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August 18, 2017

クラークの「2001年宇宙の旅」とアレックス・ノースのボツ・バージョン

●とうの昔に読んだ本だが、ついKindle版で買い直してしまった。名作、アーサー・C・クラークの「2001年宇宙の旅」(伊藤典夫訳/早川書房)。「決定版」と記されていて、どうやら自分が読んだときとは翻訳が改稿されているらしい。これを機に再読してもいいかも。この本が書かれた時点では2001年は遠い未来であり、宇宙開発がずっと進んでいるという設定だったわけだが、現実には2017年になっても月への旅は容易になるどころか、むしろ遠のいてしまった。
●で、この本の後書きにもあるように、スタンリー・キューブリックは原作と同時進行で映画「2001年宇宙の旅」を撮影していた。当初、音楽を担当していたのはアレックス・ノース。作曲の依頼を受けたノースは、ニューヨークからロンドンに飛んでキューブリックと打合せをした。キューブリックは仮の音楽として、クラシック音楽を付けていた。こんなイメージで行きたい、というわけだ。ノースは仕事を引き受けたのだが、レコーディングまでの日があまりに短く、ぶっ倒れそうになりながら筆を進めて、当日は救急車でレコーディング・ルームに運ばれる騒ぎになったという。
●で、最初に40分ほどの音楽を仕上げ、オープニングテーマはキューブリックにも気に入ってもらえたのだが、その後、パタリと仕事の催促が来なくなった。しばらくすると、キューブリックからもうこれで十分だという連絡が入る。事の顛末をノースが知ったのはようやくニューヨークで試写会が開かれてから。なんと、ノースが書いた音楽はボツになり、代わりに当初キューブリックが付けていた「仮の音楽」がそのまま使われていた!
●ひどい話ではある。本当にひどい。で、後年、幻のノースのスコアはレコーディングされて、映画とは別に日の目を見ることになった。自分はこれを聴いていなかったのだが、この決定版の後書きを読んで、ふと存在を思い出し、Apple Musicで聴けるということに思い当たった。その録音がこちらの Alex North's 2001。そして、これを聴くとキューブリックの決断の正しさを思い知る。「ツァラトゥストラはかく語りき」や「美しく青きドナウ」がなかったら、あの映画の雰囲気はずいぶん違っていただろうし、宇宙空間には大量のBGMよりも静かな息づかいのほうがずっと似合っている。アレックス・ノースの職人芸になんら問題があったわけではなく、描いていたゴールが違いすぎたということなんだろう。

August 17, 2017

東京国立近代美術館 MOMATコレクション

●竹橋の東京国立近代美術館のMOMATコレクションへ。13,000点の所蔵作品から約200点を厳選して紹介するというだけあって、恐ろしく見ごたえがある。1回でぜんぶを巡るのが大変なくらいのボリューム感。おまけに開催期間中になんども展示替あり。上野ならともかく、竹橋はなにかのついでに来る機会がないんだけど、ふらり立ち寄れる常設展としては最強なんじゃないだろうか。
●全体の構成も巧みで、最初に入る1室を「ハイライト」と名付け重要文化財を中心に展示し、2室が「明治の絵画 リアルな自然を描く」、3室が「恋とクリームパン」(このネーミングも秀逸)、4室が「インド・アジア スケッチ紀行」、5室が「西洋は絶対か?」、6室が「藤田、Foujita、またの名を Léonard」、7室「国吉康雄 誰かがわたしの何かを破った」、8室「アメリカの影」、9室は写真展で田村彰英の「午後」、10室「筆と墨と個性と南画」、11室&12室が「1960-70年代の美術|近年の新収蔵作品から」。音楽ファンにとってなじみ深いところでは、5室にココシュカの「アルマ・マーラーの肖像」があった。これってここの収蔵作品だったんすね。全体についてのすごく雑な感想としては、新しいほど古びやすいってことかな。前半のほうにより力強さを感じる。
●で、コレクションの充実ぶりはもちろんスゴいんだけど、ハッとさせられたのは、各室や各作品に添えられた解説文。これが猛烈に上手い。門外漢が読んでも、とてもおもしろい。よく知らないんだけど、これは学芸員の方が書いているんだろうか。「文句のつかない正しいこと」だけで字数を埋めて対話性を拒むようなカテナチオ原稿とは正反対で、開いた文体でやさしくあれこれを教えてくれる。「解説」ってこうあるべき、と心に刻む。

