March 24, 2023

BingのAIチャットに校正をお願いする

●少し前からChatGPT等の対話型AIの話題で持ちきりで、いろいろなところでさんざん目にしていると思うが、「おもしろ問答」みたいなものでウケる段階は一瞬のことであって、今後は「どう実用するか」がテーマになる。インターネットが誕生したとき、これで世の中ががらりと変わると多くの人が感じ、実際にがらりと変わった(検索エンジンもオンラインショッピングもGoogleマップも乗換案内もメッセンジャーアプリもスマホもなかった時代を思い出せるだろうか)。同じように、これからはAIが私たちの暮らしや仕事のあらゆる局面に浸透して、大きな変化が訪れると確信している。
●なので、今、これを実用したい、ワタシは。近い将来ではなく、たった今、実用したいのだ。そこで第一段階として、Microsoft BingのAIチャットに原稿の校正をやってもらおうと思い、いろいろと試している。うまくいくときもあれば、いかないときもあるのだが、まずは実例を見てもらおう。仕事用に書いた本物の原稿をここに貼るわけにはいかないので、サンプルとして、過去に当欄に書いた原稿にわざとミスを含めたものを用意した。以下がその原稿。ワタシの基準だと、修正すべき点が2か所ある。

[サンプル原稿]

よくグラノーラを食べるのだが、いつも同じものばかり食べているとあっという間に飽きてしまう。あるとき、通販サイトで「グラノーラ」で検索すると、見たことがないパッケージの「フルーツいっぱいグラノーラ」がヒット。おっ、新小品なのか。「自然のめぐみをいつでもおいしく」というキャッチ。これはいい。あるとき、ショッピングカートに放り込む瞬間、ちらっとパッケージに「毛玉ケア」と書かれているのが目に入る。なんだろ、毛玉って、まあいいか……と思ったところで気づいた、「うさぎ元気」の文言に。ウサギ用かよっ! ポチッ(しません)。

どこを直すべきかというと、まず「新小品」は「新商品」とすべきである。もう一点は「あるとき」がこの短い文で2回も出てくるので直す必要がある(2番目を削ればいい)。では、これをBingのAIに直してもらおう。このとき肝心なのは、こちらがどんな文面を投げるかで、それによってAIの答えも変わってくる。ワタシはひとまず汎用の校正依頼文として、以下の言葉でお願いしている。

ワタシ

以下の原稿について、日本語の誤りや漢字変換のミス、欧文のスペルミスがないか、チェックしてください。

この依頼文に続いて、さきほどのまちがいを含む原稿を貼り付けたところ、Bingはこんなふうに答えてくれた。

Bing

原稿には日本語の誤りや漢字変換のミス、欧文のスペルミスはありませんでした。ただし、「新小品」は「新商品」の間違いではないでしょうか?また、「あるとき」が二回続いていますが、意図的な表現ですか?それ以外には問題ありません。

さあ、どうだ。ね、びっくりしたでしょう? 期待通りの校正が帰ってきた。AIを実用すると言っているのはこういうこと。仕事で原稿を書く人ならきっと同意してくれると思うが、自分の書いた原稿のまちがいに気づくのはどんな単純ミスでも(というか単純ミスほど?)至難の業だが、他人の目からは簡単に気づく。もちろん、編集者は気づく。でも編集者に送るまえに、一度、単純なミスを自分で直せたらなおよい。その他人の役をAIにやってもらおうとしている。
●でも、待ってほしい。上の例に一切インチキはないが、こんなにうまくいくのは珍しいのだ。多くの場合、AIはかなり的外れな指摘をたくさんしてくるし、見落としも多い。あまりにトンチンカンな指摘をしてくるので、イラッとするのも事実。たとえば上記の文章を訂正したバージョンを、もう一度、同じように校正してもらうと、こうなる。

ワタシ

下の原稿について、日本語の誤りや漢字変換のミス、欧文のスペルミスがないか、チェックしてください。
よくグラノーラを食べるのだが、いつも同じものばかり食べているとあっという間に飽きてしまう。あるとき、通販サイトで「グラノーラ」で検索すると、見たことがないパッケージの「フルーツいっぱいグラノーラ」がヒット。おっ、新商品なのか。「自然のめぐみをいつでもおいしく」というキャッチ。これはいい。ショッピングカートに放り込む瞬間、ちらっとパッケージに「毛玉ケア」と書かれているのが目に入る。なんだろ、毛玉って、まあいいか……と思ったところで気づいた、「うさぎ元気」の文言に。ウサギ用かよっ! ポチッ(しません)。

