August 8, 2022

ダン・エッティンガー指揮東京フィルの「シェエラザード」他

東京オペラシティ
●5日は東京オペラシティで東京フィル「平日の午後のコンサート」。指揮はダン・エッティンガー、ソリストに服部百音。平日の午後2時開演の人気シリーズで、チケットは早々に完売。トーク入りのコンサートながら内容はがっつりで、ワーグナーの「ニュルンベルクのマイスタージンガー」前奏曲、ワックスマンの「カルメン・ファンタジー」(服部百音)、リムスキー=コルサコフの交響組曲「シェエラザード」。ちなみにソリストの曲目違いでフェスタサマーミューザでも同じ出演者による公演があった。
●「マイスタージンガー」は金管楽器がかなり強奏するたくましいワーグナー。この傾向は「シェエラザード」でも同様で、剛健で豪快なサウンド。「カルメン・ファンタジー」では服部百音がキレッキレの独奏を披露。技巧もさることながら、集中力と気迫、攻めの姿勢が魅力。アンコールにパガニーニの「無窮動」。聴いているだけでも疲れてしまいそうな細かな動きが連続する曲だが、これも鮮やか。「シェエラザード」は華麗な色彩感よりも雄大豪壮なドラマを前面に押し出した演奏で、たっぷりとしたタメを入れるエッティンガー節が炸裂。おとぎ話的な曲の性格にも合っている。もうこれでお腹いっぱいだが、アンコールでロッシーニ「ウィリアム・テル」序曲の「スイス軍の行進」。客席は定期公演とは違った雰囲気だが、お客さんが本当に喜んでいる様子が伝わってくる。
●この「午後のコンサート」の売りは、演奏の合間に差しはさまれるトーク。高名な音楽一家である服部家の家庭の日常を語る百音さんのトークはかなり可笑しい。エッティンガーは英語で話す。で、綿谷エリナさんが司会兼通訳として入っていたのだが、通訳がスマートで感心してしまった。こういうステージだと、片手に台本、片手にマイクだからメモが取れないんすよね。これってけっこうなプレッシャーだと想像するんだけど(特に舞台上だと)、そこをサラッと自然にこなしていたのがすごい。

August 5, 2022

アラン・ギルバート指揮東京都交響楽団 フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2022 [配信]

フェスタサマーミューザKAWASAKI、昨日に続いて配信でアラン・ギルバート指揮都響。2日に開催された公演。プログラムはプロコフィエフの「古典交響曲」、ビゼーの「アルルの女」抜粋、ラフマニノフの「交響的舞曲」。毎回このコンビに感じることだけど、ポジティブなエネルギーが充満していて、サウンドは澄明。「古典交響曲」はキレがあって軽快、「アルルの女」は第1組曲と第2組曲から選んだ5曲で、特に第1組曲「アダージェット」の深くロマンティックな表現が印象的。後半、ラフマニノフの「交響的舞曲」は昨日ラシュコフスキー&小川典子の2台ピアノ版を聴いたばかりだが、精緻で輝かしいサウンドに圧倒される。やはり傑作。この曲、開演前のトークでもアラン・ギルバートが話していたけど、第1楽章がNon Allegroなんすよね。これが謎。作曲者の意図はどこにあったのかわからないんだけど、だれの演奏を聴いても普通にアレグロ楽章だと感じてしまう。あと、このトークでギルバートは英語と日本語を交えながら話していて(通訳は入っていた)、かなり日本語ができるのだということを知る。3曲とも指揮棒なし。
●ビゼーの「アルルの女」とラフマニノフの「交響的舞曲」、共通項はサクソフォンが入ること。住谷美帆さんが好演。あと、フルートの首席にN響の神田寛明さん。この公演に限らず、最近、オーケストラの公演で他団からのゲストプレーヤーの姿をよく見かける。
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●お知らせを。小学館のファッション誌 Precious 9月号にふたたび寄稿。Precious ChoiceのMusicの1ページで、これから東京で上演されるオペラ3選をご紹介している。この雑誌、なにからなにまで超絶ラグジュアリーで、「へー、これステキだな」と思ったブラウスが15万4千円、パンツが24万2千円といった調子で、ワタシの知らない別世界がくりひろげられている。オールカラーで印刷も紙も超上質、厚みもあって最盛期の「レコ芸」より重いほど。なのに雑誌そのものはたったの990円! 雑誌じゃなかったら3000円はするだろうという豪華さ。

