December 5, 2022

ファビオ・ルイージ指揮NHK交響楽団のブルックナー2

ファビオ・ルイージ NHK交響楽団
●ふー。日々カタールで熱戦がくりひろげられているなか、東京のコンサート・シーンも熱い。だからこんなハイシーズンにどうしてFIFAはワールドカップを開いたのかと(以下略)。
●3日はNHKホールでファビオ・ルイージ指揮N響。前半にワーグナーのウェーゼンドンクの5つの詩(藤村実穂子)、後半にブルックナーの交響曲第2番(初稿/1872年)。ブルックナーの2番、しかも初稿という貴重なプログラム。前半は藤村実穂子の深くまろやかな歌唱とオーケストラの陰影に富んだ音色を堪能。第3曲の「温室で」、なぜ愛の歌に温室が出てくるのか、というのはプログラムノートの広瀬大介さんの解説を読むとよくわかるわけだが、ここでいう温室とはトマトやホウレン草を育てるビニールハウスではなく、南国の植物を生育させるオランジェリーのほう。ということは、なじみ深い場所でいえば、新宿御苑が誇る大温室がそれに近いのか? 東京のど真ん中に植えられた約2700種もの熱帯・亜熱帯の植物たちに思いを馳せる。
●ブルックナーの交響曲第2番というと、かつてムーティ指揮ウィーン・フィルの来日公演で聴いて、「こんなにすばらしい曲があったのか!」と驚いたのだが、たぶん、そちらとは版が違っていて、初稿。第2楽章がスケルツォで第3楽章が緩徐楽章になっている。初稿だからなのかな、できあがったブルックナーと粗削りのブルックナーが渾然一体となっていて、どこか「推敲前」みたいな印象を受ける。ルイージとN響の演奏はしなやかな流れを持った歌うブルックナー。終楽章は熱い。コーダの妖しいダサカッコよさは尋常ではない。ここを聴くと、オジサンたちがスキップしながら輪になって踊ってる光景を連想するのはワタシだけなのか。

December 4, 2022

アルゼンチンvsオーストラリア アジア勢の健闘はどこまで? ワールドカップ2022 ラウンド16

●ワールドカップ2022カタール大会は決勝トーナメントに入った。開催国カタールがまったくいいところなく敗退してしまったが(アジア・カップではあんなに強かったのに)、アジアからはオーストラリア、日本、韓国の3チームがグループステージを勝ち抜いた。アジア勢3チームは史上初。敗退したサウジとイランもそれぞれアルゼンチン、ウェールズに勝利しており、これまでのようにアジアは「やられ役」にはなっていない。特に韓国の第3戦はポルトガルに勝利した上で、もうひとつの試合が理想的な結果に終わってくれて大逆転での決勝トーナメント進出で、これにはびっくり。もちろん最大の驚きはニッポンがドイツとスペインに勝って1位通過したことだが。あと、3戦全勝が1チームもない。
●16強の内訳は欧州8、アジア3、南米2、アフリカ2、北中米1。アフリカも健闘している一方、南米はブラジル、アルゼンチンのみ。北中米1はいつものメキシコではなくアメリカだ。
アルゼンチン●で、ここからは一発勝負。ラウンド16のアルゼンチンvsオーストラリア戦は、予想通り、アルゼンチンが攻めてオーストラリアがブロックを敷いて守る展開。オーストラリアはファジアーノ岡山のフォワード、ミッチェル・デュークがこの日も先発。J2の選手がワールドカップに出場し、さらに決勝トーナメントで戦っているという未来がここに。ディフェンスのミロシュ・デゲネクも元マリノスの選手。アルゼンチンはやはり35歳になったメッシが中心のチーム。メッシはおおむね歩いている。代わりに他の選手が走る。アルゼンチンはそういうサッカー。前半35分、縦パスを受けたオタメンディがワンタッチで落としたところにメッシが左足を振り抜いて先制ゴール。オーストラリアは前半をこの1失点で凌いだ。
●後半、オーストラリアは前線へプレスをかけ、前に出る。ところが後半12分、前線へのプレスを実らせたのはアルゼンチンのほう。メッシは歩いていても他の選手が走るのだ。デパウルがディフェンス・ラインにプレスをかけ、オーストラリアのキーパー、ライアンがバックパスの処理をわずかに誤って前にボールが流れたところをアルバレスが奪って、ゴールに流し込んで2点目。ふたりの連動したプレスから相手のミスを誘った。悔やまれるのはオーストラリアのキーパーのライアンで、バックパスをそのままダイレクトで蹴り返せばなんでもなかったところを、甘いトラップを刈られてしまった。
●後半32分、オーストラリアはグッドウィンの思い切り打ったシュートが相手ディフェンスにリフレクトしてゴールに入って1点を返す。ここからパワープレイを交えながらオープンな攻め合いになったが、今のオーストラリアは一昔前と違って案外とパワープレイがうまくない。むしろときどき爆発的に躍動するメッシが脅威を与えていた。終了直前にゴール前の混戦からクオルにビッグチャンスが巡ってきたがこれを決めきれず、アルゼンチンが2対1で勝利。アジア勢にはここからの壁が高い。

