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backnumber 2003


  音楽ドキュメンタリー映像の名作。「アート・オブ・ピアノ」。
 「ピアノの芸術」というタイトルで、NHK-BS2で「アート・オブ・ピアノ」が放映されていた。これを観るのは2回目だけど、いやあ、抜群におもしろいっすね。パデレフスキ、ラフマニノフ、ホフマン、ホロヴィッツ、リヒテル、ギレリス、バックハウス……。次々と偉大なピアニストたちの貴重な映像が流れ、これに現代の音楽家や音楽関係者が適切なコメントを添えるという、ドキュメンタリーの王道を行く構成。
 ギレリスの映像なんて可笑しいんだよなあ。前線の兵士たちの慰問演奏にやってきたらしく、野外にドーンとピアノを置いてそこでラフマニノフの前奏曲を弾いている。戦闘機のコックピットから聴いている兵士たちまでいるという恐ろしくシュールな光景で、曲が終わると兵隊たちが一斉に拍手をする。意地の悪い映画監督が撮影したブラックジョークのように見えるが、これは本物のできごとだ。
 素朴に笑えるのは、キーシンのミケランジェリに対するコメント。「ミケランジェリはミスタッチ一つしない……(訴えかけるように、真剣な表情で)あのホロヴィッツだって晩年にはミスタッチをしてたのに!」。キーシンが他人の技術的完璧さに溜息をついているような姿って、実にユーモラスじゃないですか。
 幸い「アート・オブ・ピアノ」はDVDで発売されている。この作品に限らず、「アート・オブ」シリーズは傑作ぞろいである。価格が高すぎるのが難点だったのだが、昨日から期間限定で従来の半額程度で買えるキャンペーンが始まった。期間限定になんてしなくてもいいんじゃないかとも思うが、いろいろ事情があるんでしょうね。(2003/11/02)

◎DVD:「アート・オブ」シリーズ

「アート・オブ・ピアノ 20世紀の偉大なピアニストたち」

「アート・オブ・コンダクティング 今世紀の偉大な名指揮者たち」

「アート・オブ・コンダクティング2 黄金時代の伝説的な指揮者たち」

「アート・オブ・ヴァイオリン」

「アート・オブ・シンギング 偉大なる名歌手たち」
 

  情報発信型企業メセナ japansclassic.com 。

 NECがユニークな企業メセナ・サイト Japan's Classical Music Artists を立ち上げた。 芸術文化支援にも様々な形態があるが、同サイトは海外に向けて日本のクラシック音楽のアーティストたちの活動を発信するというのがその目的。アーティストのプロフィール、ディスコグラフィと可能な場合はそのサンプル音源、ニュースを提供している。
 ネットではアーティスト自らが情報発信できるとはいえ、実際にはサイトのプロモーションや翻訳のコストも少なくないため、有効な海外向けサイト運営というのはなかなか難しい。今回のNECサイトのように、一定規模でまとまった情報の入り口が提供されるというのは、メセナのスタイルとして効果的な方法かもしれない。成果が見えにくく、地道に続けてこそ価値の出てくる種類のサイトなので、気長に育てて欲しいものである。 (2003/08/25)

◎NEC Navigates Japan's Classical Music Artists
>> http://japansclassic.com/


  ウェンディ・カーロスはフツーにオバサンだった。
スウィッチト・オン・バッハ
Buy CD
 8月23日の夜、NHK-BSで映画監督スタンリー・キューブリックのドキュメンタリーを放映していた。ちらちらと「ながら」で観ていたんだけど、途中で作曲家のリゲティが出てきて「2001年宇宙の旅」についてのインタヴューを受けていたりして驚いた(「著作権料が支払われなかった」とかいう話じゃなくて、ちゃんとポジティヴな作品評価)。でもワタシが一番びっくりしたのは「時計仕掛けのオレンジ」のところで、音楽を担当していたウェンディ・カーロスが出てきたところ。ああ、話には聞いていたけど、映像を見るのは初めてだよ! 
 歴史的名作「スウィッチト・オン・バッハ」などで有名なこのシンセサイザー奏者、ワタシが初めて知ったときはウォルター・カーロスだったが、その後、性転換して名前もウェンディに変わったんである(有名な話だよね)。映像で見たところ、フツーの賢そうなオバサンだったっすよ。(2003/08/24)