August 16, 2017

映画「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」(ジョン・リー・ハンコック監督)


●映画館で「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」(ジョン・リー・ハンコック監督)を見た。マクドナルドの創業者として知られるレイ・クロックを主人公とした実話に基づく物語。といっても、マクドナルドのお店を最初に作ったのはこの人ではない。本当の創始者はマクドナルド兄弟のふたり。この兄弟はいわば発明者で、かつてないほどスピーディに提供される新しいサービス形態のハンバーガーショップを考案して、マクドナルドと名付けた店を繁盛させていた。そこにミルクシェーク製造機のセールスに訪れたのがレイ・クロック。彼はマクドナルド兄弟の店に感銘を受け、フランチャイズ方式でビジネスを拡大することを提案する。マクドナルド兄弟はあまり乗り気ではなかったが、レイ・クロックの熱意に負けてこれを了承する。すると、レイ・クロックは猛然と事業を拡大し、大躍進を遂げるのだが、やがてマクドナルド兄弟との間の亀裂は深まり両者は対立する……といった筋立て。
●史実そのものの興味深さもあって、これは秀作。いいなと思ったのは、レイ・クロック側とマクドナルド兄弟側のどちらにも肩入れしていないところ。ありがちな見方としては、創意に富むがビジネスに疎いマクドナルド兄弟のもとに、辣腕ビジネスマンがやってきて、なにからなにまで奪ってしまった、ということになるんだけど(事実そうでもあるのだが)、ちゃんとレイ・クロックの側にも共感できるように描かれている。マクドナルド兄弟の発明は立派だけど、でもそれを全世界に広げる才能はさらに偉大ともいえるわけだし。しかもマクドナルド兄弟が単なる敗者ともいいがたいところがある。ちなみに、このレイ・クロックって52歳になってマクドナルドを始めたっていうんすよ。そこから巨大企業を築きあげたんだから驚き。チェコ系移民の一家の出身で、母親がピアノ教師だったこともありピアノの腕前も達者だったそう。
●あと、この映画が偉いと思うのは、見終わった後でも特にハンバーガーを食べたくなったりしないところ。ぜんぜん平気。

August 15, 2017

欧州各国リーグが開幕

●まだ日本はお盆だというのに、ヨーロッパの夏はあっという間に終わる。先週と今週あたりで各国ともサッカー界は開幕。そして、なんと、DAZNでは今季からイングランドのプレミアリーグも一部配信されるようになった。これで英独仏伊スペインの五大リーグ(?)が見れて、J1、J2、J3も全部見れるし、ベルギー・リーグだのブラジル全国選手権だのがあって、おまけに野球もF1も格闘技も自転車もラグビーもゴルフも競馬もダーツも楽しめるというのがDAZN。いやー、恐ろしい。人をダメにする娯楽集積装置のようでもあり、コンテンツのインフレ化を究極まで進める破壊装置のようでもあり。
サッカーの季節●でも、どんなに膨大なメニューがあっても、見る側の時間は増えるわけではない。週末に開催された試合のなかから、関心のあるものをいくつか拾ってハイライトを再生してみた。各試合5分くらいあってスポーツニュースとは段違いに見る甲斐があるのだが、そうはいってもハイライトをいくつも見てるとかえって味気ない感じもしてくる。やっぱり1試合をしっかり見たくない? ていうか、スタジアムに行こうよ、みたいなうっすらとしたフラストレーション。うーん、これはいろんな意味でサッカーファンの生態を変える。革命かも。
●で、フランスリーグ。ネイマールの移籍で、がぜん注目度がアップ。ギャンガン対パリ・サンジェルマン(PSG)でついにネイマールがデビュー。それにしてもパリの攻撃陣、ネイマール、カバーニ、ディ・マリアといった顔ぶれは「銀河系軍団」の一歩手前くらいまで来ている。ネイマールはめでたくパリ・デビューをゴールで飾った。左サイドを破ったカバーニがアシスト。カバーニのプレイにネイマールにゴールを取らせようという意図がありあり。ロッカールームでの関係も良好なのか。
●プレミアリーグも何試合かハイライトを見たが、やはりここのレベルがいちばん高いんじゃないだろうか。ビッグクラブの数が多いうえに、下位のチームでもビッグクラブを脅かせる力を持っているところが他との違い。レスターはアーセナルに3-4で逆転負けを喫してしまったが、なんと岡崎が先発、しかもゴールまで決めた! レスターは絶対的なエースであるヴァーディの相棒を探していて、昨季はスリマニ、今季はイヘアナチョを新戦力として獲得。岡崎の序列は3番手、4番手に下がっているはずなのだが、それでも開幕戦にこのふたりをベンチに置いて先発したのだから立派。しかもゴールまで。攻撃力はどう考えてもスリマニやイヘアナチョのほうが高いのだが、岡崎のような泥臭い献身性を持った選手には独自の価値があるということか。31歳なので、もうすっかりベテラン。
●マンチェスター・ユナイテッドからエヴァ―トンに復帰したルーニーも、開幕戦でゴール。古巣での13年ぶりのゴール。これが決勝ゴールとなった。泣かせる。