アルゼンチン 2-1 オーストラリア
娯楽度 ★★★
伝説度 ★

December 2, 2022

ニッポンvsスペイン 伝説はくりかえす、コピペのように ワールドカップ2022 グループE

ニッポン!●朝4時からの試合を5時半から追っかけ再生で観戦した。グループEはすべてのチームに決勝トーナメント進出のチャンスがある状況で、ニッポン対スペイン戦とコスタリカ対ドイツが同時キックオフ。コスタリカ戦で敗れて意気消沈したが、ここでニッポンとコスタリカが勝利すればそろって勝ち抜け、スペインとドイツが敗退するわけで、ひそかにそんな事態を夢見ていた。なにせ大会前はだれもがグループEは2強2弱の無風区と決めつけていたのだから。
●試合は奇妙なくらいドイツ戦と似た経緯をたどった。ただしニッポンは最初からセンターバックを3枚にして3バック、いや、もう完全に5バック。左の長友はともかく、右のウィングバックと思われた伊東までディフェンスラインに吸収されている。中盤のキープレーヤー遠藤はベンチ、冨安もベンチで、谷口がセンターバックの一員として大会初出場。GK:権田-DF:伊東、板倉、吉田、谷口、長友(→三笘)-MF:田中碧(→遠藤)、守田-久保(→堂安)、鎌田(→冨安)-FW:前田大然(→浅野)。
●前半は一方的なスペインペース。開始早々に高い位置で奪って伊東がシュートを打つなどチャンスはあったが、以降はひたすら耐える展開。前半11分にスペインはモラタのヘディングシュートであっさり先制。完全に右サイドバックの位置まで下がる伊東。前田はプレスをかけるだけで疲弊する。センターバック3人が3人とも前半のうちにイエローカードをもらう厳しい展開。スペインの攻撃を凌いで、ようやくボールを奪っても、それが次につながらない。この相手にはもう一段階、技術に精度がないとボールが持てない。前半だけで3失点くらいしてもおかしくない内容で、ドイツ戦と同様、1失点で済んだのは運もあったと思う。
●後半、森保監督は長友を三笘に、久保を堂安に交代。前線からのプレスがはまり、後半開始早々の3分、右サイドから中に入った堂安の豪快なシュートが相手キーパー、シモンの手をはじいて同点ゴール。得意の形。これもドイツ戦の再現のよう。さらに後半6分、堂安のパスにファーサイドでゴールラインぎりぎりで追いついた三笘が折り返し、中央に走り込んだ田中碧が押し込んで逆転!……なのだが、これはゴールラインを割っていたように見えたので、VARでゴールが取り消されるはずだと思った。どう見てもラインを割っていたように見えたので、こちらも喜ぶことなく冷静に待っていたら、な、なんと、VARの結果ゴールが認められた! ええっ。が、これはもちろんビデオで確認したのだから判定は正しいのだ。肉眼ではラインを割っているように見えても、上から見ればボールの端がわずかながらラインに残っていたっぽい。ビデオ判定がなければ認めてもらえなさそうなゴールで、これはテクノロジーの恩恵。
●さすがのスペインも逆転されると前半がウソのように動きが悪くなり、しばらく一進一退の時間帯が続く。スペインは選手交代で攻勢を強め、ニッポンは遠藤、冨安といった守備のキープレーヤーを投入。終盤はふたたび一方的にスペインが攻める展開になったが、ニッポンは権田の好セーブもあって守り切った。まさかの逆転勝利、ドイツ戦の再現。ニッポンはグループ1位で決勝トーナメント進出を決めた。ニッポンのボール保持率は17.7%。これはワールドカップ史上、もっとも低い保持率での勝利なのだとか。かねてよりボールを保持するスタイルを「自分たちのサッカー」に掲げていたチームが、保持しないことの有利さを大舞台で証明するとは。
●コスタリカ対ドイツ戦も、前半終了時にはドイツがリードしていたが、後半にコスタリカが逆転する時間帯があった。そのわずかな時間、ニッポンとコスタリカが進出、スペインとドイツが敗退するという順位が実現していたのだが、ドイツが追い付き、さらに逆転してしまった。ドイツがしぶとく勝ってくれたおかげで、スペインは負けても2位通過できるという状況だったので(しかも2位通過のほうが後の対戦相手が楽)、最後の最後はスペインも無理をする必要はなかった。もっとも、ピッチ上の選手たちはコスタリカが逆転したことも、ドイツが再度逆転したことも知らなかったかも。逆にドイツの選手たちは、まさかニッポンがスペインに勝つとは思っていなかっただろうから、勝利したのに敗退が決まったことをすぐには受け入れられなかったかもしれない。

