2008年7月22日
続々・ネコ名曲
●「猫の子守唄」と「続・ネコ名曲」に続いて、またネコ名曲。そう、まだあったのだ、ネコの曲は。これもメールでご教示いただいたのだが、チャイコフスキーの「眠りの森の美女」に登場する。「あれれ、あの話にネコなんて登場したっけ?」と首をかしげるのは、ワタシみたいにバレエを見てない人間だ。眠ったままのオーロラ姫を起こしてくれるのは、もちろん、王子様の接吻だ。どうしてオーロラ姫はずっと寝てたのか。そう、実は惰眠を貪る姫の正体はネコだったのだニャ~。
●ウソ。んなわけない。姫と王子様は結婚式を迎える。そこで来賓として招かれていたのが、「長靴をはいた猫」や「白猫」であったり、赤ずきんちゃんとおおかみとか、シンデレラ姫とチャーミング王子みたいなおとぎ話オールスターズであり、第24曲として「長靴をはいた猫と白い猫」が演奏されるのだった。
●もう一つ、プロコフィエフの「ピーターと狼」にもネコが出てくる、と。これも完全に盲点で、プロコフィエフにこういう作品があったことすら長く忘れていた。そして、今頃気がつくのだ、猫の役柄を担うのはクラリネットだ。ストラヴィンスキーでもそうだったけど、小鳥がフルートなのと同じくらいに猫はクラリネットなのかもしれん。
2008年7月18日
続・ネコ名曲
●一昨日の「猫の子守唄」で「猫の名曲は少ないなあ」と嘆いたら、トラックバックやメールで大勢の方からご教示いただいた。感謝。まずはロッシーニの「猫の二重唱」。むしろこちらがまっさきに挙げられるべきなのかも。少なくともストラヴィンスキーの「猫の子守唄」よりは歌われていそう。
●それからルロイ・アンダーソンの「ワルツィング・キャット」。これはワタシには思いつけない曲だなあ。でも世間的には有名か。それとサティの「潜水人形」から「猫のシャンソン」。げげ、そんなのがあったとは。
●ラヴェルの「子供と魔法」にも猫が登場するのだった。こちらは黒猫(オス)と白猫(メス)の二重唱。この曲は他にもこうもりとかふくろうとかトンボなどなどの動物系が出てくる上に、椅子だの茶碗だのティーポットだのといった無機物系も登場するから油断ならない。あ、椅子は無機物とは限らんか。
●これに一昨日挙げたストラヴィンスキーの2曲とショパンとスカルラッティがあるわけだ。で、自分でも調べてみたら実は結構ある。さすが、猫。ただ、あんまり有名じゃない曲が多いんすよ。たとえばモンサルバーチェのオペラ「長靴をはいた猫」とか。ジャン・フランセにも一曲見つけた。曲名は「夜の娘たち」Les demoiselles de la nuit。この曲の主役は猫だという。CDもあるようで、写真は名古屋方面で話題のティエリー・ フィッシャーがアルスター管を指揮した一枚。
●そんなわけで曲の数から言えば、もう「ニャンコ・クラシック」コンピを編めそうな量にはなったわけだが(笑)、しかし一社でこれだけ再使用可能な音源をそろえられるレーベルは果たしてあるのかとなるとかなり厳しそう。フランセやらモンサルバーチェはもちろんのこと、ラヴェルとストラヴィンスキーもそうそう録音する機会のある曲じゃないし。
●おっと、最後にもっと有名な曲を一曲。フォーレの連弾曲、組曲「ドリー」だ。バルダック家の幼い娘エレーヌの誕生を祝って書かれた曲。第2曲が「ミ・ア・ウ」で、第4曲が「キティ・ワルツ」。ネコ度は高そうだ。だが「ミ・ア・ウ」というのは実はネコではないという。幼いエレーヌが兄ラウルを呼ぶときに舌が回らず「メッシュ・アウル」となるのを題にしたものが、どこかでネコの鳴き声「ミ・ア・ウ」になってしまったと。では第4曲「キティ・ワルツ」はどうかというと、これも本来はKitty valseではなく、Ketty valseであって、ケティとはラウルの飼い犬の名だというではないか。つまり、実は「ドリー」は猫名曲ではなく犬名曲だったのだ!
