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決勝トーナメント

ドイツ 1 - 1 アイルランド
アイルランドの「ホームゲーム」をカシマで生観戦。
満足度
★★★★★
体験の強度
★★★★

●鹿島神宮駅に到着すると、あたり一面、緑。大勢のアイルランド・サポーターたちがビールを片手にお祭り状態。皆、大変に陽気である。海外向けチーム別チケット販売で、特にアイルランドの人気が高かったことを知ってはいたが、まさかこれほどまで大挙して押し寄せてくるとは。ドイツ人サポーターもいることはいるのだが、数の上でも声の大きさでも完全に圧倒されてしまっている。
●ドイツは前の試合のサウジアラビア戦でも見せたように、高さとパワーばかりでなく、長い距離のパスをぴたりと相手の足元に出す技術の高さや、ムダのないオフ・ザ・ボールの動きの質も兼ね備えている。久しぶりに「つまならいがやたらと強いドイツ」が帰ってきた感、大あり。
●フィジカルではやや劣るが、アイルランドはドイツに真っ向勝負を挑む。中盤での速くダイナミックなパスまわしから、サイドをえぐり、クロスボールを中央にあげるのが攻撃の基本パターン。強いドイツのディフェンスを破るのは難しいが、大声援に後押しされて、あきらめずに何度でもこれを繰り返す。
●前半19分でバラックからのロングボールをクローゼが頭で決めたときには、もしやワンサイドゲームになるのではないかとも案じた。しかし、先制されてもまったく怯まないのがアイルランド。緑に染まったスタンドと、ここはダブリンなのかと錯覚するような熱いサポーター・ソングがなければ、ここまでは戦えなかったかもしれない。最初、自信に満ちていたドイツ代表が、時間とともにアイルランドの闘志に気圧されるようになり、最後には萎縮してしまっているように見えた。守護神カーンのスーパープレイがなければ、もっと早い時間帯に失点したはずである。
●アイルランドがついに追いついたのはロスタイム。途中出場の大ベテラン、ポストプレイ専門のフォワード、クィンが頭で落としたボールをロビー・キーンが蹴り込んで劇的な同点ゴール。もちろんスタジアムは歓喜の爆発。アイルランドはカメルーン戦に続いて、先制されながらも勝点1を獲得した。
●たぶん、単純にどちらが強いかといわれればドイツ。しかし、アイルランドには、どんな相手であれ戦うまでは結果はわからないという強い自信が感じられる。「ランクで勝負が決まるなら試合は要らない」という岡田前日本代表監督の名言が思い出される。特にホームゲームとなればますますそうであるはずで、ニッポン代表にもこのメンタリティがあれば、いや事実あるのかもしれない、と余計なことを考えてしまった。ともあれ、試合は現在のところ、今大会の自分的ベストゲームであった。(6/6)

フランス 0 - 0 ウルグアイ
複雑な勝点計算がはじまった。
満足度
★★★
伝説度

●この試合が始まる時点で、すでに同組のセネガルvsデンマークは1-1の引き分けとなり、ともに勝点4、特失点差+1で並んでいた。フランスとウルグアイはそれぞれ勝点0、特失点差-1。つまりお互いに勝点3を狙う攻撃的な試合になるわけだ。さあ、ジダンはいないけど、これはおもしろくなりそうだ。
●しかしここで審判が主役を演じてくれる。前半25分にフランスのアンリの足の裏を向けたタックルに対して、一発レッド! これでお互いに危険なプレイを慎むどころか、かえって激しくなり試合は荒れ始める。こまったことに主審の基準ははっきりしない。フランスは一人少ないにもかかわらず、ゲームを支配し、守りの場面でもバルテズのスーパープレイもあり、それなりに見ごたえはあった。でも期待していたのはこんな試合じゃなかったんだがなあ。ちなみにジダンの代役は前の試合のジョルカエフに代え、ナカタのチームメイト、ミクー。
●攻め合った末の0-0でなにが残ったかといえば、複雑な勝点計算、というか順位計算。フランスもウルグアイも次は勝点3が必要になるが、この場合、もしそれぞれ1−0で勝ったりすると、4チームすべてが勝点4、特失点差0で並んでしまう。総得点数の争いにまでなってしまうかもしれない。
●一見、フランスは絶望的な状況にあるように見えるが、次のデンマーク戦で2点差以上をつけて勝ちさえすれば、決勝トーナメント進出が確定するはずである。複雑なのは1点差勝利の場合。このケースではセネガルがウルグアイに1点差で負けることが必要条件、ただしそのスコアによって、トーナメント進出国は変わってくるはず。ああ、ややこしい。これ以上の細かい条件は、もう面倒くさくて試算したくない(笑)。でもアンリ抜きであっても2−0は決して不可能ではない。A組は3試合目がとてもおもしろくなった。
●ジダンは日清のCMでしかプレイしていないのが悲しい。このまま最後まで出場しないような気がしてきた。(6/7)