August 4, 2022

イリヤ・ラシュコフスキー&小川典子 フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2022 [配信]

●今年もフェスタサマーミューザKAWASAKIはオンライン配信を実施中。アーカイブ配信もあるので、都合のつかなかった公演を後日聴けるのがありがたい。31日に開かれたイリヤ・ラシュコフスキーと小川典子のピアノによる「超絶技巧のロシアン・ピアニズム」を観る。プログラムはボロディン「だったん人の踊り」、ストラヴィンスキー「春の祭典」、ラフマニノフ「交響的舞曲」。すべて踊りの音楽であり、オーケストラの有名曲でもある。
●3曲ともにエキサイティングだったのだが、圧巻は「春の祭典」。当初、2台ピアノで演奏する予定だったところ、リハーサルの段階でより緊密なコミュニケーションをとれる連弾に変更されたのだとか。配信なので画も音も「近い」ということもあってか、これがすさまじい迫力。お互いの手の交差も頻繁で、猛スピードで難路を駆け抜けるレージングカーを見ているようなハラハラドキドキの連続。音楽的にも視覚的にもきわめてスリリング。マイクは譜めくりのペラリという音も逃さず、臨場感も尋常ではない。本来のオーケストラ版のダイナミックレンジや色彩感に代わって、リズムの弾力性や造形のシャープさ、小回りが利くゆえの敏捷性、そして民謡由来の歌心が前面に出てくる。
●ストラヴィンスキーに比べればラフマニノフはぐっとエンタテインメント性の高い音楽で、強靭かつゴージャスな響きを堪能。ワイヤーフレームで描画された骨格の見えるラフマニノフ。2台ピアノでも十分にカラフルな音楽であることを実感する。輝かしさ、躍動感はオーケストラ版の印象となにも変わらず。ボリューム感のある熱いプログラムだった。アンコールにラフマニノフの2台ピアノのための組曲第1番より第3楽章「涙」。
●配信ならではのオマケがあって、舞台袖のバックステージモニターが出演者の素顔をとらえているのがおもしろかった。ピアニストふたりの回だったので、お互いのやりとりがある分、生々しい感じ。舞台に出た瞬間にキュッとスイッチが切り替わる様子が伝わってくる。

August 3, 2022

夏の諏訪湖

諏訪湖 湖上
●早めの夏休みをとって諏訪湖へ。標高が少し高いので、夏場はだいたい東京より気温が4度ほど低い。つまり都内が33度で到底外に出る気がしないときでも、諏訪なら29度で快適に散歩を楽しめる、と狙ったんである。が、想定以上に気温が上がって実際には都内が36度で諏訪が32度くらいの感じ。まあ、それでも都内よりはずっと過ごしやすいのだが。遊覧船に乗ったり、湖の周りを散策したり、花火を見たりと、のんびりすごす。人口5万人の街。広々としていて、どこに行っても混んでいない。
諏訪湖
●観光案内等から、この街には「モデルとなった例の場所」があると知る。どうやらアニメ映画「君の名は。」の糸守湖のモデルとなったのが諏訪湖で、湖を一望できる立石公園がその筋で聖地となっているらしい。もうひとつ、湖以外でこの街で人気っぽいのが諏訪大社の四社めぐり。パワースポットなのか。観光案内所でどういう順番で巡るのがよいかを尋ねている人を見かけた。が、ワタシはどちらにも行かず、すわっこランドに入り浸っていたのであった。基本、地元民の憩いの場だと思うが、ここのプールはすごい。室内と屋外にプールがあるんだけど、室内プールはガラス越しに諏訪湖レイクビュー、屋外50mプールは雄大なマウンテンビューで、開放感が尋常じゃない。施設内で食事もとれるし、ジムも温泉もある。ぐうたらできる。