ニッポン 2-1 スペイン
娯楽度 ★★★★★
伝説度 ★★★★★

December 1, 2022

ロナルド・ブラウティハムのベートーヴェン&シューベルト

ロナルド・ブラウティハム トッパンホール公演
●ワールドカップはグループステージ第3戦で一日4試合も開催されているのだが、ハイシーズンだけに聴きたい演奏会もいっぱいある。やっぱり秋にワールドカップを開催するのはおかしいんじゃね? 真夏のカタールでやればよかったじゃん。灼熱の砂漠で、みんな水筒を背負って随時水分補給しながら20分ハーフで決着をつける草サッカーみたいなワールドカップでも、ワタシは許せたよ、この時期にやるくらいだったら。FIFAよ、考え直せ、今からでも遅くない!(遅いです)。
●というわけで、16日はトッパンホールでロナルド・ブラウティハムのフォルテピアノを聴いた。プログラムは前半がベートーヴェンの「エロイカの主題による変奏曲とフーガ」とピアノ・ソナタ第23番「熱情」、後半がシューベルトのピアノ・ソナタ第21番。ステージ上には2台のフォルテピアノが置かれており、ベートーヴェンではポール・マクナルティ(2002年作)によるアントン・ワルター・モデル(1800年頃)を、シューベルトではハン・ゲオルク・グレーバーのオリジナル(ウィーン式/1820年製)を使用。
●こうして当時の楽器で聴くと、演奏行為が楽器製作というクラフトマンシップと不可分な関係にあると改めて感じる。特にベートーヴェンはある種の超越性にとりつかれているかのようで、与えられた環境の境界条件を探ろうとする音楽を書いている。音域やダイナミクス、形式など、矢印がいつも外側に向いている感じだ。もしベートーヴェンがモダンピアノを手にしていたら、きっとモダンピアノの限界に挑むような作品を書いていたにちがいない。それに比べると、後半に聴くシューベルトはずっと矢印が内向き。しかし、それによって音楽が小さくなるかといえばそうはならず、むしろこの最後のソナタともなると豊穣なるインナースペースへの探索によってベートーヴェン以上のスケールの大きな音楽を作り出している。
●ピリオド奏法はあり得ても、ピリオド聴法は困難だとよく感じる。ギトギトのロマン主義に侵された脳は、ついつい「えっ、そこはもっとタメないの」とか条件反射的に思ってしまったり。いや、タメなくていいんすけど。一種の認知的不協和というべきか。アンコールはシューベルトの「楽興の時」第3番、ベートーヴェンの「エリーゼのために」。
●ところで、明日の午前4時からニッポン対スペイン戦が始まるわけで、いったいこれはどうしたものか。ライブで観てしまうとその日の予定がガタガタになってしまいそうだが、かといって普通に起床してから録画を観るなどと悠長なことを考えていると、光速で結果バレしそうである。そこで、もろもろバランスを考慮して、まだ試合が終わっていない午前5時半から追っかけ再生で観る作戦がよいのではないかと思いついた。どうかな。