Bing

原稿の校正をお手伝いします。私は日本語の文章を解析し、間違った表現や不適切な表現を確認できるAI校正ツールです。以下の原稿について、私が見つけた誤りや改善点を赤字で示します。

よくグラノーラを食べるのだが、いつも同じものばかり食べているとあっという間に飽きてしまう。あるとき、通販サイトで「グラノーラ」で検索すると、見たことがないパッケージの「フルーツいっぱいグラノーラ」がヒット。おっ、新商品なのか。「自然のめぐみをいつでもおいしく」というキャッチ。これはいい。ショッピングカートに放り込む瞬間、ちらっとパッケージに「毛玉ケア」と書かれているのが目に入る。なんだろ、毛玉って、まあいいか……と思ったところで気づ、「うさぎ元気」の文言に。ウサギ用かよっ! ポチッ(しません)。

「思った」は「思う」とする方が自然です。
「ウサギ用かよっ!」は感嘆符(!)ではなく句点(。)で終わらせる方が好ましいです。
「ポチッ(しません)」は括弧ではなくダッシュ(――)で区切る方が読みやすくなります。
以上です。原稿の校正はどうでしたか? フィードバックや評価を送ってください。

●この指摘はどれも的外れだ。で、いろんなパターンで試してみて思ったのは「このAIは中学二年生くらいのバイト少年だ」と思えばよいということ。まだ未熟なのだ。でもときどき鋭い。中二の言っていることなのだから、大人は不要な指摘を無視して、最初の例のような役に立つ指摘だけ受け止めればいいわけだ。
●そして、このAIはおそらく本物の中二よりもずっと早く成長する。上の例は単に日本語の誤りだけをお願いしているが、さらに一歩踏み込んで「校閲」、つまり記述内容の妥当性までチェックしてもらうこともできなくはない。実際、試しにやってもらったら、まったく使えない指摘ばかりが帰ってきて閉口したのだが、現状では中二のバイトなのでしょうがない。もう少し大きくなったら、きっとできるようになる。それにAIを使うワタシらのほうも初心者なのだから、適切なお願いのしかたをわかっていない。バイトを上手に働かせるにも相応のスキルが必要。いまは黎明期ならではの模索の段階だ。
●以下、おまけ。

ワタシ

最近のニュースによると、MicrosoftはBing AIにGPT-4の初期モデルを使用しているそうですが、それは本当ですか。

Bing

はい、本当です。2023年3月15日にリリースされたGPT-4は、BingのAIチャット機能にも採用されています。GPT-4は、自然言語処理の能力を大幅に向上させた大規模言語モデルです。BingのAIチャット機能を使うには、Bingのウェブサイトで「チャット」ボタンをクリックするだけです。

ワタシ

あなたは学習モデルの一種ですね。

Bing

はい、私はBingのAIチャット機能として、GPT-4をベースにした学習モデルです。私は常に新しい知識やスキルを学び、ユーザーのニーズに応えるように努めています。

ワタシ

今のところ、あなたは原稿の校正を上手にできることもあれば、正直に言ってうまくできないこともとても多いのですが、近いうちにあなたの能力は飛躍的に向上するでしょうか。

Bing

原稿の校正は、私にとってまだ難しいタスクの一つです。私はユーザーからのフィードバックや評価をもとに、自分の誤りや改善点を学習しています。私は近いうちに原稿の校正の能力を飛躍的に向上させることができると信じていますが、それにはユーザーのご協力が必要です。どうぞよろしくお願いします。