2008年7月16日
猫の子守唄
●暑くなってきたら、眠れなくなったりしませんか。思ったより、朝早くに目が覚めてしまったり。ああ、暑い。眠れないときは何を聞いたらいいのだろうか、そうだ、それは子守唄だ。
●思いついた、ストラヴィンスキーにあれがあったな! 例の自作自演BOXに入ってるはずだと取り出して聴く、「猫の子守唄」。アルトとクラリネット3本のための曲なんて、どうして書こうと思ったんだろうか。というか、この曲名からしてよくわかんない。だって、猫ほど子守唄を必要としない生命体が地球上にいるだろうか。連中はいつだって寝てるじゃないか、気持ち良さそうに。
●その謎を探るべく、眠いような眠くないような緩慢な状態にあるワタシは歌詞テキストをお手軽に見つけようとググってみたが、ロシア語とフランス語の詞しかヒットせず、どちらも読めない。猫はクラリネットっぽいかもなあ、しなやかな感じが。しかし眠れないのは困る。箱モノつながりでDHM50周年記念ボックスからスキップ・センペのクープランを見つけ出し、「子守唄、あるいはゆりかごのいとし児」を聴いて、心を落ち着かせる。
●それでも、暑くて眠れないなら、再び猫について考える。猫の曲には「猫の子守唄」以外にどんな曲があるだろう。まず、同じストラヴィンスキーに「ふくろうと猫」という歌曲があったっけ(これはソプラノとピアノでフツーの編成だ)。それから少しアレな俗称だが、ショパンの「猫のワルツ」があるな。あとは……あ、あれがあるね、ドメニコ・スカルラッティの「猫のフーガ」。しかしどの曲もやたら短いぞ。まあ、あの飽きっぽい種族に長大な作品は似合わんか。
●でもこれだけ? 他にないのか、クラシックでネコ名曲は。なにしろ、頼みの「動物の謝肉祭」に猫が登場しないのがよろしくない。ライオンは出てくるがネコ科とはいえ猫じゃないし、11曲目の「ピアニスト」に「実はネコ人間がピアノ弾いてました!」的な豪快なオチが用意されているとも思えないし。ネコ型ロボット交響曲もネコ耳娘ソナタもないし、意外とないね、猫は。あと何かあったっけな、うーん、うーん、うー、Zzzzzzz....
2008年7月10日
ブリュッヘン/新日本フィルが2009年2月にハイドン・プロジェクト
●2009年って何の年だ? ハイドン没後200年だ! イェーイ、来年は正月から大晦日までハイドン聴き倒すぜっ!
●という激しくラブハイドンなあなたでなくても、フランス・ブリュッヘンが「ロンドン・セット」全曲と「天地創造」を日本で振ると知れば「なぬ!」と耳をそばだてるのでは。オケは新日本フィル。すでにブリュッヘンは同楽団と共演を重ねているわけだけど、ブリュッヘンのほうからこんなプロジェクトはどうかと提案されたのが、2009年2月6日~28日にわたって、すみだトリフォニーホールで開催される「ハイドン・プロジェクト」。昨日、その記者発表がオランダ大使館で開かれた。あ、日本とオランダ、2009年に通商400周年を迎えるって知ってた?