イングランド 1 - 0 アルゼンチン
優勝候補は苦戦する。
満足度
★★★
伝説度

●イングランド勝点1、アルゼンチン勝点3で迎えた因縁の対決@札幌ドーム。しかしベッカムvsシメオネなんて視点はもはやどうでもいい。この日、スウェーデンがナイジェリアに逆転勝利を収めてしまったため、どちらにとっても負けると苦しい試合になった。カシマでのナイジェリア戦ではアルゼンチン・サポーターが(日本人も含めて)非常に多いように感じられたが、中継を見るとイングランド・サポーターが圧倒的に多い。よくわからないのだが、この大会はチケット獲得競争の段階から国内でもイングランド人気が非常に高かった。4年前までの感覚だと、日本で人気のあるのはブラジル、イタリア、アルゼンチンあたりなんだけど、今回のイングランド人気ってマンチェスター・ユナイテッド効果なのか。それともベッカム効果?
●試合は激しいながらも質の高い好ゲームになった。ただ、決定機の数ではイングランドが勝っていた。なじみのある選手がアルゼンチンのほうにずっと多いので、応援しながら見ていたのだが、実をいうとフランスと並ぶ優勝候補と大会前に言われていたわりには、アルゼンチンの攻撃はあまりうまくいっていない。トップにバティストゥータ(→クレスポ)、左にキリ・ゴンザレス(→クラウディオ・ロペス)、右にオルテガ、そして中央のベロン(→アイマール)という豪華アタッカー陣だが、前の試合でも得点はコーナーからバティの頭という形。この試合でもボールはキープしているが、なかなか相手ディフェンスを崩せない。しかも守備も万全とはいえず、オーウェンにはなんどか決定機を与えてしまう(結局そのひとつがPKとなり、ベッカムに決められてしまった)。勝たなければいけないスウェーデン戦では、南米予選同様、トップにクレスポを据えてくるかもしれない。
●イングランドはこれですこしほっとしたはずである。第3戦はすでに希望を断たれたナイジェリアが相手。勝てば勝点7、ドローでも勝点5でリーグ戦を通過。アルゼンチン(勝点3)はスウェーデン(勝点4)に挑む。勝たなければ厳しい。まさに「死のF組」。
●PKが決勝点になってしまったのは試合としては残念だが、たしかにPKに相当するファウルだったのでしょうがない。主審はおなじみイタリアのコリーナさん。最近ローマへのPK2連続プレゼント事件があって、ややこの人への信頼度が低下してるのだが、それでもほかの審判よりはずっといい。っていうか、W杯の審判レベルは問題だな。伊・英・西・独あたりのリーグで笛を吹いている人からもっと多数採用するわけにはいかないものか。(6/8)

