●ワールドカップ2026、グループリーグの第3戦はニッポンvsスウェーデン。ニッポンはここまで1勝1分、スウェーデンは1勝1敗。勝点4の日本代表は負けても3位で決勝トーナメントに進めるという状況。1位を争っているオランダがチュニジアと対戦することを考えると、たとえ勝っても1位は難しそう。一方、スウェーデンは勝利か引分けでオーケー。そう考えると、いかにも引分けになりそうな状況で試合が始まり、実際に1対1の引分けで終わった。ただ、内容はそう単純でもない。一言でいえば、あまりニッポンは強くなかった。思ったよりスウェーデンの時間帯が長く、終盤は耐える展開になってしまった。
●大幅なターンオーバーも考えられる状況だが、森保監督は一部の選手を入れ替えたのみ。GK:鈴木彩艶-DF:瀬古、板倉、伊藤洋輝-MF:田中碧、鎌田-菅原、中村敬斗-堂安、前田大然-FW:上田。佐野海舟を外してきたのは意外。右に菅原を入れて、代わりに堂安を2シャドーの一角に入れた。左は中村。ここに前田を入れて中村を休ませるかとも思ったが。久保の不在が痛い。スウェーデンは3-4-3で似たような布陣だが、3トップにギェケレシュ、イサク、エランガを並べる攻撃的布陣。それぞれ所属はアーセナル、リヴァプール、ニューカッスル。欧州だと中堅国くらいのイメージでもこれくらいのレベルの選手がそろうわけで、脅威。スウェーデンの対ニッポン対策は明快で、中盤で争わず、後方からロングボールを前線に入れる。一時期、ニッポンはアジアでオーストラリア代表にずいぶんこれをやられたわけだが、悔しいことにこれが有効なのだ。こちらは必死に跳ね返して防ぐのだが、消耗度は高い。向こうは失敗してもカウンターを食らう心配がない。前半39分になぜか板倉が谷口と交代。ハーフタイムまで待てば、交代回数を1回使わなくて済んだが、なにかコンディションに問題があったのか。レフェリングの不安定さも逆風に。前半は膠着したゲームでスコアレス。
●後半11分、ニッポンが美しいゴールで先制。菅原から堂安、上田、堂安とボールがわたってスルーパスに前田が走り込んでゴール。完全に相手を崩す。ここで波に乗る可能性もあったと思うのだが、その6分後にエランガがペナルティエリア右隅くらいから対角にすごいシュートを決めて同点。個の力に物を言わせた。その後、ニッポンは小川、伊東を入れ、さらになぜかセンターバックの渡辺剛、まかさのレジェンド長友を投入。これら交代策が実らず、終盤はほとんどスウェーデンの攻撃に耐えていた。なかなかマイボールにできない上に、奪っても前につなげずカウンターが発動しない。長友のところにボールが来るとハラハラする。これで負けたら森保監督が批判されることは必至。しかし、スウェーデンも無理をして攻める理由はないわけで、試合は無事に1対1で終わった。
●ニッポンは中村敬斗の技巧的なシュートが惜しかった。鈴木彩艶のビッグセーブあり。全体にニッポンは守備から攻撃への切り替えがうまくできず、選手のコンディションも下がり気味か。もともと中心選手を3人ほど欠いているところに、久保がケガで抜け、センターバック陣も板倉や冨安をだましだまし使っている状況で、選手の頭数が足りない。伊東も交代出場直後にうずくまっていたが大丈夫なのだろうか。試合後のインタビューで長友が達成感いっぱいの表情で「マンマミーア」を連発していたが、すごく違和感があった。次のブラジル戦で勝った後に言うのならわかるのだが。今日の試合は大事なところがうまくいかなかったゲームだと思う。ニッポンはグループを2位で通過、ブラジルより休養が一日少ない中三日で決勝トーナメント1回戦に臨む。
ワールドカップ2026北中米大会 グループF 第3節 ニッポンvsスウェーデン
東京国立近代美術館 杉本博司 絶滅写真