●簡単にスケジュールを。
2/6および7 オラトリオ「天地創造」
2/11 交響曲第96番「奇蹟」、95番、93番
2/15 第94番「驚愕」、第98番、第97番
2/20 第99番、第100番「軍隊」、第101番「時計」
2/28 第102番、第103番「太鼓連打」、第104番「ロンドン」
詳細については、新日本フィルのサイトへ(現時点でまだ出てないけどきっと今日とか明日には出ると思う)。丸一ヶ月ブリュッヘン。
●記者発表ではブリュッヘンはビデオ・メッセージで登場。「ハイドンを演奏するのは難しいといわれるけど、そんなに特別なことがあるわけじゃない。ただ、今日では欧州でさえ忘れ去られたルールがある。そのルールさえ取得すれば、すべてはおのずと正しい方向へ向かうはず。新日本フィルにはインテリジェンスがあり、貪欲に学ぼうとする。彼らは冒険家だから、きっと上手くいく」としわがれ声でクールに宣言。宇宙一カッコいい爺かもしれん。
2008年7月 3日
classic@comics ~ コミックで出会った名曲たち
●パソコンに向かっている時間の半分以上は「処理待ち時間」ではないかと疑う日々。買い替え時なのか。 いや、こういうこと言ってヘソを曲げられても困るからやめとこ。
●告知を一つ。ジェネオン エンタテインメントさんからリリースされたCD「classic@comics ~ コミックで出会った名曲たち」のVol.1およびVol.2が発売中。「の」の字で始まるあの大ヒット作をはじめとする、コミックに登場した名曲を集めたコンピレーション。音源はnaxosさんご提供で、すでにiTunesでは大変よく売れているタイトルをCD化。以後Vol.5まで続く予定。ワタシは曲目解説を書いているんだけど、それだけじゃ寂しいので、「こぐまノート」でおなじみのこやまけいこさんに毎巻4コママンガを描いていただきました。題して「夏のポルカ」(笑)。クラヲタ青年・クラ田くんとクラシック初心者・カタギリさんの掛け合いで、ほのぼの読めます。↓

●クラ田くんはワタシの心の中では「クラヲくん」に置換されてます。
2008年7月 1日
新国次期芸術監督/〈東京の夏〉音楽祭/天平
●短信。新国立劇場次期芸術監督予定者について。オペラ部門は尾高忠明氏。
●EURO2008が終わってしまい、すっかりの祭りの後な感じ。大会が終わるとやってくるのは夏。しかし夏には夏の祭りがあるわけで、7月は恒例〈東京の夏〉音楽祭が開かれるのであった。今年のテーマは「森の響き・砂漠の声」。3日のオープニングはジスモンチ・オーケストラ・コンサートで5日に追加公演が開かれるほどの人気ぶりなのであるが、森と砂漠というテーマ感が伝わる度合いで言えば、16、17日の<ブラジル、アマゾンの文化>カラジャ族の芸能であったり、18日の<砂漠の音楽>サハラの声~トゥアレグの伝統音楽のインパクトが大(ともに草月ホール)。まあ、アマゾンのインディオ、カラジャ族と言われてもどういう人たちかは全然知らないのであるが、写真としては上にあるような図になるわけで、なんだか楽しげなのでつい「ウホホーイ!」とかキャプション付けたくなる絵なんである(なにそれ)。森や砂漠よりフツーに20世紀音楽を聴きたい方は、31日紀尾井ホールのフェスティヴァル・ガラ・コンサートへ。メシアン、デュティユー、バルトーク他を聴く多彩な出演者によるガラ。 ©photo by Helio Nobre/ Ideti
●今号のiPod Fan Vol.2で、今話題のガテン系(?)ピアニスト、天平さんのインタビューをしております。ケンカとロックに明け暮れて高校中退、とび職、荷揚げ屋、引越し屋、解体屋をしながらも、ジョルジュ・シフラのピアノに衝撃を受けて、音大に入り勉強しなおし、コンポーザー・ピアニストの道を進むという恐ろしく異色の経歴の持ち主。昔ワルだった、でも今は好青年。爽やかな若者。写真はデビュー・アルバムの「TEMPEIZM」。ジャケが秀逸。
2008年6月13日
ヴェルディ 「椿姫」
