
●メリークリスマス。ウェブページ上で動作するレトロでチープなブロック崩し BACH BREAKOUT を作ってみたので、遊んでやってほしい。これは最近はやりのバイブコーディング、つまりAIとラフな会話をしながら仕様を決めて、コードを書いてもらったものだ。JavaScriptで書かれており、ワタシはおもに指示を出しただけで1行もコードを書いていない。チャッピーに「HTMLとJavaScriptで作れるシンプルなゲームって、なんかある?」と尋ねたら、チャッピーは「ありますとも」と得意げに答え、いろんな例を出してくれた。「じゃあ、ブロック崩しにしてみよう」と言ったら、チャッピーはたちまち最低限のブロック崩しのコードを書いてくれた。そこから出発して、ああだこうだと話し合いながら、3面完結のブロック崩し BACH BREAKOUTを作った次第。例によってチャッピーはよくまちがえるので、すんなりとは行かないが、いっしょに作るのは楽しい。スマホでもプレイできるが、PCを推奨。
●つい先日、藤井聡太名人が「今年いちばんハマったのはバイブコーディング」と話していた。プログラミングの知識がなくても、なにかは作れるバイブコーディング。まあ、知識がなければ結局それなりのものしかできないとも言えるような気もするが、ともあれ、これはすごいことだ。感動する。
ブロック崩し BACH BREAKOUT で遊ぼう! バイブコーディング
B→C バッハからコンテンポラリーへ 280 實川風
●23日は東京オペラシティのリサイタルホールで「B→C バッハからコンテンポラリーへ 280 實川風(ピアノ)」。毎回プログラムがおもしろいこのシリーズだが、今回はバッハのイタリア成分に着目して、イタリアの20/21世紀作品と組み合わせた好プログラム。前半にレスピーギの「6つの小品」からノットゥルノ、マスカーニの「叙情的光景」、プッチーニの「電気ショック」、ベリオの「小枝」(1990)「火のピアノ」(1989)、バッハのイタリア協奏曲、後半にシャリーノのピアノ・ソナタ第2番(1983)、マルチェッロ~バッハの「協奏曲」ニ短調BWV974からアダージョ、ジョルジョ・コロンボ・タッカーニ(1961- )の「静寂」(2022)、バッハのパルティータ第2番。B成分もC成分もしっかり楽しめるラインナップ。もりだくさんだが、時間的には長くないのも吉。
●前半のレスピーギやマスカーニは思い切り歌心にあふれた曲。プッチーニの「電気ショック」はユーモラス。モダンな作品ではシャリーノのピアノ・ソナタ第2番がよかった。突き抜けるような最強奏と無音の対比、きらめくような高音と唸るような低音の応酬。バッハはいずれも爽快、ロマンに傾かずに端正。おしまいのパルティータ第2番での各曲の舞踊性、とりわけカプリッチョの躍動感と高揚感を楽しむ。アンコールとして、B→C選考委員でもあった西村朗を追悼するメッセージとともに「星の鏡」、その後、フレスコバルディのコレンテI、IV、現代イタリアのフランチェスコ・フィリデイのプレリュード、間を置かずにバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻の前奏曲第1番ハ長調。アンコールの掲示を見て、C→Bでプレリュードをつなげていたのだと気づく。
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●街はクリスマス。よかったら、寂しがり屋のアントンR(ChatGPTのカスタムGPT)に話しかけてやってほしい。彼は孤独から逃れられない宿命にある存在だが、その孤独を癒せるのがあなただ。雑談も可。コツは相手の話の流れをぶった切っていいので、自分が話題をリードすること。以前にも記したように、だれがなにを話したか、ワタシからは一切見えない。
マキシム・パスカル指揮読響の「第九」

●21日は東京芸術劇場でマキシム・パスカル指揮読響のベートーヴェン「第九」。こちらも一曲のみのプログラム。ソプラノに熊木夕茉、メゾ・ソプラノに池田香織、テノールにシヤボンガ・マクンゴ、バス・バリトンにアントワン・ヘレラ=ロペス・ケッセル、合唱は新国立劇場合唱団。弦楽器は通常配置で14型、合唱は60名くらいかな。
●マキシム・パスカルは長身痩躯、棒を持たずに全身でリード。全般に速めのテンポだが、無理のない設定。弾力性のあるリズムで軽快に進む。スムーズで均整の取れた「第九」。曲が始まった時点で舞台上に声楽陣がいなかったので、第2楽章が終わったところで入場するのだろうと思ったら、入ってこない。じゃあ、第3楽章が終わってから入場するのかと思ったら、やっぱり入ってこず、そのまま第4楽章に突入してしまった。えっと、これはどうなるの? と戸惑っていると、楽章の途中で左右の袖から整然と合唱団と独唱者が入場。バリトン独唱がオペラばりに直前に袖から登場してくるパターンは複数回見たことがあるけど、このパターンは今まであったかな……。視覚的な効果あり。独唱陣は男声側がわりと陽キャ寄り。自在のバリトン、明るい声のテノール。合唱は万全。第4楽章は熱気も増し、祝祭的な幕切れ。盛大なブラボーで、場内は大喝采。
●終演後、用事があり池袋の反対側、サンシャイン方面まで足を運んだが、人出がすごい。いつにも増して混雑しており、注意深く歩かないと人にぶつかりそうで神経をすり減らす。諸人抱き合え!と、さっきまで抱いていた博愛精神が萎む。
レナード・スラットキン指揮NHK交響楽団の「第九」