December 1, 2022

イランvsアメリカ クラシックvsモダン ワールドカップ2022 グループB

イラン●ふう。今日は純粋にサッカーの話題だ。今回のグループステージでも必見のカード、イラン対アメリカ。もともと両国の関係から注目度の高い試合だが、両チームとも勝てばグループステージ突破が決まるという熱い状況での対戦になった。地の利を生かしてイランは観客席を味方につけるが、案外とアメリカのサポーターも多いのが驚き。ワールドカップならではのひりひりするようなタフなゲームになった。主審も簡単には笛を吹かないジャッジ。見ごたえのある試合に。
●両チームのカラーは対照的。イランはケイロス監督が復帰したのがはたしてよかったのかどうか……。堅守速攻のクラシカルなスタイル。開始早々こそ観客席に後押しされて攻め合いになったが、すぐに守りの姿勢に。一方、アメリカはコレクティブなモダン・サッカー。全員が欧州のクラブに所属し、ビッグクラブの選手も何人かいるうえに、全体が若く、スピードも運動量もある。前回対戦したときに感じたことだが、わりとニッポンと似ている(そのときはこちらが一枚上手とは思ったが)。イランは守ってボールを奪っても、周囲の選手のサポートが少なく、攻撃がつながらない。トップのアズムンの運動量があまりに乏しい。次第にアメリカの攻撃に耐えられなくなり、前半38分、プリシッチに決められて失点。
●後半頭からイランはアズムンを下げてサマン・ゴドスを投入。最初からこうすればよかったのに。タレミが核となって攻める。アメリカは後半半ばから5バックにして守り切る姿勢にチェンジ。高さとパワーで勝るイランはロングボールを用いながら、猛攻を繰り出す。ただ、これが拙攻気味で、プレイが雑なのと、選手の連動性が足りないために、決定機が少ない。気になったのは終盤になるとイランが主審のほうを向いてプレイすること。この状況で不要なアピールは損なのに。結局、アメリカが逃げ切った。イランはアジアではめっぽう強い反面、ワールドカップは6度目の挑戦にして一度も決勝トーナメントに進出できていない。中東中心の「アジアの戦い」に最適化しすぎていて、FIFAの「世界の戦い」になると勝手が違うのかな……と思わなくもない。ともあれ、アジアの好敵手イランが勝利できなかったのは本当に残念。アジア勢ではいちばん可能性が高いと期待していたのだが。

イラン 0-1 アメリカ
娯楽度 ★★★
伝説度 ★

November 30, 2022

樫本大進、赤坂智子、ユリアン・シュテッケル、藤田真央の室内楽

●今朝からワールドカップはグループリーグの第3戦に突入。この第3戦が大会でいちばんおもしろいと思うんすよね。でも一日に4試合ずつやるので、とても全部は見られない。見たい、でも見られない。仕事もある、コンサートもある。今は夏じゃない。だからオイルマネーに屈してワールドカップを秋開催に決めたのはだれなんだ!(←毎日言ってる)。
●というわけで、28日はサントリーホールで「スーパーソリスト達による秋の特別コンサートVol.1 室内楽の夕べ」。なんと、樫本大進のヴァイオリン、赤坂智子のヴィオラ、ユリアン・シュテッケルのチェロ、藤田真央のピアノというゴージャスなメンバーによる室内楽。全席完売、客席は女性が大半。これは真央効果と大進効果の相乗作用なのか? プログラムはモーツァルトのピアノ四重奏曲第1番ト短調、メンデルスゾーンのピアノ三重奏曲第1番ニ短調、ブラームスのピアノ四重奏曲第1番ト短調。オール短調、オール「第1番」プロ。前半のモーツァルトとメンデルスゾーンは親密な音の対話で、お互いのバランスが保たれた調和のとれた響き。特にモーツァルトでの藤田真央のピアノが柔らかくしなやか。遊び心もある。後半のブラームスは一転してシンフォニックな音楽に。シェーンベルクがこの曲をオーケストレーションしたくなるのも納得の迫力。やや長めのプログラムだったのでアンコールはなし。藤田真央と樫本大進が並んだときに漂う息子とお父さん感が麗しい。
●それで、ワールドカップの話題も少しフォローしておくと、ブラジル対スイス戦があった。スイスは従来よりあまりブラジルを苦にしておらず、この日も拮抗した試合内容になった。ブラジルらしい華やかな攻撃がほとんど見られず、引分けかと思いきや、後半38分にカゼミーロがゴールを決めて、これが決勝点。結果的に負けたとはいえ、スイスは相手を過度にリスペクトしていない。「ランクで決まるなら試合はいらない」は岡田武史元監督の名言だが、日本のいるグループEだって、次戦でニッポンとコスタリカが勝利すればそろって勝ち抜けることになり、スペインとドイツは敗退が決まるのだ。今大会、第2戦が終わった段階で「2強2弱」に分かれたグループはなく、どこが勝ち抜けるかわからない混戦になっている。
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●宣伝を。UCカードのゴールド会員向け会員誌「てんとう虫」12月号の特集「今を聴くクラシック」に寄稿。注目の日本人若手奏者たちの紹介記事と反田恭平さんのインタビューを担当。同誌は同じ内容でセゾンカードのゴールド会員向け会員誌「express」としても発行されているので、そちらでも読むことができる。