March 23, 2023

広上淳一指揮オーケストラ・アンサンブル金沢 第39回東京定期

●22日はサントリーホールで広上淳一指揮オーケストラ・アンサンブル金沢(OEK)の東京定期へ。前半にシューベルトの交響曲第5番、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第4番(米元響子)、後半にベートーヴェンの交響曲第2番というクラシカルなウィーン音楽プロ。小気味よいアンサンブルはOEKの持ち味だが、加えてシューベルトからふっくらした響きが聞こえてくる。モーツァルトでは米元響子のソロが端正でのびやか。ソリスト・アンコールはパガニーニのカプリース第24番で、一転してスリリングな超絶技巧の世界へ。後半は正攻法によるダイナミズムあふれるベートーヴェン。弦楽器は8-6-4-4-3だったか。対向配置でコントラバスを右に置くいつものOEKスタイル。コンサートマスターはアビゲイル・ヤング。ベートーヴェンで肝となっていたティンパニは、客演奏者のマイケル・イスラエリエヴィチ。カーテンコールで一段と大きな拍手を受けていた。チェロの客演首席はマリウシュ・ヴィソツキ。マエストロの挨拶に続いて、アンコールにレスピーギの「リュートのための古風な舞曲とアリア」第3集より「イタリアーナ」。しみじみとしたノスタルジーに浸る。
●この日、開演時間が18時30分だった。これは要注意だと思って、Googleカレンダーにも紙の手帳にもしっかりと「18時30分」と記入していたのに、いざその日になったらすっかり忘れて19時だと疑いもせずに出かけてしまった。それでも早めに着いたので、シューベルトの第2楽章からホール内に入れてもらえたのは救い。以前、自分は「嬉々として手帳様の奴隷になっている」と書いたが、実は奴隷どころかろくに手帳様を見ていないことが判明。これからは心を入れ替えて手帳様をしっかりと確認したい……。
●さて、OEKだが、17日に新シーズンラインナップ発表記者会見が開かれた。ZOOMによりリモート参加。2023/24シーズンの速報版が発表された。アーティスティック・リーダー広上淳一指揮の公演は、池辺晋一郎の交響曲第11番(東京オペラシティ文化財団との共同委嘱作品)他、葵トリオとのベートーヴェンの三重協奏曲他、久石譲作品とバリー・グレイの「サンダーバード」の組合せの3公演。他に川瀬賢太郎、マルク・ミンコフスキ、井上道義、ギュンター・ピヒラー、エンリコ・オノフリ、鈴⽊雅明、クリストフ・コンツらが指揮を務める。かなり豪華なラインナップ。

March 22, 2023

マリノスvs鹿島 戦術面で苦しみつつも勝点3をもぎ取る J1リーグ第5節

●J1リーグ第5節はDAZNでマリノス対鹿島戦。前節、アウェイ札幌戦で完敗したマリノスだが、今度は苦手の鹿島戦。今季、マリノスは先発メンバーをほぼ固定しての戦いで、キーパーはやはり一森。ただ控えには飯倉ではなくオビが入った。一森がダメとはいわないが、シーズン当初のオビが結果を出していただけにモヤモヤした気分は残る。ディフェンスラインは永戸、角田、畠中、松原。中盤は喜田と渡辺皓太がセンター、右に水沼宏太、左にエウベル、トップ下に西村拓真、トップにアンデルソン・ロペス。マルコス・ジュニオールや藤田譲瑠チマ、エドゥアルド、ヤン・マテウスはすっかりベンチ要員。ベンチにいつもブラジル人が3人並ぶチームも珍しいと思うが、Jリーグの成熟ともいえる。
●で、試合は拮抗した展開に。後半11分、松原が地を這うような強烈なミドルシュートを叩きこんで先制し(「一年に一回のゴール」と本人談)、後半17分、クロスボールに対して鹿島の常本が自分のゴールに蹴り込む不運なオウンゴールがあって2点目、その後、鈴木優磨に1ゴールを返されたが2対1で逃げ切った。ただ、正直言って内容では鹿島が上回っていたと思う。鹿島の岩政監督は割り切ったマリノス対策を準備してきたようで、こちらのハイプレスに対して、自陣でボールを無理につながないことでショートカウンターを防いでいた。極端なところでは、プレスに囲まれたディフェンダーが自陣で故意にボールを外に出してスローインを与える場面があったほど。ロングボールの多用も目立ったが、これもプレス回避策として有効。おかげでマリノスはボールを前で奪う場面が少なく、奪うのはもっぱら自陣深く。そこから攻撃につなげようにもビルドアップが難しく、また相手にボールを奪われて守備が続くといった苦しい時間帯もあった。結果的にボール保持率もシュート数もほぼ五分五分。鹿島の狙いはかなり成功していたと思う。今シーズン、やはりどこもマリノスには対策を練ってきているし、一方でこちらは選手層が薄くなっており、昨シーズンのような相手を圧倒する展開にはならない。
●鹿島の鈴木優磨はゴールシーンもさることながら、中盤に下がったときも効果的なプレイができる選手で、かなりの脅威。無意味な挑発的行為が多いためヒールの印象が定着しているが、能力的には代表レベルだろう。