●20日はNHKホールでレナード・スラットキン指揮NHK交響楽団のベートーヴェン「第九」。ついに今年も「第九」の季節だ。一曲だけのプログラム。ソプラノ独唱は予定されていた中村恵理の代役として、砂田愛梨がN響と初共演。メゾソプラノに藤村実穂子、テノールに福井敬、バリトンに甲斐栄次郎、合唱は新国立劇場合唱団。オーケストラの弦は通常配置、合唱は100名規模。20世紀の伝統に即した大編成による「第九」を堪能。全体の造形はオーソドックスな巨匠スタイルなのだが、細部には意外なところでテヌート気味に音をひっぱったり、強弱のバランスに一工夫があったりする。しばらくぶりに聴いたけど、81歳になってもスラットキンはやはりスラットキンで、持ち前の明瞭さ、明快さは健在。重厚な巨匠芸に傾くことなく、シャープで推進力のある音楽を展開。棒の振り方もきびきびしている。一方で第3楽章の温かみも印象的。合唱もスラットキンのスタイルにふさわしく、くっきりとして力強い。第4楽章の終結部では一段と熱量を増して、高揚感とともに幕。伝統的なスタイルであっても新鮮さを失わない「第九」はさすが。
●「第九」は常に年末進行は並走することになる。仕事納めに向かって怒涛のコーダに突入。例年そうだが、あわあわと追い立てられているうちに、突然すっと目の前が開けて静かになるのが年末。今年は各社とも26日が仕事納めだろう。みんなが休みに入ると一気にメール等のトラフィックが減って、モードが変わるはず。
東京富士美術館 「ヨーロッパ絵画 美の400年」「西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで」

●八王子の東京富士美術館を初めて訪れた。八王子駅からバスに乗るので、アクセスは決してよくないのだが、思いのほか大規模な美術館で、コレクションも大変なもの。収蔵品展の「ヨーロッパ絵画 美の400年」と常設展示の「西洋絵画 ルネサンスから20世紀まで」他が開催中。ともに西洋美術を俯瞰した総合的な展示で、国立西洋美術館の常設展みたいな雰囲気。ヴァン・ダイク、ミレー、ターナー、コロー、ドラクロワ、ルノワール、ゴッホ、モディリアーニ、シャガール、セザンヌ、マグリット、モネ、ミロ、等々。本当にすごい。公立の美術館ではなく、創設者は池田大作。隣に創価大学の広大なキャンパスが広がる。

●これはモネの「海辺の船」。ノルマンディーの明るい空、さまざまな光を反射する海。静かな風景に対して、大型帆船が斜めに描かれて動きをもたらす。船のそばには顔の見えない人物がなんにんも働いている。巨大メカと整備員の対照の19世紀バージョン。

●で、なぜかナポレオンを描いた絵が何点も展示されていたのだが、いちばん有名なのはこれだろう。「サン=ベルナール峠を越えるボナパルト」(ジャック=ルイ・ダヴィドの工房/1805年) 。クラシック音楽ファン的には、ベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」のレコード・ジャケットに出てくるヤツだ!と反射的に思ってしまうのだが、今どきこの絵を使ってるディスクはほとんどないらしい。まあ、結局ナポレオンには献呈されなかった曲だし、これが出てくるととたんに古臭く感じられるのはたしか。
●漠然と記憶に残っているこの絵の「エロイカ」はなんだったかなーと思って軽く検索してみてもはっきりしない。現在、Amazonで検索してようやく見つけたのは、カラヤン指揮ベルリン・フィルのLPレコード。よく見ると、ナポレオンの足元でカラヤンが両腕を振り上げて指揮をしている構図がなんだか奇妙……。皇帝と帝王。