August 2, 2022

「夢幻諸島から」(クリストファー・プリースト著/早川書房)

●夏は名作を読む季節、読書感想文の季節。とはいえ、今年はあまり重いものを読む気になれず、なにか空想的な旅の気分を味わえる本はないかなと思って手にしたのが、クリストファー・プリーストの「夢幻諸島から」(早川書房)。夢幻諸島と呼ばれるおびただしい数の島々の観光ガイドブックという体裁をとっている。これがびっくりするほどのおもしろさ。この世界には「北大陸」と「南大陸」があり、諸国は軍事的な緊張状態にあるのだが、そのはざまで夢幻諸島は条約により中立を保っている。島々にはそれぞれ固有の文化がある。小説上の仕掛けとして、「時間勾配によって生じる歪み」のため正確な地図が作成できないという設定があり、島から島への移動は可能ではあるけど容易ではない。このあたりの旅のハードルを高くする設定が絶妙で、現在のウイルス禍と微妙に重なり合っている。そして想像力を刺激されて「さて、自分はどの島なら住んでみたいと思えるだろうか」とつい考えてしまう。
●で、最初は島々のガイドブックだと思って読み進めると、独立した短篇小説みたいな章がいくつも出てきて、この世界の文化や芸術に重要な役割を果たしている何人かの人物がくりかえし登場する。実質的に連作短篇集になっているのだ。読み進めると思わぬところで章と章がつながっていて、この世界にあるいくつかの興味深いストーリーが徐々に見えてくる。これが秀逸。
●特におもしろかったのが、あるパントマイム芸人の舞台上での事故を扱った物語で、この部分はミステリー風味。あと「大オーブラックあるいはオーブラック群島」の章。無人島だと思って上陸したらそこは最凶の昆虫が棲息している土地だったという怖すぎる話。忘れがたいのは「シーヴル 死せる塔」の章。大学を出て故郷の島に帰った青年が、かつての同級生の女性と再会する。ふたりはお互いの距離を縮め、冒険をともにするが、最後は意外なところに着地する。ノーマルではないけど一種のハッピーエンドだと思った。

August 1, 2022

「響の森」Vol.50「傑出のブラームス」 ~ 秋山和慶指揮都響、成田達輝、笹沼樹

●29日は東京文化会館で「響の森」Vol.50「傑出のブラームス」。秋山和慶指揮都響とヴァイオリンの成田達輝、チェロの笹沼樹が出演。プログラムはブラームスのヴァイオリンとチェロのための二重協奏曲、交響曲第1番。二重協奏曲は冒頭から純度の高いシャープなサウンド。この曲ならではの漆黒のロマンティシズムに満たされた密度の濃いブラームス。交響曲と協奏曲と室内楽が一体となったような曲だが、そのすべての要素を楽しむことができた。成田達輝と笹沼樹のソロは鮮烈でエネルギッシュ。本当に息の合ったふたりで……と思ってハタと気づいたが、両人ともタツキじゃないの。これってドッペルタツキのドッペルコンチェルトってことなのか! ソリスト・アンコールがあって、ふたりでなにを弾くのかと思ったら、ヘンデル~ハルヴォルセンの「パッサカリア」。カッコいい。後半の交響曲第1番は名匠による堂々たるブラームス。マグマのような熱さと格調高さが両立している。充実の一夜。
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●お知らせ。ONTOMOの連載「神話と音楽Who's Who」が一段落して、新たに「『心の主役』を探せ! オペラ・キャラ別共感度ランキング」という連載がスタートしている。よろしければご笑覧ください。ONTOMOではもうひとつ、イラストレーターの五月女ケイ子さんの「ゆるクラ」でもお手伝いさせていただいている。五月女さんのイラストが最高に味わい深い。こちらもぜひ。