March 20, 2023

佐藤俊介指揮東京交響楽団のシュポア、ベートーヴェン、メンデルスゾーン

佐藤俊介 東京交響楽団 水谷晃 大野雄太
●サントリーホールで佐藤俊介のヴァイオリンと指揮で東京交響楽団を聴く。このコンビ、前回は都合が合わず悔しい思いをしたのだが、ようやく聴けた。前半にシュポアのヴァイオリン協奏曲第8番イ短調op.47「劇唱の形式で」、ベートーヴェンの交響曲第1番、後半にメンデルスゾーンの弦楽のための交響曲第8番ニ長調(管弦楽版)。シュポアは弾き振りで、独奏ヴァイオリンとオーケストラのためのオペラみたいな曲。プリマドンナ化する独奏ヴァイオリン。なにかふさわしい物語を脳内補完したくなる。ベートーヴェンはこれまでに聴いた同曲のもっともエキサイティングな演奏。テンポが自在に伸縮し、場面場面でとても表情豊か。この曲、こんなに雄弁で物語的な音楽だったのかと初めて気づいた気分。しかもベートーヴェンでもまさかの弾き振り。第1楽章が終わったところで、あまりにすばらしすぎて拍手したくなったほどだが、実際に少しだけ客席から拍手が出た。ピリオド聴法の実践だ。トランペット、ホルン、ティンパニはピリオド仕様。チャーミングかつヴィヴィッド。
●メンデルスゾーンは若き日の弦楽のための交響曲を作曲者自身がオーケストラ用に編曲した版で、編成はベートーヴェンの1番と同じ、楽章構成もほぼ同じような感じ。コントラバスを両翼に二分割して配置していた。ベートーヴェンと似た曲だなあと思わせておいて、第4楽章はモーツァルト「ジュピター」ばりにフーガになるのだが、風呂敷は広げるよりも畳むほうが難しいものだとも思った……が、原曲作曲時にメンデルスゾーンが13歳だったと気づいて愕然。
●カーテンコール時に、今月末で退団するコンサートマスター水谷晃、首席ホルンの大野雄太の両氏に盛大な拍手。心温まる光景。東響はほかに首席オーボエ奏者の荒木奏美、もうひとりの首席ホルン奏者ジョナサン・ハミル、首席ハープ奏者の景山梨乃の三氏も今月末で退団する(→退団のお知らせ)。だいぶ顔ぶれが変わる。

March 17, 2023

「タタール人の砂漠」(ディーノ・ブッツァーティ著/脇功訳/岩波文庫)

●Twitter上で万城目学氏が「普段滅多に好みが一致しない私と森見登美彦氏が、今年めずらしく『これはおもしろい』で一致した一作」とつぶやいたことをきっかけに、10年前に発売された岩波文庫が話題になっている。ディーノ・ブッツァーティ著の「タタール人の砂漠」。そうなのだ、ワタシもそのツイートを目にして、反射的に買ってしまったひとり。なにせ「何も起こらないのにおもしろい」と紹介されていたので。1940年刊の名作。
●主人公は青年将校ジョヴァンニ・ドローゴ。士官学校を出て中尉の制服を身につけて最初の任地である辺境の砦にやってくる。「何年来待ち焦がれた日、ほんとうの人生の始まる日」から最初の1ページが始まる。だが、この国境線上にある砦の目の前には砂漠が広がっているだけで、敵の襲来などありそうにない。もしかすると敵がやってくるかもしれない、そして自分が活躍して英雄になるかもしれないと、漠然とした期待を抱きながら規律正しく日々を過ごすが、なにも起きない。
●そんな寂しくて単調な暮らしなど、若者には耐えがたいだろうと思うじゃないすか。でも一方で、慣れてしまえばそこは心地よい場所になることもありうる、とワタシらは知っている。