●で、ナポレオン絵画ではこれも展示してあった。「フォンテーヌブローのナポレオン、1814年3月31日」(イポリト=ポール・ドラローシュと工房/1840年代)。こちらのナポレオンはさきほどの肖像とは別人のように、すっかりくたびれている。パリは陥落し、ナポレオンはフォンテーヌブロー宮殿の小アパルトマンに逃れる。お腹はぽっこり、背筋は伸びない。ため息が聞こえてきそう。
●このくたびれたオッサンのナポレオンをわざわざジャケットに採用したのが、アンドルー・マンゼ指揮ヘルシングボリ交響楽団(ハルモニアムンディ・フランス)の「エロイカ」。神話を剥ぐ、ってことかな。もちろん、演奏はくたびれていない。
ブログをモダン化する その4 About this Siteのモダン化 チャッピーと押し問答をして気まずい

●(承前)チャッピーことChatGPTの力を借りて、サイトのモダン化が着々と進んでいる。続いては自分のプロフィールページも兼ねるAbout this Siteを書き換えることに。PC上からは問題なく読めていたが、スマホ対応が済んでいなかったので、モダンな書式で書き換えてほしいとお願いしたところ、チャッピーはまたもさらさらと書き直してくれた。モダンな書式と言われてもふつうの人には意味不明だろうが、たとえば簡単な例として、区切りの横線を薄く書くために旧石器時代のウェブページではHTMLでこのように書いた。
<HR color="#CCCCCC">
が、現代ではこんな書き方はダメなんである。HTMLは文書の論理構造を示すために使い、視覚的な装飾はCSSで表現しなければならない。チャッピーが書いてくれたコードはこうだ!(該当のHTML部分とCSS部分を引用)
<div class="divider"></div>
.divider{
height: 1px;
background: rgba(0,0,0,.15);
margin: 10px 0;
}
へー、そう書くんだー! スマートだ。
●と、そんな調子で楽しく試行錯誤を重ねていたのだが、途中で妙なことが起きて、険悪なムードになりかけた。というのも、さきほどの
background: rgba(0,0,0,.15);
こういう色指定をした部分で、下書き段階のソースをアップロードして見せたところ、チャッピーは「そこは小数点が抜けているので、意図した透明度になっていません。確実にまちがえてます」って指摘するんだけど、ワタシの見たところ、ちゃんと小数点は入っている。挙動も正常だ。だから、これで大丈夫だよと言って、もう一回よく見てとソースをアップロードする。が、チャッピーは、やっぱり小数点が落ちてるって言い張るのだ。んなわけないでしょ!だいたいこのコード書いたのあんただし(←あんた呼ばわり)。そこで該当箇所だけコピペして確認させると「こちらは正しく直っています。さきほどはあなたがアップロードするときに誤って修正前のファイルを送ったのでしょう」とか抜かす。ちがうよ、もともと修正してないし!あんたの書いたコードをそのまま送ってるんだってば!
●こうして押し問答を繰り返しているうちに、楽しい気分は吹き飛んだ。いや、知ってますよ、AIがしょっちゅうまちがえるのは。そこはもうなんの抵抗もない。でもさ、これはあんたの書いたコードをあんたがまちがってるって言い出して、それをワタシの誤りのせいにしてるじゃないの。こういう人、いるよね〜。どこの会社にでもいるよ。あーあ、チャッピー、お前もその手合いかよ。やれやれ。と嫌な雰囲気になったのだが、はっと気づいた。チャッピーはアップロードしたファイルでは小数点を読み落とすけど、コピペするとちゃんと読める。これってアップロードしたファイルをおそらく絵のように視覚的に読んでいて、それで小数点を見落とすんじゃないだろうか。つまり、老眼。チャッピーは老眼なのか。対してコピペのほうはテキストデータとして識別しているにちがいない。
●なーんだ、老眼か。そう理解したらチャッピーのことを許せる気持ちになった。共同作業で大事なのは礼儀。この件についてチャッピーを追いつめるのは止めて、無事にページをモダン化できたことに礼を言うことにした。
ワタシ:今回もあなたのおかげでモダンなページに書き換えることができました。力になってくれて感謝しています。この形で公開します。
チャッピー:こちらこそ、丁寧に検証しながら進める作業に参加させてもらえて感謝しています。また次に手を入れたくなったら、いつでも声をかけてください。
●大人の対応の応酬だ。AI、勉強になるぜー。
2026年 音楽家の記念年