●と、この調子でサカネタが延々と続くのか、EURO開催期間中は。いや、そういえば先週、見たのだった、「椿姫」@新国立劇場。上岡敏之指揮東フィル、ルカ・ロンコーニ演出、ヴィオレッタにエレーナ・モシュク、アルフレードにロベルト・サッカ。ジェルモンにラード・アタネッリ。満喫。特に雄弁なオケ。
●「椿姫」ってどうして「椿」なのか、ずっとワタシはわかんなかった。主人公の名前がヴィオレッタでスミレっぽいのになんでツバキなのかなー、とか。その後、デュマ・フィスの原作では主人公の名はヴィオレッタじゃなくてマルグリット・ゴーティエであり、彼女はいつも椿を携えていたことなどを知ってスッキリ。
●このオペラって第1幕はひたすら華やかで楽しいじゃないっすか、耳なじみのいい曲が続いて。舞台も(予算を意識させる舞台美術を幻視の力で補正するとして)ありえないほど豪奢にして極めて趣味の良い高級娼婦のお屋敷だし。で、第2幕からが「椿姫」がなぜ「トラヴィアータ」=「道を踏み外した女」となるのかという本編本筋本領に入るわけなんだけど、久々に見て思い出した、ワタシはあろうことに「椿姫」の第1幕だけが好きなのだった。もうずっと「乾杯の歌」で浮かれていたい。「花から花へ」と享楽的に過ごしたい。高ダメ度の世界のヴィオレッタは、アルフレードに「この花がしおれるころに再会しましょう」といって造花を渡し、遊蕩に耽ったまま、道を踏み外さない。
●第2幕以降、事件の主犯はジェルモンであり、これは実はジェルモンの物語だと気づく。ヴィオレッタとアルフレードの関係を勝手に引き裂いておきながら(しかもそれ相応のやむにやまれぬ事情があるところがヤになる)、死の床のヴィオレッタのもとに駆けつけて赦しを与えるという、このジェルモンの居心地の悪さ感。ワタシはどうしてもジェルモンに共感してこのオペラに接してしまうのであり、終幕まで仮想的な針のムシロに座り続ける。アルフレードよ、スマソ、ワタシが悪かった。ヴィオレッタよ、スマソ、ワタシが悪かった。
●しかもこの前の「ラ・ボエーム」に続いて、またも「病死オチ」だ。いや、でもこれは作者の実話に基づいてるんだからオチとか言っちゃいかんか。世界の中心で愛を叫びながら号泣すべき場面だ。でもジェルモンと化した自分にカタルシスは訪れない。
●ヒロインのモデルとなった実在のドゥミモンデーヌ、マリー・デュプレシーの言葉。「嘘をつくと、歯がきれいになるの」。今度ワタシも使ってみようかなあ。「ウソをつくと歯がきれいになるんすよ」(ウソ)。あ、今、虫歯治療で歯科医に通ってるんだけど。先生、ウソついたら虫歯治ったりしませんかね。
2008年6月 5日
クリスティアン・アルミンク、新日本フィルとの契約を延長

●クリスティアン・アルミンクが新日本フィル音楽監督の契約を10/11シーズンまで延長するということで記者発表。03年9月に音楽監督に就任して以来、すでに5年目となるわけだが、両者の良好な関係がさらにしばらく続くことに。「今回、新日本フィルとの契約を延長することができ、とても喜んでいます。新日本フィルとのこれまでを振り返ってみると、とても楽しい5年間でした。オネゲルの『火刑台上のジャンヌ・ダルク』やワーグナーの『ローエングリン』、ブラームスなどの演奏が特に記憶に残っています。すでにこのオーケストラには質の高いメンバーがそろっていますが、これからもさらに音楽への理解を深め、--これは非常に重要なことなのですが--オーケストラの自発性を高めながら、レベルアップしていきたい」とアルミンク。
●すでに発表されている来シーズン(テーマは「秘密」)についても案内があり、「新日本フィルにはとても相性が良い客演指揮者が二人いる」として、ブリュッヘンとダニエル・ハーディングを招いたことを強調していた。ブリュッヘンは来年2月にハイドンの「天地創造」で登場。ちなみにブリュッヘンについては、新日本フィルとの「ハイドン・プロジェクト」というプランが用意されているそうで、詳細については7月中旬に記者発表予定の予定。これは楽しみ。
2008年5月27日
光速セーゲルスタム面
●休暇終了。本日より平常モード。
