、受賞音源についてあれこれ書こうと思ってたのに紙幅が尽きた。ん、紙幅?

2016年4月 6日

BISレーベル、無音の30秒

●スウェーデンのBISレーベルのCDには、最後のトラックのおしまいに30秒ほどの無音部分がある。全部が全部そうなのかどうかは知らないが、ワタシが聴いた限りではどれもそうなっている。これは最後のトラックを再生し終えた直後にCDプレーヤーの「シャー!」の音が鳴ってしまうと余韻が壊されるから、わざわざ余白を入れるようにしているという話だったと思う(ですよね?)。
●で、音楽配信時代が到来した今、BISの音源はどうなっているか。Apple Musicとかのストリームで再生しても、ダウンロードしてデータを購入しても、やっぱり30秒間の無音が入っている。そりゃまあ、CDと同一データを置いたらそうなるか……。でもCD体験のない若い世代にとっては、この無音の30秒間は謎の空白なんじゃないだろうか。たとえばバッハのロ短調ミサのようにCDで2枚組だったアルバムを聴くと、グロリアのおしまいに思わせぶりな30秒間の静寂が訪れる。
●だれかBISでジョン・ケージのアルバムを出すときは、最後のトラックに「4分33秒」を置いてみてはどうか(←無駄にややこしい)。

2016年4月 5日

ハンガリー大使館で金子三勇士CD発売記念レセプション

●3月30日、ハンガリー大使館での金子三勇士CD発売記念レセプションへ。金子三勇士さんは1989年生まれで、お父さんが日本人でお母さんがハンガリー人。6歳からハンガリーに渡ってピアノを学び、2006年に日本に帰国して大活躍中。今回、ユニバーサルミュージックより「ラ・カンパネラ~革命のピアニズム」がリリースされた。
●すでに実演では何度か演奏を聴いていて、礼儀正しい好青年だなとは思っていたけど、実際にお会いしてその印象はさらに強まった。もう、ホントにさわやか。おまけに話術がすごく達者。特に印象的だったのはリストの「ラ・カンパネラ」の話かな。ハンガリーにいたころは「ラ・カンパネラ」なんて練習曲にすぎないと思っていたのに、日本に帰国したら「リストといえばラ・カンパネラ」みたいにこの曲が愛されていて仰天したのだとか。で、その頃はまだぎりぎり反抗期が残ってたから「そりゃ違うんじゃないのかなあ」と思ってたけど、その後、本格的にこの曲に取り組むようになり今回のアルバムでもチャレンジした、と。大使館内のピアノでショパン「革命」、リストのハンガリー狂詩曲第2番他を演奏。残響のまったくない室内での演奏ではあったが、端正な音楽作りが伝わってきた。CDにはこれらの超名曲が収められていて、まさに珠玉の小品集。
●ところで、この日はサマーミューザの記者会見の後で取材用のカメラも持参していたのだが、レセプションということで一式詰め込んだカバンといっしょにうっかり受付に預けてしまった(両手が開いていないと、立食のときになにかとカッコ悪いことになるじゃないすか)。なので、撮影できず。男子も小さなハンドバッグがあるといいのにと思うのはこういう場面っすね。

CLASSICA [HOME]