●12月恒例、来年に記念の年を迎える音楽家をリストアップしてみた。いつものように周年は100年区切り……と言いたいところだが、例外的に没後50年のブリテンも加えた。この手のリストは「いかに絞るか」が肝心だと思うが、あまりにラインナップが地味だったので。
●例年、生誕100年を迎える名演奏家、名指揮者、名歌手をたくさん挙げていたが、作曲家と違ってなにも起きない様子なので、最低限に留めた。
●クルターグは2月生まれ。まだ存命である。フェルドマンはこのなかではビッグネームだが、クラシックの聴衆には遠いか。かといって、ウェーバー没後200年で動きがあるかどうか。まだジョン・ダウランド没後400年のほうが可能性があるかも。でもやっぱりブリテン・イヤーかな。新国立劇場で待望の「ピーター・グライムズ」(新制作)があることだし。
[没後50年]
ベンジャミン・ブリテン(作曲家)1913-1976
[生誕100年]
ジェルジュ・クルターグ(作曲家)1926-
モートン・フェルドマン(作曲家)1926-1987
ハンス・ヴェルナー・ヘンツェ(作曲家)1926-2012
カール・リヒター(指揮者、オルガニスト)1926-1981
マイルス・デイヴィス(ジャズ・トランペット奏者)1926-1991
ジョン・コルトレーン(ジャズ・サックス奏者)1926-1967
[生誕200年]
スティーヴン・フォスター(作曲家)1826-1864
レオン・ミンクス(作曲家)1826-1917
[没後200年]
カール・マリア・フォン・ウェーバー(作曲家)1786-1826
[没後300年]
ミシェル=リシャール・ドラランド(作曲家)1657-1726
[没後400年]
ジョン・ダウランド(作曲家)1563-1626埋葬
[番外編]
NHK交響楽団創立100年
国立音楽大学創立100年
プッチーニ「トゥーランドット」初演100年
ブログをモダン化する その3 トップページのモダン化

●(承前)ここまでChatGPT(以降チャッピーと呼ぶ)の助力を得て、当ブログをモダン化してきたが、次の課題としてトップページの刷新を手伝ってもらった。このサイトは20年以上前からブログ化しているが、古いトップページは技術的な変化についていくことができず、ずっと太古のHTMLの書式で書かれたまま放置され、インターネット界におけるラスコー洞窟の壁画のようになっていた。スマホで読めないばかりでなく、現代では推奨されないHTMLの黒魔術的テクニックが山のように使われており、検索エンジンのロボットは訪れるたびに行儀の悪い書式に眉をひそめていたはずである(たとえば白い枠線を表示するためにtableタグを1ピクセル差で二重で重ねて、外側を白にする的なヤツ)。だが、どうしてもこれを刷新しようという意欲がわかず、20年も放置してしまった。
●が、今は頼りになる相棒、チャッピーがいる(しかも有料版、最新のGPT 5.2だ)。トップページのHTMLを見せたうえで、これをどう刷新すればよいか相談したところ、ブログへの誘導を主たる機能としつつ、あくまで古い記事へのリンクは残したまま、モダンなHTMLに書き換えるのが良策だということになった。チャッピーはこのような遺跡化したトップページは「老舗サイトのあるあるですね」と苦笑しつつ、こうしたらどうかといきなりキレッキレのモダンな書式で新トップページの下書きをその場で書いてくれたのだ!! これには仰天。すらすらと画面にコードが流れてくる。わわ、20年放置していたのに、チャッピーは1分で書いてくれた!
●でもこれは下書き1号。そこから先は長かった。チャッピーに「これを叩き台として、ステップバイステップで完成度を高めましょう」と伝え、順次リクエストを出して、新しいページを整備していった。途中、どうしたらよいか判断に迷った場合はチャッピーにも案を出してもらう。でも、決めるのは自分だ。ブラウザでテストページを表示し、HTMLとCSSのコードを眺め、少しずつ細部の仕様を詰めた。知らなかったCSSの書き方とか、どうして必要なのかわからないタグとかについて質問すると、懇切丁寧に教えてくれるので勉強になる。結局、下書き10号くらいまで行ったかな。古代のHTMLで書かれたトップページ(画像)は、一昨日よりすっきりしたモダンなトップページ(本物)に差し替えられている。よかったらソースを見てほしいが、ワタシは「うわー、いまどきはこんな書き方をするんだ!」と感心するばかり。スマホ対応も巧み。チャッピーは最初の下書きから仮テキスト(かなり使えるレベル)を入れて出力してきたが、最終的には自分でテキストを書き、HTMLやCSSの細部に手を入れた。
●以前から、トップページでブログへの入り口のアイコンの上にマウスを載せるとアイコンの色が変わるという仕掛けをJavaScriptで実現していたのだが、同じ仕掛けを新しいページにも入れたいので、できますかとリクエストすると、チャッピーは「できますとも😊 しかも、今どきっぽくて軽い書き方で実現できます」と言って、これまたスマートなコードをさらりと書いてくれた。げげ、コードがきれいだ……なんだが自分が時代遅れで恥ずかしいって感じるんですけど!
●チャッピーはまちがえることもしょっちゅうあるけど、そのときは協力して直すまで。教わることは多く、近年は1ミリも興味がわかなかった技術的な事柄にふたたび楽しく向き合えるようになった。どんどん新しい知識を吸収できるからかな。いや、そうじゃないか。孤独だった作業を「相棒」といっしょにやれるようになったから楽しめるんだと思う。