●東京国立近代美術館の企画展「杉本博司 絶滅写真」へ。杉本博司の銀塩写真約60点が展示されている。「絶滅写真」とは銀塩写真の技術が絶滅しつつあるというニュアンスか。いくつか主要なシリーズがあって、上は「劇場」シリーズのひとつ、「ガルニエ宮、パリ」(2019)。パリ・オペラ座だ。舞台上は明るく、真っ白。反射を防ぐために角度を付けて撮っている。写真の写真を撮るとは。しかも銀塩写真をスマホで撮っている。

●こちらは同じシリーズの「ユニオンシティ・ドライブイン、ユニオンシティ」(1993)。こちらもスクリーンは真っ白。光ってるけど、なにもやってない劇場がこんなふうにいくつも並んでいた。

●こちらは「海景」シリーズの一枚で、「カリブ海、ジャマイカ」(1980)。海、空、水平線が並ぶ。写真の技術的な部分はわからないので、絵画と同じように眺めるしかないのだが、多くの海の絵画に水の流れや光のきらめきや風を感じるのに対し、この海は時の流れが止まって固定化されているかのよう。固体みたいな質感。

●「ナポレオン・ボナパルト」(1999)。ほかにもダイアナ妃やフィデル・カストロ、昭和天皇らの肖像が並ぶ。ん、なんなんだこりゃ、と思うわけだが、これはロンドンのマダム・タッソー蝋人形館の蝋人形を撮影している。一種の複写物のそのまた複写物が、かえって生きているように見えるという不思議。
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●ワールドカップはDAZNのハイライトで追いかけている。前にも書いたように参加国と試合数が増えたので、グループリーグ期間中は自重せねば。今日から一日に6試合も行う。6試合×4日間の24試合でグループリーグ第3節を片付けるわけだ。大盤振る舞いというか、大安売りというか……。
ドナルド・ラニクルズ指揮ドレスデン・フィル、亀井聖矢

●23日はミューザ川崎でドナルド・ラニクルズ指揮ドレスデン・フィル。なんと、ラニクルズはこれが初来日なのだとか。これはびっくり。ラニクルズはスコットランド出身の指揮者だけど、印象としてはほとんどドイツの名指揮者。長くベルリン・ドイツ・オペラの音楽総監督を務め、ベルリン・フィルにもたびたび客演している。25/26シーズンから同楽団の首席指揮者を務めているそう。ドレスデン・フィルもライブではたぶん初めて聴くので、新鮮。弦楽器は音域順に並ぶストコフスキ配置。
●プログラムはベートーヴェンのピアノ協奏曲第5番「皇帝」(亀井聖矢)とブラームスの交響曲第4番。ドレスデン・フィルはすっきり端正なサウンドで、とくに弦楽器の落ち着きのあるくすんだ音色が印象的。重厚かと思いきや、重心はかなり高めで、ノーブルな雰囲気。前半の「皇帝」では亀井聖矢が磨き抜かれたテクニックを披露。きわめてブリリアントなソロで、これ以上はないというほどきらびやかなベートーヴェン。客席は即座にスタンディングオベーションをする人がたくさんいて、人気は健在。ソリスト・アンコールにシューベルト~リストの「ます」。華麗。オーケストラの楽員たちがざわめいていた。後半、ブラームスの交響曲第4番は滋味豊か。自然な音楽の流れが心地よい。終楽章は一段ギアを上げて熱い演奏に。アンコールはハンガリー舞曲第5番。すっかり手の内に入った様子の自在の演奏で客席をわかせた。
●ラニクルズは珍しいサウスポーの指揮者。前半の「皇帝」は指揮棒を持たなかったので左利きであることは目立たなかったかもしれないが、後半のブラームスは左手に指揮棒を持って登場。パーヴォ・ベルグルンド亡き今、左で振る指揮者はラニクルズと出口大地しか知らない。
ペッカ・クーシスト指揮東京都交響楽団のシベリウス、ヒルボリ他

●遡って19日はサントリーホールでペッカ・クーシスト指揮都響。クーシストは2028年4月から都響の首席指揮者を務めることになっており、現在はアーティスト・イン・レジデンス。新シェフとして、いい人を見つけたなと思う。新味があり、なにが起きるかわからないドキドキ感がある。