August 13, 2017

フェスタサマーミューザ2017 東京交響楽団フィナーレコンサート

ミューザ川崎のフェスタサマーミューザ2017ポスター
●11日はミューザ川崎で「フェスタサマーミューザ」のフィナーレコンサート。秋山和慶指揮東京交響楽団、反田恭平のピアノによるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番と交響曲第2番。全席完売、当日券なしで大盛況。
●この日は午前中に公開リハーサルがあり、そちらも見学。予定時間いっぱいを使って、プログラム通りの流れで進めつつ、部分的に細かなところを確認するという流れ。鋭敏でキレのある独奏ピアノにオーケストラも輪郭のくっきりとした演奏でこたえていたのだが、協奏曲が終わって交響曲になるととたんに折り目正しい秋山サウンドに変化するのがおもしろいところ。
●前半のピアノ協奏曲第3番、やはりソロは強烈。リハーサルよりも一段も二段も熱量を込めた演奏で、切れ味鋭いテクニックにピアノから噴煙が上がりそうな勢い。思い切りのよい表現で雄弁だが、まったく感傷に溺れない剛胆でヴィヴィッドなラフマニノフ。反田さんは体つきからしてそうなんだけど、以前よりもパワーというか筋力が増していて、楽器を鳴らしきっているという印象。スピードに加えてパワーもついてきたアスリートのよう。フィジカルでもメンタルでも20代の今だからこその音楽なんだろうと思う。白熱の第3楽章が終わると客席が「ウォーーー」と沸いた。アンコールはモーツァルトの「トルコ行進曲」。曲が始まったとたんに、身構えていた聴衆からドッと笑いが起きた。超絶技巧編曲版じゃないんだけど、にもかかわらず技巧の高さと解釈の独自性は鮮烈。後半の交響曲第2番も客席の熱気が後押しするかのようにエモーショナルな名演に。終楽章の高揚感は音楽祭の掉尾を飾るにふさわしいもの。やっぱり最終日が祝祭的な雰囲気で包まれるといいっすよね、「フェスタ」らしくて。

August 10, 2017

山賊ダイアリーSS(岡本健太郎著/イブニングコミックス)