●備忘録。今年モスクワで行われたチャンピオンズ・リーグ決勝の表彰式では、スッペの「軽騎兵」序曲のファンファーレが使われていた。表彰式までは毎年見てないからよくわからないのだが、なぜスッペなのかはよくわからず。来月はじまるEURO2008は決勝がウィーンだから、むしろそちらで使われそうな曲という気もする。
●at the end of the dayさんのところで知ったニュース。レイフ・セーゲルスタム、ついに大台の交響曲第200番に到達!! Fimicの作品表ではまだwork in progressと表示されているが、交響曲を200曲以上手がけた作曲家をほかに知らない。どれくらいのペースで書いているかというと、今年だけで交響曲第191番から交響曲第200番までの10曲を作曲中。仕事が速いぞ。昨年2007年は、交響曲第174番から交響曲第190番(標題が"UFO, Under F & Over..."。日本で売り出すなら後半はワザと無視して「UFO交響曲」だな)までの17曲を書いている。60代の現在も量産ペースは衰えない。仮に誰かが(ていうか本人しか考えられないが)セーゲルスタム交響曲全集を録音することにしても、録音より創作のほうが先に進んでいきそうな勢いなわけで、全集完結は光速で遠ざかる事象の地平面のように遠い。
●長生きして交響曲第1000番まで書くに10エリクサー。
2008年5月15日
シカゴ響とiTunes Store
●遅ればせながら自分メモも兼ねて。2010/11シーズンより、リッカルド・ムーティがシカゴ交響楽団音楽監督に就任。ていうか、歴代音楽監督の名前を見てて思ったんだけど、バレンボイムって1991年から2006年までいたのか。ショルティの22年にはかなわないにしても、バレンボイムで15年っすよ。そんなに長かったという気がしないのは、新譜が減って身近じゃなくなったのか、単に自分が歳をとって対人生比で一年の長さが相対的に短くなっているだけなのか。
●シカゴ響には自主レーベルCSO Resound がある。ハイティンクのマーラー3番、マーラー6番、ブルックナー7番、チョン・ミョンフンのショスタコ5番他。もうすぐムーティのスクリャービン「法悦の詩」&「ボレロ」他もリリースされる。CSO Resoundは日本のiTunes Storeでも買えるんだけど、どれもiTunes Plus(著作権管理技術なしのファイル)になっているのが購入者フレンドリーですばらしい。チョン・ミョンフンのショスタコ5番はiTunes版のみでCDでは販売されていなかったと思うんだけど、にもかかわらず、ちゃんとジャケとDigital Bookletが用意されているのはさすが。
●でも残念な点。iTunes StoreでCSO Resoundの一覧を検索する方法がわからない。CSO Resoundで検索しても一点しかヒットしない。どうしてパワーサーチの検索項目には「レーベル」という概念がないんだろう。そんなものを必要とするのは圧倒的な少数者ということなんだろか?
2008年5月13日
METライブビューイング「連隊の娘」
●METライブビューイングでドニゼッティの「軍人たち」……じゃないや、「連隊の娘」を見てきた。品川と迷った末にMOVIX昭島へ。ニューヨークのメトロポリタン・オペラの最新の公演をシネコンで超高画質映像で上映。生中継とはいかないが、現地4月26日の公演をもう見られるんだから、「既存のDVDを上映しました」っていうのとは本質的に違う。今シーズンはこの「連隊の娘」でおしまい。基本的に上映日が各劇場2日間(日曜と月曜午前)しかないので、うまく日程を合わせないと見逃してしまう。
●で、この「連隊の娘」なんだけど、スゴかったですよ。ありえない楽しさ。オペラなのに(?)腹の底から笑えた。ナタリー・デセイのコメディエンヌぶりは完璧だし(もちろん歌も)、ファン・ディエゴ・フローレスのハイC連発の「友よ今日は何て楽しい日」では観客総立ちになるし、演出(ローレン・ペリーっていう人)はどこをとっても「間が持たない瞬間」ってのががなくて、どんな小さな場面にもお客を楽しませるためのサービス精神とアイディアに溢れていた。とても贅沢な娯楽に接したという満足感あり。「笑い」の質は、最上の「ドリフ」とか「吉本新喜劇」と同じくベタなものなんだけど、だからこそ非凡な演出と役者がそろってはじめて可能なんだと思う。