  テレビでラトルの「フィデリオ」。
ラトルの「フィデリオ」
Buy CD
 日曜日の芸術劇場@NHK教育、おもしろかったっすねー。必ず毎週見るわけじゃないんだけど、ラトル指揮ベルリン・フィルの「フィデリオ」ハイライトがあるっていうんで観たですよ。ワタシは「フィデリオ」ってのがかなり好きで、物語的にはオペラ史上屈指のバカ・オペラだと思うんだが、音楽的には最強かつ崇高。別にオペラだと思わずにベートーヴェンの器楽作品を聴くつもりで聴くわけだが、つうかもともとオペラ者じゃないから大概のオペラはそうやって聴いてるわけで、だから台詞抜きバージョンだろうがハイライトだろうがなおさら結構、序曲から「うぉー、ベルリン・フィル、うめー!」で盛り上がれる。
 でも物語がバカ・オペラだと思って映像を観たら、やっぱりザルツブルク・イースター音楽祭だから、レーンホフのそれなりに気取った演出で、全然「フィデリオ」っぽくない(つまり、カッコよすぎる)。「フィデリオ」の舞台だったら昔のベーム指揮のゼルナー演出とか、せいぜいマゼール/ウィーン国立歌劇場(だれだっけ、演出は)くらいまでの、ダッサダサのヤツじゃないとビシッと決まらない(屈折)。でも、まあ、関係ないか、「フィデリオ」の舞台なんて。ラトル最高。
 あと、マジメなドラマを求める派の人にとっては「フィデリオ」に「レオノーレ」序曲第3番を挟むか挟まないか、挟むんならどこに挟むかっていう問題もあったと思う。っていうか、マジメなドラマを求める派はそもそも挟まない。ラトル=レーンホフだって、あんなにカッコつけてるんだからきっと挟んでないと思うんだけど、ワタシみたいにベートーヴェンの音楽最高と思って観ないで聴いてるだけの人からすると、絶対圧倒的に挟んで欲しい。そのほうが娯楽度高いから。なんなら「レオノーレ」序曲第1番、第2番、第3番全部挟んでくれてもいい。それから、「レオノーレ」序曲を演奏するがために、猛烈傑作な「フィデリオ」序曲をカットするっていうのも反対。あ、結局ワタシはベートーヴェンの器楽作品が好きなだけなのか。でも「フィデリオ」のラスト・シーンはいつ聴いても素朴かつ圧倒的に感動するよね。物語とは無関係に、純化された祝福と勝利の音楽として。
 22日深夜にBSで同じラトルの演奏を全曲放映するはずなので、観れる/観たい方はぜひ(ちなみにCDはEMIから)。つーか、夏のNHK-BSはスゴすぎだよな。ケント・ナガノの「金鶏」(リムスキー=コルサコフのオペラね)も観たいけど、もうお盆も明けたからまず観れない予感。(2003/08/18)

  オンラインで使う音楽辞典。
 まず断言させていただく。今後、辞書・辞典の類はオンラインでの利用が標準形になる。すでに国語辞典・英和・和英辞典あたりはポータル・サイトで提供されているので、ご利用の方も多いだろう。おかげでワタシたちの「辞典を引く」回数は飛躍的に増えた。

 で、待望の音楽辞典が登場したのである。現在、日本語で使える本格的なオンライン音楽辞典は2種類ある。

■ New GROVE 世界大音楽辞典(制作・販売:ネットアドバンス)
http://www.grovemusic.jp/gogo

■ 新編音楽中辞典(制作:音楽之友社)
http://www.ongakunotomo.co.jp/dic/

 New GROVE世界大音楽辞典は世界最大にして最強の音楽辞典、あの「ニュー・グローブ」を電子化したもの。音楽を専門とする方ならだれもがお世話になっている。専門性と信頼性は非常に高い。かなり高価なサービスなのだが、グループ利用も可能である。
 もう一方の新編音楽中辞典は中型の辞典で、一般ファン向け、個人利用を想定したものである。