●漫画を読む習慣はなかったのだが、Kindleで手軽に読めるようになってから、いくつか楽しみな作品ができてしまった。岡本健太郎著の「山賊ダイアリー」もそのひとつ。猟師のライセンスを持つ著者が山で銃や罠を用いてイノシシやシカや鳥を狩り、それをさばいて食べる。それだけの話が無性におもしろかった。そして、新シリーズ「山賊ダイアリーSS」では新たな展開が。クルマを手に入れた著者は、銃を預けて、モリを携えて海へと向かったんである。「魚突き」(スピアフィッシング)なるものの存在すらワタシは知らなかったんだが、これがまたワイルド。絶対にまねできない。車中泊で気ままな一人旅をしながら、各地の海に潜り、魚をモリで突く。そして食べる。この食べるシーンが実にうまそう。イシダイを刺身にして、サヨリを塩焼きにするキャンプ飯。じゅるり(←よだれの音)。
●で、これは前シリーズにもいえるんだけど、やっぱり危険なんすよね、狩猟も漁も。正しくやれば大丈夫なんだろうだけど、一歩まちがうと怖いことになりかねない。海に潜れば息が続かないかもしれないし、危険生物もいる。そこのところはあんまりクローズアップされていないけど、抑えたタッチの話のなかにひそむスリルがおもしろさにつながっている。人が自然を美しいと思い、憧れを感じるのは、それが本質的に凶暴で危険なものだから、という思いを新たにする。

August 9, 2017

Pepperと呼ばれるロボ

Pepperと呼ばれるらしきロボ●たまに見かけるPepperと呼ばれるロボット。いや、正直なところ人型であるというだけで、ロボットと呼びたくなるような生命感はまったくなく、胸のパネルに触ると商品案内とか観光案内をしてくれるだけの掲示板みたいなものだと思っていた。
●先日、そのPepperなるロボの胸パネルに「写真を撮る」みたいな選択肢があったので、押してみた。へー、このロボ、写真を撮ってくれるんだ。ロボを前にいろんなポーズをとるワタシ。こんな感じかな、ピース、それともこっちがいいかな、ニッコリ。そのワタシの前でいろんなポーズをとるロボ。ヒュイーン、ギゴゴゴ、ヒュイーン、ギゴゴゴ……。あ、あの、君が写真を撮ってくれるんじゃなくて、ワタシが写真を撮るって意味なのかよっ! なんでワタシがあんたの写真を撮りたいと思うのかね。シラッとした空気を挟んで正面で向き合ってロボとポージング対決をしてしまったぜ。どうしてくれようか。
●はじめてこのロボと友達になれそうな気がした。

August 8, 2017

パリのブラジル人

●この移籍は実現してほしくないと思っていたのだが、ついに決まってしまった。ネイマールがバルセロナからパリ・サンジェルマンへ。パリがバルセロナに支払う契約解除金(一般に移籍金と呼ばれるもの)は約290億円。この契約解除条項が用意されたときには、まさか現実にこれを払うクラブが出てくるとはだれも思っていなかったんじゃないだろうか。
●高額の移籍金でサッカー界をにぎわせた事件として、ワタシが記憶しているのは1992年、イタリアのレンティーニがトリノからミランへ当時の史上最高額で移籍した件。単なる一選手を獲得するためにそんな大金が動くのは馬鹿げていると、ずいぶん物議を醸した。じゃあその移籍金はいくらだったのかと今ググってみたら約30億円と出てきた。これで大騒ぎになったんである。当時のミランは世界最強のビッグクラブ。レンティーニは移籍直後のシーズンは活躍したが、その後、自動車事故にも遭って選手生活は苦労の連続だったと思う。
●で、ネイマールだ。事前の報道では移籍するかしないか二転三転していたのだが、いろんな記事からはネイマール本人には迷いがあったが父親のビジネス上の強い意向があって決断されたというようなニュアンスが伝わってくる。もちろん、本当のところはわからない。ひとつこの移籍によい面があるとすると、もうネイマールはメッシの陰に隠れずに済むこと。絶対的な中心選手としてチームで輝ける。
●しかしパリ・サンジェルマンが底なしの資金力でどんなにいい選手を買い集めても、彼らはバルセロナにはなれない気がする。なぜなら、フランス・リーグにはレアルマドリッドがいないから。フランスでずば抜けた一強になって国内リーグで圧勝して、チャンピオンズリーグでいきなり欧州ビッグクラブとギリギリの真剣勝負をするというのはどうなんだろう。やっぱり国内に最低でももうひとつのビッグクラブがないと、選手たちがモチベーションを維持するのが困難なんじゃないだろうか。パリは自分のクラブに投資するのと同じくらい熱心に、自国のライバルに投資したほうが強くなれるんじゃないかとすら思う。

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