November 29, 2022

アンドリス・ネルソンス指揮サイトウ・キネン・オーケストラ ~ セイジ・オザワ 松本フェスティバル30周年記念特別公演

セイジ・オザワ 松本フェスティバル30周年記念特別公演
●うーむ、やっぱり11月にワールドカップは無理があるのでは(←まだ言ってる)。コンサートのハイシーズンとすっかり重なっており、そもそもカタールで開催したことが「無理が通れば道理引っ込む」なのだが、その話はともかく、先週末は長野まで行ってきた。セイジ・オザワ松本フェスティバル30周年記念特別公演として、アンドリス・ネルソンス指揮サイトウ・キネン・オーケストラの公演が松本と長野で開かれており、日帰りで行ける長野のホクト文化ホールに行くことに。もともと行く予定ではなかったのだが、直前に急遽決めた。
●ホクト文化ホールは長野駅から徒歩で行けるのがいい。長野駅に来るのは3年前に長野UスタジアムでAC長野パルセイロの試合を観戦して以来。駅も美しいし、街も美しい。ホールの内部が松本のキッセイ文化ホールとよく似ていて、少々奇妙な既視感を抱くが、昭和の多目的ホールは全国どこでも似たようなものか。しかし音響は案外と良好で、不満を感じず。そして、ホクトといえばキノコの会社という認識であり、日頃からエリンギやブナシメジのパッケージでおなじみ感あり。ホクトのキノコ、おいしい。
●で、プログラムはマーラーの交響曲第9番、一曲のみ。ネルソンスは先日のボストン交響楽団来日公演からそのまま日本に残っていたのだろうか。オーケストラのメンバーは強力だ。もちろんいつもすごいメンバーなのだが、ホルンにバボラーク、トランペットにタルケヴィがいる。超強力2トップ。バボラークをオーケストラの中で聴くのはいつ以来だろうか。管楽器の名人芸と濃密な弦楽器による、かつて聴いたことのないハイクオリティのマーラー9を堪能。特に印象的だったのだが第2楽章。鋭く突き刺すようなアクセントを伴ったアグレッシブな音楽で、これが素朴なレントラー舞曲ではなくショスタコーヴィチ的なアイロニーやグロテスクさを帯びた音楽であることを実感する。第3楽章は輝かしくスリリング、第4楽章は情感豊か。演奏中は客席がやや落ち着かない雰囲気に思えたのだが、曲の終わりは完全な沈黙が長く続いて、しっかりと余韻を味わうことができた。

長野県立美術館
●せっかく長野まで来たので、以前から気になっていた長野県立美術館にも立ち寄った。善光寺に隣接する城山公園内に位置し、2021年にリニューアルオープン。「自然と一体にある美術館」のキャッチフレーズ通り、広々として開放的な雰囲気の快適空間。遠くに山が見えるのも羨望しかなく、都内では決してまねのできない心地よさ。時間の都合もあり企画展はあきらめ、コレクション展と東山魁夷館を鑑賞。見ごたえ十分。
長野県立美術館
●撮影は不可だったのだが、唯一OKだったのが「アートラボ2022 第Ⅲ期 荒木優光 ダンスしないか?」。音も含めた作品なのだが、展示室には古いレコードやオーディオ装置、家具などが配置されていて、ノスタルジーを刺激する。リアルに懐かしい光景で、モダンな美術館の一室にこれがあると異空間にワープした感が半端ではない。
荒木優光 ダンスしないか?

●この一年で長野、松本、諏訪となんども長野県内に足を運んだが、文化と自然の両面に恵まれた土地だなと感じる。なにしろAC長野パルセイロと松本山雅のそれぞれに最高のスタジアムがあるのがすごい。冬は寒そうだけど。
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●宣伝を。「東京・春・音楽祭」の短期集中連載コラム、「ヴヴヴのヴェルディ」第2回「熾烈!ヴェルディvsヴェルディ」を公開中。どうぞ。