イタリア 1 - 2 クロアチア
イタリアを嫌うのは、審判か、神か。
満足度
★★★★★
伝説度
★★★

●奇妙な展開になったが、内容的にはとてもすばらしいゲームだった。クロアチアが逆転勝利を収めたことは番狂わせとはいえないだろう。メキシコ戦でスーケル、プロシネツキといったフランス大会の立役者を起用して失敗したクロアチアだが、この試合では二人をはずしてきた。かつてペルージャでナカタの相棒だったラパイッチ、イタリアのレッチェで活躍するヴグリネッチがとてもいいプレイを見せた。前半ではテクニックと運動量でイタリアを凌駕していたはずだ。
●ところが押されていたイタリアが先制する。後半9分、ドニのクロスボールにヴィエリがスタンディング・ジャンプでヘディング、これがゴールとなる。この後、一転してイタリア・ペースに。クロアチアはヴグリネッチをベンチに下げてから、中盤を支配できなくなる。しかも前半にとばしすぎたため、後半は運動量も落ちてきた。
●この試合の奇妙なところは、流れが悪くなったほうが得点するというところ。後半27分、途中出場のオリッチがヤルニのクロスに飛び込んで右足で同点ゴールを奪う。さらに30分、ゴール前でラパイッチがマテラッツィと競りながらボレー、逆回転のかかったボールがループシュートとなって、クロアチアが逆転してしまう。3試合目のエクアドルvsクロアチアを観戦予定のワタシとしては、クロアチアに希望が残ってくれなければ困るため、これは思いがけない幸運だった。
●イタリアにはツキがない。後半4分、ヴィエリのゴールがオフサイドで取り消されたが、リプレイを見てもオフサイドとは思えない。さらに終了直前、マテラッツィの後方からのロングボールにインザーギが飛び込んだのだが、その動きにつられたキーパーのわきを、だれにも触られないままボールがゴールラインをコロコロと通過した。劇的同点ゴールのはずだったのだが、副審がファウルをとる。インザーギが相手ディフェンダーを引っ張ったらしいのだが、果たして? 試合終了の笛が鳴ってもパヌッチは審判に抗議、ヴィエリはテレビのインタヴューで副審批判。ほかにもトッティのフリーキックがポストにあたり、それが内側に反射したにもかかわらず、逆サイドのポストとキーパーの間をくぐりぬけて外れてしまうあたり、どう考えてもフットボールの神様からの寵愛が不足している。なぜか。たぶん、それはイタリアの戦い方と関係があるのではないか。(6/9)

ブラジル 4 - 0 中国
アジアは強豪を前にすると萎縮する。
満足度
★★★
伝説度

●よく日本を知るブラジル人やフランス人が言う。「ニッポンに足りないのは自信だ」。ワタシらはこう思う。「それは確かだろうけど、やっぱり技術とか戦術とかパワーとか、みんな足りないよ」。今日の中国を見ていると、そのブラジル人やフランス人の気持ちがちょっとだけわかるような気がする。
●ああ、中国代表よ。なぜシュートチャンスにパスを出してしまうのか。なぜ一人交わした後でスローダウンするのか。自信を持ってプレイすれば、もっとできるだろう。テクニックも戦術も結構しっかりしているのに、ブラジルに怯えていないか。ニッポンもこんなふうに見えていた(見えている?)のかもしれない。
●ロベルト・カルロス、リヴァウド、ロナウジーニョ、ロナウド、Rの字の選手たちがゴールを奪って、ブラジルが快勝。楽しいサッカーを見ることができたのは嬉しいが、またしてもアジアが大敗してしまったのは残念。 (6/9)

メキシコ 2 - 1 エクアドル
尊敬されない芸術品。
満足度
★★★★★
伝説度
★★

●中南米対決となったこの試合、あきらかに他の試合とは様子が異なる。まるで世界のフットボール界の潮流など無視するかのような、中盤の細かいパス回しを主体とした攻撃で、魅力度満点。もちろん戦術的な動きがないとかそういうことは決してないんだけど、しかしメキシコの攻撃を見よ。相手ゴール前でワンツーを連続させて中央突破を試みるなんて、もう美しすぎる。カッコよすぎる。でもこんなサッカー、どこもやってないっす(笑)。だからこそ、この勝利には敬意を。
●逆転負けを喫したエクアドルだって、おもしろいチームである。実は高さで勝負すればまちがいなくメキシコには勝てるんだけど、そんな下品な手段だけで対抗することをよしとしない。専門筋には相手にされないような試合だったかもしれないが、観る側としては大満足。
●このグループ、メキシコが一歩リードしたが次はイタリア戦。エクアドルはクロアチアと。イタリア、クロアチアが勝って、勝点6の得失点差の争いになりそうだ。高さのないメキシコに対して、イタリアは容赦なくヴィエリを前線に配置して、ゴール前を制圧するだろう。イタリアはメキシコの中央突破などリアリズムを欠いたガキの悪ふざけとして退けるだろう。しかしメキシコほど異彩を放っているチームは今のところ見当たらない。
●唯一不満があるとすれば、前回大会で話題になったブランコのカニバサミ・ジャンプが見られなかったことくらいだな。世界でもっとも有名なインチキ技で、みんな知ってるけどマトモな選手はだれも真似しない(笑)。ちなみにメキシコ代表チームの正ゴールキーパーはワタシより背が低い。ホント、メキシコは楽しすぎ (6/9)