July 29, 2022

ドコモの無料のWi-Fiサービス「d Wi-Fi」

●最近はほとんど公衆Wi-Fiサービスの必要性を感じていなかったが、ドコモの無料Wi-Fiサービス「d Wi-Fi」の評判がよいのでを使ってみることにした。このサービス、ドコモ回線を使っていなくても、だれでも無料で使える上に、高速で快適という太っ腹なサービス。ワタシのケータイの回線はIIJmioなのだが(「東京・春・音楽祭」やベルリン・フィルのストリーミングをサポートしてくれている以上、IIJ以外の選択肢はない)、まったく問題なく使えている。ただし、最初の設定は「dアカウント」の発行や「dポイントクラブ」の登録など、やや手間がかかる。ドコモ回線以外のユーザーの場合、スマホに「dアカウント設定」アプリをインストールすることで、「d Wi-Fi」エリアに入ると勝手に自動接続してくれるようになる。ファミリーマートとか郵便局とか駅の近くでつながっているっぽい。あとはドトールコーヒーとかマクドナルド等々。なにか劇的に便利になるわけではないが、しばらく試してみよう。
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●久々に新型コロナウイルスの都内最新感染動向を見ておく。ついに新規陽性者数が一日4万人を超えた。モニタリング項目(1)の7日間移動平均を見ると、7月上旬から急カーブで増えている。当ブログを遡ってみたら、一日に3千人を超えたと慄いている記述が見つかったのだが、それがいまや4万人だ。数字に表れない軽症者も大勢いるはず。ワクチン接種回数は60歳未満は3回、12歳未満は2回、60歳以上は現在4回目という状況。3回目から半年近く経った今、ワクチンによる入院予防効果は依然有効にせよ、発症予防効果は期待できなさそう(参照:厚労省Q&A)。周囲を見ても身近なところに感染する人が次々と出ており、普通に社会生活を営んでいればいつだれが感染してもおかしくないという様相になってきた。灼熱のマスク姿は今年も続く。

July 28, 2022

ニッポンvs韓国代表 EAFF E-1サッカー選手権

ニッポン!●EAFF E-1サッカー選手権の第3戦はニッポンvs韓国代表。ここまで2連勝の韓国は勝つか引き分けで優勝が決まるという状況。一方、中国戦で引き分けた日本は勝てば優勝。森保監督は予想通りのターンオーバーで、第1戦香港戦でのマリノス色の強いチームをベースにした布陣。ただしキーパーは谷晃生。3人呼んだキーパーを一試合ずつ経験させるといういつもの律義さ。
●3試合目にしてやっと強い相手と戦うことができたわけだが、相手の韓国側にしてもニッポンと似たような状況でこの大会に臨んでいることがよくわかる。欧州で活躍する選手抜きで組まれたチームは、お互いにひとつひとつのプレイの精度を欠き、迫力不足。互角の勝負が続いてはいたが、後半4分、藤田譲瑠チマが右からファーサイドに浮き球であげたボールに相馬勇紀が頭で合わせて、ニッポンが先制。香港戦でも感じたが、国内組のなかでも相馬は一段上のステージでプレイしている。後半19分、今度は相馬のコーナーキックに佐々木翔が頭で合わせて追加点。圧巻は後半27分で、藤田から西村、小池と華麗なパス回しで相手を崩して町野が決めて3点目。ゴールこそ町野だったが、マリノス勢のコンビネーションがそのまま代表で再現されたスペクタクル。終わってみれば3対0の快勝。この結果は立派。ニッポンが優勝を決めた。
●もっともマリノス勢もチームメイト同士でコンビが合わなかったりする場面もあって、そんなに胸を張れたものでもないかも。みんな持ち味は出ているんだけど、プレイの質に微妙なムラがあって海外組の選手たちを押しのけてワールドカップメンバーに残れるかというと、そこは厳しそう。怪我人などが出たときのバックアッパー的な選択になるのでは。選手選考のためのテストはこれでおしまい。大会を通じて大きなサプライズはなかったと思う。
●GK:谷晃生-DF:小池龍太、畠中槙之輔、谷口彰悟、佐々木翔-MF:岩田智輝、藤田譲瑠チマ(→橋本拳人)-水沼宏太(→宮市亮→森島司)、相馬勇紀(→満田誠)-FW:西村拓真(→脇坂泰斗)、町野修斗。

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飯尾洋一(Yoichi Iio)

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