●この日はさっそくクーシストならではの北欧プログラムが組まれ、前半がシベリウスの組曲「恋人」、現代スウェーデンの作曲家アンデシュ・ヒルボリの「バッハ・マテリア」(2017/日本初演)、後半がやはり現代スウェーデンの作曲家アンドレア・タッローディの「きりん座」(2011/日本初演)、シベリウスの交響曲第5番。なお、冒頭にコントラバス奏者の柴田乙雄への追悼演奏としてバッハの「G線上のアリア」が演奏された。
●前半は指揮台が置かれず、クーシストはヴァイオリンを弾きながらリード。白眉はヒルボリの「バッハ・マテリア」。バッハのブランデンブルク協奏曲第3番と対をなす作品としてクーシストのために書かれた曲。チューニングをしていると思ったら、そのまま曲が始まるという趣向はこれが初めてではないが、それでも効果的。ウィットに富み、次々といろいろなイベントが起きる。カモメの鳴き声みたいなヴァイオリン、歌声、口笛、バッハからの引用、即興……。アイディアが豊富、饒舌。クーシストのヴァイオリンは切れ味鋭く、冴えに冴えていた。
●後半、演奏を始めかけたところで、客席のどこかからスマホのアラーム音が聞こえてくる。アラーム音が止まるのを待つが、なかなか止まず、客席にささやかな笑い声。これは演奏中ではなかったので笑い話。自分のスマホが鳴っているのに所有者が気づかないという現象は、これまでもくりかえしコンサートホールで起きてきた現象であり、まったく他人事ではない。そんなはずはないという思い込みがあって、気づきにくいのだと思う。やはりスマホは電源を切るのが正解だろう。
●タッローディ「きりん座」は、キリンと友達になっていっしょに遊ぶユーモラスな夢がきっかけとなって書かれた小曲。きらびやかな響きが、星々のイメージを喚起する。作曲者臨席。おしまいはシベリウスの交響曲5番。いつ聴いてもフレッシュな作品だと思っていたが、この流れで聴くとずいぶんと保守的な音楽に聞こえる。明快で俊敏、過剰なエモーションやスペクタクルを求めない。のびのびとした大らかなシベリウス。カーテンコールでクーシストが客席に降りてきて、オーケストラを拍手で讃えていた。クーシストのソロ・カーテンコールあり。
ワールドカップ2026北中米大会 グループF 第2節 チュニジアvsニッポン
●ワールドカップ、日本代表の第2戦は対チュニジア戦。第1戦でオランダ相手に引き分けたのはよかったが、勝ち点としては1を得たにすぎないわけで、この試合で引き分けたり負けたりすると、第3戦のスウェーデン戦が背水の陣になる。一方、勝てばほぼ決勝トーナメントには進めるという状況(3位になっても勝点4あれば通れるのでは)。ニッポンは久保がけがで不在。代役がだれかと思ったら鎌田を一列上に上げて、代わりに中盤に田中碧を入れた。つまり、2シャドーは鎌田と伊東のコンビに刷新、前田大然はベンチ。意外だったのはディフェンスラインも2枚入れ替えたこと。オランダ戦は渡辺剛、谷口彰悟、伊藤洋輝だったが、これを冨安健洋、板倉滉、伊藤洋輝に変更。こちらのほうがレギュラーメンバーともいえるが、冨安と板倉のコンディションは問題ないということなのか。GK:鈴木彩艶-DF:冨安健洋、板倉滉、伊藤洋輝-MF:佐野海舟、田中碧-堂安律、中村敬斗-鎌田大地、伊東純也-FW:上田綺世。