November 27, 2022

ニッポンvsコスタリカ さらば伝説……? ワールドカップ2022 グループE

ニッポン!●あーあ、サッカーって、こういうスポーツだったよなあ……(嘆息)。試合前はなんとなく楽観的になっていた、すなわち、ドイツ戦の逆転勝利でテンションMAXのニッポンがコスタリカを一蹴する。でも、案外、熱い試合の後は0対0のドローなんてこともあるかも。なんて思っていたら、0対1で負けてしまった!コスタリカがたった一本打った枠内シュート、ほぼ唯一のチャンスでゴールが決まり、試合が決まる。サッカーでこういう試合は無数にあるものだが、ここでそれが来るのか。
●まず先発だが、森保監督はメンバー5人を入れ替えてきた。一般的にいえば、かなり大胆なターンオーバーだが、ワタシはほぼ全員入れ替えるんじゃないかと予想していたので、むしろおとなしいと思ったほど。ただ、トップの上田、左の相馬はかなり意外な起用。ここで南野が先発しないのはよほど本調子に遠いのか。浅野、三苫も先発確定かと思いきやベンチ。GK:権田-DF:山根(→三笘)、板倉、吉田、長友(→伊藤洋輝)-MF:遠藤、守田-堂安(→伊東)、鎌田、相馬(→南野)-FW:上田(→浅野)。酒井と冨安は負傷でベンチ外。
●前半の冒頭だけは勢いよくニッポンが攻め込み、期待を抱かせたものの、その後は見せ場の少ない展開に。お互いに慎重で、前線からのプレスも弱い。前半、ニッポンにシュートらしいシュートはなかったのでは。コスタリカは5バック。前半途中からニッポンは3バックに変更。ドイツ戦ではハマった策だが、これはあまり功を奏したようには見えず。後ろでは容易にボールを回せるのだが、前に収まりどころがなく、上田のポストがまるで機能しない。
●後半の頭から、上田を浅野に、長友を伊藤に交代。その後、山根を三笘に代えて攻撃力を高めるのだが、なかなか三笘が高い位置で前を向いてボールをもらえない。前にスペースが欲しい三笘と、チャンスがあれば前に出たい左センターバック伊藤の組合せがよろしくない。それでも終盤に三笘が2度、ドリブルで相手を抜き去ってペナルティエリア奥深くまで侵入する得意の形を作った。あれを2回やって2回ともコピーのように成功してしまうというのもすごい話だが、どちらも中で決められなかったのにはがっかり。後半、ニッポンのチャンスはかなり増えたが、途中からニッポンの守備が少し軽くなった時間帯があり、そこでコスタリカは唯一のチャンスを決めてしまった。あと、ニッポンはファウルで止める場面がやたらと多いのは気になった。
●サッカーの難しいところは、終わった後でなにを言っても結果論でしかないということ。ドイツ戦で森保監督が後半から3バックに変更し、守りが弱くなるのを承知で次々と攻撃の選手を入れたのは名采配と称えられたが、同じことを10回やって5回勝てるかといえば、たぶん勝てない。浅野のあのトラップとシュートはまれにしか発動しないし、ドイツはあんなにシュートを外さない。コスタリカ戦の森保采配は意味不明に思えるが、同じことを10回やって5回勝てるかと問われると、まあ勝てるんじゃないかという気はする。コスタリカの勝利への道筋はすごく狭かったのはたしか。イランのケイロス監督は初戦で臆病な采配をしてイングランド相手に大敗して叩かれたが、第2戦でウェールズ相手に完勝すると胴上げされてヒーローになっていた。昨日の愚か者は今日の英雄。そう思ったものだが、森保監督はその逆でこれからずいぶん批判されるのだろう。足りなかったものを指摘するのは容易だし、ミスももちろんたくさんあった。サッカーはミスのスポーツ。両チームがミスをしなければすべての試合は0対0で終わると言ったのは誰だったか。
●アジアの健闘ぶりが光っているように見えた大会序盤だが、ニッポンはこれでだいぶ決勝トーナメント進出が厳しくなった。少なくともスペイン戦で勝点が必要だと思うが、細かい条件はこの後のスペイン対ドイツ戦が終わってから見ればいいのか。ここまでのアジア勢を見てみると、サウジはアルゼンチンに勝ち、ポーランドに敗れた。オーストラリアはフランスに敗れ、チュニジアに勝った。イランはイングランドに敗れ、ウェールズに勝った。韓国はウルグアイに引分け。カタールは連敗。まあ、普段の大会でアジア勢が勝つ試合はとても少ないので、ここまで大健闘しているのはたしか。問題は決勝トーナメントに何チームが進出できるか。

ニッポン 0-1 コスタリカ
娯楽度 ★★
伝説度 ★★

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飯尾洋一(Yoichi Iio)

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