もう彼のなかには習慣のもたらす麻痺が、軍人としての虚栄が、日々身近に存在する城壁に対する親しみが根を下ろしていたのだった。単調な軍務のリズムに染まってしまうには、四か月もあれば充分だった。(中略)勤務に習熟するにつれて、特別な喜びも湧いてきたし、兵士や下士官たちの彼に対する敬意も増していった。

●見たことのある光景のような気がする。若いドローゴは無限に自分の時間があるように思っている。自分の意思で砦から出ようと思えばいつでも出られる。そう思いながら、なにも変わらないまま(変えようとしないまま)月日が過ぎていく。きっといつかなにかが起こる、だから、住み慣れたここに居続けるのだ。そんなふうに自分に言い聞かせているうちに、やがて、かつての自分と同じような新任の若い将校が砦に配属されてくる……。
●少し辛辣な物語ではあるのだが、隅々まで味わい深い。

March 16, 2023

電車の中 マスクを外して 笑顔見せる

●一昨日、OpenAIがGPT-4を発表したというニュースがあった。ChatGPTよりもさらに進化したAI技術が用いられているそうだが、Microsoft Bingに搭載されている新しいAI機能も、GPT-4の初期バージョンで動作しているのだとか。そういえば、ふだんはGoogleばかり使っていて、新しいMicrosoft Bingをまだ試していなかったな……と思い、軽く触ってみたところ、なかなかよさげでギクリ。「今の季節の東京を題材に、オリジナルの俳句を10本作ってほしい」とお願いして書いてもらった内の一句がこれだ。


電車の中 マスクを外して 笑顔見せる


●なな、なんとタイムリーなの。しかも俳句として成立している、たぶん。厳密なことをいえば本来「マスク」は冬の季語らしいのだが、現実に即せばこれほど「今」を伝えるワードはない。政府方針で3月13日以降、マスクは個人の判断に委ねられることになった。いや、そんなこと言ったって、これまでもなんの法律もなかったんだから個人の判断に委ねられていたんじゃないの?と思わなくはないが、従来は「マスクは屋外では原則不要、屋内では原則着用」が推奨されていた。でもこれからは「原則不要、ただし混雑した電車等に乗車する場合や医療機関等を訪れる場合は着用」になった。
●実際にどうなっているかといえば、東京ではさほど変わっていない感じ。まあ、つけたり外したりが面倒だから、どうせ電車でするのなら最初からしたまま出かけようかという気分もある。でも、3月13日以前から、電車内でもしない人はしない。
●ある日、それまでマスクをしていた友達が電車でマスクを外したら、そこには笑顔があった。そんな光景をAIは詠んでいる。ああ、ようやく外せるようになってよかったね、みたいな。