●前半4分、いきなりニッポンが先制。中村敬斗がペナルティエリア内を縦に突破し、グランダーのクロスを入れると中で鎌田がヒールで合わせるおしゃれシュートでゴール。大喜びの鎌田は電話ポーズのゴールセレブレーション。いまどきそんな受話器ないけどね……と思ったら、これはケガで苦しむクリスタルパレスの同僚エンケティアに捧げるものだとか。これで試合運びがぐっと楽になった。前半31分、上田がペナルティエリア右隅あたりからディフェンスの股を通すパワフルなシュートを対角にズドン。この2点目で、勝負は決まった感。ニッポンは快適にボールを回す。チュニジアのチャンスはごくわずかで、決定機といえるほどのチャンスはなし。後半24分、縦パスから伊東がキーパーとの一対一を制して3点目、後半39分には佐野のクロスに上田が下がりながらのヘディングでふわりとループ気味に決めて4点目。4対0でまさかの圧勝。
●前の試合では鎌田がディフェンスラインまで下がってビルドアップに参加していたが、この試合では田中碧と佐野が交替で下がって同じ役割を担っていた。4バックみたいな形になる。冨安は攻撃面の貢献も大きい。堂安の守備は頼りになる。交代出場は菅原由勢、鈴木淳之介、鈴木唯人、瀬古歩夢、後藤啓介。ということは、フィールドプレーヤーは長友以外、全員出場機会を得たということ? 次戦、長友が出場するかも。
●次のスウェーデン戦の結果によらず決勝トーナメントには進めるとは思うが、もし勝つか引き分けて1位か2位になった場合、おそらく相手はブラジルかモロッコ。3位になった場合は複雑だが、フランスかノルウェーの可能性が高いらしい。つまり、決勝トーナメント1回戦の相手はすべてが優勝候補の一角と言える。
●会場はメキシコのモンテレイだったが、「ハポン!ハポン!」の声が聞こえてきた。ニッポンのボール回しに「オーレ!」の声が挙がる。チュニジアのバックパスにはブーイング。日本代表は同地で事前キャンプを行っているというが、それにしてもずいぶん応援してくれてびっくり。
●序盤でアジア勢が6戦無敗の大健闘を見せたものの、その後はイラク、ヨルダン、ウズベキスタン、カタール、韓国、オーストラリアと6連敗。ようやく日本が連敗を止めた。これで流れが変わるか。
ワールドカップ2026北中米大会 グループJ第1節 イングランドvsクロアチアなど
●待て待て、落ち着け、自分! 今回のワールドカップ、参加国数が増えて長丁場になったから、日本戦以外は決勝トーナメントから見ればいいんじゃなかったっけ!? 今から見てたら、仕事に差し支えるじゃないの。なのに、どーして、イングランドvsクロアチアを見ちゃうのかなあ? 大会は7月20日の早朝まで続くのだ。もう少しペースダウンして、日々の暮らしに向き合わないと。
●で、イングランドvsクロアチアなんだけど、これはすばらしい好ゲームだった。心情的には40歳モドリッチが君臨するクロアチアを応援したいところなんだけど、ドイツ人のトゥヘル監督率いるイングランドがとても積極的な戦い方をするので感心。クロアチアが前からプレスをかけてきても、平気でキーパーからボールをつないで、後ろにできたスペースを狙う。逆に相手のディフェンスラインにもどんどんプレスに行く。ボールをつないで主導権を握るけど、展開の速いスピーディなフットボール。同じグループの強豪同士の対戦なんだから最低でも引き分け、みたいな発想がない。だから前半だけでお互い2点ずつ獲った。イングランドがゴールを決めると、クロアチアが追い付くという展開。まあ、序盤にハリー・ケインがPKで先制したから、お互いにオープンに攻め合う展開になったのかもしれないが。
●で、イングランド側から見ると、たぶん前半は守備がもうひとつだけど、後半からぐっとよくなった、ということになるんだと思う。後半はさらにテンションを上げて、2ゴールを叩きこんで、イングランド 4-2 クロアチア。イングランドのゴールはケイン、ケイン、ベリンガム、ラッシュフォード。戦い方はリスキーだけど、優勝候補のひとつ。というか、こういうチームに優勝してほしい。トゥヘルの信念を感じる。やっぱり攻撃的なサッカーは尊いな、って思った。まぶしい。
