ジャケットを見ると「うわー、おすぎがモーツァルト弾いてるぞ」と思っちゃうんだが、そうではなくてトルコ生まれのファジル・サイ(Fazil Say)ってピアニストなのだ。27歳の若者で作曲もこなす。ジャケット的には絶対欲しくならないディスクなんだが(笑)、ちょっとだけショップで試聴して驚嘆。硬質で高音域が輝度高めの独特の音で、没入系。これは聴くしか。
で、曲はソナタ第13番K333、第10番K330、第11番「トルコ行進曲付き」K331、あとキラキラ星変奏曲。凝り性な人がやりたい放題やりましたみたいなメリハリの効いた元気系。細部まで結構挑発的な設計図を描いてパリパリとクールに弾くんだが、時々盛り上がってくると精巧ミニチュア作りを忘れて鍵盤叩いちゃう。うーん、カッコいい。それでいて安っぽいロマンティシズムの罠にはまってるって感じは全然せんぞ。しっとり派多めの非オーセンティック系モーツァルトのソナタの世界から眺めると、適度に品の悪さもあって(笑)違和感も強いかもしれんが(第10番の終楽章がなかなかスタンドプレイ満載)、こりゃ今後の録音も相当楽しみっす。ひょっとして一歩間違えると笑えちゃうモーツァルトって可能性もあるけど、この自在さには共感度大なのだ。
でも微かに聞こえる鼻歌(?)はいやでもグールド思い出しちゃうので(ただでさえその危険大ありなのに)、この悪癖だけは今は亡き天才の追従者呼ばわりされないためにも止めたほうが吉かも。(98/08/28)
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●Mozart: Piano Sonata K333, K330, K331'Alla Turca', Variations on 'Ah, vous dirais-je, maman' K265
●Fazil Say (p)
●Warner Music France WE885
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