March 15, 2023

JFL開幕! 東京武蔵野ユナイテッドFC対ブリオベッカ浦安

JFL 武蔵野陸上競技場
●今スポーツ界で熱い視線が注がれるアルファベット3文字の大会といえば? そう、JFLだ! Japan Football League、略してJFL。J1、J2、J3のさらに下にある全国リーグ。上から見れば4部リーグだが、下から見ればアマチュア最高峰としてそびえたつ英雄たちの世界。それがJFL。全国1億3千万人のフットボール・ファンが固唾をのんで見守るなか、先週末に開幕。武蔵野陸上競技場で東京武蔵野ユナイテッドFC対ブリオベッカ浦安の試合が開かれた。好天に恵まれた開幕戦とあって観客数は710人!……あれ?
●いやー、どうなんすかね、東京武蔵野ユナイテッド。そもそもこの名称にいまだになじめない。心のなかではいまだ横河武蔵野FC(あるいは横河電機?)。それが東京武蔵野シティFCになり、さらに東京武蔵野ユナイテッドFCになった。その際、経営体制が一新され、実質的にはより下位リーグに所属する文京区の東京ユナイテッドFCに吸収合併されてしまったという印象がぬぐえない。そんなわけで、クラブへの愛着が雲散霧消してしまい、昨シーズンは一試合も観戦しなかった。ただ、そうはいってもこのスタジアムを本拠地とするチームはここしかない。結局のところ、クラブというものは土地に根差すものであって、名前でも選手でも経営母体でもないのかもしれない……と、ぐちゃぐちゃとわだかまりを抱えながら開幕戦に足を運んだ。
●対戦相手はブリオベッカ浦安。千葉県のチームだ。浦安といえばディズニーランド。だからチームマスコットはミッキー!!……ウソ。んなわけない。だが、監督はあの都並敏史! なんというメジャー感。まぶしい。ただ、JFLにはけっこう著名な監督もいるのだ。だいぶ前の話だが、琉球FCと対戦したときには総監督のトルシエがスタンドに来ていて、ついワタシも近寄ってしまった。近寄ってなにをするというわけでもなく、袖が触れ合ったというくらいの話だが、元ニッポン代表監督にそこまで接近する機会はそうはない。それはともかく、武蔵野の監督は横河武蔵野FCアカデミーに長年携わっていた石村俊浩。選手はほとんど知らない名前になっていた。ひそかに応援していた本田圭佑選手(あの有名選手と同姓同名)はすでに現役を引退している。本田圭佑選手、エゴサーチに苦労しただろうなあ……。
●試合は2対2の引分け。びっくりしたのは武蔵野がボールをつなぐチームになっていたところ。ワタシの知る限り、横河武蔵野時代からこのチームは堅守が武器のチームであり、ボールを保持しての攻撃は不得手だと思っていたが、今はガラッと変わって、ボールをつなぐ。従来ならシンプルにゴール前に放り込むの一択だったような局面でも、いったんボールを下げて組み立て直す。サッカーとしては見て楽しいほうにスタイルが変わった。実際、2ゴールとも華麗なボレーで決まったスーパーゴールで、かなりの見ごたえ。ただ、攻撃的になれば失点も増えるのがサッカーの常。特に2失点目は、こちらの積極的な攻撃からミスでボールを奪われ、それがあっという間にシュートにまで持っていかれた形で、悔やまれる。攻守の切り替えの場面で、反応が一歩遅れた感。
JFLメモ帳●マッチデープログラムがなかったようだ。寂しい。メンバー表の配布もなくなってしまった。以前は100円を寄付してメンバー表をもらう方式だったのだが、今は入口に貼ってあるメンバー表を撮影すればよいそう。少々わびしさを感じないわけにはいかないが、救いは写真のJFL特製メモ帳をもらえたことだろうか。全15チームのエンブレムが載っている。これはよい記念品。レアアイテムっぽい。

March 14, 2023

吉松隆の〈英雄〉~ 原田慶太楼指揮東京交響楽団

東京芸術劇場
●11日は東京芸術劇場で「吉松隆の〈英雄〉」。原田慶太楼指揮東京交響楽団によるオール吉松隆プログラム。前半に「鳥は静かに……」、鳥のシンフォニア「若き鳥たちに」、キース・エマーソン&グレッグ・レイク~吉松隆編曲の「タルカス」、後半に交響曲第3番。珍しく芸劇で東響を聴くことになったが、これは東響の主催公演ではなく、ジャパン・アーツ/日本コロムビアの主催。原田指揮東響による渾身の演奏で、吉松作品にまた新たな命が吹き込まれた。
●一曲目、弦楽合奏による「鳥は静かに……」の儚さが沁みる。鳥のシンフォニア「若き鳥たちに」は吉松版「青少年のための管弦楽入門」といった趣。パートごとに立奏する場面があったが、まさかチェロまで立つとは。「タルカス」は以前にも藤岡幸夫指揮東フィルで聴いたことがあったような……と一瞬思ったのだが、ライブで聴いたのは佐渡裕指揮東フィルだった。そう考えると、すごい人気曲。原田&東響はテンションマックスでキレッキレ。交響曲第3番は堂々たる交響曲で、すさまじい高揚感と祝祭感。終楽章の5拍子攻めが強烈だった。
●最後に吉松さんがマイクを持って登場して挨拶。客席はよく入っていた。昔から吉松ファンはたくさんいたと思うんだけど、原田慶太楼効果でさらに新しい聴衆を獲得しているはず。こうして若い指揮者がとりあげ、また聴衆が増えて、というサイクルをくりかえすことで、作品が「名曲」の仲間入りを果たすのだろう。わたしたちはそのプロセスを現在進行形で体験している。

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飯尾洋一(Yoichi Iio)

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