 ワタシは両方とも使っている。どちらも一度使うと手放せなくなってしまうくらい便利なのだが、しかし一度も使ったことのない方にいくら勧めてもこの価値はわかってもらえないだろう。このもどかしさをなんとするか。
 そこで!

 なんと、CLASSICA読者様限定で、7月5日より7月9日まで、あの「New GROVE 世界大音楽辞典」ウェブ版を無料で使えちゃうキャンペーンを実施するのだっ!
 以下のURLから、ID、パスワードともに go でログインすればOK。

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■ GroveMusic無料体験 gogoキャンペーン for CLASSICA
http://www.grovemusic.jp/gogo

ID:go パスワード:go (7月9日まで)
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 ちなみに、ワタシはいつも辞典用にブラウザの窓を一つ別に開きっぱなしにしている。ちょっと知りたいことがあったときに、さっと簡単に調べられるのがオンライン辞典の利点。というか、書籍版のニューグローヴ世界音楽大事典はあまりにも巨大すぎて、もはや開くのも億劫(ちなみに日本語書籍版は全23巻。巻数やページ数よりもキロ数で表現したくなる大著なんです)。(2003/07/05)


  巨匠ルチアーノ・ベリオ逝く。
 イタリアの大作曲家ルチアーノ・ベリオ死去。享年77歳。もはや今世紀ではなく前世紀となってしまった「20世紀」を代表する作曲家の一人だった。
 前衛の作曲家としては、録音も含めて作品の演奏頻度が非常に高かったと思う。CDは山のように出ている。「シンフォニア」のような「ヒット作」(?)もある。「シンフォニア」はブーレーズ指揮のディスクが千円盤として発売されているという身近さ。ワタシは自分が最初に聴いたベリオというのをはっきり覚えていて、DGから出ている「コーロ」だった。免疫がなかったので素直に嫌悪感を感じつつも、感動してしまったというヘンな体験だったなあ。ベリオではこれが一番繰り返して聴いた曲かも。
 様々な楽器(と人声)のソロのために書かれた一連の「セクエンツァ」を、まとめて聴くなら、アンサンブル・アンテルコンタンポランのメンバーによるこのセット。巧い。ベリオを情熱を燃やして聴くぞ、なんていう気力がなくても、ちょっとずつ短い曲を聴けるところがありがたい。(2003/05/29)


  甦る「アマデウス」。ディレクターズ・カットで復活。
 1984年に大ヒットした映画「アマデウス」(ミロシュ・フォアマン監督)が「アマデウス ディレクターズ・カット」として帰ってくる。もともと長い映画なのだが未公開シーン20分が追加され上映時間は180分。
 モーツァルトとサリエリの二人の作曲家を描いたこの作品、もちろんクラシック音楽ファンならより楽しめるわけだが、この映画のスゴいところは「万人向け」によくできているというところ。史実にとらわれることなく、神の寵愛を受けた天才作曲家を、音楽の価値を見抜く慧眼はもっているが自らは真の偉大な作品を創造することができない職人作曲家の視点から描くというアイディアが秀逸であり(というか主人公はサリエリなわけだが)、普遍的なテーマをわかりやすく扱う手際のよさ、映画としての作りこみのていねいさがよい。マニアックな映画ではまったくないので、未公開シーンがどのようなものであろうとこの際どうでもよく、再び映画館で鑑賞できる機会を得たことを喜びたい。
 公開は9/7〜新宿・テアトルタイムズスクエア、9月下旬〜テアトル梅田にて。

■「アマデウス ディレクターズ・カット」公式サイト
■CINEMA BOX




 
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