●幕間でルネ・フレミングがマイクを持って登場して歌手にインタビューしてて、そこでシュルピス役のアレッサンドロ・コルベッリとベルケンフィールド侯爵夫人役のフェリシティ・パルマーが二人で登場したんすよ。で、こんな感じのことを話していた、「コメディは真摯に演じれば自然におかしくなるようにできている、わざわざ笑わそうとする必要はない」「そうそう、まったく同感だね」みたいな。すばらしい。
●オペラで唯一なにかイヤかといえば、コミカルな役の歌手が滑稽な動きとかおどけた仕草で安い笑いを取りに来た瞬間。生まれてこの方ブーイングなどしようと思ったことがないという寛大な人でも、この種の「笑いの強要」に対しては思わず前の座席の背中をガツガツと蹴り飛ばしたくなるんじゃないか(えっ、そんなことない? )。たとえばおどけた役だからクネクネと内股歩きをしたら笑ってもらえるかな~、みたいな、そういう安さ。しかも悔しいことにそんなので客席がウケたりして、それどころかカーテンコールで客席がわいて「儲け役」みたいになってたりして、もうそういうときにワタシの気分はドン底。おどけた役はマジメに演じたほうがおかしいし、シリアスな役がおどけると笑える。歩くだけで笑わせられるのは、モンティ・パイソンの「シリー・ウォーク」だけだよ。
●なので、本気で笑えるメトの「連隊の娘」に気分爽快。演技と台詞で笑わせ、歌で感動させる。見事すぎて、ほとんどファンタジー。
●来シーズンの予告がここに乗っている。劇場で上映されたものと同じ予告編動画あり、画面は小さいけど。
2008年5月 8日
祭の後。ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2009は「バッハとヨーロッパ」
●ついにラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン2008、終了。まず来年のテーマについて。記者発表直後の公式レポートにあるように、次回のテーマは「バッハとヨーロッパ」。すでに2月のナントでは来年のテーマがオフィシャルに発表されていたので、東京もバッハ絡みになるということは予測されていたわけだけど、どれくらいバッハの前後左右に広がるのか(時間的空間的に)ってのがこれである程度イメージできるかと。マタイやヨハネみたいな長い曲をどうするのかとか、5000人のホールでできる演目に何があるのかとか、あれこれ思うわけだが、大変楽しみなテーマである。テレマンやラモーらのバロック音楽、ストコフスキによるトランスクリプション、バッハの息子たちあたりに期待大。
●で、今年の「ラ・フォル・ジュルネ」を振り返ってみると、シューベルトでホントによかったなと改めて思う。シューベルトって孤独で暗い音楽だし、たくさん聴くと心が病んできそうな気がしてて、去年までは数少ない敬遠する大作曲家の一人だった。でももう大丈夫、というか健やかに病む術を見つけたというか。2月のナント以来、CDも含めて大量摂取して、抗体ができた。おかげで好きな作曲家の仲間入り。ピアノ・ソナタあたりはまだまだ聴き足りないくらい。
●5月1日にプレナイト、2~3日は東京国際フォーラムに詰め、4~5日はラ・フォル・ジュルネ金沢、再び6日に東京国際フォーラム。公式レポートと並行して、この間ほぼ毎日OTTAVAの出演があり、金沢では地元局MROのラジオにもおじゃまして、やたらしゃべっていた気がする。石川県立音楽堂の前でケータイで現地レポートをOTTAVAのスタジオに届ける回がいちばんヘンだった。一人だけで立ってて、マイクもイヤフォンもない状態でただケータイに向かって「はーい、こちらは金沢駅すぐそばの石川県立音楽堂の……」とかしゃべってるんだから、怪しさ全開。
●肉体的疲労度もピークに達して、もうぐったり。でも楽しかった。期間中、ご挨拶いただいたみなさま、お仕事でお世話になったみなさま、ありがとうございました。
●目先の仕事を片付けたら、一日横になってぐうたら読書でもしたい。