日本 1 - 0 ロシア
ニッポン、堂々たる初勝利!
満足度
★★★★★
伝説度
★★★★

●見事な試合に言葉もないが、先発から。GK:楢崎−DF:中田コ、宮本、松田−左:小野、右:明神−MF:稲本、戸田−AMF:ナカタ−FW:鈴木、柳沢。宮本は森岡のケガによる予定通りの代役。前の試合と違うのは右に明神が入ったこと。ニッポンは左サイドが攻撃的になるわけだが、ロシアもカルピンが右サイドにいる。同サイドで二人が対決することになり、小野のあがった後ろのスペースのカバーを中田コに、さらにそのカバーのためにディフェンスが左に寄った場合、明神が下がってカバーするという構え。ディフェンス力の勝利であり、明神、戸田の貢献度はきわめて高かった。
●得点もすばらしかった。中田コからのロングパスを、前線で柳沢がポストとなってさばいたところに、飛び出してきた稲本がこれを受けて落ち着いてゴール右上にシュート。一瞬、オフサイドかとも心配したが、ゴールとなった。
●前半はゲームプラン通りの0−0だったが、ベルギー戦とは違い、ニッポンがゲームを支配していた。引き分けでも十分なニッポンとしては後半どうするのかとも思ったが、意外とお互い攻撃的な展開となり、両者に決定機はいくつもあった。ロシアに完全にディフェンスを崩されたピンチもなんどかあったが、最後には彼らの決定力不足に助けられた。ま、でもニッポンのゲームとなると、なかなか冷静に見られないので、あとでビデオを見返したら全然違う印象が残るかも。
●深夜、ウチの最寄駅で、試合から帰ってきたサポーターと近所の若者たちが20〜30人ほどがおそらく自然発生的に集まって、飛び跳ねながらニッポン・コールを叫び、異様な盛り上がりを見せていた(しっかり警官も監視に来ている)。やっぱりここは開催国なのだ。 (6/10)


ポルトガル 4 - 0 ポーランド
雨の一戦。ポルトガルは強いのか、弱いのか。
満足度
★★★
伝説度

●優勝候補にまで挙げられたポルトガルが初戦でアメリカに負けてしまったために、このグループも混戦となった。どちらも負ければおしまいという状況での欧州対戦。
●ポルトガルはフィーゴ、ストライカーのパウレタ、途中から出場のルイ・コスタらのアタッカー陣が活躍、この試合だけを観ていると、いったいどうして初戦を落としたのかわからない(→実は単にアメリカが強いのだという恐ろしい説あり)。それともポーランドが弱いのか。欧州予選での強さとはうらはらに、ポーランドはホームでの日本との親善試合に負け、大会初戦の韓国にも負け、ワタシらとしては「強い」印象がまったくない。オリサデベも所属クラブでのパフォーマンスを見せているとは思えない。
●個人的にはポルトガルは魅力的で大好きなチームだが、優勝候補というのはいいすぎだと思う。フィーゴのような傑出したプレーヤーはいるが、代表メンバー全員の名前と所属クラブを見ると、やはり優勝経験国と比べて見劣りする。ボアビスタ、スポルティング・リスボン、ポルトら、国内メジャークラブの選手+ビッグ・スターという構成のチーム。それでも相当強いことはまちがいないが、優勝というのは選手層から考えると辛いのでは。
●スタジアムでは韓国サポーターたちがポーランドを熱心に応援していたようである。無理もない。現在、韓国はグループでトップだが、実は3戦目にポルトガルに勝つか引き分けなければ決勝トーナメント進出が難しそうなのだ(アメリカvsポーランド戦の結果にもよるが)。今大会も前大会同様、グループリーグの第3戦が本当におもしろくなった。 (6/11)


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