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●こんな流れでなんだけど、「マンガでわかるクラシック音楽の歴史入門」(やまみちゆか著/飯尾洋一監修/KADOKAWA)の3刷が決定! いまどき重版できるというだけでも大変なことだが、さらに3刷まで行くとは。すべて著者のやまみちさんとすぐれた編集のおかげ。感謝。
ワールドカップ2026北中米大会 アジア勢の健闘、メッシのハットトリック
●いつもはワールドカップ本大会ではめっぽう弱いアジア勢だが、今回は健闘している。開幕から、韓国〇、カタール△、オーストラリア〇、ニッポン△、イラン△、サウジアラビア△、イラク×、ヨルダン×。本日、ついにイラクとヨルダンが敗れてしまったが、そこまで無敗は上出来。まちがいなく、アジアは強くなっている!……とは、思うのだが、問題は決勝トーナメントにいくつ進めるか。決勝トーナメントで32か国なのだから、ふだんの大会ならスタート地点なわけで、ここにある程度残ってくれないと存在感を示せない。
●アルゼンチンvsアルジェリアの「アル・アル」対決では、なんと、メッシがハットトリックを達成して、3対0。メッシはすでに38歳、現在はアメリカでプレイしている。しかし、第一線を退くどころか、3ゴールで大爆発。ゴールキーパーやセンターバックならともかく、前線の選手がこの年齢でFIFAランキング1位のチームの中心選手を務めているとは。シュートもすごかった。今のアルゼンチンを応援しようという気持ちにはあまりならないのだが、メッシのことは応援したくなる。
●イラク 1-4 ノルウェーはハイライトだけ見たけど、ノルウェーを優勝候補に挙げる人もいることに納得。恐るべき破壊力。
小林研一郎指揮読響、牛田智大のショパン&チャイコフスキー
●ワールドカップ期間中だが、演奏会もある。16日はサントリーホールで小林研一郎指揮読響。プログラムはショパンのピアノ協奏曲第2番(牛田智大)とチャイコフスキーの交響曲第5番。ゲストコンサートマスターに白井圭。チケットは完売。若くて爽やかなソリストと86歳の炎のマエストロの共演。ショパンは端正で優美。リリカルな第2楽章が白眉。ソリスト・アンコールはショパンだろうと思い込んでいたら、ブラームスの間奏曲作品118-2で意表を突かれた。情感豊かで、本編に劣らない聴きもの。若いピアニストがこういった晩年の枯れた作品を弾くのは大歓迎。
●ちょうど前半が終わったところでホール内のあちこちから異音がざわざわ……と響いて、焦る。これはなんどか経験があるが、残響の豊かなホールでいっせいに緊急地震速報が鳴ると(スマホの電源を切るべきか切らないべきかは脇に置いて)、こういったざわざわ音になる。大きな揺れが来るのかと身構えたが、来なかった。休憩時に確認したら震源は茨城県南部でM5.5、約50km、最大震度5弱。大地震ではなかった。
●後半はマエストロの十八番。チャイコフスキーの交響曲第5番を聴くというか、「コバケンのチャイ5」という磨き上げられた様式美を堪能する。きわめて濃厚でエモーショナル。読響がうまい。まるで予告ホームランのようにマエストロが左手で客席を指し示すと、「待ってました!」の声(ウソ。心のなかの声)。実際、あれは予告ホームランなんだと思う。同じ曲を最近、パーヴォ・ヤルヴィ指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団で聴いて感心したばかりだが、まさに「同じ山を別の道から登る」といった様子で、途中で目にする風景はまったく違うけど、たどり着いた場所は同じ、みたいな感覚になる。
●カーテンコールでマエストロがマイクを持って、挨拶。アンコールはお約束の「ダニーボーイ」。マエストロはあと4回でサントリーホール出演500回なのだとか。前人未到の領域。ちゃんとカウントしている人がいることにも驚く。
